2007年11月27日
2夜連続の銅像談議:中村泰三
昨年のプレーオフ(現クライマックスシリーズ)第1ステージ、場所は立川だった。
先輩の好意で、故稲尾さんと2夜連続で食事をする機会に恵まれた。対戦成績を1勝1敗に戻した夜だった。初戦の黒星の沈滞ムードを吹き飛ばす快勝。一種の高揚感に包まれた宴でもあった。おのずと稲尾さんのお酒も進んだ。「そう言えばな」。稲尾さんが切り出したのは、今年10月に故郷の別府に完成した新球場の話題だった。
「実はな、稲尾球場に銅像をつくるんだ。その取材に来て欲しいんだよ」。そこからは稲尾さんの銅像談議が始まった。銅像の現代事情、費用、国産、外国産の違いなど。なかなか耳にしない銅像話に「へえ~」と感心するばかりだった。
その次の日。店も前夜と同じ。第2ステージ進出、札幌行きが決まった。前夜以上に急ピッチで焼酎が消えた。「そう言えばな」。稲尾さんが切り出した。「実はな、稲尾球場に銅像をつくるんだ。その取材に来て欲しいんだよ」。一瞬、あっけにとられたが、稲尾さんはまたも銅像談議を始めた。銅像の現代事情、費用、国産、外国産の違いなど。だれも神様、仏様、稲生様に「昨日、聞きました」とは言えない。酔っていたかもしれないが、それほど地元の新球場誕生がうれしかったのだろう。
2夜とも同じオチで銅像談議は終わった。銅像は生前には屋外に出せない、と稲尾さんは言われた。「そのときは日刊スポーツの全員で銅像を外に引っ張り出しますよ」。そう言うと稲尾さんは「バカヤロー」と2日連続で笑い飛ばした。目を細めたその笑顔は、だれにも愛された、稲尾さん独特の表情だった。投球フォームをデザインした銅像は、まだまだ、屋内に飾っておいてほしかった。合掌。
November 27, 2007 08:45 PM 投稿者:中村泰三
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