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相原斎「新作チェック!」

2008年01月03日

人情のアンサンブル

-歓喜の歌(2月2日公開)-

 登場する男性たちはどうにも半端である。スジを通そうとしない。対照的に女性たちはしっかりと自己主張する。身につまされるやりとり。どこにでもありそうな光景。が、様々な思いが交錯しながら、最後は気持ちのいいクライマックスに至る。最近では「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(07年)を撮った松岡錠司監督は一見さらっとした描写の積み重ねによって登場人物たちの人情の機微を浮かび上がらせる。

 原作は立川志の輔の新作落語。年末の2日間、地方の小さな町を舞台に物語はトラブルで幕を開ける。主人公は文化会館の主任(小林薫)。市役所から飛ばされてきた彼はまったくやる気がない。注意力散漫がたたって大晦日のイベントをダブルブッキングしてしまう。申し込んできたのが「みたま町コーラスガールズ」と「みたまレディースコーラス」だから無理もないが、晴れの日を目指して練習を重ねてきたママさんコーラスの2グループはともに譲らない。

 庶民派のガールズが初のお披露目会ならセレブなおば様が集うレディースは結成20年の節目である。仕事も人生もなめていた彼がいきなり剣が峰に立たされる。女性たちのパワーに煽られ、難事に正面から立ち向かわざるを得なくなる。

 植木等の“無責任男”のようにいつの間にか状況が好転していくわけではない。けっこうリアルに“壁”にぶつかり、不恰好にこれを乗り越えていく展開だ。周囲の様々な思惑に突っつかれながら、無責任な中年主任がしだいに仕事への情熱を取り戻す更生譚でもある。

 小林をはじめとする出演陣アンサンブルが絶妙だ。誰かが引っ張る感じはない。目立とうというよりはセーブする意識のほうか勝っている印象だ。由紀さおり、藤田弓子、根岸季衣らいるだけで何かありそうなママさんコーラスのメーンの顔ぶれは、それでも、だからこそ、個性がほどよく光る。すごくいい人もすごく悪い人もいない。誰にも二面性がある。という当たり前の人間模様が逆に新鮮だ。

 コワモテのコーラスメンバーの中で“理想の女性”として異彩を放つのがガールズのリーダーの元音楽の先生役の安田成美だ。唯一の、すごくはないがいい人かもしれない。ダメ亭主(光石研)も温かく包み、主任と部下(伊藤淳史)とともにダブルブッキングの落としどころを模索する。

 そんな元先生が、いい加減のくせに“法律”の一線を越えるとなるとすっかり及び腰になる主任を後押しし、日常の一部のような雰囲気で違法行為の共犯者になってしまうところが面白い。詳述は避けるが、ここでの「違法」は法よりは義、的でやむを得ない行動である。主任に象徴される型から抜けられない「官」と自在な発想と行動をとる主婦の「民」がコントラストをなす場面でもある。

 渡辺美佐子、浅田美代子らも今の年齢ならでは味を出している。「ミスサイゴン」のジジ役、平澤由美の声量、キャラも効果的だ。

 季節感を気にする方ではないのだが、本来、年末に公開して欲しかった作品だ。

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