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相原斎「新作チェック!」

2007年12月06日

ジョン・レノンの時代

-ピース・ベッド(12月8日公開=米)、チャプター27(12月15日公開=米)-

 81年の12月8日、入社2年目の私は日比谷公園で行われたジョン・レノンを偲ぶ会を取材する機会があった。主催のファンクラブのスタッフに話を聞いていると、全国紙の社会部の記者が「私もいいですか」と割り込んできた。ビートルズは何人組ですか? 解散のいきさつは? えーっと奥さんは? 等々。ジョン・レノンにまつわる基礎的情報をほぼ同世代のその記者がまったく知らないことにまず驚き、こちらの取材が進まないことにイライラしつつ、いつの間にか知識ゼロでも物怖じしない社会部記者の姿勢に妙に感心していた。翌日、それなりのスペースで扱われたその新聞の記事にレノンへの“思い”のようなものまで込められていたことにもう1度感心した。

 ジョン・レノンの生き方は、短時間の口伝てでも人の心に染み込むだけのインパクトがあったということなのだろう。

 そのイベントのちょうど1年前の80年12月8日、ニューヨークの自宅マンションの前で、レノンは凶弾に倒れた。27年目の今年、命日とその1週後にくしくも彼にまつわる2本の映画が相次いで公開される。

 「ピース・ベッド」(デヴィッド・リーフ&ジョン・シャインフェルド監督)の原題は「THE U.S. VS. JOHN LENNON」。合衆国対レノンということである。レノンとオノ・ヨーコ夫妻の発言力を時のニクソン政権がいかに疎(うと)ましく思っていたか。多くの若者が支持する一方で、いかに大きな反発があったか。ビートルズ時代の発言にまで遡り、ヨーコをはじめとする周囲の人々のインタビューも交えたドキュメンタリーの決定版だ。

 私生活を追い回すマスコミを逆手に取り、夫妻は世界各地でベッドルームでの会見を行う。戦場とは対照的なシチュエーションでひたすら平和を訴える。これも“政治力”と言っていいのだろう。夫妻が放つパワーが当時いかに圧倒的なものだったがうかがえる。

 もう1本の「チャプター27」(J・P・シェファー監督)はレノン銃撃犯チャップマンの犯行までの3日間を再現した作品だ。原案となったのは現在も刑務所に収監されているチャップマン本人に200時間に及ぶインタビューを行った「ジョン・レノンを殺した男」(ジャック・ジョーンズ著)。チャップマンはレノンの熱烈なファンであり、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を愛読していた。ニューヨークでの最後の3日間はこの小説と同じような行動を取りながら、26章からなるこの作品にレノン殺害という“27”章(チャプター27)を自ら付け加えてしまう。

 チャップマンにふんするジャレット・レトは体型までオタク風デブに“改造”してなりきっている。こんな男のいびつな衝動がレノンの命を奪ったのか、と思う一方でチャップマンに不思議な魅力さえも感じてしまう。人間チャップマンに入り込んだレトは掛け値なしの好演だ。

 お騒がせの話題提供ばかりのリンジー・ローハンもファン仲間のジュード役で女優としての地力を見せている。息子のショーン・レノンや乳母にも愛された彼女は、“最悪のファン、チャップマン”の対極の存在として描かれる。

 「ピース―」が内側から見たレノンなら、「チャプター」は外側から見たそれ、前者にはヨーコが「レノンをレノンたらしめる存在」として登場し、後者では単なる“影”にしか扱われていない。半生を網羅した前者と最後の一瞬にこだわった後者という具合に文字通り対極の作品である。が、どちらのジョン・レノンにも代えがたい魅力が漂っている。

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