2007年08月31日

北京で活躍

~阪神タイガース・大和内野手~

 プレオリンピック決勝戦。相手は中国。先手を取られた。試合の主導権を奪われかけた2回。1点差に追い上げ、なおも走者2人を置いて左中間へ決勝点となる逆転の三塁打。ゲームの流れを日本に引き寄せ、星野ジャパンを優勝に導いた。北京で行われた4カ国対抗戦。大舞台で己の存在を大いにアピールしたのは、阪神前田大和(登録名は大和)内野手(19)である。一歩一歩、着実に力をつけてきた。元々、守備には定評がある。今年のフレッシュ・オールスター(松山・坊っちゃんスタジアム)では、中継プレーで強肩を披露。オールウエスタンのピンチを救ったプレーは記憶に新しい。課題はバッティングだが、北京では初戦のチェコ戦でも延長11回、サヨナラヒットを放っている。いい経験を積んだ大会だった。

 まもなく2年が過ぎようとしている。昨年から始めたこのコーナーで、同じ選手を2度掲載するのは初めてのケースだが、それだけ注目度の高い選手。今年から連盟への登録名を「大和」に変更した。「監督さん(平田2軍監督)から同じ名字の選手がいる。大和にしてみてはどうか、というアドバイスをいただきまして、自分でも納得して変更しました」のが理由。名前と野球とは全く関係ないが、成長過程が非常に楽しみな素材。どうしても気になる選手の1人だ。

 同じショートで、4年連続してゴールデングラブ賞に輝いた平田監督に現状を聞いてみた。「1軍レベルから見ると、守りもバッティングもまだまだですね。特にバッティング。力強さに欠けるし、もろさもある。いい2番バッターになる素質を持っていますが、まあこれからです。守備面も高校出の2年目の選手としては申し分ないです。1軍から声がかかれば推薦するだけの力はつけてきていますが、即スタメンというわけにはいかないでしょう」。ハイレベルの選手を見てきた。自分が経験してきたポジションである。見る目は厳しい。

 「まだ自分でも1軍レベルに達しているとは思っていません。攻守走とも勉強することばかりですが、守りだけは誰にも負けたくないし、わずかですが、自信らしきものを持てるようになりました。北京でのプレオリンピックはいい経験をさせてもらいました。今、僕には練習しかありません。頑張るだけです」。

 鹿児島出身の九州男児だが、いかつい雰囲気は全くない。身長が176センチ、体重は64キロとスマートなやさ男。本人「太りたい」の願望はあるが、なかなか大きくなれない。一見ひ弱に見えるが体は元々強い。動きはシャープ。練習に手抜きはない。目いっぱい鍛えている。試合後でも即解放されることはない。バッティング、守備、ランニング、ウエート。厳しい練習が待ち受けている。連日の事だが、故障はない。性格は物怖じしない。大和のいいところだ。

 帰国後、8月26日高知県の安芸市営球場(キャンプ地)で行われた広島戦。4打数3安打を放った。楽しみな素材。ポジションからして求められるのは、正しい基本の習得だ。基本をきっちり身につけないと応用力、対応力に欠ける。1軍昇格のポイントは、1日も早く当たり前のことを当たり前にできる選手になることだ。

August 31, 2007 11:10 AM

2007年08月24日

今季トレーニングコーチに専任

~阪神・伊藤敦規コーチ~

 今年の阪神、ファームがひと味違う。若手成長株筆頭の林と、シーズン当初の巨人戦で大ブレークした狩野は、開幕から1軍にいた選手だが、2軍から昇格した若手も、数試合は必ず勝利に貢献している。その先頭に立つのが桜井。守りではまだ、目をつぶりたくなる場面はあるが、バッティングは素晴らしい。いまだ3割をキープ。外野の一角を確保しそうな勢いだ。野手では、現在再びファームで活躍している庄田、坂もプロ入り初ホーマーを放ってデビュー。投手では、上園が先発投手として5勝をマーク。渡辺は中継ぎで存在をアピール。その他、岩田、若竹、玉置といったところが1軍昇格して片鱗を見せた。極め付けは能見の成長である。その秘密、ランニングの効用に注目してみた。

 1軍に登録される直前、能見の言っていた言葉を思い出した。「今年は、ファームにいる間、本当によく走りました。ランニングでかなり自分を追い込むことができました」である。昇格後、すでに先発で2勝。18日の広島戦では、プロ入り初の完封勝利を飾った。先発した投球回数、15イニング無四球の安定感は、ランニングで下半身を鍛えた成果に違いない。今年の鳴尾浜球場、観客席として使用していない外野席の、センターからライトまでのスタンドに、アンツーカーを引いて走路を設けた。ネットを張って打球は飛び込んでこない。安心してランニングができる場所。この施設の設置でチームの方針は一目瞭然。野球の基本というか、スポーツの基本であるランニング重視。足腰は強くなる、体力はつくの一石二鳥。今季からトレーニングコーチ専任になった伊藤敦規コーチ(44)に、練習内容などについて聞いてみた。

 「昨年とは練習内容がだいぶ変わりましたね。個人的な技術指導プラス、ランニングといいますか、走る量がかなり増えました。当然最後はウエートをやりますが、トレーニングルームにきた時の選手はランニングの後ですし、ちょっとヘバり気味で入ってきますよ。僕もまだ修業の身ですので、オーバーワークにならないよう試行錯誤の状態ですが、トレーナーの協力があって、なんとかやっています。野球にランニングは欠かせません。やっぱり体力がないと何もできませんし、夏場も乗り切れませんから」

 選手生活15年。阪急、オリックス、横浜を経て、タイガースにはテストで入団した苦労人。中継ぎ投手として連日マウンドへ。タイガース在籍6年間で312試合に登板したタフな男。現役時代からヒジを痛めた時などに、関西メディカル学園に通って、人間の体について学んだ勉強家。プロ野球を体験しているだけに、何をすべきかわかっている。毎日、自分で練習メニューを作成して指導にあたる。そういえば、我々の現役時代、体を鍛える手段はランニング。あの400勝投手金田正一氏をはじめ、米田哲也氏、小山正明氏、鈴木啓示氏などの300勝投手も走り込むことがすべてだった。

 今年の阪神、練習を見ていると、スタンドの走路、外野のフェンス沿いで、選手の走っている姿をよく見る。試合後のランニングなどは、平田監督も目を光らせている。チームの転換期まであまり時間がないのが現状。林、桜井に続く選手を、能見、上園、渡辺などに続く投手を育てなければならない。「ランニングをする事には、抵抗はなくなったというか、かなり浸透してきましたね」(伊藤コーチ)。野球の原点はランニングだといってもいいだろう。走って、走って、走りまくれ。ファームである。一度原点に立って野球を見つめ直すのも、いい勉強になるはずだ。

August 24, 2007 12:13 PM

2007年08月17日

先発かリリーフか

~オリックス・小松聖投手~

 福島県出身。勿来工から国土館大学へ。頭角を現したのは、JR九州入りしてからのノンプロ時代。05年の都市対抗では、優秀選手賞を受賞した。小松聖投手(25)。今年オリックスに希望枠で入団した新人。オールスター前に一度1軍に昇格した。結果は1試合に登板しただけで再びファームへ。ウエスタン・リーグでのシーズン当初は先発起用だったが、現在はリリーフでマウンドに上がることが多い。何事も体験だ。希望枠イコール“即戦力”期待が大きいだけに、今後のピッチングが注目される。

 プロ入りしてからは、初めての体験をした。7月31日からの阪神戦、8月1日、同2日と3連投をやってのけた。いずれも無得点。走者を出すケースはあったが、無難に切り抜けた。中継ぎ。あるいはストッパーとしてのテスト登板か。清原ピッチングコーチに聞いてみた。「初めは先発させていましたが、いろいろ経験した方がいいと思いまして、今はリリーフにまわっています。特に1軍へ上がった場合、まずはリリーフからですから、こういう経験も必要ですね。3連投ですか…。3日目が一番いい球を投げていたと思いますよ」まんざらでもなさそうだ。小松本人の気持ちは「リリーフをするようになって、なぜか、気持ちの切り替えがスッとできるようになりました。今まで体験したことのない精神状態になれるというか、これも勉強です」研究心は旺盛だ。この前向きなところがいい。

 見ていて、ストレートも切れはいい。変化球も多彩だ。何よりも目を見張るのは腕の振り。よく振れてピッチングは小気味良い。清原コーチ。「入団してきた時から、まあまあ腕は振れる方でしたが、4月の中頃でしたかねぇ。しばらくゲームから遠ざけて、ミニキャンプを張ったんですよ。そこでよく走り込んだりして、今のようにより強く腕が振れるようになりました。初めは、ストライクをそろえ過ぎて連打されたりしていましたから、今注意しているのはボール球でも打者は抑えられるんだ、ということです」かなり力をつけてきたのだろう。高いレベルの指導をしている。

 あと一歩のところまで成長しているが、この一歩をクリアする過程が厳しい。野球は好きであれ。好きであり続ければ何事にも耐えられる。「オールスター前に一度1軍に上げてもらいました。1試合だけの登板でしたが、いい経験をしました。マウンドに上がった回の満塁の場面ではヒットを打たれましたが、次のイニングは3人で抑えることができました。自信になりました」小松の話である。競争社会に飛び込んだ。実力の世界は承知のうえだ。基本を重視せよ。正しいフォームを体で覚えることだ。

 「1軍でも通用すると思いますよ」清原コーチは期待している。今、ウエスタン・リーグで勝ち星はないが、3セーブを挙げている。リリーフか先発か。結論を出すまでには少々時間はかかる。小松自身も「もちろん、先発したい気持ちはありますが、ノンプロ時代、完投したあくる日、リリーフしたりしていますので、連投は全く気になりません。相手に得点を与えることのできない、緊張感の中で投げるリリーフもいいですね」と結論を出せない状態だが、この世界、誰も助けてくれない。頼れるのは自分だけ。克己を持て。心、技、体。いずれが欠けても1軍定着はできない。

August 17, 2007 11:01 AM

2007年08月10日

1軍定着へ

~阪神・能見篤史投手~

 この時期、ファームにいてはいけない投手だ。このコーナーに登場する人物ではない。1軍に定着しているべき選手である。阪神タイガース・能見篤史投手(28)。大阪ガスから希望枠で入団して今年で3年目。いまだ1、2軍をいったりきたり。特に井川が抜けた今季。左投手である。いくらかでも穴埋めに貢献してほしい。本来なら、ローテーションの一角を担っていてもおかしくない存在。フォームを崩していた。復活に向けて懸命に練習した。走った。投げた。炎天下、黙々と鍛え直した。7月31日のサーパス(オリックス)戦。8イニング投げて被安打4。9三振を奪って無失点。道のりは長かった。フォーム修正を証明するピッチングを披露。8月7日、1軍からお呼びがかかった。

 8月5日。この日はゲーム無し。真夏、容赦ない厳しい日差しが突き刺さる。鳴尾浜球場に出向いた。練習日である。3年間、同じ事の繰り返し。なかなか一本立ちできない能見についての取材でブルペンに向かった。葛西、星野両ピッチングコーチがいた。2人の前で能見の話を持ち出すと、期せずして2人同時に「もう、大丈夫ですよ」の答えが返ってきた。この一言で復調の確信を得た。入団した年から同投手と見続けてきた葛西コーチに、これまでの過程、復活のポイントを聞いてみた。

 「いままで腕と体がバラバラになっていた。だから、ボールが指に引っかかり過ぎたり、逆にスッポ抜けたりして、コントロールにかなりのバラツキがあった。どちらかというと能見の場合、ワイドアップ後、右足を上げるところから投げるまでが非常に早かった。それを、少しゆっくりさせてみたら、バッターに向かっていく時、体がホームベースに真っ直ぐ出ていくようになった。腕と体も一体となったし、やっとバランスもよくなり、リリースポイントが安定してきた。もう大丈夫だと思いますが、あとは、1軍で投げる時、本人がどんな精神状態で投げるか。それと、フォームを直したことをどれだけ重要視しているかですね」

 ピッチングフォームで一番大事なことは、バランス。今年で3年目。自分が歩んできた道を、じっくり振り返ってみた。同じ事を繰り返してきた己を厳しく見つめる。「昨年までと一緒ではダメ」の結論をだした。炎天下、例年になく走り込んだ。フォーム修正に真剣に取り組んだ。「毎年そうなんですが、今年も夏場はファームなんです。かといって、夏場に弱いとう意識はありませんが。今回の2軍生活はかなり走り込みました。自分を追い込んできました」と能見は話す。フォームづくりは完了した。結果はどう出るか。まずは自信を持つことだ。投手というもの。マイナス思考になってはいけない。

 相手打者に意識させる何かを身につける。絶対的な球種を持つこと。1軍定着への必要条件だ。「今年、ファームで取り組んできたのは、体力、技術のレベルアップは当然のことですが、ツーシームと外からのスライダーです。特にスライダーはこれまで内角一本でしたから、外から投げることによって、ピッチングに幅ができると思います。外角へは逃げていく(右打者)チェンジがありますので、相手打者がいろいろ考えてくれるようになるでしょう。迷ってくれたらありがたいですね」ウエスタン・リーグ。7試合に登板して6勝負け無し。ぶち当たった試練、自分に討ち勝つチャンスだと思え。今は野球に集中するしかない。もっと苦しめ。もっと、もっと練習せよ。

August 10, 2007 02:00 PM

2007年08月03日

1軍定着のカギは…

~オリックス・迎祐一郎外野手~

 40試合に出場。155打数、54安打、打率・348。本塁打9。打点32。盗塁6。7月30日現在、ウエスタン・リーグの成績である。この時点でのリーディングヒッター。申し分ない成績は、オリックスの迎祐一郎外野手(25)。佐賀県は伊万里商出身。今シーズン8年目を迎える中堅選手。といっても25歳。まだまだ若い。阪神の編成部・調査担当の山川氏は『ファームにいるのがおかしい選手』だという。確かに結果を見ても、長打力はあるし、足も結構速い。1軍に定着可能な素材だが…。

 ファームでは好成績が残せる選手だ。過去、何度もチャンスはもらっている。入団して3年目。7月8日のロッテ戦に初出場してからは、5年間で102試合に出場。打率・205で6ホーマー。どうしても、自分の持っている力を100パーセント発揮することができない。何が足りないのか。住友監督に聞いてみた。「今年も一度昇格したんですが、すぐ帰ってきてしまった。我々の希望としては、1軍で通用する力は持っていると思いますし、もう少し我慢して使ってもらえたらと思うんですが…」。実力ありと見ている。

 鳴尾浜球場。7月31日、8月1日の阪神戦はノーヒットに終わった。本人の話である。「どちらかというと、考え込んでしまう方なんですよ。いくら考えても、いい結果につながらないのはわかっていても、ああでもない。こうでもない。と、つまらない事が頭に浮かんできてしまう」。今年も同じ事を繰り返したことで、いま、調子を落としている。フォームは崩れている。タイミングは合わない。迎が言う“悩み”がバッティングにあらわれている。最悪の状態になっているようだが、これだけは言っておきたい。失敗はだれにでもある事。失敗は選手を育てるとも言う。それには原因を追究し、解決しておく事。失敗も成功も根拠を求めておけば必ずや成長に結びつく。

 怖いのは“ファームズレ”だ。2軍で、それなりの成績を残すことで満足してしまう事。自分では前を向いて進んでいるつもりでも『どうしても』とか『何が何でも』といった、気持ちの上での張りが無くなってくる。いつの間にか“欲”が無くなっている。「もう8年目です。確かにそれが怖いんですが、性格は真面目ですし、よく練習をする選手ですので、大丈夫だと思っています。ちょっと人のいいところがありますので、もっと人を押しのけてでも前へ進んでいくぐらいになってほしい。長打力はある。足は速い。守備範囲も広いですから」とは住友監督。大きな期待を寄せている。

 迎も自分をしっかり見つめている。さすが真面目人間。「ここ数年、毎年同じ事を繰り返していますから、なんとか抜け出したいです。まずは、ファームで結果を出しておかない事には、お呼びがかかりませんからね。それと、やはり原点にかえるというか、体力面でも技術面でも、もっとレベルアップして、長いスパンでコンスタントに力が出せるよう、体で覚えることです」。その通りである。もっと、もっと練習せよ。自分との闘いに勝て。ハングリー精神を持って挑め。頑張るしかない。ひとつのきっかけさえつかめば、大ブレークする力を持ち備えた選手ではないか。

August 3, 2007 11:30 AM