渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2008年01月31日

最終年迎えるヤンキースタジアム

 今年、ニューヨークの2つのMLBスタジアムがともに最後のシーズンを迎える。

 それぞれに日本人にとってなじみの深いスタジアムがその役割を終え、新たに建設されているスタジアムにその役割を渡す。今回はヤンキースにおけるスタジアム新旧交代のメリットをチームにとっての収益面から見てみたい。

 大打者ベーブ・ルースの加入と活躍をきっかけに建設されたから“ルースが建てた家”というニックネームを持つ現ヤンキースタジアムだが、1974、75年の2年間に渡り大リノベーションが行われてもいる。ただその近代化が図られたとはいえ、基本デザインはオリジナルに近く、さらにそのリノベーションから既に30年以上が経っているため、建物そのものの老朽化だけでなく、現在のスポーツビジネスの主流から見るとかなり見劣りのする施設になっていたのも事実だ。

 まず収容人数だが、現在は5万7545人で、人気の高いヤンキースにとってその数では悪いものではない。実際、現スタジアムの北側に建設されている新ヤンキースタジアムの収容人数は約5万3000人に減少するのである。新スタジアムに移ることで収入減になるようにも見える。だが、実際はそれ以外の面での拡充が大きいのだ。

 まず大幅に増やされるのが豪華なスイートボックスである。現代のアメリカ・プロスポーツにおいて高額なスイートボックスは重要な収入源となっている。しかし現スタジアムでは人気チームかつアメリカ最大都市地域にありながら19しかなかったのである。新スタジアムでは一挙に3倍以上の67に増やされる予定だ。

 また、近年プロスポーツ経営ではどこもスタジアムでの物販、飲食による収入に力を入れるを入れている。来場したファンにゲームだけなく、ボールパークを楽しんでもらい、同時にお金を落としてもらおうという発想だ。ヤンキースタジアムはその点でも不利な状況にあった。スタンド裏のコンコースが貧弱で、来場したファンがゆったりとゲームの前後、合間にグッズやフードを買うということは難しく、逆に毎回混雑に巻き込まれることを覚悟しなければならないような環境だったのである。

 ネット裏の外周部分にチームショップを増設したり、外部に飲食施設を作ったりして対応してはいたが、ボールパークとしての一体感という意味では見劣りしていた。

 新スタジアムの外観は現スタジアムに似たレトロなものとなっており、フィールドのデザインも似ているが、スタンドと外周部の間には広いコンコースがとられており、施設も増大されている。ファンの購買意識を高めるように環境整備がなされているのだ。

 収容人数は減ってもこれらの拡充によって新スタジアムへの移転は大きな収入増が確実視されているのである。MLBで一番裕福な球団として知られるヤンキースだが、更なる飛躍が2009年に起こるかもしれない。

 同時に今年は今年で現スタジアム最後のシーズンというアピール・ポイントもある。その最初のクライマックスが7月のオールスターゲーム開催だ。全米のMLBファンが現スタジアムの思い出に浸るのは確実である。

 となるとラストゲームが最大の焦点になるが、これはヤンキースのポストシーズン次第ということになる。現スタジアムの思い出演出、というビジネス面からも今年はワールドシリーズ進出はある意味ノルマになっているのだ。

January 31, 2008 12:41 PM

2008年01月24日

薬物騒動うんざりだが、今度はノブロックに注目

 もううんざり気味だが、ミッチェル・レポートによる薬物使用問題のスキャンダルはまだまだ続く。

 22日にはまた新たな問題が発覚した。米下院政府改革委員会が、大リーグの薬物問題を調べる公聴会と事前面談について、元MLB選手のチャック・ノブロックに対する出席要求を、「任意」から強制力を持つ召喚に切り替えたと発表したのだ。ノブロックはツインズ、ヤンキース、ロイヤルズで活躍した元内野手。2002年いっぱいで引退したが、98年から01年まで在籍したヤンキースではデレク・ジーター内野手とのコンビで知られた。

 そんなノブロックもレポートでは01年にブライアン・マクナミー元トレーナーからヒト成長ホルモン(HGH)の注射を受けたと指摘されている。つまり焦点となっているロジャー・クレメンス投手の使用問題に直結している疑いがあるのだ。

 こうしたことにより2月13日に予定されている公聴会とその事前面談への出席を求められていたのである。ちなみに公聴会出席を求められているのはノブロックの他、クレメンス、やはりヤンキースのアンディ・ペティット投手、マクナミー氏など5人。

 事前面談はノブロックが最初に行われる予定で、出席要求に対する返事の期限が18日だったものの、ノブロックはこれに応じなかったのだという。そのため委員会は召喚に至ったとしている。

 ノブロックは23日現在メディアの前に姿を現していないようで、彼の真意は不明だ。

 その他の出席要求を受けた人物たちだが事前面談がクレメンスは26日に、さらにペティットが30日に、マクナミー氏は31日に予定されている。各氏とも出席する見込みだ。

 クレメンスが使用を否定し続け、マクナミー氏と対立し、ペティットは早々と使用を認めたのはこれまでもお伝えしたとおり。そこに今回ノブロックが謎の行動を取った印象で、果たして召喚による面談で何を話し、クレメンスやマクナミー氏にどんな影響を与えることになるか。さらに混迷は深くなっている。本当にもううんざりなのだが。

January 24, 2008 10:20 AM

2008年01月17日

薬物問題、サンタナ争奪戦、まだまだ続く激震

 ミッチェル・レポートが引き起こしたMLB選手薬物使用スキャンダルの激震はいまだ収まる様子がない。15日には首都ワシントンDCでこの問題に対する公聴会が開催された。

 米下院政府改革委員会が開いたもので、バド・セリグ・コミッショナー、ドナルド・フェア選手会専務理事らが出席。委員会による薬物対策の遅れに対する責任や再発防止策に関して証言を行った。

 セリグ・コミッショナーはこの問題に関して自分の責任を認めたうえで、薬物などの禁止行為を調査する新部門を設立するなどリポートが勧告した対策を履行しはじめたことなどを強調している。

 また、委員会は同公聴会の中でリポートの中で薬物使用選手と指摘されているアストロズのミゲル・テハダ内野手が虚偽の発言をした可能性があるとし、司法省に偽証罪の捜査をするよう要請した。これは2005年に同委員会が調査をした際、テハダが薬物使用を否定する証言をしたことを問題視したもの。遂にこのスキャンダルは司法省をも巻き込んだ事件へと発展してしまったのである。

 ただし今回の公聴会の内容に関しては事前に予想されていたものばかりで、意外な展開はなかったのも事実だ。証言を行ったのがコミッショナーなどこうしたやりとりに慣れている人物ばかりだったのがその原因の1つだろう。2月13日に渦中のロジャー・クレメンス投手などが出席する公聴会が開かれる予定で、そちらの展開のほうが気になるところではある。

 問題の継続、という意味ではその15日付でニューヨーク・ポストが「まだプレー中」という見出しで報じたヤンキースによるツインズ左腕ジョアン・サンタナ投手獲得問題もまだ継続中だ。

 サンタナ争奪戦はメッツが優位といわれており、レッドソックスも熱心に動いていることからヤンキースはあきらめるのでは、ともいわれていた。が、14日にハンク・スタインブレナー副社長がまだ戦線から脱落していないことを明言したのである。

 ツインズはフィル・ヒューズ投手、メルキー・カブレラ外野手などを要求していると見られており、この2選手をヤンキースも交換要員に入れている模様だ。気になる松井秀喜外野手についてはニューヨーク・ポストなどの報道ではツインズの希望選手には含まれていなかった。

 こちらの問題もまだまだ波乱が続きそうである。

January 17, 2008 09:12 AM

2008年01月10日

さらにエスカレート!クレメンス対マクナミー氏

 ミッチェル・レポートで浮かび上がった元ヤンキース、ロジャー・クレメンス投手の薬物使用疑惑がさらなる展開を見せた。

 この疑惑については現在、先週お伝えしたレポートの調査で使用を証言した元トレーナー、ブライアン・マクナミー氏と使用を否定するクレメンス側の食い違いが大きな焦点となっている。両者の衝突は今週、メディアと法廷を巻き込んだ争いへと発展してしまったのだ。

 まず動きを見せたのはクレメンス側だった。6日夕方大手テレビ局CBSの人気番組「60ミニッツ」に独占インタビューという形で出演。ステロイドやヒト成長ホルモンの使用は「一切ない」とし、マクナミー氏から受けた注射は「リドカインという痛み止めの麻酔とビタミンB12だけだ」と疑惑をあらためて否定した。

 また、同日マクナミー氏をミッチェル・レポートのクレメンス自身に関する内容が15カ所事実に反しており、名誉を棄損されたと、テキサス州の裁判所に告訴したことも明らかになったのである。

 さらに翌日レポートが発表されてから初めて記者会見を開き、告訴の理由について同様の説明をし、再度身の潔白を主張した。この会見では「私は刑務所に行く。あなたが望むことは何でもする」とマクナミー氏が話すクレメンスとマクナミー氏の電話録音テープが公開されてもいる。

 対するマクナミー氏だが、8日に発売されたスポーツ誌スポーツ・イラストレイテッド最新号で、禁止薬物使用をあらためて証言している。今回は「彼は冬や春季キャンプでは薬物を使わなかった。7月下旬から8月に摂取し、4-6週間以上は続けて使用しなかった」と具体的な使用時期について触れているのが特徴だ。

 さらにマクナミー側の弁護士が12月にクレメンス側弁護士に雇われた調査官がマクナミー氏に対して行ったインタビューの録音テープをすべて公表するべきだと主張してもいる。これは同氏の証言がぶれていないことの確度を上げようということだろう。

 訴訟の当事者双方が大手メディアを活用し、相手の弱点をついて少しでも優位に事を運ぼうとするのはアメリカではよくあることではある。しかし、ファンとしてはできるならば後味が悪くならないような展開になってもらいたいところだ。

 現在の状況で判断すると、先週にも話題に出ていたが、いくら潔白を主張しても証明しきれないクレメンス側が不利なように見える。電話録音テープにしても、無断で録音され、しかも消去された部分があるなど、対抗手段として疑問がある部分も多い。

 今後も相手に“勝つ”ための爆弾発言などが相次ぐのか、少なくともこの争いはまだまだ続きそうである。

January 10, 2008 10:05 AM

2008年01月03日

クレメンスの薬物疑惑報道続く

 例年、クリスマスから元日にかけてのホリデー・シーズンにはMLBに関する大きな動き、ニュースがなくなってしまう。が、この冬は違った。

 ミッチェル・リポートによって薬物使用疑惑にあるロジャー・クレメンス投手に関する報道が続いているのだ。それも通常のMLB報道とはかなり違った形で。

 まず12月26日、クレメンス側のラスティ・ハーディン弁護士が「(リポートでは)真実を語っていない者がいる。ロジャーは全て否定しており、信頼に値する」と再度疑惑を否定したうえで、リポートの正当性について独自に調査を行うことを発表した。

 これに対抗する動きに出たのが、リポート内でクレメンスに薬物の注射をしていたと証言した元トレーナー、ブライアン・マクネイミー氏。実はクレメンスの件で証言しているのは同氏だけであり、クレメンス側の独自調査とは実質的にマクネイミー氏に対するものなのである。

 それに対抗するものとして29日のニューヨークタイムズが報じたのが、マクネイミー氏側が名誉毀損などの案件に精通するリチャード・エメリー弁護士と契約したというもの。同紙はクレメンス側がマクネイミー氏の証言が嘘だと発言し続けた場合、訴えを起こすだろうというエメリー弁護士のコメントを載せている。

 さらに同紙は元日付の紙面で、クレメンスとハーディン弁護士側の戦略とその困難さを分析した記事を掲載した。

 それによると、薬物を“使用しなかった”ことを証明することの難しさをハーディン弁護士自ら認めているのだという。

 さらにもう1つ大きな問題として、クレメンスの練習パートナーであるヤンキースのアンディ・ペティット投手が既報どおり薬物使用を認めている点が挙げられている。これによりマクネイミー氏の証言を否定するのが難しくなっているのでは、という指摘だ。これに関してもハーディン弁護士は「いい質問だ。その件に関する回答を私は持っていない」と答えたという。

 クレメンスのケースはさながら法廷ものストーリーの様相を呈してきた。さらに泥沼にはまっていくのか、うまい落としどころを双方が見つけるのか、はたまたMLB側は動くのか、年末年始に関係なく先行きはまったく不透明な状況にある。

 そんななか、同じ日にクレメンスが12日に地元テキサス州で高校のコーチたちを前に講演を行うことが明らかになった。疑惑と混乱の中で、クレメンスがどんな話をするのか、注目される。

January 3, 2008 02:14 PM