2006年03月10日
指導者の矛盾する使命
~コーチ編~
ファーム指導者の心得には<1>全選手を平等に扱うこと<2>愛情を持って指導にあたる(ユニホームを着ている時は厳しく、プライベートでは親身に)<3>犠牲的精神を持つこと<4>基本プレーの反復は何度も何度も繰り返す。「言わなくても分かるやろ」とか「このぐらいのことはできるやろ」の考えは捨てること<5>選手は野球で感動を与えることで成長する<6>勝負は二の次-などがある。
若手の成長に重点を置いたマニュアルだが、現実はもっと複雑で矛盾のある世界だ。前回の「選手編」で本音と建前に触れた。「平等」は建前で、本音は「1年に1人を一軍へ」だ。だが指導者はこれを絶対に見破られてはならない。選手がだれもついてこなくなる。中間管理職の辛いところだが、複雑なファーム首脳陣の立場が分かる。
育成と調整の狭間にも立つ。ファームとはいえ、チームで最優先するのは一軍のペナントレース。ファームには一軍の予備軍が何人かいる。常にゲーム勘を養い、体調を整え、いつお呼びがかかっても即、出動できるように調整する。一軍予備軍と育成する若手の指導が同時進行している難しさがあるのだ。シーズン中調子を崩して二軍に落ちてきた選手の再調整もファームの仕事だ。立場の違う選手をいっしょに指導するのは、精神的にも体力的にもかなりの負担がかかる。
それでいて、二軍というだけで軽く見られがち。一軍とは勝ち負けのプレッシャーが違うということだろうが、どうしてどうして。ファーム指導心得の<5>にある感動による成長といっても、勝たないことには感動はない。「それなら<6>の勝負は二の次とはなんだ」となる。これはあくまで特定のゲームについての心得だ。将来有望な若手投手に1試合任せる時や、若手を4番に起用して少々打てなくても最後まで使いつづける時のほかは、やはり勝ちにこだわる。勝つことで感動を味わい、勝負師の一番大きな財産である「自信」につなげる。
こんな難しい状況の中で、1人でも多くの選手を一軍に送り出すことが要求されるのが、ファームの指導者だ。ファームを担当するのは「2度目」という島野育夫2軍監督に安芸キャンプで会った。一軍に勝るとも劣らないプレッシャーがかかっている。
March 10, 2006 11:32 AM
