2006年09月12日
「10・8」知る川相が感じるVへの手応え:伊藤馨一
8月20日を境にした中日の失速と、阪神の追い上げで伝説となった「世紀の1戦」がクローズアップされてきた。「10・8」。94年にナゴヤ球場で行われた中日対巨人だ。勝った方が優勝という究極の試合。当時の巨人長嶋監督は「国民的行事」といい、落合監督は「本当の天王山というのはああいう試合のことをいうんだ」と話した。今年に置き換えれば当時の巨人が中日で当時の中日が阪神という図式が成り立つ。
94年の巨人と同じように中日も8月中盤にマジックを点灯させて、独走状態に入ってから失速している。これがあの伝説の1戦を思い返させる条件となっている。だが、それに反論したのは当時、巨人の不動のレギュラーだった川相だ。「外からは同じように見えるかもしれないけど、あの時とは全然違うよ。今のウチ(中日)の方が全然上だと思う。心配いらないんじゃない」。その理由は、打線の力の違いだという。
「当時の巨人はとにかく打てなかったからね。勝つ時には1-0とか2-1とか接戦ばっかりだった。ピッチャー(斎藤、槙原、桑田)がよかったから、何とか勝てていた。一昨年(04年)のウチみたいなチームだったんじゃないかな」。松井、中日からFA移籍の落合らタレント集団に見えたが、内野の要だった川相は「守り」のチームだと見ていた。打てない焦りからチーム全体が守りの気持ちになり連敗地獄にはまり込んでしまったというのだ。
川相の「安心理論」は、現在のチーム状況が上向いているという手ごたえもあっての発言だ。現在は登録抹消され、メンタルアドバイザーとしてチームに帯同しているが上昇を感じたプレーがあったという。それが9日の1回、1死一塁で福留の浅い右前打で荒木が一気に三塁を陥れた走塁。「悪い時っていうのはみんな消極的になる。それでどんどんハマっていくんだけど、あれで吹っ切れた」。その試合で辛勝したチームは10日に圧勝。約半月ぶりの連勝を飾っている。
「油断はできないけど、これからはここ3週間みたいなことはないと思うよ。みんながこれまでやってきたことを思い出しているからね」。プロで24年間生きてきた経験者として、ゴールへの手ごたえを感じ取った。最後に川相に「94年はどういう年だったのか」と聞くと、こういう答えが返ってきた。「いい経験かもしれないけど、ああいうのは、できればもう経験したくはないね」。そこには体験した人間でないと分からない苦悩が詰まっていた。
September 12, 2006 01:30 PM 投稿者:伊藤馨一
