鉄矢多美子 Field of Dreams

2008年01月23日

第179幕 野茂やテハダが発する野球熱

 1月9日付けのコラム(177幕)で、ミゲル・テハダのことに触れた。その直後に大きな動きがあった。1月15日に薬物問題で偽証罪が問われたのだ。同日、6歳年上の実の兄が、自分の家の近くで交通事故死している。偽証罪疑惑と実兄の死という不幸に直面したテハダは、もう母国でのプレーをやめるのではないかと思っていた。ところが、17日からのファイナルチャンピオンシップの初戦だけ休むと、18日からは、まるで何事もなかったかのようにラインナップに名前を連ねてきたのだ。

 周囲が騒然としている最中、ファイナルチャンピオンシップに連日フル出場して、メジャーのシーズンさながらのプレーを見せている。全米にとどまらず、ある意味、全世界が注目し包囲網が敷かれている感のある状況下、この問題を自分の中でどう受け止めながらプレーしているのだろうか、集中力は途切れることがないのだろうかと、不思議でならない。ある意味、“乗り降り自由”のウインターリーグ。こんなことが自分にのしかかれば、プレーする必要もないし、第一、モチベーションもあがってこないことが予想される。

 もし日本でこんな状況下に置かれたとしたら、多くの日本選手はおそらく野球どころではないメンタリティーになるだろう。それでもプレーを続行するテハダのこの強靭な精神力は、いったいどこからやって来るのだろうか? 日本で野球をウオッチする我々にとって、彼らの行動は理解に苦しむことが多い。しかし今、そのナゾを解く答えをベネズエラのウインターリーグに参加した野茂が教えてくれたような気がしている。

 その功績はメジャーリーグで十分に認められており、なかなか人を認めようとしないあのボンズまでもが一目置き続けた野茂。肩や肘の手術を乗り越え、リハビリを経てドン底から這い上がろうとするその精神力とエネルギー。ベネズエラに到着した最初の記者会見で「何があなたをそうさせるのか?」という質問に対する野茂の答えはこうだった。「まあ、自分は野球が好き…。というより、野球をするのが好き。自分がしたかっただけ」。

 すっーという感じで野茂が言ったこの言葉を反芻し、よくよく考えてみると、そこからは野球に対する気持ちの傾け方が尋常ではないものが見えてきた。それはテハダとて同じなのだ。誰よりも、何よりも深く野球を愛し、それが生活の一部、もしくはリズムにもなっていて、すでに、彼らの中にはプレーせずにはいられないという「野球DNA」のようなものが体の中に生まれているのではないだろうか…。彼らからほとばしり出る熱は、そんなことを思わせてしまうほど熱い。

January 23, 2008 04:32 PM