2007年07月27日
ファームでいい経験
~阪神・小嶋達也投手~
「お前ら、情けないぞ。何やこの試合は…。6時まで走っとけ!」。阪神・平田2軍監督が激怒した。7月16日、鳴尾浜球場。プロ、アマ交流戦。対日本生命との試合後だった。結果は逆転負け。不甲斐ない投手陣に堪忍袋の緒が切れた。午後3時半頃、連帯責任である。投手全員でランニング。レフトのポールから、ライトのポールへの往復。たっぷり1時間半。休みは無い。選手はもうクタクタ。これで終わらない。今度はアメリカン・ノック。右に左にノックの打球を追いかけるから結構しんどい。この試合、1イニング、3人でピシャリと抑えた好投の小嶋もその中にいた。
いま小嶋は、ファームで非常にいい体験をしている。連帯責任での罰ゲーム「これがプロなんでしょう。厳しいですね。しんどかったです。いま、足がパンパンに張っています」。あくる日、笑顔で話してくれた。今どき、ほとんど目にすることがなくなった光景だが、選手は、こうした苦しみを乗り越えて大きくなっていくもの。特にランニング。やりすぎはないという。スポーツ選手にこれだけプラスになる練習はない。確かに、単純な事の繰り返しである。変化はない。一番イヤな練習ではあるが、足腰は強くなる。スタミナはつく。そして、限界を越えた鍛錬によって、精神面も強くなる。大きくなろうとしている。自分の力で這い上がるためのいい体験をしている。
星野ピッチングコーチからも、的確なアドバイスをもらった。「力み過ぎていましたね。彼の場合、力で押していくタイプではありません。球の切れで勝負する投手です。ある時、現実にその兆候が出たんですよ。力まず、力を抜いて投げる130キロ台の球速の時の方が打たれない。逆に140キロ台のスピードが出た時にやられる。非常にわかりやすい結果が出ましたので、じっくり説明することができました。彼はいま、いい勉強していると思います。調子はかなり良くなってきました」である。完全に己を見直すことができたはずだ。
5月の初め、登録を抹消された。ルーキーである。調整というような、生やさしいものではない。いちから出直すことが要求される。軌道修正が始まった。球威を取り戻そうと、力一杯投げてみる。思うようにいかない。つい力む。力めば、力むほど生きた球が投げられない。フォームは崩れる。すべてが悪循環に。こんな調子では、ファームでもいいピッチングはできない。7月23日現在、6試合に登板。1勝3敗。防御率は5・08。「不調の原因はわかりました。上半身と下半身のバランスが完全に崩れていました。おそらく、初めのうちは、怖いもの知らずで投げていたのが、いい結果になっていただけだと思います。今はいろいろ考えて投げることができるようになりました。調子は、だいぶ良くなってきました」。フレッシュオールスター。オールイースタンの中心打者坂本、下園、角中を完璧に抑えた。心、技、体。共に成長している。自分を見つめ直したピッチングを披露した。
小嶋達也(21)。大阪ガスから希望枠で入団したルーキー。開幕当初はローテーションの一角を担っていた。今シーズン、1軍で2勝している。東京ドームの巨人戦では、敗れはしたものの高橋尚成と堂々と投げ合った。ストレート、変化球とも球の切れは抜群だった。順調そのもの。即戦力間違いなし。首脳陣は井川の穴を少しでも埋めてくれる事を期待した。プロの世界、甘くはなかった。2軍落ち。大いに苦しんだ。今度昇格した時の小嶋が楽しみだ。
July 27, 2007 12:10 PM
2007年07月19日
3拍子揃った好素材
~ソフトバンク・福田秀平内野手~
プロ入りして、父親に義足を購入した“孝行息子”。福岡・ソフトバンクに入団した福田秀平内野手(18)。動きはキビキビしている。ハツラツとしたプレーには若さがある。見ていて気持ちいい。好感が持てる。さすが、今年の高校生ドラフト1位選手。多摩大聖ヶ岡出身。試合でのプレーには、己をアピールしようとする前向きな姿勢がうかがえる。180センチ、72キロ、バランスのとれた体形。50メートル走は6秒00、ベース1周14秒00と足は速い。目指すは“ムネリン”こと、チームの先輩、川崎宗則選手だ。
ユニホームの着熟(こな)しも、ムネリンスタイル。ズボンの裾はヒザのわずか下。ストッキングを大きく見せる昔風。『まだ実力は到底及びません。失礼だと思いますが、目標はやっぱりムネさん(川崎)なんですよ。だから、少しでも早く近づき、同じレベルとはいかないまでも、同じグラウンド内でプレーしたいんです』。夢はデッカイ方がいい。スタープレーヤーに追い付き、追い越すためには、成功するという結果より、努力する課程を重視することだ。人一倍の練習が要求される。厳しい練習に耐えるしかない。
『これまで何人もの高校生の新人を見てきましたが、福田の場合、順調にきていますね。ゲームにはまだあまり出ていませんが、こうしてウエスタンにしても、チームに帯同しているのは、順調な証拠なんです』と見ているのは、山村バッティングコーチ。さらに、こう付け加えた。『いいセンスしていますよ。足も速いし。足の速い子は足腰が強いから、動きが機敏ですね。スイッチヒッターというのも首脳陣にアピールしていく武器になります。現状は、やや左の方がいい感じで打っていますが、まだまだこれからの選手ですから』。じっくり鍛えていく方針だ。
高校通算38ホーマーを放っている。走、攻、守3拍子揃った素材の持ち主。私の目の前で、左打席ではバント安打。右打席では甲子園球場の左中間最深部へ。あわやホームランかと思わせる大飛球を放った。阪神、赤松の好捕で記録的にはただの中飛に終わってしまったが、甲子園以外の球場であれば間違いなく、スタンドインしている。『入ったかと思いましたが、甲子園は広いですね。ちょっと逆風でもありましたが…』。打球の飛んだ方向に目をやり悔やんでいたが、ウエスタンでの、プロ入り1号ホーマーが現実となる日は近い。
ゲーム終了後、山村コーチ、鳥越内野守備走塁コーチに、いろいろアドバイスを受けていた。吸収することは多い。何事も勉強だ。『僕の場合、現時点では、順調だとかいう以前の問題だと思っています。技術、体力、スピード、すべてに力不足です。とにかく練習あるのみです。阪神の野原とか、中日の堂上なんかは、何試合も続けてスタメン出場していますが、僕はまだそこまでいっていませんから』。同じ高校生ドラフト1位選手の動向は気になるようだが、焦りは禁物だ。夢を追い続ける勇気を持って野球に取り組め。苦しみの向こうには夢がある。
July 19, 2007 03:34 PM
2007年07月13日
苦労人
~ソフトバンク・西山道隆投手~
プロ野球選手に-。夢を追い求めて必死に野球に取り組んだ。愛媛の名門、松山商から城西大へ。ドラフトにかからない。卒業後は昭和コンクリートを経て、カナダ独立リーグへと進む。執念をむき出しにしたプロ野球への挑戦。四国アイランド・リーグが発足するや、即、地元の愛媛マンダリンパイレーツ入り。思い切りのいいピッチングは、やっとスカウトの目にとまった。西山道隆投手(27)。昨年から制度化された育成枠だったが、福岡・ソフトバンクホークスに入団。今季2年目を迎えている。
力を持ち備えているのは、早々と認められた。入団した年の5月には支配下選手として登録。即、1軍の試合に先発した。結果は2試合に登板して、3回3分の1イニングを投げて自責点4。勝ち負けはつかなかったが、防御率は10・80.厳しいプロの洗礼を受けた。「力の違いを痛感した」。経験は、西山にとっていい勉強になった。今シーズンは二軍スタート。キャンプから十分走り込んだ。集中力を持って投げ込んだ。球に力がついた。変化球の切れもよくなった。ウエスタン・リーグの成績は、7試合に登板して3勝2敗。6月頃から調子は上向き。
練習熱心だという。苦労人だ。精神的にもしっかりしている。「確かに、プロ野球選手としてプレーできる夢はかないましたが、これで満足したら終わりだと思います。これからが勝負です。1軍で活躍できるようになって、初めてプロ野球選手だと思っていますから」。西山の話である。浮いた気持ちは全くない。6日の甲子園球場、7イニングスを3失点。3勝目を挙げた。「力んでしまいました。自分でもわかっているんですが、回りが見えなくなる悪いクセがあるんです」。よく聞いてみた。その力みには訳があった。
藤田ピッチングコーチだ。「実は、雨が降らなかったら、7月4日の楽天戦で先発する予定だったんですよ。それが雨で中止になり、登録まで抹消されてしまった。だから、今日(6日)は、なにがなんでもいいピッチングをしてやろうという気持ちが、力みになったんだと思います。でもね。この試合で、悪いなりのピッチングができる証明になったわけですから。いい方に考えないと。冷静に自分の投球ができれば、もっと幅がありますし、1軍でも通用すると思います。今、ファームで1軍に推薦する1番手は西山です」。西山の精神状態を教えてくれたが、成長は認めている。
1軍昇格の日は近い。「技術的には、外角低目ストレートのコントロールですね。カウントは稼げるし、勝負球にもなりますから、なんとしてもマスターしたい。昨年はチャンスをもらいながらいい結果が出せませんでした。今年は絶対ものにしたい」。本当、真面目だ。帽子を取ったまま、ハキハキと答えてくれた。甲子園球場での取材。最後に話してくれたのは高校時代の思い出。「一度も試合には出ていないんですが、2年生の時、ベンチにいて優勝を経験させてもらったんですよ。甲子園はいい思い出がありますし、今日(6日)初めて憧れのマウンドを踏ませてもらいました。感激しました」。高校生のようなさわやかな表情。純粋に野球の好きな青年だ。1軍のマウンドへあがる日が楽しみだ。
July 13, 2007 12:15 PM
2007年07月06日
将来のクリーン・アップ候補
~広島東洋カープ・吉田圭選手~
4番・ファースト・吉田-。ウエスタン・リーグ、今シーズン広島東洋カープのポイントゲッター。「地位は人を育てる」という。確かに、器いっぱいの頑張りを繰り返せば、その器はさらに大きくなる。吉田圭選手(22)。東京は帝京の出身。高校時代、甲子園大会の経験者。186センチ、88キロ。左投げ、左打ち。主砲の新井、栗原両先輩に引けを取らない体の持ち主。チームが何を期待しているか、ひと目でわかる。将来のクリーン・アップ候補。今年は松山・坊ちゃんスタジアムで開催の、フレッシュ・オールスターゲームに出場する。
今季が5年目。同オールスター出場期限最後の年の出場。「自分では、いま納得のいく成績を残しているわけではありませんし、どちらかといえば、出場させてもらったいう感じですね」。笑いながらではあったが、かなり控え目な言葉が返ってきた。コツコツと地道に練習を積み重ねてきた選手である。1歩1歩着実に前進。現在の力を蓄えての出場だ。「1発を」持ち味を発揮したい意欲があって当然。また、桧舞台でのホームランは、首脳陣へのアピールになる。
山崎2軍監督に聞いてみた。「大きく育ってほしいという願望ですね。彼の場合、打球を遠くへ飛ばすのが持ち味ですが、パワーというより、球をとらえるポイントを持っているんですよ。まだ体の切れは鈍いし、体も同時に鍛えていきたい。良く打つから4番を打っているわけではありませんから」。ジョークを交えながら話してくれたが、厳しい言葉は期待の裏返しだ。この世界、自分のポイントをつかむのに、四苦八苦している選手が多い中、ポイントを持っているのは強みだ。当然、相手投手はタイミングを狂わすための、いろいろな工夫をしてくる。バッテリーと打者の駆け引き。野球の見せ場のひとつだが、直曲球、いかなる投球にも対処していくためには、しっかりした足腰と体の切れが要求される。吉田の踏ん張りどころだ。死に物狂いで頑張るしかない。
初打席で初安打を放っている。すでに一軍デビューは果たした。昨年の8月終盤に登録。成績は16試合に出場。24打数3安打で打率・125。ホームラン0、打点2、三振9。いい結果は残せなかった。プロの洗礼を受けたが、力不足だけでファームでの再調整とは思えない。開幕から4番バッター。訳ありは見え見えだ。おそらく、出番の少ない一軍にいるよりも、数多く試合に出て、1打席でも多く打席に立ち、実戦でいろいろな体験ができるファームの方が、本人にとってプラスになる。という判断をしたからに違いない。
プロ入り初安打。「うれしかったのは確かですが、よく覚えていません。手の平の感触なども全く残っていないですね。それより、今は練習です。バッティング技術は当然のことですが、体力もしっかり鍛えていきたい。いま、4番を打たせてもらっていますが、それに対するプレッシャーはありません」。初安打の感触にひたっている場合ではない。甲子園球場での阪神戦、2試合ノーヒットに終った。ゲーム後、グラウンドで黙々とバットスイングを繰り返す。表情は厳しい。持ち味は長打。7ホーマーは7月2日現在、ウエスタン・リーグのホームランダービー2位。吉田よ。この世界で生き残るためには、自分との戦いに勝つことだ。妥協するな。克己を持て。
July 6, 2007 02:50 PM