2007年12月25日
第176幕 指揮官を熱中トークに誘った松坂と岡島の活躍
レッドソックスの世界一で締めくくられた今季。あらためてシーズンを振り返ったフランコーナ監督が、松坂と岡島を高評価した。「彼らにとっては、何もかもが初めてのことばかりで、さぞかし苦労も多い1年だったと思う。そんな中であれだけの活躍をしてくれるとは…。毎日、毎回、彼らのパフォーマンスを驚きの連続で見守っていた。あの2人抜きではレッドソックスの優勝は語れない」とまで言い切った。
ウインターミーティングの記者セッションでも全米のメディアを前に、具体的なエピソードを交えながら、2人を絶賛した。「打撃練習の時間は外野に散らばっている投手たちにとって、チームメイトとコミュニケーションをとるなどしながら、試合前に唯一リラックスできる時間のはず。でも彼らにとってその会話ですら仕事だったと思う。少しでも早くチームに溶け込み、いかにいいチームメイトになろうかと頑張っていた」。
見渡せば、他チームでは、チームの補強のためトレードやFA選手の獲得などで、関係者が西に東に奔走し、札ビラも飛び交っている。レッドソックスもFAになったシリングとロウエルの穴埋めのため補強が必要なはずだったが、この2人が他の条件のいいチームのオファーを蹴って、舞い戻ってきた。これにより、多少の出入りはあれど、大きく動く必要がなくなった。現時点では「世界一戦士」を温存した形で、来季を迎えることになる。
「他チームもアグレッシブにチーム編成をしかけてきている。決して油断はできないが、うちは今のところローテーションも打順もポジションもほとんど世界一のまま大きな変動はない。これは大きい」と、余裕の表情を見せるフランコーナ監督。「こんな余裕が持てるのも、松坂と岡島がいてくれたから。彼らの闘争心がチームに乗り移り、勝つことに向かって突き進んで行った感があった」と、世界一に到達した要因を分析した。
「私はOki(岡島)とDai(松坂)を心から誇りに思っている。経験を積み、自信をつけ、勝つことの喜びを身を持って知った彼らに、来季は、もっともっとすごい展開がまっていることだろう。彼らの未来は限りなく明るい。もちろん彼らがいるレッドソックスは言うまでもない」。普段はそれほどまでに選手を持ち上げることのない指揮官だが、このオフ、松坂、岡島の話題に触れると我を忘れて熱中トークしてくれた。そこからは、2人が、どれだけ意義深く価値あるシーズンを過ごしたかをはかり知ることができる。
December 25, 2007 01:07 PM
2007年12月17日
第175幕 井口争奪戦に敗れた「赤鬼」の無念
メジャー球団が熾烈な獲得競争を繰り広げた福留、黒田の行き先も決まり、大物日本人選手の獲得バトルは一段落した。彼らばかりに注目が集まった感があるが、実は井口資仁を巡る獲得競争も、負けず劣らず熾烈を極めた。
ウインターミーティングの会場で耳にした球団だけでもフィリーズ、エンゼルス、オリオールズ、ドジャース、ブルワーズ、ロッキーズ、アストロズ、パドレス、ジャイアンツなどなど、10球団以上にも上り、人気の高さを思い知らされた。
中でも特にご執心だったのが「赤鬼」の異名を持つ、フィリーズのチャーリー・マニエル監督だ。ウインターミーティングの初日から最終日まで「何とかうちでプレーしてくれないだろうか」と井口サイドの動きをやきもきしながら見守っていた。だが「二塁」にこだわる井口に対し、フィリーズにはチェイス・アットリーという不動の二塁手がいるため、どうしても「三塁で」という条件が譲れない。絶対的に不利な立場であると承知しつつも、一縷の望みをかけて待つしかなかった。
同じ内野手でも二塁手と三塁手では動きが違う。井口の「三塁手」としてのプレーを実戦で見たことがないマニエル監督が、なぜそれほどフィリーズ入りを切望したのか。その理由は「三塁はリアクションポジションといって特に素早い反応が要求される。ステップクイックネス。クイックハンズ。細かい動きが速い彼のプレーをみてきて、彼はすぐに三塁手としてアジャストできる」。今季後半、自チームで目のあたりにした井口の高い技術、能力にぞっこん、惚れ込んでいたのだ。
しかも、二塁手から三塁手に移行するにあたっての極意を「二塁手はボールを捕るとすぐに投げる癖がついている。三塁手にアジャストするには、ロングトスで腕をストレッチアウトする練習が必要。三塁手独特の送球だけがちょっと気になってはいるが、今までの井口を見てきて、彼ならすぐに対応できると思った。スプリングトレーニングでしっかり練習し、ゲームの中で練習を積み上げていけば全く問題ない」と、具体案まで持ち出して井口の決断を待ち望んでいた。
だが、井口は二塁というポジションが約束されたパドレスを選んだ。しかも気候や治安もよく、全米でも常に「一番住みたいところ」のトップクラスにランクされるサンディエゴという場所も、家族のことを考えれば申し分がない。「井口に二塁ができるスポットがあるのなら仕方ない。でも私は井口が加わるそのチームのことを、とても羨ましく思う。なぜなら、私のチームでプレーして欲しいと思う気持ちがとても強かったから」。井口争奪戦に敗れた「赤鬼」の無念は図り知れない。
December 17, 2007 12:28 PM
2007年12月10日
第174幕 Wミーティングで見た日本市場の「異変」
テネシー州ナッシュビルで行われたウインターミーティング(12月3日~6日)で、「異変」が起こっていた。これまでになく「日本市場」が活況を呈し加熱気味だったのだ。それ以前に小林雅(インディアンズ)、薮田(ロイヤルズ)らの契約がすんなり決まっていたことや、黒田、福留という大物選手のメジャー入りをめぐる動向が大いに注目されていたこともあり、広い会場では「日本」に関するさまざまな情報が飛び交っていた。
いつもなら選手獲得に関することは、さしさわりのないコメントで逃げるか、黙して語らないGMたちも、我々日本人記者を見かけると「黒田の状況はどうなっているのか?」「福留のメジャーでプレーする意思は決まったのか?」などと逆取材してくる始末。もちろん彼らは、代理人を通じて情報を入手しているにちがいないのだが、それでも少しでも日本からの新しい情報を手に入れ、他球団より抜きん出ようと必死になっているのだ。
福留の獲得を熱望しているカブスのジム・ヘンドリーGMなどは、雑談の中で「シカゴは日本食レストランも充実しているし、仲間には日本語を話せるソリアーノもいる。デレク・リーだって日本育ちだ」と、カブスと「日本」との係わり合いを強調。「そのことも含めてカブスはいい球団だと説明しておいて欲しい。それでもし福留が入団にOKしてくれたら、君には来シーズン、リグレーの特等席を保障するよ」などと、舌もなめらかなことこの上なかった。
これほど「日本」が注目を浴びたことに対して「今年はアメリカ市場にそれほど期待が持てなかったから」という見方もあったが、一方ではWBCなどで日本の力をまざまざと見せられたことなどから、急速に「日本の野球」に視線が向けられるようになっていった面もある。そんな流れの中、今季は「日本人選手の活躍なしではメジャー野球が語れない」と言われるほど、彼らは獅子奮迅の働きをし、底力を見せ付けた。こうしたことを鑑みれば、日本市場がスポットライトを浴びるという「異変」は起こるべくして起こったと言えるだろう。
ウインターミーティングのパブリックな会場では、ベーブ・ルースが来日した折の古い映像を織り交ぜ、野茂英雄の活躍からWBCでの優勝、レッドソックスを世界一に導いた松坂や岡島の活躍に至るまで、日本野球とメジャーリーグのかかわりあいに関するハイライト映像が繰り返し流されていた。そこからは日本の野球が、いかにメジャー野球にとって重要な一部分になっているかを感じ取らずにはいられなかった。
すべての日本人プレーヤーがこれまでメジャーの中に着実に築いてきてくれた「日本ブランドへの信頼」は、もう揺るぎないものになっている。
December 10, 2007 01:41 PM
2007年12月03日
第173幕 MVP男ローリンズの大胆な目標とは?
今季のナ・リーグMVPにフィリーズのジミー・ローリンズが選出された。一番驚いたのは当の本人で「まさか僕が選ばれるとは」と嬉しさをかみ締めていた。名前のとおり? 小兵でジミ目な選手ではあるが、実は確実なバットコントロールとすばしっこさに加え、近年ではパワーアップして長打も増え、相手投手にいやがられるタイプの打者に成長してきた。
今季は特に長打が際立ち、本塁打(30本)、三塁打(20本)はいずれも自己新記録。中でも注目されるのが20本の三塁打だ。この数字はセントルイス・カーディナルスがチーム全体で記録した13本より7本も上回っているのだ。チャリー・マニエル監督は、フィリーズが地区優勝できたのは、もちろん個人の成績ではないとしながらも、この切り込み隊長の出塁とベースランニングが大きく貢献したことを認めている。
ローリンズによれば「僕は打ってから一塁に到達すまでのタイムは、3秒の後半だが、一塁から二塁、三塁に進むにつれ加速して速くなる」のだという。イチローや赤星などが3秒前半で走り抜けることを思えば、一塁に到達するまでのローリンズは決して速いとは言えない。「子供のころから100メートルは全くダメだったが、加速ができる200メートルでは抜群のタイムでゴールした」と、走る距離が伸びるほどに自信を持っていた。三塁打の量産も長打力プラス加速力のたまものだといえるだろう。
練習の虫。キャンプでも最後までグラウンドに残って身体を動かしている。「どのクラブも9個の椅子しかない。それを死守するには練習しかないんだ」。ファンを大事にすることでも人後に落ちない。「どんなときにもサインする時間を自分で7分はキープすることにしているんだ。それもプロの選手としての仕事の1つだからね」。実にMVPに選出されるにふさわしい男である。
子供のころ、ソフトボールをやっていた母親に感化され、野球に興味を持つようになったローリンズは、8歳の時、リトルリーグで野球を始める。だが、それ以前に父親と硬式ボールでキャッチボールをしていて、まともにボールを顔面に受けたことがある。このとき痛さをこらえ、泣きもせず「もう1回投げて!」と言ったことで、父親は「この子は本気で野球をやりたいんだな」と確信したそうだ。
その子供のころからの夢は「MLBでプレーすること」、次が「オールスターに出ること」だったが、両方ともとっくにクリア。そればかりか今季は最高の栄誉であるMVPにまで輝いたのだ。そのローリンズが今目標に掲げているのが4割打者のテッド・ウイリアムス超えだ。「あまり現実的でないことはわかっているけど、いいモチベーションになるから」と、敢えて「打撃の神様」を選んだ。目標が高ければ高いほど、大胆であればあるほど、この男、燃えるらしい。
December 3, 2007 12:20 PM
