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相原斎「新作チェック!」

2007年12月20日

エンタメになった陰謀史

-ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記(12月21日公開=米)-

 ちょうど10年前にメル・ギブソンとジュリア・ロバーツが共演した「陰謀のセオリー」(リチャード・ドナー監督)という映画があった。主演の2人が国家権力に絡んだとてつもなく巨大な陰謀に触れてしまったことから、次から次へと危険に巻き込まれていくスリラーだった。

 虚実の境目を縫うような展開で、世間的には概ね高評価の作品だったが、私にはしっくりこなかった。ギブソン演じる主人公の“陰謀恐怖症”にどうしても馴染めなかった。特に序盤に著しい誇大妄想的な言動にはついていけなかった。

 「陰謀」「裏面史」というような“部分”で、日米の(米国人と私の)間には多分に感覚の違いがある、ような気がする。米国人の多くは主人公ギブソンの思いや行動に思い当たる部分が少なくないのだろうが、私には思い込みの強い変な人にしか見えなかった。

 今作は、そんな風土に基づいて陰謀史を題材にした典型的な娯楽作品といえそうだ。米独立宣言に隠された暗号を巡って展開された第1作(04年)に続き、今回は副題通りリンカーン大統領を暗殺した男の残した日記に残された暗号を発端に物語が進行する。

 現実や日常生活と微妙にリンクした「陰謀のセオリー」とは色合いを異にし、「ダヴィンチ・コード」+「インディ・ジョーンズ」的な徹底した娯楽作に仕上がっている。陰謀説を絵空事と突き放してしまう私のような人間でも、素直に楽しめる作品だ。

 今回は、歴史学者兼冒険家の主人公ベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)の祖先がリンカーン暗殺に絡んでおり、暗殺を主導する立場にあったとの“汚名”を晴らすことがゲイツが謎解きに挑戦する動機になっている。敵役のウィルキンソン(エド・ハリス)も暗殺事件に関わった人物の末裔という設定で、血脈で遡(さかのぼ)る“重厚な”筋書きは、陰謀好きの米国ならではといえる。

 暗殺者の日記に記された暗号からスタートした謎解きは、パリ、ロンドンと場所を移し、再び米国に戻って黄金都市の伝説から、歴代の大統領に受け継がれた秘密文書へと続き、リンカーンら4人の大統領の巨大な顔がそびえるラシュモア山で大団円を迎える。

 謎解きのからくりは必ずひとひねりを加えるが、ビジュアル的にはあくまで分かりやすい。舞台には誰でも知る名所を選んでいる。日本でいえば、国会図書館で幕を開けた徳川埋蔵金秘話が、日光東照宮で驚くべき結末に至る、という絵に描いたような展開ということになる。一方で、背景はていねいに作りこまれ、俳優たちの演技もシリアスできめ細かい。娯楽作品はかくあるべきというお手本のような映画に仕上がっている。

 ケイジを中心に恋人役のダイアン・クルーガー、相棒の天才ハッカー役のジャスティン・バーサが主軸トリオとなるが、ケイジの両親にふんするジョン・ボイドとヘレン・ミレン、敵役のハリス、FBI捜査官のハーヴェイ・カイテルと周囲にはわくわくさせるような芸達者をそろえている。

 「クィーン」の印象が未だに強いミレンが「ヴィクトリア女王が…」というセリフを口にしたときの微妙な“間”にパロディの匂いを感じたのは考えすぎか。

 前作に続き、製作ジュリー・ブラッカイマー、監督・製作ジョン・タートルトーブがコンビを組んでいる。

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