2006年06月23日
最低限のマナーはやはり必要:高山通史
甲子園。日本中の数ある球場の中でただ1つだけ「聖地」という、枕ことばを使うことがされる偉大な球場だ。少なくとも私は、そう思っている。新庄の同球場でラストゲームになる可能性が高い、19日阪神戦の試合前。はらわたが煮えくり返るようなシーンに出くわした。
試合前練習で、新庄よりもひと際、目立っていた一団がいた。「関係者パス」を着けた20代前半と思われる若い女性2人だった。ともに丈が短い、ノースリーブの肌をあらわにしたワンピース風のスカートでベンチに腰掛けていた。時には黄色い笑い声を上げ、はしゃいでいた。しかも何と日傘まで差していた…。ほかに一緒に同行していた若い男性数人も、携帯電話で写真を撮るなど大はしゃぎ。少なくとも記者の周囲は、あ然としていた。
日本ハムのある球団幹部のご子息が招待した、ご一行だ。あえてそのご子息を「彼」と呼ばせてもらうが、その「彼」は20歳を超えた立派な大人だ。球場へ招待することは決して悪いとは思わない。だが球場へ来るには最低限のマナーがある。しかも、これから試合が始まるという時にだ。
プロ野球選手、しかも彼が遠からず関係する日本ハムの選手たちの「戦場」、「職場」なのだから。
すでに開門されており、そのシーンを目にしたスタンドの来場者が「何、あの人たち?」と指をさして話している声も耳にした。選手や「本当」の球団関係者が座るべきベンチを、いつまでも占拠していた。しかもその女性の1人は、新庄のレプリカユニホームの上着を着ていた。下はスカートのままで…。揚げ句の果てには大切な試合前の練習を終えた新庄を呼び止め、ベンチ裏で写真撮影をせがんでいた。いくら関係者とはいえ、そんな「特権」があっていいわけはない。
だが、その女性たちの「罪」を一方的に責めるわけにはいかない。連れてきた「彼」は前回の甲子園での阪神戦でも同じ女性たちを連れ、練習見学に来ていた。その時以外にも何度か球場で見掛けたことがある。責任は「彼」によるところが大きい。その「彼」はしっかりと球場、しかも試合前に来る時の最低限のマナーを知っているべきだからだ。その同行者たちへ事前に、あるべき姿、行動を伝えるべきだと思う。そうすれば少なからず、そのような格好と振る舞いではなかったはずだと思うからだ。
本拠地移転前年の03年秋、私は初めて日本ハムでプロ野球担当の記者になった。他社も含めて、先輩記者たちからは取材時は「最低限、襟付きのシャツを必ず着用すること」などという服装、また「先発投手の登板日の試合前練習の取材に配慮すること」などルールを教えられた。時には厳しく、プロ野球界について教えられた。
だが、その時には「彼」に対して注意を与える、ほかの球団関係者はいなかった。みんな見ていたのに、黙っていた。残念なのは、いつも紳士的なヒルマン監督が笑顔で、以前から面識がある、その女性たちへ自ら歩み寄って記念撮影をしていたことだ。メジャーをテレビでしか知らないが、本場アメリカでは許されるのか。だが、監督も日本球界で4年目のはずだ。過去にそのようなシーンはあったのか。自分がこれから戦おうとする時に…、少なからず失望してしまった。
私は立場的に「彼」に注意できる分際ではない、と思う。だが、我々にとっても「職場」だ。しかも私自身が幼少時からずっとあこがれていた、甲子園での出来事だから、なおさら怒りが込み上げたのかもしれない。あの「聖地」のグラウンドレベルで感じる、あの伝統の浜風に、ミニスカートが揺られてはいけない。銀傘は似合うが、絶対に日傘は似合わない。グラウンドレベルに立つ、しかも試合前に来る資格はない。
伝統を重んじてきた阪神担当の先輩、ベテラン記者もその光景に驚いていた。「彼」は周囲から突き刺さるように飛んでいた視線を、敏感に感じていたのか。私が取材していて感じる「彼」の父は繊細でエネルギッシュで行動的で、存在感のある球団幹部だ。その遺伝子を受け継ぐ「彼」は今回、いろいろと感じていてほしい。次回、グラウンドで再会できる時を楽しみにしたい。変わっていることを願って…。遠からず、球界に携わっている、簡単に「関係者パス」が何枚ももらえる1人の人間なのだから分かるはずだ。
June 23, 2006 11:01 AM 投稿者:高山通史
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