虎番ブログ

2007年12月25日

忘れられない、球児のひと言:佐井陽介

 球児さんの“あの”ひと言が、脳裏に焼きついて離れない。あれは今月12日のこと。球児さんは西宮市内の球団事務所で2度目の契約交渉にのぞみ、将来的なメジャー挑戦の希望を球団側に伝えた。「メジャーリーグでチャレンジしたい」。記者会見での言葉はもちろんだが、それ以上に忘れられないひと言があった。

 この日、僕は球児さんにお願いしなければならないことがあった。読者プレゼントとして、Tシャツにサインをおねだりしようと思っていた。今日を逃せば、もう年明けまで、球児さんと顔を合わすことができないかもしれない。千載一遇のチャンス! 迷惑であることは百も承知だったが、無理を言って、何としてもサインをゲットするつもりだった。

 だが、会見の冒頭でプランはもろくも崩れ去った。球児さんが、将来的なメジャー移籍希望を表明-。緊張感に支配された会見場。もうサインなんて頼む訳には行かない。とにかく、球児さんの発する言葉を聞き漏らさないよう、必死だった。報道陣の問いかけに、真摯(しんし)な態度で受け答えをする球児さん。会見は長時間に渡った。

 やがて最後の質問が終わり、球児さんは会見場を後にした。「批判は覚悟しています」。表情には疲労の色が見てとれた。無用になったTシャツを握り締め、しばらくして僕も会見場を離れた。ふと視界を横にずらすと、球児さんがいた。

 ビックリした。迷いに迷った挙句、何故かその方向にダッシュしてしまった。取材時間はとっくに終わっている。こんな重大な会見の後に、今さらサインをねだろうとするなんて…。自分のバカさ加減が恥ずかしくなったが、もうどうしようもない。ただうろたえていると、10メートル先の球児さんが気づいてくれた。「僕ですか? 僕だったら大丈夫ですよ」。

 一目散に駆け寄ってしまった。「こんな時に、本当にすみません…。ここにサインをお願いしたいんですが…」。球児さんは優しく答えてくれた。「いいですよ」。そして、少し寂しそうな表情でこうつぶやいた。

 「僕なんかでいいんですか?」

 思いもよらぬひと言だった。「えっ…」。僕は言葉が続かなかった。

 メジャーへの強い思い。もちろん、それに対して賛否両論があるのは当然だと思う。ただ、球児さんは本当に苦悩している。いつもは鈍感な僕ですが、この日、それだけは強く感じました。そして、とことん間の悪い自分を、深く深く反省した次第です。

December 25, 2007 12:14 AM

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