2006年04月21日
第107幕 あの鐘を鳴らすのはアナタ
WBCが終わって1カ月が過ぎた。どんなに時が過ぎようと日本が世界一になったキューバとのあの決勝戦は、我々の記憶に深く残り続けて行くだろう。そして、その歴史的な瞬間にマウンドにいた大塚晶則もまた、いまだ熱い余韻を保ちながらレンジャーズのセットアッパーとしてペナントレースで日々活躍を続けている。
あれは日本が大量5点リード゛で迎えた8回裏だった。だが、あっという間にキューバが1点差まで追い上げてきたのだ。彼らのたたみかける攻撃には、オリンピックや数々の国際大会で過去に何度も痛い目にあわされている日本。いやな空気が支配しかかったその時、大塚の名前が告げられたのだ。場所は彼がメジャー人生のスタートを切った思い入れのあるペトコパーク。そしてそこで思わぬ出来事が起こった。
マウンドに向かう大塚の背中を押すように場内に「Hells Bells」(地獄の鐘)が流されたのだ。この曲はパドレスの守護神、トレバー・ホフマンの登場テーマ曲としてあまりにも有名で、これが流れると地元ではだれもがチームの勝利を確信する。そのテーマ曲でマウンドに上がった大塚は、見事な火消しを果たし、9回には最後の打者を空振りの三振に切ってとって「世界一」に大きく貢献した。
実は決勝戦を控えて大塚はホフマンに彼のテーマ曲「Hells Bells」を使わせて欲しいと電話したのだという。「もちろんOKだ。どんどん使ってくれ。そしてそれでAKI TIMEにしてくれ」。このホフマンからの返事に大塚は感動し、多いに勇気づけられた。大塚から連絡を受けたホフマンは、WBCの決勝戦当日パドレスの音響担当に「自分の曲をAKIのために使ってくれ」と自ら電話を入れている。
そして自分のテーマ曲に乗って登場し、見事な投球を披露した大塚にホフマンは「(Hells Bellsで登場して)最高の気分だっただろ? それにしてもよく頑張ったな」と自分のことのように喜んだ。後日、大塚は「あの曲に力をもらった」と語り、レンジャーズ移籍した今年から、それを自分のテーマ曲にする許しも二つ返事でもらったと嬉しそうに語っていた。こんなやりとりからも2人の強い信頼関係と友情が見えてくる。
レンジャーズの本拠地でも大塚はすでに2度「Hells Bells」で登場している。ただし最初に3度鳴る鐘の音がセットアッパーが登場する間合いの関係で、今は1度に編集されている。「だから、僕のは小ヘルズベルズ」とジョークを飛ばす。世界一のクローザーから贈られた曲に力づけられた大塚は「いつかはあの鐘が3回鳴らせるようになりたい」(究極の目的であるクローザーを目指す意味)と目を輝かせていた。
April 21, 2006 02:02 PM
