2007年06月12日
第153幕 苦節12年。初昇格の喜びと険しい道のり
6月9日。試合に敗れたサンフランシスコ・ジャイアンツのクラブハウスは、まるでお通夜のような重い空気が流れていた。そんな中、この日、3Aのフレズノからコールアップされたギジェルモ・ロドリゲス捕手だけは、1人嬉しさを隠しきれない様子で、顔から笑みがこぼれていた。無理もない。プロ生活12年目にして初めてメジャーのユニフォームに袖を通したのだから…。
前夜。正捕手のベンジー・モリーナと交代し、途中から出場したエリエサール・アルフォンゾが、ホームで走者と交錯し太ももの怪我をした。2名しか捕手の登録がなかったジャイアンツが、第3の捕手に任命したのは、内野手のペドロ・フェリスだった。「捕手? 全く生まれて初めてだったんだよ」というだけあって、投手のボールを受けることで精一杯。急造捕手はランナーを許すと好きなだけ走られまくって、当然のごとく試合は負けた。
故障者リスト入りしたアルフォンゾに変わって、マイナーから急遽呼ばれたのがロドリゲスだった。これまでのマイナー生活12シーズン中、11シーズンをジャイアンツのマイナーで過ごし、いつもあと一歩というところで、メジャーに残れず、涙をのんでいた。今季はジャイアンツの開幕日が4月3日だったが、その1日前に3Aに行かされている。その時点で「今年もまたマイナー生活が続くんだろうな」と覚悟していたのだという。
同じ日、ロジャー・クレメンスがヤンキースに復活し勝利を決めて、アメリカのスポーツチャンネルは、どこもかしこもその話題でもちきりだった。当然のことながら、苦節12年目にして初めてメジャーに上がった選手の話題など、スポットが当たるはずはなかった。だが、この11年間、マイナー一筋にやってきたことを思えば、初めてのメジャー昇格は、大きなスポットライトを浴びているに等しい思いだった。
ただ、悠長なことは言っていられない。怪我をしたアルフォンゾが15日間の故障者リスト明けで戻って来る頃には、どちらかがマイナー行きになる運命が待っているからだ。ロドリゲスにしてみれば、苦節12年、やっと掴んだこのチャンスを何とかモノにしたい思いでいっぱいだ。だが、12日現在、いまだ試合には出ておらず、メジャリーグデビューは飾っていない。
「何とか出場チャンスを得て、生き残りをアピールしたい」。こんな切なる思いは、7月に故郷のベネズエラからやってくる家族に「メジャーリーガー」の自分を見せたいからだ。それには激しいサバイバルを勝ち抜き、生き残っていかなければならない。思わぬ形で手にしたメジャー切符。それを手放すことなくどこまで遠くに走れるか。いまだ、険しい旅は続く。
June 12, 2007 07:09 PM
