2006年06月28日
日本一達成でかなう岩瀬の夢:伊藤馨一
子供の頃、学校がある時に誕生日がくる友だちがうらやましかった。特別な日をいつもと違う環境で祝ってもらえる。夏休み期間中に誕生日がくる自分は…。何か物足りなさを感じていた。やっぱりシーズン中に迎えたいのではないだろうか。4~10月がシーズン中のプロ野球選手は、どう感じているのだろうか? 2年ぶりのV奪回へ向けて、現在首位を走っているオレ竜を支えている投の2人の大黒柱に聞いてみた。
まずは22日に、31歳の誕生日を迎えたばかりのエース川上に聞いた。「いつも通りに過ごしました。ボクたち先発は(登板間のスケジュールで)やることが決まっているので、(誕生日は)気になりませんよ。勝てれば最高ですけどね」。翌23日に巨人戦の登板を控えていたこともあって、コンディショニングに専念したという。シーズン中は野球中心の生活だが、川上は8回2失点で9勝目を挙げて自分で自分を祝った。
一方、11月10日が誕生日の岩瀬はこうだ。「いいですよねえ…。シーズン中に誕生日がくるのは。ボクの場合、誕生日は(秋季)キャンプ中ですけど、シーズン中とは違いますから」。プレーしているシーズン中に誕生日を迎えたい-そんな岩瀬の夢がかなう可能性もある。アジア・シリーズの存在だ。昨年から始まった同大会は今年は11月9~12日に開催される予定。リーグ優勝、日本一を達成した時には夢が実現する。
ちなみに、川上の1日遅れの誕生日祝いは9勝目を挙げた23日の巨人戦後、19セーブ目を上げた岩瀬主催で、名古屋市内の飲食店で行われた。「岩瀬さんに祝ってもらって、うれしかったです」と川上は笑顔を見せた。最高の形で誕生日を迎えたいというのは誰もが同じ。晴れてアジアNO・1になった時、岩瀬は最高の誕生日を迎えるはずだ。自分で自分の誕生日を祝うことができる。これ以上、うらやましいことはない。
June 28, 2006 01:11 PM 投稿者:伊藤馨一
2006年06月20日
サッカーにも通じる福留の極意:鈴木忠平
6月13日は朝からもやもやした気分だった。サッカーのドイツW杯で日本代表がオーストラリア代表に敗れた翌日。「なぜジーコ監督は…」。一丁前の敗因分析をしながら監督、選手とも自然とその話題へ。すると、打者として抜群の実績を誇る2人は同じ点を指摘した。
落合監督 オレは戦術のことなんかはわからないから何も言えないけど、ゴールがすぐそこにあるんだからシュートを打ちゃ入る気がするんだけどな。
福留 うーん、監督どうこうというのもあると思うけど、グラウンドに立っているのは選手なんだから。もっと選手がやれることがあったんじゃない。
同じプロ選手として配慮しながらの言葉だったが、要はFWがシュートを打たないことへの指摘だった。
バットを振ること、シュートを打つことは似ている。例えば試合の中で最大のチャンスで打席に立つ。初球にストライクが来た。もし打ち上げてしまったら?もし内野ゴロになったら?マイナスイメージと重圧が打者を金縛りにかける。高原が、柳沢がシュートチャンスにパスを選択したのもこれと同じではないか。そして、落合監督も、福留も日々この重圧と戦ってきたからこそ歯がゆかったのではないか。
例えば福留は初めての投手と対戦した時、必ずファーストストライクを振る。「ボールを見ているだけじゃ自分のタイミングがつかめない。それに振らなきゃ何も起こらないんだから」。まだ記憶にある3月のWBC準決勝・韓国戦、0-0の7回1死二塁。代打で登場した福留は外角いっぱいの球で1ストライクを取られた後に思った。「もう何でも振っていこう」。そんな心境になった瞬間、あの本塁打は生まれた。
18日、クロアチア戦。日本代表はまるでそんな声が届いたかのようにシュートを打った。ゴールはできなかったが、大事なのは打ち続ける勇気だと思う。1本の本塁打の裏にも、必ず多くの凡打があるのだから。
June 20, 2006 12:13 PM 投稿者:鈴木忠平
2006年06月13日
どん底知った「一番人気」小笠原に注目:伊藤馨一
「人気NO・1」だった小笠原がその評価に恥じない? 結果を残している。交流戦中の5月14日に1軍昇格を果たし、今季初先発となった5月21日のロッテ戦(千葉)では負け投手となったものの、6回3失点で先発入りを決めた。そして次の5月28日のソフトバンク戦(ヤフードーム)では、プロ初完投勝利。12日現在、5試合に登板、2勝1敗、防御率2・25。先発の一角をつかんでいる。
開幕当初、2軍の本拠地ナゴヤ球場のネット裏でこんな声を聞いた。「小笠原を何とか(獲れないか)という話がたくさんある」。他球団の調査担当者にとって、先発能力のある左投手はノドから手が出るほど欲しい存在。02年には先発で5勝を挙げた実績があり、開幕1軍から外れていればなおさらだろう。当然、他球団からオファーが殺到した。だが、落合監督は首をタテに振らなかった。
「ウチでチャンスがなくても、他で出られる選手もいるから」が、落合監督が選手を放出する際の決まり文句。開幕時点で、小笠原は先発として8番手程度の評価だっただろう。加えて今年は2軍の打撃不振が象徴するように野手、特に内野の層の薄さが目立つだけに、商談がまとまってもおかしくなかった。だが、小笠原に「チャンス」はこなかった。それでも「きたるべき日」に備えていた。
昨年の10月と11月、小笠原は、ナゴヤ球場にいた。教育リーグ、沖縄秋季キャンプのメンバーからも外れていた。シーズン終盤に左手に打球を受けた影響があったとはいえ「戦力外」のような扱いを受けた。さらに契約更改では20%の大幅ダウン。登板が谷間のみの先発(5試合)だった昨年を考えれば、先が見えない状況だったかもしれない。だが、小笠原は結果でそれを見返してみせた。
どん底で酸いも甘いもかみ分けただけに、今年の小笠原の投球は一味違う。ピンチになっても慌てず、落ち着いている。最後に昇格前の4月下旬、落合監督が小笠原について話したコメントを紹介しよう。「小笠原が(他球団から)人気があるのは知っている。でも(トレードは)ない。誰と代えるの? ウチで働けるピッチャーだよ」。自力ではい上がってきた8年目左腕の今後に注目したい。
June 13, 2006 11:01 AM 投稿者:伊藤馨一
2006年06月06日
ぼやく人ぼやかぬ人、監督の目的:鈴木忠平
ぼやく人とぼやかない人が仲良く並んでいた。6月2日、フルキャスト宮城スタジアム。楽天対中日戦の試合前、打撃ゲージ裏では野村監督、落合監督の談笑が延々と続いていた。ともに球史に残る右打者。ヤクルト時代の野村監督が巨人を退団した落合獲得に名乗りをあげたという過去もある。だが指揮官としては決定的に相容れない部分があるはずだが…。
落合監督はマスコミを通じて選手の批判はしない。就任以来、監督として最も大切にしてきた部分だという。対して野村監督はぼやく。試合前のベンチで、試合後の囲み取材で、担当記者を集めて選手を批評する。この対照的なカラーを持つ指揮官2人はなぜか気が合うらしい。現在、球界でただ1人、両監督の下でプレー経験を持つ楽天鉄平(中日時代は土谷鉄平)に聞いてみた。
鉄平 確かに野村監督は新聞を通じて選手のことを言うし、落合監督は絶対しませんでした。でも、僕は選手の受け止め方次第だと思います。マスコミを通して言われたとしても、それが当たっていれば『そうか』と思えるんです。逆に見てもらえてるとも思いますし。それに2人とも野球に関してすごい頭を持っているというのは同じです。
野村監督の下で才能を開花させた鉄平はむしろ、ぼやきをモチベーションに変えるという。ちなみに落合監督の意見はこうだ。
落合監督 選手のことをあれこれ言いたくなる気持ちはわかるよ(笑)。でもオレはやらない。現役の時に嫌な思いしたから。ただ野村さんの場合はあれで選手を発奮させてる部分があると思う。選手が次の日、新聞を読んでこう思うだろうというのをわかっているんじゃないか。そういう育て方もあるだろうな。
選手を発奮させるためにマスコミを利用するかしないか。ぼやくか、ぼやかないか。それは方法論の違いに過ぎず、目的は同じなのだ。千差万別の選手操縦術。結果もまた出るとは限らない。監督業にも王道なし、と改めて思った。
June 6, 2006 10:58 AM 投稿者:鈴木忠平
