渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2006年03月30日

開幕直前、スキャンダルの嵐

 いよいよMLBも開幕直前。皆がわくわくしてその日を待っている時期だが、ニューヨークのメディアではスキャンダルの嵐が吹いている。

 まず27日に明らかになり、28日の地元紙が一斉に報道したのがヤンキースのエース、“ビッグ・ユニット”ことランディ・ジョンソンの隠し子騒動だ。ジョンソンにヘザーという16歳になる娘がおり、その母親との間で養育費を巡り法的な問題になっていることがわかった、というのだ-。

 それは養育費を払わなかったというのではなく、ジョンソン側が“払いすぎた”10万ドルを返還するよう求めているというもの。ジョンソンは毎月養育費を最高5000ドル払い続けてきたが、母親が娘にトラックとパソコンを買ってくれるよう要求した後、法的な手続きに出たのだとか。

 母親側はあくまでも養育費の要求は正当なものと主張し、これまでジョンソンがヘザーに会ったのは1度だけなどと話している。これに対しジョンソンは「私の結婚の何年も前に終わった個人的な関係」でヘザーの父であることを認め、「彼女の税制的援助を一生懸命行ってきた」との声明を出し、さらにこれは家族の問題で、プライベートな問題としておきたいと語っている。

 また、ジョンソンのエージェントであるアラン・ニーロは、ジョンソンが「基本的に多額のお金を支払った善良な人間である」と強調、「彼女の母親はより多くの権利を得られると考えているように思える」と非難している。

 不透明な一件だが、すっきりと解決しジョンソンと彼の娘に平安が1日も早く訪れることを祈りたい。

 もう1つのスキャンダルはくすぶり続けているジャイアンツの主砲、バリー・ボンズのステロイド使用疑惑問題だ。

 27日に暴露本である「影のゲーム」が発売されたことを受けて、29日のデイリーニューズとニューヨーク・タイムズがこの件を大きく取り上げている。裏1面で「今、彼を止めろ!」という見出しを打ったデイリーニューズは開幕前にボンズへの調査を開始しろ、と主張する記事を掲載した。ニューヨーク・タイムズの記事も同じ論調だが、セリグMLBコミッショナーが48時間以内にこの件に関して調査を開始するだろうとしている。さらに調査責任者としてジョージ・ミッチェル元上院院内総務を指名するのでは、ともしている。

 たしかにボンズが今シーズン好調時のようにプレーできれば、ベーブ・ルースさらにはハンク・アーロンの記録を抜くことも可能なだけに、調査を行うならこのタイミングしかないだろう。果たして調査が開始されるのか、もしされたらどのタイミングでどんな結果が出されるのか、例年以上にホットな開幕となりそうだ。

 ベースボールに集中してシーズンを迎えたいものだが、どうもそれは難しそうである。

March 30, 2006 12:11 PM

2006年03月23日

米国メディア最後まで関心薄く…

 王ジャパンの優勝に終わったWBC。先週、決勝は落ち着いて見ることができそう、と書いたがそうした期待は甘かったようだ。

 20日の決勝戦はアメリカ東部時間の午後9時開始でスポーツ専門チャンネルのESPNが生中継することになっていた。が、その前に中継していた大学バスケットボールの試合が接戦で2度のオーバータイムに入ったため、放送が延長となりWBCの放送時間に食い込んでしまったのだ。

 そのため筆者を含め在米のファンは30分以上も放送開始を待たされることとなったのである。やっと中継が始まったときには1回表日本の攻撃中で2死満塁、既に1点入っていて、キューバは投手が代わっていた。

 やきもきして待っていただけに日本が先制していて嬉しかったが、大事な場面を見逃したという落胆があったのも事実である。その後の展開が素晴らしかったので少し救われた気がしたが。

 気になる翌21日の新聞報道だが、ニューヨークタイムズがスポーツ面のトップで「本当の意味でのワールドシリーズだ」と見出しをつけた記事を掲載した。メジャーリーガーが2人しかいない決勝戦の意義を評価したもので、WBCの開催意義を認めたものだ。

 が、試合開始前の写真は掲載されていたものの試合結果は掲載されていなかった。これは試合終了が東部時間の未明になったためで、締切時間に間に合わなかったためだ。日本も朝刊にはつらい開催時間だったようだが、アメリカでも時差の影響が出てしまったようである。

 では、さらに翌日の22日付けはどうだったか。ニューヨークタイムズはさらにケガの可能性などはあるが、野球の普及にとってWBCの開催は重要であるとする記事を掲載した。が、試合のレポート記事はなく、試合の記録だけがスポーツ面の最後に掲載されただけだったのである。ニューヨークポストやデイリーニュースなどのローカル紙に至ってはほとんど記事などない状況だった。

 最後に盛り上げるはずの米国代表が敗退したこともあるだろうが、最後までメディアの関心の薄さは変わることがなかったと言うしかない。

 日本はサッカーのW杯並みに盛り上がったと聞く。開催国にいるのにうらやましい限りだ。今回の反省として審判問題や開催地選定などがあがっているが、この“本国”での意識向上策もぜひ真剣に考えて欲しいものである。

March 23, 2006 11:01 AM

2006年03月16日

メディアから不遇な扱いWBC

 WBC第2ラウンド、日本対韓国戦の直前にこのコラムを書いている。読まれているときには王ジャパンの命運が決しているかもしれないが、今はどんな展開になるかのかワクワクドキドキしながら試合開始を待っているところだ。

 第2ラウンドに入って、WBCにはまったくハラハラさせられ通しである。日本対アメリカの“誤審”もあったが、その試合前からなのだ。

 筆者はニューヨークの自宅でWBCをテレビ観戦しているのだが、日本対アメリカの放送チャンネルを確認しようとして驚いた。WBCの公式ウェブサイトでは、スポーツ専門チャンネルのESPN2とそのスペイン語チャンネルDeportesで生放送となっているのに、新聞を見ると生ではなく夜に録画放送、となっていたからだ。逆に公式サイトに録画放送の記載はなかった。不思議に思い、インターネットやケーブルテレビの番組ガイドを見ても、生放送のはずの時間は「テニス中継」となっている。毎日更新されている番組ガイドが正しいのだろう、といったんはあきらめかけたのだが、もしやと思って試合時間にESPN2をつけてみると、なんと日本対アメリカをやっているのではないか。テニスとWBCを急きょ入れ替えたようだった。

 良かった、と安堵し観戦したものの、もし新聞や番組ガイドを信じていたら、見逃すところだったわけだ。その後の試合中継でもここまでではないものの、似たような混乱がいくつか起こっている。  アメリカでのWBC中継の視聴率が低迷しているというニュースが出ているが、こうした事情も関係していると思われる。ESPN2もDeportesもケーブル専門チャンネルで元々配信世帯が多くはない。加えて放送時間が不確定では視聴率を上げろ、というのも無理な話というものだ。

 日本のように地上波でやればいいのに、思われるだろうが、それはかなり難しい。現在アメリカでは大学バスケットボールがクライマックスを迎えようとしている。「マーチ・マッドネス(3月の熱狂)」と呼ばれるほ圧倒的な人気があるだけに、そちらの放送が優先されている状況なのだ。

 つまりWBC中継はまだスポーツ・メディア界において最重要なコンテンツと考えられておらず、その日になって放送時間が変更されるほど判断が揺れるような存在ということなのである。

 さすがに決勝トーナメントは配信世帯数の多い本チャンネルのESPNで放送されることになっており、安心して観ることができそうではあるのだが。

 エキサイティングな試合が多いのにメディアからは不遇な扱いを受けているWBC。サッカーのW杯も最初の認知度は低かったのは有名な話である。現況に負けず、誰もが認める国際大会へと育って欲しいものだ。

March 16, 2006 03:45 PM

2006年03月09日

WBC最中に…ボンズのお騒がせ本登場

 現地7日、ワールド・ベースボール・クラシックの第1ラウンド、プールBからDが開幕した。アメリカ代表はアリゾナ州フェニックスでメキシコを2対0で破り、白星スタートを切っている。

 翌8日の新聞はこのWBC地元開幕でもちきり、と思ったらまったく別の話題がトップを独占することとなってしまった。

 ニューヨークポストが「彼に本を投げつけろ」、デイリーニューズが映画のタイトルをもじった「スーパーサイズ・ミー」という見出しを大きく裏1面で打ったそのトピックとは、去年から続くジャイアンツの主砲、バリー・ボンズのステロイド使用疑惑に関する問題。

 沈静化していたこの疑惑がこの日再び燃え上がった理由は、老舗スポーツ雑誌スポーツ・イラストレイテッドが今週号の特集として27日に発売される「影のゲーム:バリー・ボンズ、バルコ、ステロイド・スキャンダルとロケット化したプロフェッショナル・スポーツ」という本の抜粋を掲載したためだ。だから“本”と体を大きくするという“スーパーサイズ”が見出しに使われたというわけである。

 この本はバルコ社によるステロイド疑惑を担当したサンフランシスコ・クロニクルの記者2人が執筆したもの。ボンズのステロイド使用が何年間にも渡っており、73本の本塁打記録を作った2001年には多数のドラッグを使用していたと暴露している。

 ボンズは大陪審で使用していたクリームなどの成分が何だったか知らなかったと証言した。しかし、本ではテストステロンのクリーム、インシュリン、人間成長ホルモン、牛の筋肉品質を改良するために作成されたステロイドなど多数のデザイナー・ステロイドを使用していたとされている。

 さらにかつて本塁打記録を作ったマーク・マグワイアに嫉妬していたとし、元愛人の「彼は『マグワイアが自分より注目されたのは彼が白人だからだ』と言っていた」というコメントまで掲載されいるのだ。

 各紙ともこうした内容の紹介とともに、アリゾナ州スコッツデールでキャンプに参加しているボンズに取材を試みたことを伝えている。

 それによるとボンズは記者たちの問いに対し「それについて2分前に聞いたばかりだ。それを見る気はない。何のために?必要ないね」とだけ言って、笑いながら去ってしまったのだという。

 この時期WBCに注力したかったであろうMLBにとってはなんとも頭の痛くなるお騒がせ本が登場してくれた、といったところだろう。ただ今後の対応も気になるところである。

 WBCだけでなく、ボンズの問題で灼熱のアリゾナがさらに燃え上がってしまいそうな感じだ。

March 9, 2006 03:44 PM

2006年03月04日

直前で相次ぐWBC出場辞退者

 いよいよ注目のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕した。日本開催の1次リーグA組(アジア・ラウンド)は3日開始なので、すでにチームもファンもヒートアップしているだろうが、アメリカ、プエルトリコで行われるB~D組は7日(現地)からということでまだ少し落ち着いている。

 だが、さすがに直前となって様々な動きが出始めた。

 まずここに来て相次いでいるのが、出場辞退者。アメリカ代表からはメッツのクローザー、ビリー・ワーグナーとインディアンズの先発、C・C・サバシアが辞退を発表。さらにドミニカ代表で出場予定だったレッドソックスの大砲マニー・ラミレスとエンゼルスの主砲ウラジーミル・ゲレロが辞退。またメッツのエース、ペドロ・マルティネスも辞退した。

 ゲレロは先月26日にいとこ3人が交通事故で亡くなったためだが、残りはつま先に怪我を抱えるマルティネスも含め、いずれもMLBシーズン開幕に向けての調整に専念することが理由。選手にとっては通常よりほぼ1カ月早く調子を整え、しかもその後に長いシーズンを戦っていかねばならないわけで、一端はプレーを決断したものの、トレーニングを始めてみて改めて不安を覚えたというところだろうか。

 ヤンキースの松井秀喜を含め、シーズン優先を理由に辞退した選手がこれまでも多数いたが、まだ実績がないWBCの現状を見れば、こうした辞退選手が出てくることは致し方ないだろう。

 そんな中、これまでWBCにあまり関心を示してこなかったニューヨークの地元メディアが2日になって、急に関連記事を組み始めた。これはデレク・ジーター、アレックス・ロドリゲス、バーニー・ウィリアムズというヤンキース主力がWBC出場に備え、キャンプを離れることになったため。

 一時的にせよ彼らがチームを離れるということになって、やっと実感が湧いてきた、ということだろうか。そしてどの記事も「このことにジョージ・スタインブレナーがハッピーでないのは驚きに値しない」(デイリーニューズ)といった表現があるのが興味深い。スタインブレナー・オーナーがWBCに反対の立場であることを改めて強調するとともに、WBCで負傷するリスクを指摘しているのだ。やはり地元メディアは基本的に地元チーム優先のようだ。

 また、1日付けのニューヨークタイムズは、ドミニカなどカリブ地域の代表がWBCでそのタレントの豊富さを披露することを狙っており、特にベネズエラが有力チームであることを紹介していた。

 とかくWBCでは日本、アメリカに目が行きがちだし、出場辞退ばかりが話題になってしまっているが、その他の国々のチーム陣容にも目を向けていきたい。せっかく「ワールド」とうたう大会なのだから。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

March 4, 2006 07:00 AM | トラックバック (4)