鉄矢多美子 Field of Dreams

2007年09月03日

第164幕 親子2代本塁打王へ、P・フィルダー

 残り試合が少なくなり、優勝争いとともに、タイトル争いからも目が離せなくなってきた。中でも9月2日(日本時間3日)のピッツバーク戦で、今季40号本塁打を放ったミルウオーキーのプリンス・フィルダーが、親子2代で本塁打王を獲得する可能性が高まっており、がぜんその打棒が注目を浴びている。

 プリンスが野球を始めたのは、父がトロントから阪神に移った前後の4~5才のころで、甲子園球場でボールを打って遊んだことははっきりと記憶にとどめている。打撃にかけては子供のころから父譲りのパワーを見せつけ周囲を驚かせていたが、とりわけ筆者がその神童ぶりを目の当たりにした1997年2月の出来事は忘れられない。

 当時ヤンキースでプレーしていた父に連れられスプリングトレーニングにやってきたプリンスが、いきなり室内練習場で打撃練習を始めると、クラブハウスにものすごい打球音が轟きわたった。その打球音に驚いたヤンキースの選手たちが、バッティングケージに駆けつけてみると、打球音の主が12歳の少年であったことに驚きを隠せなかった。

 それは、前年新人王に輝いたデレク・ジターやバーニー・ウイリアムスらを、しばらくその場に釘付けにするほどの衝撃だった。「みんなオレより強く打ってるよ、などと驚いた様子の声が聞こえてきて、自分の中でちょっぴり嬉しかったし、楽しかった」と、プリンス自身もメジャーリーガーたちを驚かせた日のことをはっきりと記憶している。

 「いつも父親と比較されてばかりいたから、嫌気がさした」と、野球をやめてバスケットボールの道に走った一時期もあった。再び野球に戻った理由を「僕にとってバスケはコートが狭すぎたから」と照れながら説明したが、実は1996年にヤンキースがワールドチャンピオンになった際、父親に帯同してその興奮を体験したことで再び野球をやる気になっていた。次の年のキャンプでヤンキースの選手たちのド肝を抜く一件があって以来、プリンスにもう迷いはなかった。

 それから6年後、2002年6月のドラフトでミルウオーキーに1位指名を受けると、その2週間後の6月19日にはルーキーリーグのオグデン・ラプターズでプロデビューした。そのデビュー戦で満塁ホームランを含む4打数2安打5打点と華々しいスタートを切ったその試合を偶然見ていた筆者は、驚きのあまりしばらく言葉が出なかった思い出がある。

 その5年後の今季は、開幕から打棒爆発。オールスターにも選出されるなど一流選手の仲間入りを果たした。昨今は父のセシルがギャンブルや不動産投資で失敗し、多額の借金を背負って逃亡しただの、刑務所に入ったただのという噂が飛び交い、野球に集中できないこともあった。その父も今季はフロリダの独立リーグ「レッドフィッシュ」の監督を務めるなど、フィールドに戻って落ち着きを取り戻した。

 一時は父のプレッシャーに押しつぶされそうになったこともあったが、今はその父から受け継いだDNAを開花させ、親子2代の本塁打王目指してまっしぐらに突き進んでいる。

September 3, 2007 07:24 PM