渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2007年10月25日

マッティングリー新監督が有力

 注目されていたヤンキース、ジョー・トーリ監督の去就問題が意外な形で決着した。

 これまで取り上げてきたように、当初はチーム側がトーリ監督を更迭するだろうと見られていた。しかし次第に残留を望む声が出、チーム首脳会談が混沌としていることをお伝えしたのが先週17日のこと。その翌18日に決着の発表がされたのだが、その内容は更迭でも残留でもなく、トーリ監督がチームからのオファーを拒絶した、というものだったから驚かざるを得なかった。

 チームから提示された契約条件が、1年契約の年俸500万ドルに出来高300万ドル、2年目についてはワールドシリーズに進出した場合自動的に更新、ということは発表と同時に伝えられた。このため今年800万ドルを受け取っていたトーリ監督が実質的な減俸にプライドを傷つけられ、拒否につながったのだろう、という推測を多くメディアが流すことになったのである。

 そして実際、19日にトーリ監督は会見を開き、この提示を侮辱的なものと感じたこと、自らは複数年契約を望んでいたことなどを明らかにしたのだ。しかも会見場所がヤンキースの施設ではなく、ニューヨーク郊外、自宅近くのホテルだったというからトーリ監督の怒りはかなりのもののようだ。

 首脳会議ですぐ決断できず、しかも怒りを買って当然ともとれるオファーを出して断られた首脳陣には正直誰もが疑問符をつけるのではないだろうか。

 いずれにせよトーリ監督が去ったことで、新しい監督を決めなければならないチーム側は今週に入り候補者との面接を続けている。22日、最初に面談を受けたのは前マーリンズ監督のジョー・ジラルディ氏。同氏は2005年にヤンキースのベンチコーチをしていた経験を持つ。

 続いて23日にはドン・マッティングリー・ベンチコーチが面談を受けた。マッティングリー・コーチは「これまでは公の席で口にすることはなかったが、ヤンキースの監督は前から、やりたかった」と面談後、監督就任への強い意欲をコメントしている。実際ニューヨークのメディアで本命視されているのが同コーチだ。デイリーニュースなどは23日付の裏1面で“ザ・ナチュラル”という見出しでこの日面談することを伝え、最高の人材であり、監督に就任するのは“自然”なことと持ち上げている。

 MLBでの監督経験がない点が不安だが、元ヤンキースの選手で今もファンから高い人気を得ており、実際のところ一番の候補者と見て間違いないことだろう。

 ただトーリ監督との交渉で下手を打ってしまったイメージが強いヤンキース首脳陣が、続けて何か失敗をしてしまうのではないか、そちらの不安の方がマッティングリー・コーチの経験不足より強かったりもするのだが。

October 25, 2007 07:36 AM

2007年10月18日

トーリ監督去就問題ヒートアップ

 MLBプレーオフの激闘が続く中、ニューヨークではヤンキースのジョー・トーリ監督の去就問題がヒートアップしてきた。現在ファンやメディアの目はヤンキースタジアムのあるブロンクスではなく、遠くフロリダ州タンパに注がれている。タンパにあるジョージ・スタインブレナー・オーナーの豪華な邸宅でヤンキース首脳会議が行われているためだ。

 スタインブレナーがディビジョン・シリーズで敗退した場合に同監督との契約を更新しない意向を示したため、一時はトーリ監督の更迭は決定的とも見られていた。が、その後状況が変化した。

 ブライアン・キャッシュマンGMが、「彼の統率力はすばらしく、マジックのようだった。そんな人を見つけられたら、すぐに契約したい」とトーリを称賛すると共に、代わりとなる人材がいないことを示唆。さらにヤンキースの実権をスタインブレナーがハンクとハルの2人の息子に譲ったとの報道がされ、そのハンクが「トーレのことは大好きだし、彼を大いに称賛したい」とコメントしたことで、一挙に混沌とした状態になったのである。

 そして16日から始まったのが前述の首脳会議だ。この会議にはオーナーと2人の息子、キャッシュマンGM、社長のランディ・レヴィンなどが参加し、来シーズンに向けてのチーム運営重要事項が話し合われるもの。

 当然トーリ監督の去就はトップ項目のはずだが、16日にはこの件について何の発表もされず、この記事を書いている17日昼の段階でもまだ判明していない。ここまでもつれるとは正直予想できなかった。

 トーリ監督の実績を今一度振り返るならば、MLBの監督歴は1977年メッツで始まった。その後ブレーブス、カージナルスを経て96年にヤンキース監督に就任。その年いきなりワールドシリーズを制覇し、98年から2000年まで3連覇を達成。ア・リーグ東地区では98年から06年まで9年連続地区優勝している。

 ただワールドシリーズには敗退した03年以降出場しておらず、今シーズンは地区2位で終わったばかりでなくスタインブレナーの発言通りディビジョンシリーズ敗退に終わっている。

 今シーズンは不振だったとはいえ、実績の素晴らしさは確かに抜きん出ており、ニューヨーカーたちからも慕われているトーリ監督。同時に監督交代による活性化を望む気持ちが多くの人にあるのも事実。シーズンは終わっても、やきもきする日々があと少し続きそうである。

October 18, 2007 08:25 AM

2007年10月10日

「ゴジラはモンスターにほど遠かった」

 8日、ヤンキースの2007年が終わった。

 この日インディアンズに4-6で敗れ、地区シリーズ1勝3敗となり敗退が決定したのだ。
 
 シーズン前半の不調ぶりから考えればここまでよくやったものだ、とは思わないのがニューヨークである。ワールドシリーズに出てやっと地元ファンやメディアから評価されるのがスター選手を揃えるヤンキースの宿命なのだ。

 翌9日付の地元各紙が大きく打った見出しには“ジ・エンド”(デイリーニューズ)というのはまだいいほうで、ブロンクス・ボンバーズというニックネームをもじった“ブロンクスの馬鹿者ども”(ニューヨークポスト)というかなりきついものまであった。

 3年連続で地区シリーズ敗退というのは本当に許せないことのようだ。それ故、チーム敗退以上の扱いになっているのがジョー・トーリ監督の去就問題である。ニューヨークポストが“打ち負かされた男”、デイリーニューズが“ここから出て行け!”とともに1面でトーリが更迭される可能性が高いことを伝えている。

 これはジョージ・スタインブレナー・オーナーが敗退の場合トーリ監督を更迭することを示唆する発言をしたことを背景にしたものだ。ニューヨークタイムズまでが“シーズン終了、たぶん(トーリ)時代も”という見出しをつけるなど、メディアはトーリ監督の更迭がほぼ決定しているかのような雰囲気になっている。今後の動きが注目されるところだ。

 そして敗退の責任をとらされる可能性があるのは監督だけではない。選手にもその矛先は向けられている。一番注目選手はいうまでもなくアレックス・ロドリゲス内野手だが、現在のところ彼は自身の去就について明言を避けている。

 松井秀喜外野手についても決して安穏とはしていられない。デイリニューズは「彼らをキープする?彼らを放り出す?」という監督や選手をどうすべきかという記事を掲載しているが、その中で松井についてシーズン後半ヒザのケガで調子を落としたことを指摘、ただまだ頼りになる貢献者だ、と一定の評価もしていた。が、ニューヨークポストは「ゴジラはモンスターにほど遠かった」というタイトルで、ヒザの問題はあったものの松井が地区シリーズで1試合を除きまったく貢献できなかったことを厳しくついた記事を掲載してもいるのだ。

 とにもかくにも今回の敗退により、大きな改革が実行されるのは避けられない状況にある。現ヤンキースタジアム最後の年となる2008年に向けて、ヤンキースのオフシーズンは大嵐が吹きそうだ。

October 10, 2007 07:31 AM

2007年10月04日

メッツの歴史的敗退

 いよいよ3日、MLBのプレーオフが始まった。

 ただ今回のプレーオフをニューヨークから眺める場合、どうしても触れておかなければいけないことがある。メッツが進出できなかったことだ。シーズン前半から好調だったメッツは9月12日の時点で2位フィリーズに7ゲームも差をつけていた。が、その後2週間で5連敗と4連敗を含む4勝11敗という極度の不振状態に陥り、27日終了時点でとうとう追いつかれてしまった。

 それでも30日に行われた最終戦の結果次第では可能性が残っていたのだが、開始前からファンも地元メディアもすっかり暗い雰囲気に飲み込まれていたのが印象的だった。そしてマーリンズとの対戦結果は1-8の完敗。対するフィリーズはナショナルズに6-1で勝ち、フィリーズの奇跡の進出、メッツの歴史的敗退が決まったのだ。

 この日の夜、ニューヨーク地元テレビのスポーツ・ニュースの多くが、時系列的にメッツとフィリーズの試合経過を紹介し、深い落胆の情を示していた。きっとフィラデルフィアは同じ画面構成でまったく逆の感情を表していたことだろう。ニューヨークとフィラデルフィアは車で2時間ほどの距離しかないのに、これほどの明暗が生まれているのだと考えるとちょっとおもしろくさえあった。

 もちろんニューヨークタイムズをはじめ、翌1日付けのニューヨーク地元紙はいずれも頭を抱えるなどして敗退を悲しむファンの写真を1面などで大きく掲載していた。ファンの落胆をまず先頭に持ってくるところが地元での根付き方を表してもいるようだった。

 さて、プレーオフである。ニューヨークからは無事ヤンキースがワイルドカードで進出、ディビジョン・シリーズで4日からインディアンスと対戦する。

 今シーズン、ヤンキースはインディアンスに6勝負け無しと分が良い。楽勝ムードが漂っているかというと、地元メディアではそうでもないのが実情だ。日本人としてはひざの治療を行っている松井秀喜外野手の様子が気になるが、こちらでそれ以上に“心配”されているのがアレックス・ロドリゲス内野手である。

 MVPの有力候補になるほど絶好調だったAロッドのどこが心配なのか。それは彼がプレーオフで活躍する“ミスター・オクトーバー”になれるのか?という点である。過去Aロッドはプレーオフに入って調子を落とし、ワールド・シリーズ・チャンピオンになれなかったことの戦犯扱いされたことがあった。その記憶が甦り、また?と心配しているのである。3日付けのニューヨークポストなど「Aロッド:新しいミスター・オクトーバー?」というそのままな記事をスポーツ面のトップで掲載しているほどだ。

 メッツ最終戦の例もあるが、始まる前からあまり悲観的になるのもどうかと思う。それでも心配してしまうのが地元意識というものなのかもしれない。ヤンキースがプレーオフをどう戦い、地元がどう一喜一憂するか楽しみである。

October 4, 2007 08:02 AM