2006年05月30日

「変身」山本昌、今季交流戦初星もすぐそこ:伊藤馨一

 落合中日が苦手の交流戦を9勝9敗の5割で折り返した。初年度の昨年は前半戦で4勝14敗。いきなり借金「10」を背負ったことがV逸の原因となった。今年もロッテ、西武に5連敗を喫したこともあった。だが失点は12球団最少タイの44。ロッテに次ぐ12球団2位の交流戦チーム防御率2・41をマークしている投手陣の踏ん張りがチームを支えている。

 エース川上の存在は大きいが、開幕当初は計算外だった投手も見逃せない。分かりやすいところでは25日の西武戦でプロ初完封をマークした佐藤充。28日のソフトバンク戦で初完投した小笠原。そしてここまで4勝の朝倉だ。しかし、個人的に注目しているのは山本昌の「変身」。交流戦はここまで0勝3敗、防御率4・22。初戦の楽天戦で6回5失点だったため、防御率は悪く、打線の援護もなく勝ち星こそついていないが、ロッテ小林宏、ソフトバンク斉藤和のエース級と互角に投げ合った投球は一味も二味も違うものだった。

 「山本昌はパ・リーグには通用しないのでは」。そんな声が聞こえてきたのは昨年の今ごろだった。88、99、04年と3度の日本シリーズに出場して4試合に登板したが、0勝3敗、防御率4・79。そして昨年の交流戦でも楽天に打ち込まれるなど1勝3敗と結果は出せていない。確かに両サイドと低めを丁寧についていく繊細な山本昌の投球が、パ・リーグのパワー野球に打ち砕かれていたイメージはあった。

 だが、山本昌にそんなイメージはまったくなかったようだ。「去年が悪すぎたからね。それだけだよ」。優勝した04年オフ、山本昌は13勝とフル回転した疲労と年齢を考慮、体を休ませすぎたという。それが不振の原因。だから、昨年は終盤に2軍落ちしたままシーズンを終えると、ほぼ無休でオフを過ごした。このため、今年はキャンプから好調を維持。スタイルを変えることなくロッテ、ソフトバンクを封じたことで雑音をシャットアウトした。

 結局のところ山本昌の「変身」に特別な材料は何もない。体調を整え、交流戦を過剰に意識することなく、いつも通りに投げているだけだ。今年8月に41歳。現在、200勝まで残り18勝というところで足踏みが続いているが、山本昌がパ・リーグから勝ち星をカウントする日も、そう遠くないような気がする。

May 30, 2006 10:39 AM 投稿者:伊藤馨一

2006年05月23日

敵地で弱いオレ竜、復調のカギは?:鈴木忠平

 もどかしさ、怒り、落胆が言葉に詰まっていた。「もう! 本当に…。うちの選手は環境が変わると弱いなあ」。オレ竜は敵地で弱い。21日までの交流戦を例にとれば札幌ドームでは日本ハムに1勝2敗、千葉マリンではロッテに3連敗。この結果を予想していたかのように関係者はため息まじりに吐き出した。

 現在、リーグ戦、交流戦トータルのビジター球場では7勝11敗。だが、単に球場だけの問題ではないようだ。関係者の言う「環境の変化」とは雨、風、地方球場、移動ゲーム(移動した日に試合)など普段より過酷な条件を指す。調べてみると、ここまで地方球場では1勝2敗、移動ゲームは1勝4敗とまさに指摘通りで、そこからは典型的な“ひ弱さ”がうかがえる。

 最も象徴的なのが主砲ウッズだ。交流戦開幕前に苦笑いでこう言った。「交流戦は移動が長いから嫌いだよ」。強風の千葉マリンでは「こんな風の中でサーカスみたいにボールを追い掛け回していられない」とぶちまけた。4月23日の雨上がりの米子球場では「ケンタッキー・ダービーで馬が走るようなグラウンドだった。だれが、いつケガするかわからない。プロがやるべき場所じゃない!」とまで言った。

 そして、対ロッテ戦連敗が8に伸びた21日には福留が千葉マリンの横風に流された飛球を2度も取りそこなった。「オレのミスだよ。みんなに申し訳ない。風なんて関係ない。それは言い訳だよ」。ウッズとは対照的にすべての責任を負ったが、昨季最も交流戦で好成績を残した男までが…。それが気になる。

 そういえば開幕当初、落合監督がこう言っていたのを思い出した。「うちの選手はかわいいよな。そう思わねえか? もうちょっと要領よくやればいいのにって思うよ。素直すぎるというか…。でも、だから何とかしてやりたいって思うんだけどな」。かわいいの裏返しは、たくましさに欠ける、なのか。26日からは福岡、大阪、仙台と試練が続く。オレ竜復調のカギはこんな精神的な部分が大きいのかもしれない。

May 23, 2006 10:56 AM 投稿者:鈴木忠平

2006年05月16日

川上も”認めていた”上本審判の外角眼:伊藤馨一

 5日、セ・リーグ審判の上本幸一さん(享年43)が急逝した。3日にナゴヤドームで横浜戦が行われた時に、言葉を交わした際には体調が悪いそぶりは全くなかった。それだけに、心底、驚いた。最初に言葉を交わしたのは数年前の沖縄北谷キャンプ。外角の制球の大切さについて熱っぽく語っていたのを思い出す。

 上本さんが最後に球審を務めた2日、横浜を完封した川上は試合後に、まずこんなコメントをした。「外角をしっかりと(ストライクに)取ってくれる審判だったので…」。その日の川上は右打者にはカットボール、左打者には直球。外角への絶妙な制球が光っただけに、相性のよさを口にしたのだと思っていた。
 
 だが、川上の発言の真意は少し違っていたようだ。後日、こんなことを話してくれた。「外角にしっかりと投げるのが大事だというのは、野球を始めた時に最初に教えてもらったことですからね。今もそれは同じです」。今でもブルペンで外角に直球をしっかりと投げられない時は変化球を投げないこともあるという。
  
 それほどのこだわりがあるだけに、上本さんが球審の時には安心感があった。「確か、僕がノーヒット・ノーランをやった時(02年8月1日=巨人戦)にも、球審をされていたんですよね」。川上は今年、ここまで4勝、防御率1・42と抜群の成績を残しているが、その原動力が外角への制球力なのは言うまでもない。

May 16, 2006 11:17 AM 投稿者:伊藤馨一

2006年05月09日

これぞプロの仕事、福留の足元に学ぶ:鈴木忠平

 ピカピカの足元に思わず目が止まった。5日の広島戦(広島)前、福留が新品のスパイクとともにグラウンドに飛び出してきた。「どういう天気になるかわからないからね。いろいろ試しておこうと思って」。ラバー部分がエナメル製の雨天用。だが、空が快晴だったので記者は話を聞きながらもピンとこなかった。

 しかし、翌6日は試合中から雨、7日も前日からの雨が残る悪条件の中で行われた。グラウンドだけでなく、取材エリアである三塁側ベンチ前もどろどろ。革靴の汚れを気にしながらそろそろと歩く記者。するとその前を福留が颯爽と駆けていった。「備えあれば憂いなしだよ!」。公式戦デビューとなるニュースパイクが水をはじいていた。しかも記者顔負けのことわざで格好よく決められてしまった。

 プロの仕事は大半が準備段階で決まる-。入社したての頃に先輩から口すっぱく言われたことだが、一流選手には改めてその意味を教えられる。一方、記者は…。傘も忘れてスーツはびしょびしょ、繁華街に夕食に出かけたかと思えば目当ての店は定休日。備えなし憂いだらけの広島遠征だった。

May 9, 2006 10:36 AM 投稿者:鈴木忠平

2006年05月03日

生き生き野口に見た巨人の強さの秘密?:伊藤馨一

 巨人3連戦(4月28日~30日)での東京遠征中、懐かしい顔に会ってきた。巨人の背番号「31」のユニホームに身を包んだその男は、ジャイアンツ球場で次回の2軍戦登板に向け打撃投手で調整していた。昨年オフにFAで中日から巨人に移籍した野口だ。「久しぶりですねえ! 元気でした?」。不本意な2軍暮らし中だけに、笑顔でこう声をかけられたことに正直、びっくりした。

 昨年オフ、出場機会を求めて中日からFA移籍。だが、オープン戦で結果を残せず、野口は開幕を2軍で迎えた。だが野口はこう言った。「結果を残せなかったのは自分ですからね。今はファーム(2軍)ですけど、状態がよければ上(1軍)にいけると思っています。いろいろ試していますよ」。昨年までの2軍生活とは明らかに違う、生き生きとした表情に見えた。

 その理由は簡単だ。「今回、(桑田に代わって)健太朗(西村)が上がったんですけど、下(2軍)で結果を出していますから」と野口。西村は4試合で1勝2敗、防御率2・67、野口は3試合で2勝0敗、防御率4・20。2軍で成績を残せば1軍に上がることができる。今の立場が「冷遇」ではないと感じているからこそ、腐らずチャンスを待てるのだろう。

 巨人の2軍関係者によると「今の野口は1軍に推せんできるくらいにはなっている」という。「この世界は数字がすべて。よければ上げるし、悪ければ落とす。簡単なこと」というのは落合監督得意のフレーズの一つだ。皮肉にもそれを忠実に実践しているのは原巨人。若手の台頭で首位を独走する強さの秘密を見た思いがした。

May 3, 2006 11:17 AM 投稿者:伊藤馨一