このページの先頭

相原斎「新作チェック!」

2008年01月10日

地球に見とれる

-アース(1月12日公開=独英)-

 新しいツールはものの見方を変えてくれる。最近ではグーグル・アースが典型だ。地球が一惑星であることを再認識させ、自分の仕事場や自宅までズームアップすることで不思議な一体感も覚える。地球温暖化問題が、決して一過性ではなく、話題に上り続けていることにもこの新ツールがひと役買っている、と思う。

 今回はそんなグーグル・アース的視点で製作された作品だ。その名も「アース」。最近、頻繁に製作される自然ものドキュメンタリーを集大成風に、その視点は天空から地上まで滑らかにズームアップしていく。

 50億年前、隕石の衝突によって地軸に微妙な角度が生まれ、それこそが多彩な生物を生み出すきっかけになったという太古の逸話からスケール感を持ってスタートする。

 製作に5年。撮影日数2000日という映像には確かに厚みがある。熱帯から北極まで幅広い。生命が溢(あふ)れかえる地域とかすかなそれとのコントラスト、それぞれの美しさにも目を奪われる。

 総花的、網羅的なわけではない。際立つ部分にスポットが当てられ、ドラマもしっかり描かれる。生きるか、死ぬか。人間社会を映し出すような興亡に引き込まれる。

 もっとも印象的だったのはゾウとライオンのエピソードである。

 24年前になるが、「少年ケニア」のアニメ映画化に際して、原作者の山川惣治先生の現地取材に同行したことがある。草原でキャンプをはった夜、ガイドたちが大きな火を絶やさないのが気になった。彼らが恐れたのはライオンではなくゾウだった。大群が通過すれば、テントなどひとたまりないという。移動用バンの運転手は「お前たちはブレイブだから残る。俺はクレバーだから家に帰る」というようなことを言って、その夜は自宅に帰ってしまった。確かに後で、白日のもとで見たゾウの群は圧巻だった。

 劇中でも、自力ではゾウがライオンを圧倒する。水を求めて移動するゾウの大群の周囲をライオンが徘徊するが、親ゾウに威嚇されて狙いの子ゾウには近づけない。わずかな水を飲むときは、ゾウが堂々と飲む近くでライオンは身をすくめるようにしながらおこぼれにあずかる図式だ。

 だが、ライオンはあきらめない。子ゾウ狙いと見せながら、わずかなチャンスに一頭の親ゾウを群から引き離し、集団で襲いかかった。粘り勝ち。狡猾(こうかつ)さが強さを上回った瞬間だ。練り上げた脚本のような成り行きに息をのんだ。

 「ディープ・ブルー」(03年)のアラステア・フォザーギル監督とアフリカを舞台に多くのドキュメンタリー作品を手がけたマーク・リンフィールド監督の共同作品となっている。

このページの先頭へ