2005年11月02日
第103幕 世界一の捕手が恐れるもの
ホワイトソックスの強さばかりが目立ち、あっけなく終わってしまった感のあるポストシーズンゲーム。ワールド・チャンピオンに輝いたホワイトソックスのがい旋パレードを締めに今年のメジャーリーグのシーズンも終わりを告げた。世界一になったホワイトソックスは、これまでの大味な野球から、小技や頭脳プレーも交えた、いわゆる「スモールボール」への移行が結果的に大成功へとつながった。
世界一のトロフィーを手にエイバちゃんを見つめるピアジンスキー
その成功の一翼を担ったのが、捕手のAJ・ピアジンスキーだった。チャンスに強いバッティングはツインズ時代から定評があったが、ポストシーズンゲームでは見事にその真骨頂を発揮した。そればかりか、ア・リーグ優勝決定シリーズ第2戦のエンゼルス戦では「空振り三振」でチェンジになるところを、瞬時の判断で振り逃げ出塁。その直後にジョー・クリーディーの二塁打が出て、これがサヨナラ勝ちにつながった。
このプレーについては審判の誤審ではないかと紛糾したが、判定が覆るわけもなく、相手の虚をついたピアジンスキーのプレーが、勝利を呼びこんだ。前日の第1戦で先手を許していただけに、万が一、この試合で負けるようなことになれば、そのままズルズル行きかねないところだった。ESPNのジョニー・ミラーが「野球はえてしてこういうプレーがキーになる」と言っていたが、今にして思えば、あの「振り逃げ」こそが、世界一につながる道を開いたのではないだろうか。
さて、こうした老かいなプレーを見せるピアジンスキーが、最近恐れているものがある。9月に誕生した長女エイバちゃんの存在だ。捕手としては冷静沈着、どんなことにも揺るがないが、こと子育てとなると「どうも野球のようにうまくいかない」と戸惑いをみせているのだ。特にまわりの人から「お父さんになったんですね」と声をかけられると、「その言葉、怖い」と頭を抱えこんでしまう。そこには父親になった喜びと照れが見え隠れする。
10月26日。世界一になった夜のこと、エイバちゃんを抱くリサ夫人に寄り添うようにピアジンスキーが立っていた。そこへ回ってきたのが優勝トロフィー。思わず「エイバ。これが世界一のトロフィーだよ」と声をかけ、愛娘をのぞき込んだピアジンスキー。この時ばかりは、すっかり父親の顔になっていた。それでも「ワールドシリーズは終わったけど、僕の本当の戦いはこれから始まる」と言って周囲を笑わせていた。オフに入り、子育てに挑戦する新米パパの「本当の戦い」はもう始まっている。
November 2, 2005 03:19 PM
