2007年10月23日
報道陣の救世主!それは…:村上秀明
チームの救世主でもあり、時には、報道陣の救世主にもなってくれる。すっかりチームの顔となった稲葉篤紀外野手だ。移籍3年目だが、グラウンドでは技術的なリーダーでもあり、精神的な柱でもある。今季は首位打者も獲得した頼もしい存在だが、報道陣にとっても、かなりの“いい人”だ。
実は最近も救われたばかり。日本シリーズに向けた練習が21日から始まったが、紅白戦ならともかく、練習内容そのものがスポーツ紙の記事になることは少ない。練習内容よりも発言だったり、企画だったりが記事になるケースが多いと言える。発言にしても、記者が予想したようなコメントをしてくれるとは限らないが、稲葉さん(感謝の意を込めて敬称)の場合は例外だと思う。
22日、言い方は悪いが全体練習は淡々と普通に終わった。そこで記者は、昨年の日本シリーズでMVPを獲得した稲葉さんだけに、2年連続MVPに意欲、という原稿は書けないものかと考えた。ただ、稲葉さん本人に否定されればあっさりボツ。いろいろな現場で、そんな玉砕するケースは数多くあったし、うまくいかない方が多いものだ。
だが、稲葉さんは期待に応えてくれた。
記者「もし日本シリーズ2年連続MVPを取ったら、誰以来だと思います?」
稲葉「えっ、知らないけど」
記者「打者では長嶋さん以来です」
稲葉「そんなすごい人と比較されたら困るけどね」
ここまでは普通の対応だが、取材慣れした稲葉さんは、ビビビッと来たように見えた。記者の原稿を見透かしたように、こう付け加えた。「狙って取れるものじゃないけど、取れるか取れないかは今なら50%。ゼロじゃないよね」。前日までは「去年のMVPはたまたま」と言い続けていたが、一転して意欲を語ってくれた。
すぐに、2年連続日本シリーズMVPに意欲という趣旨の原稿を書きますと、正直に告げると、こう返ってきた。「そうだろうね。今日は何も(記事になるような動きが)なかったもんね」。やっぱり一枚上手だった。実は、こんなやりとりは過去に1回や2回ではない。
ある程度の質問なら、記者の意図を察知しながら発言してくれる。自由自在なのはバットコントロールだけではない。コメント上手な稲葉さんに助けられた報道陣は多いはずだ。
October 23, 2007 10:22 AM 投稿者:村上秀明 | トラックバック (3)
2007年10月20日
マイペースな選手たち:高山通史
日本ハムの選手はたくましい。というか、むとんちゃくなのか? それともあえて無関心を貫いているのか。
パ・リーグを球団史上初の連覇。そしてクライマックスシリーズ(CS)第2ステージを3勝2敗で、2年連続の日本シリーズ進出を決めた。セ覇者の巨人がCS第2ステージで中日に敗れたが、日本ハムはレギュラーシーズン中の実力通り、勝ち上がった。
実は周知の通り、雑音たっぷりの中で、すべてを乗り越えた。ヒルマン監督のシーズン中の辞任表明。高田GMのヤクルト監督就任、そして来季は梨田氏が新監督に就任することまで決まってしまった。なぜかストーブリーグまで並行して進行する、オフの雰囲気たっぷりのチーム状態だ。
だがまるで、取材をしていても、気にしているそぶりもない。ピリピリしているのは、担当記者ばかり。選手ロッカー室などで、その「素顔」を知るチーム付きの岸サブマネジャーも「まったくいつもと変わらないですね。普段通りですよ」。球団側も梨田氏関連の取材を自粛するように報道陣へ要請するほどだが、当の本人たちは我関せず。中には「梨田さんって、どんな人なんですか? 」などと逆取材をしてくる強者までいる。
公式戦でもCSでも土壇場に追い込まれてから、強かった。それはなぜか-。緊張感に押しつぶされたようだったロッテ、ソフトバンクとは違い、いつも通りの野球、プレーを個々がしていた。少ないチャンスを生かして挙げた得点を、投手を中心にした守りでしのぐ。1年間、ずっと言葉は悪いが、単調な戦術で乗り切ってきた。援護がない投手陣、思うように点が取れない野手陣。それぞれストレスがたまってもおかしくない、我慢の連続だったはずだが、やり切った。
しかも継続は力なり-で、試合数を経るにつれ、シンプルな戦略が、成熟というか洗練されていった。シーズン序盤はまったく思わなかったが、正直に「強い」と思う試合が増えた。
周り、他球団に流れされることなく、追求してきた今季の勝負スタイル。オフさながらの喧騒の中でもマイペースな選手たちを見ていると、戦力ダウンの今季、なぜ勝てたか、という謎が少しずつ解けそうな気がした。
October 20, 2007 11:05 PM 投稿者:高山通史 | トラックバック (0)
2007年10月15日
今季最悪の出来でも抑えるすごみ:村上秀明
またすごみを見た。パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)第2ステージが13日に開幕し、エースのダルビッシュ有投手が完投勝利をマークした。本人も振り返ったように「今季最悪の出来」だった。それでも5安打2失点と先発の役割は果たし、きっちり勝ちはものにした。
プレーボール直後にいきなり152キロを投げ込み、初回から全力投球に見えたが、110球を超えた8回にも150キロを計時。それでも「打ち損じも多かったし、たまたまいいところに投げられた」。試合後、まるでKO降板した投手のようなコメントもあったが、紛れもない初戦勝利の立役者だった。
悪いなりに133球を投げ切り、完投勝ちできる秘訣(ひけつ)は何か。もちろん、本来持っている球の威力、キレが抜群で、少しくらい悪くても並みの投手以上の力があるのは確かだろう。さらに、ダルビッシュという名前で相手打者に苦手意識があるのかもしれない。13日の試合後、鶴岡捕手が、その“答え”の一部を教えてくれた気がした。
今季、ダルビッシュのほとんどの登板試合でマスクをかぶってきた女房役も、13日の内容は「今年一番悪かった。球も走っていないし、コントロールも自分でできていなかった」と振り返った。その中で「なぜ抑えられたのか」の問いに「球種が多いピッチャーなので1つや2つは使える球が必ずある」と説明した。
その日は1つだけ頼れるものがあったという。打者の手元で微妙に変化する直球系のツーシームだ。ダルビッシュの場合はややシュートする球で、特に右打者が苦手にすることが多い。ツーシーム以外にも直球、カーブ、スライダー、フォーク、カットボール、チェンジアップを使いこなし、シンカー、ナックルも持ち合わせる。今季のダルビッシュといえば剛速球のイメージもあるが、多彩な変化球は本来の持ち味だ。
速球を連発しながら、その時の調子、状態に応じて、変幻自在のキャラを演出できる強みがある。球種だけでなく、あるインタビューでは「4つ5つのフォームがあって、そこからいいものを見つける」と話していた。シーズン200イニング以上投げながら、大崩れすることなく、驚異の防御率1点台をキープできる理由だろう。球速以上に“カメレオン投法”にすごみを感じる右腕だ。
October 15, 2007 03:13 PM 投稿者:村上秀明 | トラックバック (5)
2007年10月12日
「主役」不在のポストシーズン:高山通史
クライマックスシリーズ(CS)第2ステージ(S)が、もうすぐ始まる。パ・リーグを制覇して第2Sで待ち受けることになった日本ハムは、公式戦終了から中9日でようやく本番へ臨む。その間は、練習に紅白戦にオフ。個人的な見方かもしれないが、はっきり言って、練習を見ていると、いい意味でも、悪い意味でも緊張の糸が切れている。正直、気持ちをリセットどころか、また元のテンションに戻すことが難しいようにさえ思える。
これは「アドバンテージ」どころか「ハンディ」じゃないか、とさえ思える。一気に戦闘モードのスイッチがうまく入ればいいが、そうでなければ…。敗因の1つにもなるだろう。米メジャーのように地区シリーズなどで一斉に開幕するポストシーズンとは、ちょっと違う。
だから、優勝しているのは日本ハムなのに、弊紙報道でもそうだが、しばらくはポストシーズンで影が薄い。ロッテ、ソフトバンクの第1Sの方が試合をしているので、当たり前だけれど注目されている。ここのところ、セ・リーグ優勝の巨人も同様に露出が少ない。セとパで計6の偶数チームがCSに出るのだから、うまくやればいいのに、と個人的には思う。
一番、公式戦で強かったチームが、その勢いそのままにCSに登場しないのだから。何か「主役」不在で、ポストシーズンが始まっている。
取材しているこちらも気分が乗らない。それは個人的な、都合の良い言い訳かもしれないが…。
October 12, 2007 10:31 AM 投稿者:高山通史 | トラックバック (1)
2007年10月08日
怪物くんの大物っぷり:村上秀明
あの怪物くんと初対面した。これまではテレビ画面から大物っぷりが伝わってきたが、想像していた以上の驚きだった。
日本ハムが10月3日の高校生ドラフト1巡目で、予定通り大阪桐蔭・中田翔外野手(18)を指名。4球団が競合したが、最後の残りくじで見事に引き当てた。高校通算87本塁打は史上最多。ここまでは入団への支障は何もなく、全国がその行方に注目した大型スラッガーが、北の大地にやってくる。
同5日、日本ハムの高田GMらが球団の代表として、大阪・大東市内にある大阪桐蔭高に指名あいさつに出向いた。その日の取材で中田と初めて接する機会があった。授業の合間に、高田GMらと面談し、取材にもこたえた怪物の表情は、18歳の高校生らしい初々しいものだったが、首から下は規格外だった。
第一印象は「こんな金メダリストを見たことがある」というものだった。真っ先に目がいったのは、太ももだった。制服の上からでも分かるほど、丸太のような太もも回りのサイズは64センチ。スピードスケート長野五輪金メダリスト清水宏保と同サイズだ。清水の太ももを初めて見たときも衝撃的だったが、今回もビックリした。
太ももだけではなく、胸板、腰回りなど、今まであんな高校生は見たことがなかった。かといって、そんなに肥満体形ではなく、身長は183センチあるので、超ガッチリ型と言ったところか。高田GMも「手の厚みがすごかったね」と何度も口にしたが、重厚感のある見た目だけでも超大物に違いなかった。
取材対応もなかなかの大物っぷりだった。もともとの性格もあるだろうが、初対面の記者の質問にも、気さくにこたえる。北海道のイメージを「白い恋人」とこたえたように無邪気で、時にはジョークも交えながら話す。テレビカメラが目の前に何台も並んでいようが、18歳にしてすでに取材慣れした雰囲気だった。
日本ハムの顔写真付き選手名鑑を眺めながら「この人、泣いていた人ですよね」と、中田が指さした顔は2年目の陽内野手だった。05年ドラフトで当時の意中の球団に行けず、涙を流したシーンを覚えていた。それでも、ほとんどの選手を知らない様子で、日本ハムの知識はこれからのようだ。
大物ルーキーがどのようにチームに溶け込み、成績を残すのか。プロの世界はそんなに甘くないが、あの体を見ると、期待を抱かずにはいられない。
October 8, 2007 02:01 PM 投稿者:村上秀明 | トラックバック (0)
2007年10月04日
ドラフトの表も裏にもドラマがある:高山通史
1年間の成果が、たった1日で決まる。しかも抽選など、運にも左右される酷な世界だ。10月3日。都内のホテルで行われた高校生ドラフトの取材へ行ってきた。夏場の日焼けの跡がまだ残る、色黒の大男たちが勢ぞろいしていた。各球団のスカウトたち。ほとんどが元プロ野球選手。現役時代に見たことがある顔ぶれがスーツを着込み、集結する。この日のために1年間、駆け回ってきた。
ご存じの通り、日本ハムは1巡目入札で超目玉、大阪桐蔭・中田翔を引き当てた。その約30分前。競合したある他球団の編成トップが、ホテル敷地内にある神社の前で神妙な顔つきで手を合わせていた。「5円玉を入れたよ」とジョークを飛ばした。だが手を合わせ終えた瞬間、ほぼ無表情の真顔。報道陣がそばにいたたため取り繕ったが、これがまさに本当に祈る時の人の顔なんだ、と思った。
大変な仕事だ。スカウトは基本的に「関東」「関西」など担当地区を持ち、その地域の有望選手を発掘し、見極める作業が主だ。足しげく通い、よく言う「誠意」というものを見せ、指名をした時にスムーズに交渉が進むように備えたりもする。あるスカウトが言っていたが「自分の地区から他球団が、誰を指名するかが気になる。自分の目は間違っているのかなって、そういう時に思う」。
今年の中田、仙台育英・佐藤、成田・唐川ら有名選手は、誰でも知っているが、「隠し玉」や、指名するかどうか、最後まで判断に迷うような選手もいる。日本ハムの場合には、事前に指名予定選手を知っているのは編成をつかさどる高田GMらが籍を置くチーム統轄本部とスカウトトップの山田シニアディレクターら、ごく一部だけ。担当スカウトは最後まで、指名されるかどうか知ることができない選手がほとんどだ。
日本ハムのドラフトを過去5度取材した。その中で、高田GMらに推薦した担当地区の選手が1人も指名されなかったスカウトもいた。また推薦していなかった選手を指名され、大慌てで先方(指名選手や関係者)への事情説明、謝罪にてんてこ舞いになっているスカウトもいた。意中の球団に指名された、されなかった選手だけではなく、その陰にも悲喜こもごもの人間模様がある。
日本ハムのスカウトは1年契約が基本。根来コミッショナーは「私は何らかの形で選手の意見を聞くべきだと考えている」と来季以降は選手の希望を取り入れる形のドラフト形式が良い、との私見を述べた。ではスカウトが、この選手を獲得したい-という希望は、反映されないのか。もちろん主役は、指名対象選手。選手とスカウト-。両者は単純比較はできず、あくまで暴論とは分かっている。だが真剣勝負で人生を、たった「1日」に賭けているスカウトの姿を見ているだけに少し、考えてしまう。 何がベストか、答えは出ないが、だからこそドラフトにはいつもドラマがあるのかもしれない。表にも裏にも…。
October 4, 2007 02:14 PM 投稿者:高山通史 | トラックバック (1)
