渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2006年12月29日

NYは井川よりジョンソンの去就に関心

 交渉期限直前のアメリカ東部時間27日、井川慶投手とヤンキースが契約を結んだ。ニューヨークの様子だが、その反響は意外と少ない。

  ニューズデーは28日付紙面で「ヤンキース、イガワと折り合う」という記事を掲載したが、その冒頭で「ヤンキースは短いプレスリリースで、日本人左腕ケイ・イガワと契約したことを正式に知らせる時間をとった」と、発表が簡単なリリースだけだったことを伝えた。

 その後「イガワとの契約に驚きはない。ヤンキースはクリスマス前に大筋で合意していたからだ」と続き、松坂とレッドソックスのドラマチックな契約とは違う、と代理人アーン・テレム氏を通じての交渉がスムーズにいったことを強調している。合意が既に済んでいて、時間はかかったが交渉自体はすんなりと進んだので、松坂の時のような盛り上がりに欠けたということだろうか。井川が日本に滞在しており、現地での記者会見は1月8日以降になる予定という事情も影響しているのだろう。

 同紙はそのうえで、5年間2000万ドルという契約と2600万ドルの落札額をあげ、総額では約2倍にあたる松坂の契約と比較。「マツザカは先発1番手と見られているが、イガワは4番か5番手と見られており、さらにヤンキースはローテーション入りを保証していない」としているが、それでこの差は? といったところだろうか。

 ただその井川の立場にも大きな影響を与えるであろう動きが契約締結前の25日に出て、皆の注目を集めている。左腕のベテラン、ランディ・ジョンソンをトレードに出す動きが浮上したのだ。まだ打診段階ということだが、代理人アラン・ニーロ氏が認めたこともあって地元メディアは既にジョンソンが抜けることを前提にしたような論調での報道ばかりになっている。

 現在はジョンソンに代わる投手陣補強に注目点が移っている状態だ。最初はアスレチックスからFAになったバリー・ジト投手獲得に乗り出すのでは、という報道が目立ったが、28日付けではどの新聞もジトはジャイアンツに獲られそう、と気落ちした記事を掲載し、結局、ジ軍入りが決まった。

 そんな状況のなかで発表された井川の契約はとりあえずきっちり収まってくれた、という印象が強く、今はともかくジョンソンの穴(まだ穴が開いたわけではないのだが)を埋めることが先決、というのが地元メディアやファンの心境なのだろう。

 ただジョンソンが本当に抜ければ、井川が先発枠確保に1歩前進するのは確実である。ニューヨークでの記者会見時にどういう状況に置かれているか、ヤンキースの動向から目が離すことができずに年を越すことになりそうだ。

December 29, 2006 10:12 AM

2006年12月22日

ニューヨークの井川慶

 ポスティングシステムでヤンキースと契約交渉中の井川慶投手が20日、ニューヨークに到着。ヤンキースタジアムなどを訪問した。

 ヤンキースのジャンパーを着て報道陣の前に現れた井川の姿は、日本でも報道されたと思うが、通常FAで交渉中の選手がこのような姿で取材を受けることはあまりない。交渉がすでに大筋で合意していることはもちろんだが、ポスティングによって他のチームとの交渉権が井川側にないということもあり、実現したのであろう。

 この井川のニューヨーク訪問についてニューヨークの地元紙は21日付けで「ヤンキース、イガワと挨拶、それから詳細を交渉」(ニューヨーク・タイムズ)、「イガワ、スタジアムでの最初の時をエンジョイ」(ニューヨーク・ポスト)などと紹介している。

 中でも「イガワ、ビッグ・アップルをひとかじり」という長めの記事を掲載したのはデイリーニューズ。井川が20日夜、代理人のアーン・テレムとともにイタリアンレストランで食事を摂ったことを紹介。居合わせた女性客の「彼はとても若く見えた」というコメントなどを掲載している。

 さらに井川の「スタジアムには畏敬と信じられないような雰囲気がありました」という言葉に続き、テレム氏の「ミーティングはとてもうまく進んだ」と交渉が順調であることを強調するコメントも掲載。ランディ・レヴィン・ヤンキース社長が同席したことも明らかにしている。またスタジアム内ではジャンパーだけでなく、キャップもかぶり、その姿が「似合っていた」というブライアン・キャッシュマンGMの談話も載せていた。

 井川は21日に健康診断を受け、その後いよいよ交渉の最終段階に入ると見られている。23日には帰国する予定で、本人は「街を知るために歩き回って、クリスマスの雰囲気を楽しみたい」と語っていたとのこと。今のところ暖冬のニューヨークだが、新本拠地(になるはず)の最初の冬を十分に体感して欲しいものだ。そして帰国時に契約というクリスマスプレゼントを手にしていてくれれば、地元ファンも万々歳なのだが。

December 22, 2006 10:12 AM

2006年12月16日

NYも注目、1億ドル腕松坂

 ついにレッドソックスと契約に至った松坂大輔投手。期限いっぱいの14日まで及んだその契約交渉については期限に近づくにつれ、ESPNなど全米規模のスポーツ・メディアなどで大きく報道されていった。

 ここニューヨークのメディアも同様だったが、その扱いはそれなりの大きさ、といった感じだった。やはり地元優先ということなのだろう。全米のMLBファンが注目していようが、トップで扱われていたのはヤンキースやメッツ、さらに時期的なことからNFLの話題だったのである。

 そうした地元意識がよくわかるのが入団記者会見の翌日、15日付のニューヨークのローカル紙だ。1面で松坂のことを扱ったのはニューズデーのみ。それも元レッドソックスで、現ヤンキースのジョニー・デーモンがメーンで、レッドソックスの帽子をかぶる松坂の写真が小さく、見出しも無しに掲載されただけだった。

 記事に関してもニューヨーク・ポストなどは1/4ページほどのものを載せている程度。むしろ契約目前だった14日付のほうが扱いが大きかったのである。決裂の可能性があった交渉のやりとりには興味があっても、決まってしまえばライバルチームにとってめでたいことで、自分たちにとってうれしくない出来事、といったところか。

 そんななか、ニューヨーク・ポストがAP通信社の記事に付けた「ソックスの1億ドル腕、デッドラインで契約」という見出しが典型なのだが、各紙の松坂関連記事で頻繁に見られようになったのが”1億ドル腕”という表現だ。これはポスティングの約5111万ドルという落札額と6年間5200万ドルという総年俸額を合わせると約1億ドルになるところからきている。

 アメリカのメディアにとって、レッドソックスは松坂に1億ドルも使った、という意識が強いのだ。同時に落札額の高騰に対してポスティングシステムへの批判がかなり強くなっているといえる。

 さらにことさらニューヨークのメディアがこの額を気にするのにはわけがある。レッドソックスが松坂以外にも、5日にドジャースからFAになっていた2選手、J.D.ドリュー外野手と5年7000万ドル、フリオ・ルーゴ遊撃手と、4年3600万ドルで契約したためだ。ライバルは2週間のうちに”1億ドルの男”を含め、約2億ドルもの大型補強したことが気になっているのである。

 果たしてそれほどの大金を使って効果的な補強をできたのか、と疑問の目を向けているのだ。もちろんその目は松坂にもシーズンを通じてそそがれることになるだろう。

 なんだかんだといって、やはりライバルの動向は常に気になるもの。松坂は記者会見でライバル関係について聞かれ、「お互いにすごい意識し合っている相手だとは分かっていますし、普通の試合ではないということが分かっています」とこたえたそうだが、ニューヨークタイムズによるとさらに「皆、自分がヤンキースをたたきのめす、と言うべきだって言うんですよ」とジョークを言ったのだとか。

 松坂はこの屈指のライバル関係を理解しているようである。ブーイングの嵐が巻き起こるかもしれないが、彼がヤンキースタジアムのマウンドに立つ日が楽しみだ。

December 16, 2006 09:51 AM

2006年12月07日

ウインターミーティング

 4日からフロリダ州オーランドでMLBウインターミーティングが開催されている。この会議には各球団のGMなど重役たちとリーグや選手会幹部に加え、有力代理人までが集まり、トレードやFA選手の契約に関する交渉を盛んに行うのが特徴だ。

 まさに来季戦力を固めるため丁々発止渡り合うMLB冬の合戦というべき存在なのである。松坂大輔投手や井川慶投手の契約交渉についてもこのなかで進展していくだろうと考えられている。もちろんメディアは各陣営の動向をいち早くつかみ報道しようとするし、そんなメディアが駆け引きの武器に使われることも多い。

 ヤンキースと交渉中の井川についてだが、6日付けのニューヨーク・タイムズは「障害はないと思う」という井川の代理人アーン・テレム氏のコメントを掲載。さらに同氏が「我々は数日内に再び話し合い、詳細を詰め始めるだろう。最終的に合意できると信じている」と語ったとしている。

 このコメントからは年俸金額などの細かな条件のすりあわせにはまだ至っておらず、さらにこの時点では交渉が継続的に続けられているわけではないらしい、ということがうかがえる。

 ではヤンキース首脳陣の意識が今どこに向いているかというと、このオフにアストロズからFAとなったアンディ・ペティット投手獲得のようだ。

 実際先のコメントが載ったニューヨーク・タイムズをはじめ、6日付け地元紙のMLBセクションはいずれもペティット獲得の動きをトップに持ってきていた。今年34歳のペティットはアストロズ移籍以前はヤンキースに在籍、4度のワールドシリーズ制覇に貢献した。現時点では現役続行か引退か明らかにしていないが、代理人の発言などによるともう1年プレーする意向を見せているとのこと。

 これに対しヤンキース側はゼネラル・パートナー、スティーブ・スウィンデル氏が「私はアンディ・ペティットのファン。彼がピンストライプに戻って来るのを見るのを心待ちにしている。ファンも一緒だと思うよ」(ニューヨーク・タイムズ)と話すなど猛烈なラブコールを送っている。

 ペティットが復帰すると先発陣の一角を占めるのは確実で、すると現在4、5番目と見られている井川の位置に変化が出るのは必至。当然契約交渉にも影響が及ぶだろう。

 そんなドミノ現象まで考えるとこのミーティングがどれほど重要かわかる。果たして最高の戦果を上げるチームと選手陣営はどこかになるだろうか。ミーティングは7日終了予定だ。

December 7, 2006 10:01 AM