2007年10月04日
ドラフトの表も裏にもドラマがある:高山通史
1年間の成果が、たった1日で決まる。しかも抽選など、運にも左右される酷な世界だ。10月3日。都内のホテルで行われた高校生ドラフトの取材へ行ってきた。夏場の日焼けの跡がまだ残る、色黒の大男たちが勢ぞろいしていた。各球団のスカウトたち。ほとんどが元プロ野球選手。現役時代に見たことがある顔ぶれがスーツを着込み、集結する。この日のために1年間、駆け回ってきた。
ご存じの通り、日本ハムは1巡目入札で超目玉、大阪桐蔭・中田翔を引き当てた。その約30分前。競合したある他球団の編成トップが、ホテル敷地内にある神社の前で神妙な顔つきで手を合わせていた。「5円玉を入れたよ」とジョークを飛ばした。だが手を合わせ終えた瞬間、ほぼ無表情の真顔。報道陣がそばにいたたため取り繕ったが、これがまさに本当に祈る時の人の顔なんだ、と思った。
大変な仕事だ。スカウトは基本的に「関東」「関西」など担当地区を持ち、その地域の有望選手を発掘し、見極める作業が主だ。足しげく通い、よく言う「誠意」というものを見せ、指名をした時にスムーズに交渉が進むように備えたりもする。あるスカウトが言っていたが「自分の地区から他球団が、誰を指名するかが気になる。自分の目は間違っているのかなって、そういう時に思う」。
今年の中田、仙台育英・佐藤、成田・唐川ら有名選手は、誰でも知っているが、「隠し玉」や、指名するかどうか、最後まで判断に迷うような選手もいる。日本ハムの場合には、事前に指名予定選手を知っているのは編成をつかさどる高田GMらが籍を置くチーム統轄本部とスカウトトップの山田シニアディレクターら、ごく一部だけ。担当スカウトは最後まで、指名されるかどうか知ることができない選手がほとんどだ。
日本ハムのドラフトを過去5度取材した。その中で、高田GMらに推薦した担当地区の選手が1人も指名されなかったスカウトもいた。また推薦していなかった選手を指名され、大慌てで先方(指名選手や関係者)への事情説明、謝罪にてんてこ舞いになっているスカウトもいた。意中の球団に指名された、されなかった選手だけではなく、その陰にも悲喜こもごもの人間模様がある。
日本ハムのスカウトは1年契約が基本。根来コミッショナーは「私は何らかの形で選手の意見を聞くべきだと考えている」と来季以降は選手の希望を取り入れる形のドラフト形式が良い、との私見を述べた。ではスカウトが、この選手を獲得したい-という希望は、反映されないのか。もちろん主役は、指名対象選手。選手とスカウト-。両者は単純比較はできず、あくまで暴論とは分かっている。だが真剣勝負で人生を、たった「1日」に賭けているスカウトの姿を見ているだけに少し、考えてしまう。 何がベストか、答えは出ないが、だからこそドラフトにはいつもドラマがあるのかもしれない。表にも裏にも…。
October 4, 2007 02:14 PM 投稿者:高山通史
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