2007年07月12日
第157幕 球宴の向こう側に見えた熱い男の魂
イチローのMVPで幕を下ろしたMLBオールスター。その2日前には文字通り、未来のメジャーリーガーを目指す「フューチャーズゲーム」が行われた。このゲームに出場し、さらにMLBオールスターにも選出された選手はこれまで31人にも上っている。ここに選ばれてきた選手にとって、この試合は単にメジャーへの登竜門というばかりか、スーパースターへの階段にもなっているのだ。
そんな将来を嘱望されている若者たちの試合のあとに、オールドタイマーたちを交えたソフトボールゲームが行われた。試合終了後、参加者の1人リッキー・ヘンダーソンがテレビのインタビューで「僕は現役に戻ってプレーしたい。どこかの球団から声がかかるのを待っている。そのためにいつでもプレーできるようにコンディションも整えている」と答えていたのが印象的だった。
2003年のドジャースでのプレーを最後に、実質的にはメジャーの選手として引退状態になっているが、2004年と2005年には独立リーグでプレーしながら、メジャー球団からのオファーを待った。親子ほど年の離れた選手たちとクラブハウスを共にし、椅子に腰を下ろして試合に向けた準備をしている姿を何度か見たことがあるが、その姿からは現役にこだわる強い意思がほとばしっていた。
独立リーグでは自分の練習を終えると、自らトスを上げて若い選手たちの打撃練習の相手になっていた。ひとたび「教える」モードに入ると、時間のたつのも忘れて指導に没頭。現在も時間の許す限り、少年野球のクリニックなどに積極的に参加している。「彼らを教えるのは楽しいし、そうしていながら、いつ(メジャー球団から)オファーが来てもいいように、自分の準備もしているんだ」と、常にメジャー復帰を口にする。
25年間プレーしたメジャーリーグでは、通算1406盗塁など、いまだ破られていない記録も多い。これだけ偉大な記録を残しておきながら、50歳になろうとする彼を、いまだメジャー復帰に向けて突き動かすものとは何なのだろうか。それを聞くとヘンダーソンは「野球を愛しているからだよ」とだけ答えた。彼がそう言えば、計り知れないほどの重みを感じる。
「チャンスはきっとあると信じて、いつまでもあきらめずに待つ」。
そう言い残してヘンダーソンがAT&Tパークを去ると、球場はオールスターゲームの準備に向けてあわただしく動き始めた。ついさっきまで熱く語っていたヘンダーソンの現役復帰への夢が、その動きに飲み込まれ、かき消されてしまいそうで、なんだか切ない気持ちにさせられた。いや、熱い男の魂はそんなものでは決して消されたりはしない。この直後にヘンダーソンはメッツの打撃コーチに就任した。そうしていながら彼は現役への夢を持ち続けるのだろうか…。
July 12, 2007 02:45 PM
