2006年12月03日
新人時代への「原点回帰」:北尾洋徳
契約更改交渉が始まりました。この文章を書いている3日の時点で日本ハムは39人が初交渉を行い、37人が更改。橋本義隆投手、田中賢介内野手、中嶋聡捕手の3人(橋本投手は2度目で更改)が保留しました。金額のことはさておき、交渉の場は選手にとって今季を振り返り、球団に自分自身の意見を述べる貴重な場となっているようです。そんな中、来季へ向けて大きな「配置転換」を希望した選手がいました。
先発をやらせてください-。建山義紀投手は今回の交渉で球団に自身の気持ちを伝えたそうです。交渉後の会見では「決めるのは現場だから」と前置きしながらも「今シーズン中盤から、ずっと思っていた。リリーフもきつくなってきている。だからといって(甘い考えで)通用するとは思っていない」と、はっきり口にしました。今季登板46試合はすべて途中から、04年には最優秀中継ぎのタイトルも取っているだけに正直なところ驚かされました。
発言を受けて調べ、もう1つ驚かされました。1年目99年は15、2年目00年は11試合で先発していました。プロ8年間で28試合。このデータを見て、頭に浮かんでいた来季31歳での「挑戦」という言葉は消え去りました。これは「原点回帰」なのではないかと。
自分に照らして考えてみました。この仕事を始めて3年。取材対象は、日本ハムのように、全国区のものも増えてきました。ただ忘れてはいけないと思っているのは初めて自分が取材に出た、あの日。くしくも日本ハム主催の野球教室でした。取材対象は小学生、10人以上に話を聞いたと思います。ですが、書いた30行の原稿は跡形もなく上司に書き直されました。今、小学生10人に話を聞けるか? 自問自答すると…、強要されなければ無理という結論を下してしまいそうな自分がいて怖いです。
1度築いた”居場所”から移るのは、思っている以上に苦しく厳しいものだと思います。「いばらの道を選ぶことによって投手としての底力も上がるのではないか」。建山投手は「離脱」も味わった今季からはい上がるために、わざと新人時代の気持ちを思いだそうとしたのではないか-。想像し過ぎでしょうか。
そういえば、もう1つ気付いたことがありました。建山投手が今季途中から使っている登場曲、HIP HOP歌手SEAMOの「ルパン・ザ・ファイヤー」。歌詞に、こうあります。「だれかがいないと張り合いない 相手がいてこそ間違いない 身近にゃ素敵なライバル 競い合い互いにハイになる ファイナルステージだ天王山 お前と勝負の演奏さ」。
自ら体力的な問題を口にしただけに、ファイナルステージへ向かう残りの野球人生を思い描いたとしても不思議はないでしょう。「勝負の来季」へ向け、新人時代の自分自身をライバルに、はい上がろうとしているのではないでしょうか。
December 3, 2006 01:08 PM 投稿者:北尾洋徳
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