鉄矢多美子 Field of Dreams

2007年12月03日

第173幕 MVP男ローリンズの大胆な目標とは?

 今季のナ・リーグMVPにフィリーズのジミー・ローリンズが選出された。一番驚いたのは当の本人で「まさか僕が選ばれるとは」と嬉しさをかみ締めていた。名前のとおり? 小兵でジミ目な選手ではあるが、実は確実なバットコントロールとすばしっこさに加え、近年ではパワーアップして長打も増え、相手投手にいやがられるタイプの打者に成長してきた。

 今季は特に長打が際立ち、本塁打(30本)、三塁打(20本)はいずれも自己新記録。中でも注目されるのが20本の三塁打だ。この数字はセントルイス・カーディナルスがチーム全体で記録した13本より7本も上回っているのだ。チャリー・マニエル監督は、フィリーズが地区優勝できたのは、もちろん個人の成績ではないとしながらも、この切り込み隊長の出塁とベースランニングが大きく貢献したことを認めている。

 ローリンズによれば「僕は打ってから一塁に到達すまでのタイムは、3秒の後半だが、一塁から二塁、三塁に進むにつれ加速して速くなる」のだという。イチローや赤星などが3秒前半で走り抜けることを思えば、一塁に到達するまでのローリンズは決して速いとは言えない。「子供のころから100メートルは全くダメだったが、加速ができる200メートルでは抜群のタイムでゴールした」と、走る距離が伸びるほどに自信を持っていた。三塁打の量産も長打力プラス加速力のたまものだといえるだろう。

 練習の虫。キャンプでも最後までグラウンドに残って身体を動かしている。「どのクラブも9個の椅子しかない。それを死守するには練習しかないんだ」。ファンを大事にすることでも人後に落ちない。「どんなときにもサインする時間を自分で7分はキープすることにしているんだ。それもプロの選手としての仕事の1つだからね」。実にMVPに選出されるにふさわしい男である。

 子供のころ、ソフトボールをやっていた母親に感化され、野球に興味を持つようになったローリンズは、8歳の時、リトルリーグで野球を始める。だが、それ以前に父親と硬式ボールでキャッチボールをしていて、まともにボールを顔面に受けたことがある。このとき痛さをこらえ、泣きもせず「もう1回投げて!」と言ったことで、父親は「この子は本気で野球をやりたいんだな」と確信したそうだ。

 その子供のころからの夢は「MLBでプレーすること」、次が「オールスターに出ること」だったが、両方ともとっくにクリア。そればかりか今季は最高の栄誉であるMVPにまで輝いたのだ。そのローリンズが今目標に掲げているのが4割打者のテッド・ウイリアムス超えだ。「あまり現実的でないことはわかっているけど、いいモチベーションになるから」と、敢えて「打撃の神様」を選んだ。目標が高ければ高いほど、大胆であればあるほど、この男、燃えるらしい。

December 3, 2007 12:20 PM