2008年01月17日
第178幕 左手に彫られた「楽」が意味するもの

エンジェルスのエルビン・サンタナが、15日に行われたドミニカ共和国のウインターリーグ(リセイ・タイガース所属)で6回を無失点に抑え、キャンプに向けて上々の仕上がりを見せている。
2005年5月17日に22歳でメジャーデビューを飾ると、この年いきなり12勝(8敗)して、ポストシーズンにも出場するなど、彗星のように現れた若きエースに注目が集まった。翌06年には16勝(8敗)と、まさに日の出の勢いでのし上がり、周囲からの期待は大きくなるばかりだった。
だが、昨年は思うように調子があがらず、7月に入ると打ち込まれる試合が続く。ついには月間防御率が12・56までハネ上がり、夏場の約1カ月、3Aでの調整を余儀なくされることになった。三振のとれる投球も陰をひそめ、これまで簡単に料理できていた打者からも容赦なく襲いかかられた。こうなると悪い展開が次々に巡り、ついには自信喪失へ…。
出口のない迷路で、自分を見失いかけていたとき、サンタナはふと自分の左手の甲に目をやった。そこには漢字で「楽」という一文字がタトゥーで刻まれていた。もちろん「enjoy」というその意味を知った上で彫りこんだ文字だったが、そこで、すべてにおいて「楽=enjoy」できていない自分に気づく。
それからはマイナーリーグでの登板でも何かしらの「楽」しみを感じつつマウンドに立つことにした。エンジェルスは快進撃を続け、優勝へ向かってまっしぐらに突っ走り始めた8月中旬、メジャーに呼び戻された。チームが地区優勝を決めた9月23日のシャンパンファイトの歓喜の輪の中にサンタナはいた。その騒ぎが一段落すると左手の「楽」という一文字を感慨深く眺め、それから軽くキスしていた。
年明けにホワイトソックスのポール・コナーコとのトレード絡みで名前があげられるなど周辺は騒がしかったが、雑念を打ち払い自分の投球に集中しようとする姿勢が、15日の素晴らしい投球に結びついたのだと思う。その日は「楽」という一文字が一層輝いて見えたことだろう。しかし、苦しいとき、いや苦境に陥ったときこそ、その一文字が自分の支えになってくれることをサンタナは知っている。
※写真は、左手に刻まれている「楽」
January 17, 2008 12:01 AM
