渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2008年02月27日

立場悪くなったクレメンス

 開幕への機運が高まり、各チームから選手たちのトレーニング、仕上がり具合に関するニュースが多くなっているが、ニューヨークでは相変わらずあの問題が大きな比重を占めて報道されている。ミッチェル・リポートによるロジャー・クレメンス元ヤンキース投手の薬物使用疑惑だ。

 13日に開催された公聴会でクレメンスが使用を否定し、対して元トレーニングコーチのブライアン・マクナミー氏が使用を明言するという完全対立の形で終わったのは既報の通り。さらにその後クレメンスの親友でやはりマクナミー氏に薬物注射を打ってもらったというアンディ・ペティット投手が使用を認めて謝罪したものの、クレメンスの使用に関しては言葉を濁して終わっていた。

 このままシーズン後まで大きな進展はないのでは、とも見られていたが、次のステージでの動きが出たと25日付ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたのである。

 その動きとはクレメンスに偽証の疑いがあるとして、司法省に調査を求める手紙を公聴会を開催した米下院政府改革委員会が作成したというもの。

 以前紹介したが、公聴会でのクレメンス、マクナミー氏双方の証言は宣誓をした上でのもの。その内容に虚偽があった場合偽証罪に問われる可能性があるのだ。つまりクレメンスが疑われているということである。同紙によれば、最終判断は出ていないがマクナミー氏に対する調査依頼はされておらず、報道の通りであれば、クレメンスの方が現在の立場が悪いと判断できる。

 これまでのMLBリーグ規則を基準にしたものから、刑事事件の可能性への追求と事態が進展したことで、問題の重さが増したのだ。

 26日付のニューヨーク・ポスト紙など裏1面で”犯罪の時”という見出しで、この問題が”犯罪”というレベルに上がったことを大々的に報じている。

 渦中のクレメンスだが長男コービーが所属するアストロズのマイナー・キャンプで指導をする予定だ。それに先立ちクレメンスは指導への豊富を報道陣に語ったが問題に関しては「言うべきことはすべて言った」と沈黙を保ったという。

 名誉の殿堂入りが確実な大投手がそのキャリアに関する問題で犯罪者になってしまうのは避けて欲しいのだが、今は事態の進展を見守るしかなさそうだ。

February 27, 2008 01:34 PM

2008年02月21日

ソーサ、ボンズ…帰ってきて欲しい選手たち

 スプリング・トレーニング、キャンプのニュースが続々と入ってきて、今年もベースボールのシーズンが始まるんだな、と浮き浮きした気分になっている。だが、そんな中、一時はMLBを代表する、といわれた選手の名前がいまだに見当たらず少し寂しい気分を味わうのもこの季節だ。

 日本人メジャーリーガーの先駆け、野茂英雄投手は今シーズン、ロイヤルズのマイナー契約から再起を図っているが、一時はその“女房役”として知られたマイク・ピアザ捕手はまだ所属チームが決まっていない。

 捕手として最多の通算427本塁打を放っているピアザだが、昨シーズンはアスレチックスで8本塁打、打率2割7分5厘という成績に終わっている。

 一時は本塁打を量産し、通算609本を記録しているサミー・ソーサも同様だ。ソーサは昨シーズン、レンジャーズで21本塁打、92打点をたたき出している。しかしどのチームからもオファーがない状態なのだ。

 2人とも年齢はまだ39歳で、昨シーズンの成績からすればそれなりの活躍は望めそうだし、当人たちに引退の意志はないのだが、要求されるであろう年俸の高さなどからすると積極的に獲得に乗り出すチームが皆無ということのようである。当人たちにとっては今はひたすら我慢のとき、ということか。

 ミッチェル・レポート・スキャンダルが大きく影響していると思われるのが、ロジャー・クレメンス投手とバリー・ボンズ内野手だ。

 7度のサイ・ヤング賞と1度のMVPに輝くクレメンスは45歳、MLB通算本塁打記録を持ち、7度MVPを受賞しているボンズは43歳。確かに年齢は高いがやはり共に今シーズンもそれなりの数字を見込める選手である。が、やはり現役続行の意志を示してはいるものの現在獲得の意思表示をしているチームはない。彼らが現在身にまとってしまったイメージは悪すぎるということなのだろう。

 実力、人気、ビジネス、それらが組み合わさって成り立っているのがプロスポーツであり、MLB。そんなシビアな世界であることをあらためて感じずにはいられない。彼らが今シーズン、ファンの祝福と共に栄光の場所に戻ってきてくれることを願わずにはいられない。

February 21, 2008 09:33 AM

2008年02月14日

薬物使用公聴会、うそをついているのは誰だ?

 13日午前10時(日本時間14日午前0時)ついにミッチェル・レポートを発端としたMLBの薬物使用問題に関する米下院政府改革委員会の公聴会が首都ワシントンDCで開催された。

 当初はヤンキースのアンディ・ペティット投手や元ヤンキース内野手のチャック・ノブロック氏なども出席を求められていたが、事前面談への協力状況などから証人リストから外された。その結果、使用を完全否定し続けているロジャー・クレメンス投手と、クレメンスとペティットにヒト成長ホルモン(HGH)やステロイドを注射したとする元トレーニング・コーチ、ブライアン・マクナミー氏のいわば一騎打ち状態での開催となったのである。

 実際公聴会も両者の対決姿勢が一層強く出た展開となった。出だしから、クレメンスがマクナミー氏から違法な物質ではなく、ビタミンB12の注射を受けたと証言したのに対し、マクナミー氏はビタミンB12の注射をしたことはなく、ステロイドやHGHを含む注射を打ったと証言したのだ。

 ペティットは親友クレメンスがHGHを使用していたことを示す証言をしている。この件に対し、クレメンスが聞き間違ったのだと信じている、と反論した。ただクレメンスはこの点に関してかなり不利な印象なのはこの日も変わらなかった。

 対してマクナミー氏は事前面談でミッチェル・レポートでは16回としていた注射の回数をもっと多かったと思う、とその証言を変えている。この他、いくつかの点であやふやなところも多く、また保身に走っているように見えるところもある。

 5時間に渡った質疑の内容はこれから精査、検討されるだろうが、第一印象としてはお互い真っ向勝負に出たものの、決定打を欠き、とりあえずは痛み分けといった感じではあった。

 ただここまで意見が対立すると、どちらがうそをついて証言をしていることになる。アメリカのメディアでも「うそつきは誰だ?」といった見出しが飛び交っている状況だ。

 公聴会は宣誓の下に証言を行っており、うその証言は偽証罪に問われる可能性が高い。偽証罪で有罪になれば最大5年の禁固刑を科される可能性もあるのだ。それだけに今回の公聴会の内容は重要であり、今後の展開についてかたずをのんで見守っていくしかなさそうである。

February 14, 2008 03:54 PM

2008年02月07日

NFLジャイアンツ、MLBはサンタナ獲得でNY留飲

 3日に行われたプロ・アメリカンフットボールNFLの優勝決定戦スーパーボウルでニューヨーク・ジャイアンツが劇的な勝利を収め、今NFLのみならずほぼすべての地元スポーツ・ファンはこれまでにないほどの盛り上がりを見せている。

 それは対戦相手がボストンを中心とするニューイングランド地方を本拠とするペイトリオッツだったからだ。しかも戦前の予想では今シーズン無敗で18連勝中だったペイトリオッツが圧倒的に有利と見られていた。

 ニューヨークのファンにとっては、MLBでレッドソックスがヤンキースを破った後ワールド・シリーズを制したことで、今度は2つ目の優勝トロフィーをボストンに奪われるのではないか、と危機感を抱いていたのだ。

 それ故、ジャイアンツが勝ったことで、普段MLBのみを応援している人までもが大いに留飲を下げたというわけである。実際、100万人以上のファンが詰めかけた5日の優勝パレードでは「ボストン、最低!」というプラカードが多数掲げられ、何度もコールされていた。次は打倒レッドソックス、そんなふうに思っているファンも多いようだ。

 そしてスーパーボウル前日の2日、ニューヨークのMLBファンにとってhとても大きな契約が正式に結ばれている。メッツがツインズから交換トレードで獲得したヨハン・サンタナ投手が身体検査を通過し、正式契約が済んだと発表されたのだ。契約条件は投手としては史上最高の6年総額1億3750万ドルとなっている。さらに7年目のオプションはメッツが持つが、期間内に一定条件を満たせば契約延長が自動的に確定する内容になっている。

 メッツはこれで大黒柱となる先発一番手を確定でき、来シーズンから数年は先発陣を組むのがかなり容易になるのは確定的だ。これまで以上に強力な布陣となるだろう。

 ただこの契約にニューヨークのファン全員が喜んだというわけでもない。これまでもお伝えしたようにヤンキースもサンタナ獲得に乗り出していたからである。

 ヤンキースのブライアン・キャッシュマンがツインズが交換条件として要求した若手投手、フィル・ヒューズを出すことを拒否したともいわれており、必ずしもメッツに奪われた感じはない。ただヤンキース・ファンにとっては残念と感じる結果なようである。

 同じニューヨーク内でいがみ合うような事態もどうかと思うが、それは全米最大都市ならではの多様性といえるかもしれない。同時に普段はそうでもないのにライバル、ボストンにしてやられそうな事態になると、ヤンキースもメッツも、MLBもNFLも超越して対抗心を見せるところがそれ以上に面白いところのだが。

February 7, 2008 09:58 AM