2007年05月14日

「旬」な投手、武田久:高山通史

 よく野球以外でも、日常会話でも使う「全力投球」という言葉。武田久投手を見ていると、その大切さ、尊さを実感させられます。昨季は75試合登板、45ホールドポイント。パ・リーグV、日本一、アジア王者の立役者です。阪神藤川の存在で近年、脚光を浴びているセットアッパーという役割を、完ぺきに務めています。セットアッパーは中継ぎ、リリーフと総称される投手の中でも、同点または接戦で勝っている場面で主に登板。たった1球の失敗で一転、敗戦へと誘うこともある重い役割です。主に試合終盤の8回に、抑え(日本ハムはマイケル)へつなぐ重責を任されています。

 武田久は取材をしていても、好投した後も「普通ッス」「特に何もないッス」などが口癖。決して無愛想なわけではないですが、しんの通った武骨なタイプで、自分のすごさについて多くを語りたがりません。そこが魅力でもあります。でも、なぜ「全力投球」をシーズン通してできるのか。今季から同じ中継ぎ投手の1人として、間近で見ている江尻投手の証言が、少しはこの難解な謎を解くヒントになっています。
 「久っていつも手を抜くことがないんですよ。ダッシュを見ていれば分かります。自分も考えが変わりましたから」。

 例えば30メートルのダッシュがメニューにあるとします。通常はスタートラインから走り、ゴール手前で少しスピードを緩めるものです。いわゆるトップスピードの「全力疾走」の部分が、20メートルほどだったりするわけです。ですが武田久は違うそうです。スタートラインの少し手前から助走をつけていって、ゴールを全力で駆け抜けるそうです。

 たった一例ですが、武田久は30メートルをちゃんと「全力疾走」で完走することを日々、やっているわけです。試合中にブルペンで待機し、出番に備えて投球練習を行います。そのボールも「すごい」(江尻)そうです。どんなメニューに関してもそう。江尻も今季から取り入れ、自分に厳しくやっています。

 月並みな表現に感じる「全力投球」の言葉。記者をしている自分も、身につまされる場面が多い。見せ場のない試合では、今日の記事は小さいだろう、そんなに書かなくていいだろう…などと、勝手に自分で楽な方、手を抜こうと考えている時が正直、あります。武田久の姿から学ぶことは多いと、江尻と同じように感じてしまう今日このごろです。

 1日1日、一瞬、一瞬を「全力投球」しようと-。世間一般ではふと気が緩んでしまい、それを5月病とも言われる、今の季節。そんな思いが吹き飛ぶような姿を見せてくれる「旬」な投手が、日本ハムにいます。

May 14, 2007 12:38 PM 投稿者:高山通史

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