2007年05月24日
余計な「情」はいらない:高山通史
交流戦の開幕カード巨人2連戦が23日、終了しました。連勝、勝率5割復帰、ダルビッシュとグリン、両投手の快投に田中幸雄選手のホームラン…。ともに逆転勝利、連日4万人超と見どころ満載の2日間でした。日本ハムファンだったら、とても気持ち良かったことだろう-と、記者席から見ていても思う、展開も内容も、しびれるような2つの白星でした。
その1勝目を挙げた翌23日、弊紙の北海道発行分は日本ハムを1面、稲葉選手の中心の記事を掲載しました。そのサブの見出しですが、それが物議を醸したのです。紹介します。「小笠原にブーイング!!札幌ドーム」。このことについてクレームが多数です。「どぎつい」だの「やりすぎだ」だの、「あれはちょっと…」という遠慮がちながらも、遠回しにチクリと言われたものもありました。
クレーム先はどこからか、というと日本ハム球団関係者の数人から。球場に来ていた方々、テレビ観戦の方でも見ていたら分かる「事実」です。まず、どうしてこれを、オブラートに包んで隠さなければいけないのか分からない。そしてひいて言わせてもらえば、ブーイング=日本ハムへの応援、だと思うのですが…。個人的にも一番、試合を見ていて、想定外の出来事で、私の琴線に触れた場面だったのです。
メジャー・リーグの慣例がすべて素晴らしいとは思いませんが、小笠原選手と同じような主力級の選手が他球団へ移籍した場合、古巣のファンがブーイングをすることが当たり前です。なぜかといえば、チームを応援しているから。自然発生的に、小笠原が打席を重ねるごとに大きくなったブーイングは、しかも巨人でのその存在の大きさを認めているからこそ、のものでしょう。この2連戦、小笠原が日本ハム時代に通い詰めていた沖縄・名護市の焼肉店の夫妻が球場を訪れていました。複雑な感情があって当然のはずですが、その夫人は迷いなく言いました。「逆にブーイングはうれしかった。オガちゃん(小笠原の呼称)がすごいって思われているからなんでしょう」。
なぜブーイングに球団関係者が嫌悪感を覚えるのか、正直言って、私には真意が分かりません。自分たちが日本ハムをファンよりも身近に感じ、応援するべき立場にいる人たちが、なぜそうなのか、分かりませんでした。昨季の日本一の功労者だから、長年チームを引っ張ってくれたから…。でも真剣勝負の世界で今は、相手チームに小笠原はいます。あくまで私見ですが、ファンの方の行動は、間違ってはいないと思います。だって札幌ドームへ、日本ハムを応援に来ていた「巨人小笠原」を応援しに来ているわけではないのですから。
これまではなかった雰囲気の中で取材ができ、新鮮さを感じていました。これぞ本拠地という醍醐味(だいごみ)あるシーンでした。周りの記者の方々とも「根付いた証しなんじゃないか」という話をしていました。小笠原をはじめ、新庄氏も抜けてスター不在と言われてた今季の日本ハム。若手主体で再出発しています。そのブーイングは、あくまで個人的ですが、決してネガティブにとらえるべきことではないと考えます。すっきりとしない後味の悪さを、感じてしまいました。その反応を示した大多数のファンはそうではなくても、とても強く「日本ハム小笠原」の残像、感傷に浸り、未練を残している人たちが、球団内にいたことに…。
少し暴論かもしれませんが、日本ハム本社が業務優秀な営業社員をライバル会社にヘッドハンティングで引き抜かれたとします。その優秀な社員と現場で、現場でぶつかり合った時、その元社員に仕事を奪われそうな時、敵になった日本ハム本社サイドの社員は「よくやった」と拍手して褒めるでしょうか。仕事と同列にはできないでしょうが、野球、スポーツも真剣勝負の世界。小笠原もバッシングも覚悟した上での強い決意で、すべてを断ち切って移籍を決断しました。札幌ドーム全体で「巨人小笠原」と対戦していたようにも感じた2日間に、せめてグラウンドの上で戦っている時だけは、余計な「情」はいらない。
May 24, 2007 01:38 PM 投稿者:高山通史
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