鉄矢多美子 Field of Dreams

2006年09月15日

第127幕 苦節8年、遅咲きの花今鮮やかに

 「僕にとって今年は何もかもが歴史になりそうだね」。自身初のオールスターに選出された時こんなことを言っていたゲーリー・マシューズJr(レンジャーズ)が、9月13日の対デトロイト戦でサイクル安打を達成した。

 1打席目はシングル。2打席目が二塁打。3打席目に三塁打を放ち、4打席目で本塁打。と、絵に書いたようなサイクルはメジャー史上14人目というおまけつき。「歴史作り」はシーズン終盤まで続いていたことになる。

 99年にメジャーデビューを飾ってから、昨年まではレギュラーに定着できず、苦労の連続だった。特に01年から3年間は、シーズン中に立て続けにチームを変り、ジャーニーマン状態。そんな状況下、メジャー16シーズンで2000本安打を達成するなど数々の活躍を見せた父・マシューズSrと比較され、「ダメ息子」的な見方をされることが多かった。それも心の重荷だったが、いつか父を越えることを、心の励みに転化させて行く。

 転機がやってくる。04年にレンジャーズに移籍。同じチームで続けて3シーズンプレーするのは初めてのマシューズ。「これまでこんなに落ち着いて野球をやったことがなかった」というくらい、腰を据えて野球に取り組むことができた。そんな環境の中で、父から受け継いだ俊足巧打のDNAが弾けた。今年は開幕からコンスタントに数字を残し、中堅の守備でもたびたびスーパープレーを見せてチームを救った。

 クラブハウスでは4歳になる息子のケビン君を膝に抱きながら「僕もこうやって育ってきたんだと思うと、感慨深いものがある」と遠い記憶の中に父を探す。その父親がオールスターにかけつけ、息子の晴れ姿を見て目を潤ませていた。たまたま帰りの飛行機で隣り合わせたマシューズSrにお祝いを言い、「それでも彼はまだあなたを越えていない」と投げかけると「ある面ではもうヤツに越えられているし、これを機に自分を越えるよ」と胸を張って言った。

 メジャー8年目。遅咲きの花は、これまでじっと抱えてきた蕾を次々に開花させ、今鮮やかに咲き誇っている。

September 15, 2006 03:16 PM