渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2007年03月29日

ヤ軍投手陣ピンチ…井川は4番手か

 ヤンキースの投手陣がいきなりピンチに陥った。23日に開幕投手を確実視されていた王建民が右太もも裏を負傷、開幕絶望となったのに加え、25日には先発候補となっていたジェフリー・カーステンズがタイガース戦で右ひじを痛めてしまった。先週お伝えしたように、アンディ・ペティットが19日の練習で腰に違和感を感じて登板を回避していただけに、豊富だったはずの先発陣がいきなり人材不足の様相を呈してしまったのだ。

 この事態を26日付のニューヨークポストは「マウンド・メルトダウン(炉心溶解)」という悲壮感あふれる見出しで伝えていた。ただ日本でも報道されているように、これで井川慶が開幕先発枠入りすることが確実になったのも事実だ。

 さらにひょっとして開幕投手の可能性も? と考えてしまうのは日本人なら致し方ないかもしれない。だが、残念ながらその期待は外れそうである。

 28日付のニューヨーク地元各紙は開幕投手にはカール・パバーノが有力候補になった、と報じている。27日のツインズ戦で6回を6安打、1四球で2失点と好投したためだ。

 31歳のパバーノは一昨年4年間3995万ドルの大型契約でヤンキースに入団したものの、けがや自動車事故が重なり、2005年6月以来21カ月にわたり1度もメジャーでは投げていない。今シーズンもキャンプ開始時には活躍できるかどうか疑問視される存在だった。それが一転開幕投手候補である。

 デイリーニューズは裏1面でパバーノの写真と共に「準備はできている」というパバーノの言葉を大きく掲載して、この件を伝えている。対してニューズデーが「のけ者から救世主へ」という見出しをつけたのもパバーノとヤンキースの状況変化をよく表していて面白い。

 ただニューヨークポストの記事はやはり4月2日ヤンキー・スタジアムでの開幕戦の先発はパバーノでほぼ決まり、としながらもヤンキースの開幕投手はプレッシャーが厳しいため、早くに決まってしまうことはあまり好ましくない、といったといった論調になっていた。確かにヤンキースというチームを考えるとうなずけるところではある。

 さらに興味深かったのは、パバーノが開幕投手に選ばれる理由をほかの投手の登板日程などをあげて説明している中で、井川に関し「トーリはケイ・イガワのアメリカ初登場を開幕戦の満員のヤンキースタジアムにすることを望んでいない」としている点。

 ジョー・トーリ監督は井川のMLBデビューに過度のプレッシャーがかからないように配慮しているというわけだ。日本のファンからするとかなり残念ではあるが正しい判断のように思える。井川は4番手に入る可能性が高いようだ。

 ここへきて紆余曲折あったが、いよいよ来週シーズンが始まる。どんな幕開けが待っているだろうか。

March 29, 2007 09:54 AM

2007年03月22日

井川最高のスタート!先発争いで優位に

 先々週、ニューヨークの地元メディアがヤンキースの井川慶投手に対し厳しい目を向けていることを伝えたが、現在一転して評価が上がっている。これは20日のフィリーズ戦で先発し、5回を無失点に抑えたためだ。

 21日付のニューヨークポストは「イガワ、これまでで最高のスタート」という見出しをつけた記事で登板内容を紹介したうえで、「あなたがあらを探したいなら、日本からの輸入選手は3四球を出した。しかし、彼は3つの三振を奪い、4回の先発(12イニング)で合計15奪三振となっている、」と、これまでとはうってかわって井川を養護した。さらに「27歳の左腕投手はチームの第5先発を任される可能性を固めた」としている。

 またデイリーニューズも「イガワがローテーションの状況を指揮する」という見出しの記事を掲載。今回の好投で井川が先発ローテーション決定で優位に立ったことを強調した。

 現在井川と5つ目の先発枠を争っているのが、若手有望株のジェフ・カーステンス投手。13回1/3を投げて無四球、11奪三振、防御率2.70と良い結果を出しており、20日の試合まではカーステンス優位といった雰囲気になっていたのである。

 それがこの好投で逆転したというわけだ。デイリーニューズはジョー・トーリ監督のこの試合が「ビッグ・スタート」であり、「我々はイガワが先発であって欲しい」という発言を乗せ、その状況をアピールしていた。

 さらに各紙とも同じ記事で井川好投にほっとした、という意味合いの言葉を載せているのも印象的だった。これはローテーションの一角を担う左腕のアンディ・ペティットが19日の練習で腰に異常を訴え、23日に予定されていた登板を回避する事態になったため。ローテーション争いどころかいきなり穴が開くかもしれず、実は井川にすがりたい状況だったのである。

 ただペティットのけがは軽傷で、24日には登板できそうだということが、同じ20日に明らかになっており、チームとメディアにとって二重にほっとした日となったようだ。

 とりあえず先発争いでは1歩優位に立つことができた井川。ただこれで確定したわけではない。次の登板でもこれまで以上の投球内容が必須であることには変わりはないのだ。

 MLB開幕特集を組んだ老舗スポーツ総合誌、スポーツ・イラストレイテッドの最新号。その表紙に起用されているのが、レッドソックスの松坂大輔投手だ。さらに8ページにわたり松坂の特徴や経歴を紹介した記事も掲載されている。まさに日本人選手史に残る快挙で、アメリカでの注目度の高さをあらためて実感させられた。

March 22, 2007 10:06 AM

2007年03月15日

松坂ファンタジー・リーグは新人扱い

 これまで何度か紹介してきたが、アメリカでは今ファンタジー・スポーツが大人気となっている。ファンタジー・スポーツとは仲間内や出版社などが主催するリーグ内で、実在の選手たちによる自分だけの架空チームを作り、現実の成績によって得点を競うゲームだ。

 特に企業が参加料をとって運営するリーグでは多額の賞金が出るものも多く、最近では専門の情報サービスや専門誌も多数あるそれらは、一般の新聞やスポーツ誌と違い、あくまでこのゲームで勝つための視点で提供されているため、数字を基本にある意味通常よりシビアに選手を見ているのが特徴となっている。

 今回そんなファンタジー・スポーツ専門誌が話題の日本人ルーキー投手2人をどう評価しているかチェックしてみた。

 まずレッドソックスの松坂大輔投手についてだが、「スポーティング・ニューズ」のファンタジー・ベースボール特集号では、ア・リーグの投手ランキングで19位に位置づけされている。成績予想は14勝9敗、防御率3.92、投球回数は195で177三振。

 かなりいい予想内容にもかかわらず、19位とは? と思われるかもしれない。その理由は「ミスター・ジャイロボールは次の太ったヒキガエル(ヒデキ・イラブ)なのか、本物なのか? 見極めるために払いすぎないように」という解説の最後の部分が示している。

 かなり良い選手なのは間違いなさそうだが、ファンタジー・リーグで松坂をチームに入れるには、MLBでの実績がないためリスクが大きいということなのだ。ポテンシャルは認められているが、やはりルーキー、という扱いなのである。

 同じように「ファンタジー・スポーツ」誌も松坂を期待されるルーキーのトップにランキングしたものの、先発投手ランキングでは15位にしている。こちらの成績予想は12勝、145奪三振、防御率3.33だった。

 一方ヤンキースの井川慶投手はというとさらに厳しく、「スポーティング・ニューズ」はランク外で成績予想もなく、「彼がローテーション枠を確保すれば、確かに価値が出るだろう」という評価。「ファンタジー・スポーツ」も80位以下のランクながら「春の進展ぶりに要注目、もし彼が素早く順応できれば12勝、177奪三振、防御率3.88も期待できる」としている。注目はすべきだがすぐにゲームで使える選手とはいえない、ということのようだ。

 両投手ともファンタジー・ベースボールではまだまだ使いづらい、あくまでルーキー扱い、といったところではある。ただこのゲームでは選手の調子が良ければ、評価はすぐに上昇する。できれば2人とも開幕から大活躍して、実は最もゲームで使うべき選手だった、と言われるようになってもらいたいものだ。

March 15, 2007 01:56 PM

2007年03月08日

井川とヒューズを見守るNYメディア

 5日フロリダ州タンパで、ヤンキースの井川慶投手がオープン戦に初登板した。相手はタイガース。新左腕にニューヨーク地元メディアの注目も集まったが、1回いきなり1死満塁から、押し出し四球で先制点を献上。2回の先頭打者に安打を浴びて球数が予定の40球に達し、途中降板となってしまった。

 もちろんこの結果に各メディアの反応は厳しかった。6日付のデーリーニューズは「よれよれのスタート」という見出しでこの初登板をレポートする記事を掲載。以前メッツなどに所属し、荒れ球で知られた現ヤクルトの石井一久投手を引き合いに出して「カズ・イシイの再来」と評したり、「松坂獲得競争の残念賞」と実力を疑問視する他球団スカウトの声を紹介するなどさんざん。

 ただ1回のピンチを連続三振で切り抜けたことで「少なくとも見かけはまるで動揺していなかった」と、冷静だった点は評価していた。

 ニューズデーも同様で、「ホームベースを見つけられない」という見出しで、「ヤンキースが4600万ドルを投資した、日本人左腕が昨日混乱に陥った」と、3四球の荒れた投球内容を責めていた。

 こうして井川が厳しい目を向けられる一方、温かく期待されている若手投手もいる。弱冠20歳の右腕フィリップ・ヒューズ投手だ。3Aからのスタートになりそうだが、6日のインディアンズ戦で2回を無失点に抑え、評価が急上昇したのだ。

 ニューヨークポストなど「ヒュージ(巨大な)潜在力」という見出しをつけたほどで、各紙とも6月までにメジャー昇格は確実、ヤンキース投手陣を充実させてくれる貴重な人材、として扱っているのである。

 井川とヒューズのこの温度差は、即戦力として期待されている井川と将来性のヒューズという立ち位置の違いがあるためだが、それでも違いの大きさに驚きを感じずにはいられない。ニューヨーク・メディアらしい反応、と言うことではあるのだろう。

 いずれにせよ、井川、ヒューズともども良い点を伸ばし、悪い点を修正しつつ、開幕に臨めれば今季のヤンキースは強力な投手陣を構築できそうではある。

March 8, 2007 01:00 PM

2007年03月01日

井川の初登板、米メディア好意的に報道

 ヤンキースの井川慶投手が2月27日、紅白戦に登板、MLB初の実戦を体験した。

 初球でいきなりセーフティーバントを成功され、これで動揺するかと思われたが、その後併殺に切って取り、2回を1安打無失点で終えている。

 この初登板を、アメリカ・メディアはいずれも好意的に捉えているようだ。老舗総合スポーツ誌スポーツ・イラストレイテッドはそのウェブサイトで通信社APの記事に「紅白戦で井川投げる」という見出しをつけ、掲載。ジョー・トーレ監督が「彼は良かった。モーションに無駄がない」と高評価したことなどを伝えている。

 地元紙ニューズデーは「しっかりした第一印象」という見出しで、やはり井川の記事を掲載。特にロン・ギドリー・ピッチングコーチの「ベンチに引き揚げてきた選手のほとんどが『スーキー(嫌らしい球)』と話していた」というコメントを載せ、井川が好打者相手にも通用するであろうことを強く示唆している。

 と同時にこれらの記事に共通していたのが、日本の報道陣の多さに関すること。井川が打者と対決する直前プレートの後ろには18人ものカメラマンが並んだらしい。

 ただ、単にその多さに驚いただけではなく、カメラの砲列を前にしても井川が気にすることがなかったのが印象的だったようだ。ニューズデーは昨季までヤンキースにいたランディ・ジョンソンをわざわざ例に出してその点を強調していた。ジョンソンはカメラマンが1、2人後ろにいるのも嫌がったのだとか。それだけに井川の様子は一種の”大物感”を感じたようである。

 さらに同紙は「登板前井川の緊張を和らげようとギドリーは『楽しんで』と声をかけた。が、井川は冷静だったと主張。『神経質にはならなかった』と通訳を通じて話した。『確かに興奮はしたけれど』」とも掲載している。

 井川の初登板は大成功だったといえるだろう。初シーズンなのでいろいろ戸惑いはあるだろうが、開幕に向け順調にコンディションを高めていってもらいたいものである。

March 1, 2007 05:56 PM