渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2005年05月26日

セラピーがA-ロッドを救った

 25日、ニューヨーク地元紙によるヤンキース関連の報道において、いろいろな意味で主役となったのは、“A-ロッド”ことアレックス・ロドリゲス内野手だった。

 前日のタイガース戦でロドリゲスは6番三塁で出場し、2回に先制の15号ソロ本塁打を放つと、4回にも2ランを打ち、12-3で圧勝する先陣を切った。

 また7回には、タイガース4番手のフランクリン・ジャーマン投手から死球を浴びてしまう。すると8回ヤンキースの2番手投手クアントリルが2死三塁からジェーソン・スミス遊撃手の左肩に死球をぶつけ、これが両チームによる乱闘寸前のにらみ合いに発展したのである。結果、主審は危険球を投じたと判断、ジョー・トーリ監督とクアントリルが退場となった。

 良くも悪くもこの試合、きっかけはA-ロッド、といった試合だったのである。

 これに対し、ニューヨークポストのコラムニスト、ジョージ・ウィリスは「ブロンクスのファンはA-ロッドに“トルゥー”ラブを見せた」というコラムを掲載している。

 5回の攻撃でロドリゲスが打席に立ったときのこと。スタンドのファンたちが3連続本塁打を期待して「レッツゴー、Aーロッド」と合唱して応援し、結局四球になるとチャンスを奪われたことに対してブーイングしたことが印象的だったらしい。ウィリスはこれが続くなら、人々がロドリゲスをヤンキースの1人として認めたことになるだろうとしている。

 2億5000万ドルもの高額契約を結んでいる選手として昨年、ヤンキースに移籍してきたロドリゲスだが、ファンからは浮いた存在と思われてきたのは周知の事実。それがチームの一員として愛されるようになってきていることが、この試合で明らかになったというのだ。たしかにこの試合のロドリゲスはそう感じさせるのに十分な存在感を放っていた。

 こうした活躍とは違い、デイリーニューズは試合から離れたロドリゲスのトピックを、1面トップの扱いで伝えている。「セラピーが自分を救った」という見出しが躍るこの記事は、ロドリゲスが「エクストラ」というテレビ番組のインタビューで、彼がメンタルヘルスのセラピーを受けていることを告白した、という衝撃的な内容だ。

 ロドリゲスは同インタビューで、治療を受けている理由は明らかにしていないものの、これまで3人のセラピストから診療を受けて、現在も2人にかかっていることを明らかにしたという。さらに、幼少期に父親が蒸発し、長く心を痛めていたこと。心理学の学位を持つ妻シンシアに感謝していることなども語ったとしている。

 また同記事は、シンシアとロドリゲスがメンタルヘルス・プログラムに20万ドルの寄付をしたことを伝え、この告白によってメンタルヘルスに対する偏見が減ることを期待する専門家のコメントも掲載した。

 大きな問題を抱えながらもMLBを代表する選手となり、今、ニューヨーカーからも受け入れられようとしているA-ロッド。やはりスターと言うべき存在である。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

May 26, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)

2005年05月19日

“カズズ”今後の大発奮に期待

 “アジアン・ナイト”と銘打たれたプロモーションが行われた17日のメッツ対レッズ戦は、“カズ・ナイト”と呼べるような試合になった。

 約1カ月ぶりにけがから復帰した石井一久が先発として6回1/3を3安打1失点に抑え、松井稼頭央が7回に試合を決める3号逆転2ラン放ち、2対1で勝利したのだ。

 地元タブロイド紙ニューズデーはこの2人の活躍を報じた試合リポートに「カズズ、シンシーを共同でKO」という見出しをつけた。シンシーとはレッズの本拠地シンシナティの略称で、愛称カズを複数形にしたKazsという表記になっているのがミソだ。

 デイリーニューズも同じように石井と松井両名の活躍を試合リポートのメーンにしたが、見出しは「カズ、HR(ホームラン)でレッズとブーを黙らせる」と、松井寄りのものになっていた。ブーとはもちろんブーイングのこと。こうした見出しに使われるように、ニューヨークでも日本でも松井にブーイングのイメージが定着してしまったのはちょっと悲しい。これを機にイメージ・チェンジがなされていくことを願うばかりだ。

 対する石井に関しても、この試合を見てほっと胸をなで下ろしたメディアやファンも多いはずだ。試合当日の各地元紙では「イシイが復帰、しかしローテーションは依然流動的」(ニューヨークポスト)といった見出しをつけた記事が並んだためである。それらの記事はいずれも、石井の復帰は本人、チームにとっていいことだが、だからといって現状では先発ローテーションが固まりそうになく不安要素が多い、という意見で構成されていた。石井にしても以前から指摘されてきた制球面での不安を理由に、信頼を勝ち得ているとは言い難い文章が多かった。これも悲しいことである。

 それだけに、勝敗はつかなかったもののこの試合の投球に高い評価がされたことは喜ばしいことと言えよう。

 今の2人には、安定して結果を残していくこととともに、印象的な活躍の両方が必要なのかもしれない。

 20日からは今年最初のサブウェイ・シリーズがメッツの本拠地シェイスタジアムで始まる。彼らがどんなプレーを見せてくれるか楽しみだ。この注目度が段違いの3連戦で活躍すれば、皆に与える印象も違う。ぜひとも大発奮を期待したいところである。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

May 19, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)

2005年05月12日

イケてない“マツイズ”

 今シーズン初の松井秀喜とイチロー対決、ヤンキース対マリナーズの3連戦が終了した。結果はヤンキースの3タテで、7日から5連勝、ようやく調子が上向きになってきたようだ。

 だが松井はというと、残念ながらチームの復調に乗った感じになっていない。今回の3連戦での打撃成績は14打数3安打。11日の第1打席では走者一掃の二塁打を飛ばしたが、それ以外は安打も含めゴロの多さが目立っている。このままでは一昨年地元メディアがつけた“グラウンド・ボール(ゴロ)・キング”というニックネームが戻ってきそうだ。

 メッツの松井稼頭央も依然不調から復活していない。その結果、老舗総合スポーツ誌スポーツ・イラストレイテッドがその週のイケてる選手、チームとイケてない人たちを紹介する“ホット・アンド・ノット”のコーナーで、今週の“ノット”のトップに“マツイズ”を取り上げることとなってしまった。「日本からの輸入選手たちは完全に進路を見失っている」と2人の松井がそろって不調をかこっていることを、トップクラスの“イケてない”現象として全米に紹介しているのだ。なんとも歯がゆいものである。

 さて、松井秀喜の不調だが、ニューヨークの地元メディアにたたかれているかというと、それ以上に不調の選手がやり玉に上がっているため、現在は意外と目立たない結果になっている。その不調選手とはジェーソン・ジアンビ。

 かつてはア・リーグMVPに輝き、松井入団時にはヤンキース打撃陣の顔ともいうべき存在だったジアンビだが、今シーズンは打率1割9分5厘、3本塁打、6打点とどん底状態にある。4月28日のエンゼルス戦以来ヒットが出ておらず、10日にはついに欠場へと追い込まれてしまった。さらに試合前にジアンビとジョー・トーリ監督、ブライアン・キャッシュマンGMの3人が、今後の対策について話し合いを持ったことも明らかにされている。しかもその席でマイナーに降格して調整する案も出されたが、ジアンビが拒否し、トーリ監督もそれを了承したことまでが流れたのだ。

 当然地元メディアはこの話題に飛びつき、11日のタブロイド紙のほとんどが4連勝ではなく、ジアンビの話題を1面トップ扱いで報じることとなった。ステロイド使用疑惑によるバッシングを乗り越えたと思っただけに、残念極まりなく思う。

 ジアンビの今後が気になるが、この話題が落ち着くと現状ではクリーンアップで唯一2割4分を切っている松井に批判の照準が合わせられるのは必至であるということだ。松井は今、待ったなしの状況に追い込まれている。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

May 12, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)

2005年05月05日

チケット事情に歴史と人気の深さを見る

 日本のゴールデンウイークもいよいよクライマックス。メッツ、ヤンキースがともに調子に乗り切れていないが、日本からは多くのファンが生観戦に来られているようだ。そんな今シーズンの観戦チケット事情について、昨年もご協力いただいたニューヨーク地区の老舗チケット・エージェンシー、マンハッタンエンターテインメントの日本語担当、中原氏に聞いてみた。

 まず同社が担当した日本からのGW期間中のチケット手配数だが、一昨年から1.5倍もの伸びを示した昨年よりもさらに増えたのだとか。特に多かったのは1日のヤンキース対ブルージェイズ戦とのこと。相変わらす人気のヤンキースが2日から5日までアウエーに出ていたため、ピークが前に来たのであろう。

 そのヤンキースは、GW直後の9~11日にマリナーズと3連戦を行う。日本人にとっての人気カードだけに、GWほどではないが団体やこの3連戦のためにアメリカにやってくるファンなども多いとのことだ。

 メッツは全体的にヤンキースの人気には遠く及ばないものの、チームの補強もあって昨年よりも人気が出ているとのこと。特に2、3日のフィリーズ戦は数多くの日本人が観戦したらしい。このあたりはやはりGW需要といったところか。

 今シーズンはホワイトソックスの井口、高津、ドジャースの中村など日本人選手が充実している。と、同時にシアトルでは日本の観客数が減っているとの報道もされている。そのあたりについて中原氏は「ニューヨークでは人気の低下のようなことは感じられません。マリナーズの場合、チームの状態が良くなく、イチローだけが目的になるところがありますが、特にヤンキースの場合は松井人気だけではなく、他の選手も豪華だし、一度はヤンキースタジアムに行ってみたいということがありますから」と分析する。ただ、他の日本人所属チームへのチケット需要に大きな動きがない状態だそうで、「ニューヨークは野球以外にも観光やショッピングもできるので、来やすいということがあるのでしょう」とニューヨークという都市自体の人気も需要に影響していることを指摘した。

 今後の人気カードだが、やはり一番人気は5月20日からと、6月24日から予定されているメッツ対ヤンキースのサブウェイシリーズだという。既に1枚500ドルを超える席も出ているらしいが、まだ入手可能とのことだ。

 そしてちょっと驚きだったのは、ヤンキース絡みでサブウェイシリーズ、レッドソックス戦と並んで人気になっているのが、6月17日から予定されているカブスとの3連戦ということ。実はヤンキースに並ぶ名門カブスがヤンキースタジアムを訪れるのは、1938年のワールドシリーズ以来67年ぶりなのだ。チケット購入希望者に「昔からのファンが多いのが特徴」とのことで、こんなところにもMLBの歴史と人気の深さを感じた。

 次に日本からの観戦者が急増するのは夏休み。中原氏によると購入手配に関してまだ動きは出ていないそうだが、「早ければ早いほどご希望のチケットがとれます」とのことなので、この夏に現地生観戦を予定している方はぜひ先手必勝を心がけていただきたい。

○マンハッタンエンターテインメント:http://www.manhattanent-usa.com/

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

May 5, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)