鉄矢多美子 Field of Dreams

2006年08月11日

第122幕 首位打者モウアーが迎える正念場

 強打者揃いのア・リーグにあって、ツインズのジョー・モウアーがすでに2か月以上も首位打者の座に居座っている。8月10日現在、打率3割6分9厘で2位のデレク・ジーター(3割4分6厘)、3位のイチロー(3割3分)を大きく引き離しており、身体的、精神的に最も消耗が激しいといわれる捕手というポジションながら、ここまで首位打者をキープしているのは立派だとしかいいようがない。

 実は8月に入りジワジワ打率を落としていた。それでも3割6分3厘と高打率だったが、一時期3割9分2厘まであったことを思えば「やはりここにきて捕手としての疲労が出てきたか・・」と言われても仕方のないことだった。その矢先、8月7日からのデトロイト・タイガース3連戦で12打数6安打と打ちまくり、しっかり打率を稼いで落ちる傾向にストップをかけた。

 7月に行われたオールスターにも初出場した。首位打者であるにもかかわらず、名前があまり知られていなかったため、当初ファン投票では票が伸びず、出場も危ぶまれていたほどだった。そのオールスターでは、クラブハウスのロッカーがイチローと隣り合わせになった。

 「普段はできないいろいろな話をイチローとすることができて、得した気分だった」とイチローとの出会いを振り返っている。

 首位打者争いでは、ここまで5年連続のイチローが大本命で、捕手という不利なポジションのモウアーはおそらく後半のツメに入ってから追い抜かれるだろうというのが、大方の見方であるだけに、この二人の「大接近」はそれだけで話題になった。二人はオールスターの記者会見でも隣あわせた。マウアーには「あなたの隣にいる人(イチロー)を抑えて首位打者になる自信はありますか?」という質問が何度もくりかえされた。

 そのたびに、となりで記者に囲まれているイチローを見やりながら「僕がツインズに入団した2001年以来、ずっとイチローに憧れてきた。首位打者のタイトルは取れるにこしたことはないが、今はそういうことにフォーカスするより、憧れのイチローと引き合いに出されていること事態が嬉しいし信じられない」と、普段は冷静なモウアーが珍しく興奮気味に応えていた。

 不思議なことに、今年はそのイチローのいるシアトル戦で打ちまくり(ここまで31打数17安打)、しかも6月6日(シアトル戦)には4安打して、打率を3割6分8厘に上げ、首位打者に躍り出た。以来、一度も首位の座を明け渡していないのだ。マスクをかぶらない日も定期的に設けているが、故障者などが続出し、打撃陣の層が薄いツインズでは完全休養とはいかず、指名打者として出場することも多い。

 果たして、このツケがどうでるのだろうか?ワイルドカード争いの真っ只中にいるチームの守りの要、また中心打者として、弱冠23歳の若者には重い責任がのしかかっている。そんな中で歩まなければならない「首位打者」という未知の道のりは決して平坦ではないはずだ。ペナント争いが熾烈を極めるこれから先、マウアーは本当の正念場を迎えることになる。

August 11, 2006 06:48 PM