渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2005年10月27日

ハロウィーンに負けた?“SO”の優勝

 今季の覇者を決める日米2つのチャンピオンシップ・シリーズは、くしくも14時間の時差のなかで同じ26日に、さらにともに“スイープ”と呼ばれる4勝0敗という形で決着がついた。なんとも不思議な感慨とともに、マリーンズとホワイトソックスが見せた圧倒的な強さに感服するしかない。

 ホワイトソックスの優勝は、もちろんここニューヨークでも大きく報道されている。面白かったのはタブロイド紙のニューヨークポストとデイリーニューズが、同じ見出しと写真を裏1面に配したこと。両紙とも優勝を決め抱き合うボビー・ジェンクス投手とA.J.ピアジンスキー捕手の写真とともに「Soだと言おう」という見出しをつけたのだ。

 “so”は日本で“そう”といった意味だが、ここではホワイトソックスのソックスのsoにかけたもの。ホワイトソックス制覇の年が来た、ということで88年ぶりのワールドシリーズ制覇を伝えたのだ。なかなかいい紙面だと思うのだが、あまりに同じなので両紙の担当者は苦笑いしたに違いない。

 これら新聞の記事やコラムで目に付いたのは“呪い”という言葉だった。昨年レッドソックスがベーブ・ルース移籍に絡んで言われ続けてきた“バンビーノの呪い”を打ち破った。ホワイトソックスの場合、1919年に有名なブラックソックス事件があり、これが87年間も王座から遠のく“呪い”になっていたと感じていたファンが全米に多かったのだ。

 それゆえ今回2年連続で“呪い”が解かれた、と感じた報道関係者が多いようである。特に昨年ライバル、レッドソックスに解かれてしまったニューヨークではその意識が強いのかもしれない。そのため様々な記事で“呪い”という単語が躍る結果となったのだろう。

 ただホワイトソックス優勝はあくまで裏1面という扱いであった。1面に据えられたのが、ハロウィーンの仮装についての記事についてだったりするのだから、ニューヨーカーが今回のワールドシリーズに持っていた関心はそんなもの、ということか。王手がかかった26日付に関してもニューヨークポストは1面、裏1面でワールドシリーズには一切触れず、代わりに裏1面で先週お伝えしたヤンキースのGMブライアン・キャッシュマンが契約間近になったという特報を大きく報じていた。やはり関心は地元チームのほうが大きいのである。

 王者決定は同時にストーブリーグの本格始動を意味する。日に日に寒さが増すニューヨークでヤンキースとメッツはどんな動きを見せていくだろう。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

October 27, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)

2005年10月19日

最大の関心事はGMの去就

 2005年ワールドシリーズの開幕が目前に迫っているが、ニューヨークのメディアはすっかりシーズンオフ・モードに入ってしまった。ホワイトソックスの活躍が地元タブロイド紙の裏1面を飾ってはいるものの、ヤンキースがプレーオフを争っていたときの熱狂はどこへやら、といった感じだ。

 そんな中、ヤンキースファンにとって大きな関心事になっているのがチームの改変。先週もお伝えしたように松井秀喜を含め、移籍、退団の可能性がある選手が既に一通り報道された。

 ただし、今シーズンオフに関しては、選手の入れ替わりよりも前に、もう1つ大きな人事問題が存在し、その行方をみんなが見守る状況になっている。

 その大問題とはゼネラル・マネージャー(GM)のブライアン・キャッシュマンの去就である。キャッシュマンは1998年にGMに就任以来、他に類を見ない豪華な選手陣をそろえることに成功してきた。今季の2億800万ドルに上る年俸総額は本当に目もくらむばかり、という表現がぴったりくるチーム構成だった。

 だが、同時にワールドシリーズに届かないシーズンが続いている。今季の投手陣崩壊など、ケガという不確定要素はあったとはいえ、果たして人選は正しかったのか、という疑問が出るのも仕方ない。

 また、キャッシュマンの側からすれば、ある意味、MLBで1番過酷なチームのマネジメントを任されるプレッシャーは、計り知れないものがある。彼自身もいろいろ考えることがあるだろう。

 そんなキャッシュマンの契約は10月31日までとなっている。来季のGMが決まらない限り、チーム編成の方針も決まらないので、チーム関係者やファン、もちろん選手たちもキャッシュマンの動向に注目し続けているというわけである。

 ちなみにニューヨークポストは、13日付紙面で「ボンバーズはキャッシュが戻ることを望んでいる」という記事を掲載。ジョージ・スタインブレナー・オーナーはキャッシュマンを高評価しており、契約更新を期待している、と伝えている。その他の新聞もキャッシュマンの動向を見守るという感じの報道が多く、チーム、マスコミ側は残留希望のようだ。

 いずれにせよ、来季に向けて時間はない。ワールドシリーズの盛り上がりの裏でヤンキースも一見静かに、しかし、激しい動きを見せることになりそうだ。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

October 19, 2005 10:45 PM | トラックバック (0)

2005年10月13日

失意のNY…松井も批判の対象

 今、筆者の手元に1つのTシャツがある。プレーオフが始まったときに売り出されたもので、胸のところに英語で「ウィン・オア・ゴー・ホーム」と大きく書かれ、その下にヤンキースとレッドソックス、今年のワールドシリーズのロゴが並んだデザインのものだ。

 「勝つか、家に帰るか」とは、プレーオフのさまをよく表したもので、その戦いに挑む東部のライバル2チームにはぴったりだな、と日本の友人のために購入したのだった。

 そして今、ニューヨークは落胆に沈んでいる。エンゼルスとのア・リーグ地区シリーズで第5戦までもつれ込んだ末、3-5で負け、敗退してしまったのだから仕方ない。

 11日の地元紙はいずれもその報道に多くの紙面が使われることとなった。ニューヨークポストやデイリーニューズといったタブロイド紙はどれも1面、裏1面の両方を使っており、失望感の大きさを示している。

 それら両1面で一番に使われた写真は外野手のブバ・クロスビーとゲイリー・シェフィールドが3回、飛球を追って衝突した場面のもの。試合を決めることとなったこのプレーが、ちぐはぐなことが多かった今季のヤンキースを象徴する場面と写ったようだ。

 さらに各紙に共通で次にきていたのはがっくりとしたアレックス・ロドリゲスの写真だった。プレーと高給の両方でMLBを代表するA・ロッドはこの第5戦で4打数無安打など、いいところがなかった。ニューヨーカーにはこれが許せないらしく、デイリーニューズなど「A・ドッグ」と犬呼ばわりし、すっかり戦犯扱いだ。

 さらにニューヨークタイムズなどで、年俸に総額2億800万ドルも使いながらワールドシリーズに届かなかったことに対する批判記事が目立ったのも印象的だった。まさに不満渦巻く、といった状態である。 もちろん、こうした失策探しの対象に松井秀喜も含まれている。松井はこの試合で塁上に計8人の走者を置いて5打席立ち、無安打無打点だった。しかも一塁ゴロに終わった試合最後の打者も松井である。

 ニューヨークポストはベンチに戻って苦虫をかみ潰す松井の写真を掲載し、A・ロッドとともにチャンスを生かすことができなかったことを伝えている。

 また同時に各紙は早くもオフシーズンのチーム改革に言及し始めた。バーニー・ウィリアムスやシェフィールド、ジェイソン・ジアンビなどがトレードなどでヤンキースを離れる可能性を指摘されている。また移籍の可能性は低いが松井もフリーエージェントとなる。プレーオフが不甲斐なかった分ヤンキースの話題は冷えることなしに、ホットなストーブリーグへと突入しそうだ。

 ということで、描かれた両チームが“お家に帰らされた”今、くだんのTシャツをどう言って友人に渡そうか、悩んでいるところである。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

October 13, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)

2005年10月06日

過酷日程、移動距離がハンディ

 4日開幕したプレーオフ、地区シリーズ。ヤンキースは初戦を4-2でものにし、まずはほっとしたに違いない。

 ライバル、レッドソックスに競り勝ち、地区優勝を果たしたものの、プレーオフ1回戦の相手がエンゼルスで、しかも地元開幕権がエンゼルスに行ってしまったことが、ヤンキースにとって不安要素となったためだ。

 東海岸のニューヨークから西海岸のロサンゼルスまでは飛行機で6時間以上かかり、さらに時差が3時間もある。ボストンでレギュラーシーズンを終えたヤンキースは、いったんニューヨークに戻ったものの、すぐ長時間移動し、本拠地で休養できたエンゼルスと戦うというハンディを背負うこととなったのである。

  しかも、5日の第2戦は東部時間では夜10時の試合開始。MLBの日程の過酷さがプレーオフでも出た形だ。第3、4戦はニューヨーク開催で両チームが移動となるのは一緒だが、ロサンゼルスでのテレビ中継を考えると東部時間午後1時(西部時間午前10時)の試合開始は考えにくいので、エンゼルスはやはり楽といえるかもしれない。

 ヤンキースとしては、第5戦までもつれて再びロサンゼルスに戻ることは、次のリーグ優勝決定シリーズへの影響を考えても避けたいことだろう。対して、ワイルドカードに回ったレッドソックスが飛行機で2時間ほどで行け、時差が1時間しかないシカゴとの対戦になったのは、ある意味皮肉ともいえる。

  さて、ヤンキースの先発だが、このコラムを読まれるときには終わっているかもしれない第2戦は王建民、第3戦はランディ・ジョンソン、第4戦はショーン・チャコンと予想されている。

 地元で論議を呼んだのが、王とチャコンの登板順。今季の成績は王が8勝5敗で、チャコンが8勝10敗と勝ち星は並んでいる。ただ9月以降の成績は王が2勝2敗防御率4.36に対し、チャコンは4勝1敗防御率2.45と上回っているのだ。チャコンを第2戦に登板させたほうが短期決戦の観点からもいいのではないか、というわけである。

 だが、トーリ監督はメジャー1年目の王が持つフレッシュさが、アウエーの雰囲気に打ち勝ち、さらに第4戦にもつれた場合は、確実に勝ちにいくためこのように決断したようだ。

 移動距離と時差というハンディを負った短期決戦での、この采配がどんな結果を生むかに注目したい。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

October 6, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)