鉄矢多美子 Field of Dreams

2007年03月20日

第143幕 「日本語の野球雑誌が意味するもの」

 ミネソタ・ツインズのキャンプ地、フロリダ州フォートマイヤーズのクラブハウスで、日本語で書かれた野球雑誌が目に留まった。それには日本のプロ野球を代表する投手の投球分解写真が掲載されていて、もちろん、松坂、井川両投手のフォーム解析と、詳しい解説も載っていた。雑誌の持ち主はチームリーダーのトリー・ハンター。「これで、松坂と井川の研究をしているんだ」という。

 ツインズがヤンキースと対戦するのは開幕直後の4月9、10、11日の3連戦。レッドソックスとの対戦は5月4、5、6日の3連戦。その日に備え、日本の雑誌に載っている2人の投手の分解写真の1コマ、1コマを丁寧にチェックしては、対戦したときのイメージを作り上げているのだ。

 2002年の日米野球で来日したハンターは井川と対戦し、本塁打を放っている。「ほとんど忘れかけていたけど、あの時の投手だったんだ。でもあれからずいぶん時がたっているから、彼の投球も熟成し進化しているだろうし、そのときの本塁打なんて参考にならないね。むしろ彼のほうがよく覚えていて、僕を打ち取ってやろうという気持ちで向かってくるかもしれない。その時のために、こっちも準備をしておかなければ…」。

 そんな折、日本のファンからサインボールと、その雑誌を交換しようという申し入れがあったのだという。解説の日本語は理解できないが、1コマずつの投球フォームの分解写真はボールの出かたなどを、想像するのに役立つのだという。ハンターがサインボールを渡し、日米のトレード? が成立した結果、日本語の野球雑誌がツインズのクラブハウスに置かれていたのだった。

 少し前までは、日本から選手がやって来るといっても、それほど大事には考えていなかったメジャーリーガーたちも、WBCで底力を見せ付けたあの日本の強烈な戦いのイメージがこびりついていて、明らかに彼らを「うかうかしていられない」という気持ちにさせている。日本語の野球雑誌がクラブハウスに置かれていることは、彼らの安穏とはしていられないという気持ちを象徴しているように思えてならない。

March 20, 2007 05:41 PM