渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2006年05月25日

気になる稼頭央の打撃低迷

 メッツの快進撃が続いている。23日終了時点で、2位のフィリーズに4ゲーム差をつけナ・リーグ東地区首位だ。

 今シーズンのメッツを見ていて感じるのは、粘り強くなったということだ。例えば23日のフィリーズ戦では、延長16回実に5時間22分に渡る熱戦を制し、主砲カルロス・ベルトランのサヨナラ本塁打で勝利をもぎ取った。

 5月に入ってからの成績は11勝9敗と飛び抜けていいわけではない。ただ延長にもつれ込んだ試合が5つあり、そのうち3つに勝利している。また延長を含め、1点差で勝負がついた試合は12だった。終盤まで試合が壊れることなく進み、終盤のチャンスを着実に生かして接戦をものにしている、といったところだろうか。

 そんな中、気になるのが松井稼頭央の調子だ。4月20日に復帰を果たした松井はその後二塁に定着している。一時問題視された失策の数も今季はまだ1つだけ。むしろ好調といった方がよく、好守でファンを魅了する場面も多い。

 が、問題なのは打撃。19日に行われたヤンキースとのサブウェーシリーズ第1戦で相手エースのランディ・ジョソンから同点適時打を放つなど、新聞の写真などから受ける印象は悪くはない。

 しかし、成績はというと復帰以来の打率が2割3分1厘で、5月に入ってからは1割9分7里、さらにここ1週間では1割3分6厘と低迷してしまっているのだ。このため打順も定位置だった2番から下げられ、7番、時には8番を打つことも多くなっている。

 また23日の試合でも延長に入って2度回ってきたサヨナラの好機にいずれも凡退、チャンスで弱い印象まで出始めた。

 この不振ぶりに対し、地元メディアはチーム全体の調子がいいことと、守備が好調ということもあってか、まだバッシング復活というようなことにはなっていない。だが、全国紙のUSAトゥデーは17日付で、松井の打撃不調を取り上げ、松井復帰まで二塁を守り、その後背中の怪我で戦列を離れているアンダーソン・ヘルナンデスが松井のポジションを奪う可能性を示唆した。

 守備の向上により周囲の信頼を取り戻した松井だが、このまま打撃の調子が戻らなければまたもつらい立場に逆戻り、ということになってしまうかもしれない。

May 25, 2006 07:08 AM

2006年05月18日

松井の謝罪、謝らない米国社会に衝撃

 前回、ヤンキース松井秀喜の左手首骨折直後の地元メディアの様子をお伝えしたが、今回のアクシデントはその後全米のメディアにもう1つの衝撃を与えることとなった。それは骨折翌日の12日、手術後に広報を通じて松井から出された声明が原因だ。

 英語で出されたもので「連続試合出場に向けて、毎試合、起用してくれたことに関してはトーリ監督にとても感謝しています。申し訳ないと思うと同時に、チームメイトを落胆させたことに私も失望しています」という内容。松井らしい誠実で、悔しさに溢れたコメントだが、これがアメリカのスポーツ・メディア関係者にはビックリするものだったのだ。

 その理由は「アイ・フィール・ベリー・ソーリー」と、最上級の謝罪の言葉が使われていたためである。アメリカのスポーツ関係者がこのようなコメントを発表する際、まずこのような“謝罪”を口にすることはない。残念、落胆といった種類の言葉はあっても、誰かに“謝る”ということはないのである。それが麻薬やステロイドといった問題によるものであってもだ。

 この“謝らない”傾向は個人主義色の強いアメリカ社会には元々強いが、スポーツ界では契約問題などビジネス面もあって特に先鋭化してしまっているのが現実である。

 それ故松井が出したこの声明はさまざまな人々に衝撃を与えることになったのだ。

 ヤンキースのGMブライアン・キャッシュマンはこの声明に対し「マツイは特別だ。選手としてだけではなく、人間として素晴らしい。すべての選手が彼のようであってほしい」と話したという。

 また、ニューヨークを遠く離れたフロリダ州の日刊紙オーランド・センティネルのデイビッド・ウィットリーは「マツイは謝罪とともに完璧な英語を話す」と題した15日付けのコラムで、ほとんどのスポーツ関係者がこうしたことで謝罪しないことと、それがファンなどの不信感を助長していることを指摘し、マツイに学べとまで書いている。同じフロリダ州のブラデントン・ヘラルド紙でも同様のコラムが掲載された。

 さらにヒューストン・クロニクルやトロント・サンなど、数多くのメディアが松井の“謝罪”という言葉を見出しに入れて伝えたのである。

 こんなことがここまでのニュースになるアメリカ・スポーツ界もどうかと思わざる得ないが、そんな中で、感銘を与える松井はやはり素晴らしい人物というしかない。無事手術も成功したようで、あとは彼が望む通りシーズン内の復帰を祈るばかりだ。それが実現すれば、さらに松井に影響を受ける人が増えるに違いない。

May 18, 2006 10:40 AM

2006年05月13日

1768試合、途切れて関心呼ぶ皮肉

 大変なことが起こってしまった。ヤンキース松井秀喜外野手の左手首骨折である。11日のレッドソックス戦で発生したこのアクシデントに日本のファンもショックを受けただろうが、ここニューヨークでも大事件として受け止められている。

Matsi 060513.jpg

 ニュース専門チャンネルであるNY1は試合後、スポーツコーナーのトップで骨折を伝え、レフトフライをスライディングして捕球しようとした松井の左手が不自然に曲がる場面を何度も流している。12日日中には手術が行われていることを知らせるアップデートまで追加されるほどの扱いだ。

 12日付の新聞でも大々的な報道がされることとなった。ニューヨークタイムズはスポーツ面のトップで3枚の写真とことの経緯を知らせる記事を「手首骨折がマツイの連続出場を終わらせる」という見出しと共に掲載しただけでなく、1面にもスライディングする松井の写真を掲載した。

 ニューヨークポストも同様で、裏1面で松井の負傷場面を大きく掲載したばかりでなく、1面にも痛がる松井の写真とともに「厳しい骨折が松井の連続出場を終わらせる」という見出しが掲載されている。デイリーニューズ、ニューズデーは共に左手首を押さえてフィールドにひざまづく松井の写真を裏1全面に持ってきていた。

 松井の存在はニューヨークのスポーツファンにとってこれほど大きいものであり、さらに今回の負傷はショックな出来事としてとらえられているのである。

 また、全国紙のUSAトゥデーはスポーツ面のア・リーグ短信欄トップで、やはり写真入りでこの件を紹介しており、全米レベルでも関心度の高いアクシデントであることを示した。

 また同時に意外に思ったのが、今回の欠場によって連続出場が途切れることをフィーチャーしたメディアが多かったこと。ヤンキース入団後の518試合連続出場はMLBデビュー後のものとしてはMLB記録だが、あまり関心を呼んでこなかった。それが途切れた途端、巨人時代と合わせ1768試合連続出場だったことなどが伝えられるのだから、皮肉なものである。ただニューヨークポストは日本のほうが連続出場記録終了をビッグニュースとしてとらえられている、という記事を掲載していたりもするが。

 現在のところ、復帰まで少なくとも3カ月はかかる、とするメディアが多いようだ。松井が回復して1日も早くニューヨークと日本のファンの前に戻ってくることを願わずにはいられない。

May 13, 2006 01:02 PM

2006年05月11日

「東のエリート対決再び」

 9日からヤンキースタジアムでは今季初のヤンキース対レッドソックス3連戦が始まった。長年にわたるライバルとのしかも首位争いということで、地元は当然のごとく盛り上がっている。「東のエリート対決再び」(ニューヨークポスト)といった見出しが組まれるほど、ヤンキースとレッドソックスに対する特別意識は高く、そしてまさに宿命のライバルとして捉えているのだ。またスポーツ専門ケーブル・チャンネルのESPNによる全米中継も組まれており、全国的にも関心度高いカードとなっている。

 それだけに第1戦が終わった翌日の10付紙面はすごいことになった。「みにくい!」「ソックス戦でヤンクスとランディ、失策のコメディ」(ニューヨークポスト)、「ブー!」「レッドソックスがヤンクスを粉砕し、ボスはAロッドを非難、ファンはランディを攻撃」(デイリーニューズ)といったこれでもかと言わんばかりの非難の言葉が裏1面にでかでかと並んだのである。

 原因は前夜の負け試合。その内容が3対14と今季最多失点だっただけではなく、3失策、2暴投とミスが続き、松井秀喜が「自滅したような感じ」とコメントしたとおりの惨敗だったためだ。

 先発したのは左腕ランディ・ジョンソン。エースとして大きな期待を背負っての登板だったが4回途中5安打、5四球、7失点でノックアウトされてしまった。この間、3回にはアレックス・ロドリゲス三塁手のタイムリーエラーと4回にはメジャーに昇格したばかりのメルキー・カブレラ右翼手が何でもないフライを落とす2失策が起こっている。

 この内容だと確かに言葉のきつい地元メディアが「みにくい」「ブー」といった見出しを組むのももっともかもしれない。ジョー・トーリ監督も「みっともない試合だな。ランディだけじゃない。みんな駄目だ」と話したという。

 このような試合をしたときに、やはり出た、と思わせられたのはデイリーニューズが強調した“ボス”ことジョージ・スタインブレナー・オーナーの発言と行動。同紙によれば試合内容に怒ったスタインブレナーは8回表でスタジアムを去ってしまったのだとか。その際「彼らにはびっくりさせられる」と話し、さらに特に「三塁手!」と言ってロドリゲスを非難したという。

 確かにロドリゲスはこの日2失策で「これまでプレーしてきた中で最悪な試合だろう」と認めているが、名指しで非難されるほどだったかというと微妙な感じではある。

 この宿命の対決は、この後今月は22日からもボストンで3連戦が組まれている。これから皆がどれほどヒートアップしていくか楽しみだ。

May 11, 2006 12:56 PM

2006年05月04日

不調でも注目、特集Aロッド

 今季、初めてライバル・レッドソックスの対決、ボストン・フェンウェイパークで行われた2連戦は、1日の初戦が3対7でヤンキースの負け、続く2日の第2戦が雨天中止となってしまった。

 13連戦に1日空きができることとなったが、そんな“休み”翌日の3日付地元紙が一斉に取り上げた話題がアレックス・ロドリゲスのスランプだった。

 これまでもお伝えしてきたようにメディアを筆頭に皆がAロッドに向ける目は普通の選手よりも厳しい。今ひとつ調子の上がらないヤンキースの一大原因はAロッドにあると映っているのである。

 ただそれでもジョー・トーレ監督はAロッドを4番に据え続ける意向で、ニューヨークポストはその点に焦点を当てて記事を組んだ。トーレ監督は「マツイを見ろ、彼はアレックスと同じぐらい低調じゃないか」とここ8試合で32打数5安打1割5分6厘とやはり不調の松井秀喜を例に出して擁護したのだとか。

 しかし同紙はAロッドと松井では注目度も年俸も違う、と指摘してAロッドのスランプと打順変更を求めている。

 対してデイリーニューズは同じくAロッドのスランプをテーマにした記事を掲載しているが、こちらは少し楽観的。トーレ監督はAロッドが不調を深刻に考えすぎ、心配しすぎだと考えている、としている。

 さらにAロッドも心配しておらず、1日の試合で2度四球を選んだが、これは復調の印と捉えていることを紹介した。確かに球筋が見えているということであれば復調も近いかもしれない。

 このように両紙のトーンに違いが出たが、やはりAロッドは違う扱いを受ける選手ということを再認識させられた。

 ちなみにスポーツ・イラストレイテッドが行った470人の選手が投票した「過大評価されている選手」調査によると、1位は9%の票を集めたデレク・ジーターで、Aロッドは6%で3位だったとか。選手の間でもやはり特別な存在、ということのようだ。

 Aロッドと、そして今回引き合いに出されてしまった松井の完全復活で強いヤンキースが1日も早く戻ってくることが期待されている。

May 4, 2006 01:09 PM