2007年08月24日

不退転の決意:高山通史

 シーズンも佳境の今、気になる人が奮闘している。坪井だ。昨オフの戦力外通告から、言葉は悪いが複雑な経緯を経て「出戻り」で再スタート。阪神時代には天才打者と呼ばれたプライドをかなぐり捨て、準レギュラーとして曲折の1年間の終わりが見えてきた。心中は本人にしか分からないだろうが、07年シーズンが終わった時には、いろいろな感情が交錯するだろうと推察する。

 今年の春季キャンプ。オフのドタバタの騒動を経て、初めて面と向かって取材をした。坪井は「いつも通りだから。毎年、見てるやろ」と怒ったが、初日から飛ばしていた。連日の居残り練習。他選手とは群れることなく、裏方さんたちにトスを上げてもらい、黙々とティー打撃を行っていた。締めにはランニングとストレッチ。ルーティンは、ほぼキャンプ期間中、変わることも、怠ることもなかった。

 今年で担当記者4年目だが、キャンプでは一番、取材をしたのが、今回だった。報道陣の間では知られてはいるが、トンチンカンな質問をすると結構、怒らせてしまうことが多々ある。そんな私もその1人。05年のシーズン中に、本塁打を打った談話を取材に行くと「しょうもないこと聞くなや!」と一喝された。通称「ぶら下がり」という歩きながらの取材だったため、面食らった揚げ句に、坪井のバッグにぶつかってしまい、さらにひんしゅくを買った覚えがある。

 だがそのキャンプ終盤のある日。練習に、いつも以上に全力投球しているように見えるというような質問をして「また怒られる」という覚悟で行くと、思いもよらぬ答えが返ってきた。「キャンプでつぶれたら、1シーズンできないでしょう。だからケガしてもいいと思ってやっている」。プレー中の不慮の「事故」のようなものもあるが毎年、シーズン中に故障。近年はフルシーズンプレーしたことがなかった。不退転の決意が、にじんでいた。

 田中幸の2000本安打達成時にはその場のグラウンドでも祝福し、その後にお祝いメールを送るほど。仲の良い高橋に人柄を聞けば「とっつきにくいけれど、男らしい、優しい人」という律義で気遣いができ、そして繊細な人。今年はベンチスタートでも、笑顔で若手を鼓舞するシーンをよく見る。たった4年しか取材していないが、今までと違う「丸み」も感じている。天才の仮面を脱ぎ、人間臭さが見える今年の坪井。ベテランの力が不可欠なシーズン終盤のキーマンの1人になりそうな気がする。

August 24, 2007 12:09 AM 投稿者:高山通史

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nikkansports.com/mt/mt-tb.cgi/12283