渡辺史敏の「from New York(フロム・ニューヨーク)」

2005年04月28日

NYメディアが突如「イチロー特集」

 既によく知られているように、アメリカの各地方メディアではその地元チーム以外の情報が詳しく紹介されることは、かなり大きなトピックでない限りほとんどない。

 例えば日本では“夢の4割に挑戦”しているイチローが、ヤンキースの松井やその他の日本人選手たちと共に連日大きく報道されていることだと思う。だが、ここニューヨークでは地元新聞でその話題がかろうじてでも出たのは開幕に合わせてのシーズン展望時ぐらい。筆者が日ごろイチローの活躍を映像で一番詳しく知ることができるのは、毎日1時間放送されている日本語ニュースだったりするのだ。

 そんなニューヨークで、老舗紙ニューヨークタイムスが26日付のスポーツ面において突如「スズキのため、ヒットは来続ける」と題した特集記事を掲載した。

 ボブ・シャーイン記者がシアトル発として執筆したこの記事は、まず最初の部分で、昨年262安打で84年ぶりにMLB記録を塗り替えることになったポイントを「6月24日が障害突破の夜になった、と彼は語った。打撃練習中に右足-打撃スタンスの前-をプレートから数インチ離して、スタンスを開き、4インチ以上開くことを試みたのだ」と紹介。それが7月以降の安打大量生産につながったと解説している。

 さらにイチローがMLB1000安打を目前にしており、その達成が1933年にチャック・クラインが記録した683試合、第2位のポール・ウェイナーによる711試合(1930年)というMLB記録に食い込んでくるであろうことに触れたうえで、イチローは“パーフェクトな選手”ではないかと言及している。

 これに対し、イチローは「パーフェクトな選手なんてありえない。パーフェクトな選手が実現することはないだろう。しかしベースボールはパーフェクトな選手を出そうと努力し続けている。私はあなたが以前と比べて言っているなら、少し近づいたんだろうと思う」と彼らしいコメントを寄せている。

 さらにこの記事が面白いのはイチローを往年の名選手ジョー・ディマジオと比べた後、元巨人の川上哲治氏を紹介し、比較していることだ。

 川上氏をジョー・ディマジオとほぼ同時期にプレーした名選手で「打撃の神様」と呼ばれていることに触れ、「日本人の多くは、イチローが川上氏の再来だと信じている」としている。

 さらに川上氏の好調時「ボールが止まって見えた」という言う有名な言葉も紹介。対して、イチローが「僕にはボールがよく動いているのが見えるよ」と苦笑し、「ボールが止まって見えたことはないが、好調なときはどんなカウントでどんな投球でもヒットにできると感じることはある」と話したことを掲載した。

 そして「目標を作ることはできない。でも私はファンが『彼ならできるかもしれない』という選手になりたい。もしファンがそんな期待を自分に持つなら、そんな選手になりたい」というコメントを載せ、昨年と違い4月から好調なイチローの4割達成に期待を寄せているのだ。

 なかなか目にすることができないイチローの記事。それがなかなかわかりやすく、日本人にも興味深いものであったことがうれしかった。少し数字を落とし気味だが、4割達成が夢でなくなることに期待したい。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

April 28, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)

2005年04月21日

不調石井、メディアとファンから冷たい視線

 先週お伝えしたメッツの松井稼頭央は残念ながらその後も絶好調とはいえない状態で、時にはファンのブーイングを浴びるなかでのプレーが続いている。

 そしてメッツのもう1人のカズこと、石井一久投手もメディアとファンから冷たい視線を集める事態に陥ってしまった。

 石井は7日レッズ戦での今季初先発したものの6失点し、敗戦投手となった。続く13日のアストロズ戦では一転MLB屈指の豪腕ロジャー・クレメンスと互角に投げ合い、7回を無失点に抑える好投を見せ、周囲をほっとさせた。これで一挙に波に乗り次はメッツでの初勝利か、と期待された18日のフィリーズ戦だったが、結果は5回で5点を失い、またも敗戦投手になったのである。

 不調2試合で問題となったのは、制球難。レッズ戦は5四球、フィリーズ戦でも6四球(1敬遠含む)を記録している。移籍会見時に紹介したが、ニューヨークの地元メディアは当初から石井の制球難に注目していた。それだけに、それ見たことか、といった感じになってしまっているのだ。

 ニューヨークポストは19日付けの紙面で「カズがプレートを見つけられず、メッツ負ける」と題した記事を掲載した。動機時は冒頭で「昨夜カズ・イシイによる最初の13球で、メッツは自分たちがトラブルに巻き込まれていることを自覚しなければならなかった。なぜなら12球はボールで、残りの1球は左翼への安打になったからだ」と、13球で試合が決まったかのように初回の様子を伝えると、さらにその後も四球を出した石井の様子を「醜い」とまで表現している。

 他の地元紙でもそこまできつい表現ではないが「イシイとメッツ、制御不能に」(デイリーニューズ)、「イシイ初回にコントロールを失い、11球連続でボールを投げ、メッツは先行され、連敗した」(ニューズデイ)といった見出しが並んだ。やはり初回の投球について「予測不能な最悪の状態」といった表現を使った記事もあった。

 そしてこれらのいずれに共通するのは、こういう事態はキャンプの段階から予測されていたこと、という論調。我々からすると、こうした荒れた日もあるが、それでも結果的に勝っていくのが石井という認識がある。だが、勝ち星なしで黒星2つ、という状況にあっては皆を納得させることはできないのは事実だ。

 フィリーズ戦後、「腕が振れてなかった。その分、球持ちが短くて球の切れもなかった。制球ミスもあった」と自省のコメント発した石井。次は23日のナショナルズ戦で大家との日本人対決が予想されている。両者の好投が期待されるが、石井は特に内容の伴う結果が要求されている。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

April 21, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)

2005年04月13日

稼頭央の援軍はNYメディア

 メッツの松井稼頭央が11日のアストロズ戦で、5打数2安打2打点の活躍を見せた。特に8回の第5打席は決勝打となる勝ち越しタイムリーで、本拠地シェイ・スタジアムの初戦を飾る貴重な1打となった

 もちろんこの松井の活躍を地元タブロイド紙の多くは写真入りで伝えたが、その中にはこれが松井の立場を救ったことを指摘する記事もあった。デイリーニューズが掲載した「カズ、2つめのチャンスをつかむ」という記事がそれだ。

 10日のブレーブス戦で、松井は開幕以来初めてスタメンを外れ、出場機会がなかった。それまでの打撃成績は21打数5安打の打率2割3分8厘。そんな松井の置かれた状況について同記事は、書き出しで「ラジオと(ネットの)チャット・ルームは既に、メッツの二塁手をカズ・マツイからミゲル・カイロに替えろ、という言う者とポスターで埋め尽くされている」と表現した。さらに続けて「昨日の本拠初戦でシェイに入った5万人強の多くが同じように感じていた」と記している。つまり、ファンや地元専門家たちの間でまたも松井バッシングが起こっているというのだ。

 ただ同記事の主旨はそんなマツイ・バッシングに対し、この試合で松井が“完ぺきな”バントと決勝打により、「マツイは試合開始前の選手紹介で起こったブーイングをひっくり返した」とし、松井が一転、評価を上げたことを伝えるものである。「ブーイングが自分を苦しめたとはまったく思っていません」という松井のコメントや「彼はバントの名手だ。そのことを信じて欲しい」というウィリー・ランドルフ監督のコメントも掲載された。

 とはいえ、松井は依然厳しい立場にあるのも事実である。そんな彼の今季のプレー、それも懸念されていた二塁の守備について高評価を上げているメディアもある。スポーツ専門局ESPNのMLB専門番組“ベースボール・トゥナイト”が11日、相手チームの二塁盗塁時のプレーについて時間を割いて紹介したのだ。

 いわく「捕手マイク・ピアザはこれまで守備で高い評価を受けたことはなかったが、今季は違う。それは二塁手カズ・マツイのおかげ」なのだという。肩がいいとはいえないピアザの送球に対し、去年二塁を守っていたホセ・レイエスが二塁後方で捕球していたのに対し、松井は動き出しが早く二塁をまたぐ形で捕球するためタッチが早く、走者を刺すことができるようになったという指摘だ。

 ビデオで見比べると、たしかにピアザの送球は去年も今年も同じ感じなのだが、松井は見事にアウトにしている。

 マツイ・バッシングが大きくなりつつあっても、そんな点に着目、正しく評価し、皆に伝えるメディアが出てくることが、素直に嬉しかった。

 まず“2つめのチャンス”を生かし、援軍も得た松井。このまま一挙に不信感を一掃、といってもらいたいものである。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

April 13, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)

2005年04月07日

開幕カード大活躍の松井に絶賛の嵐

 2005年のMLBシーズンが始まった。ニューヨーク・チーム所属では5日現在、メッツの石井一久の登板はまだだが、W松井は順調な滑り出しを見せている。

 2年連続初打席本塁打を放った松井稼頭央も素晴らしいが、それ以上に存在感を示しているのがヤンキースの松井秀喜だ。

 3日に行われた宿敵レッドソックスとの開幕戦では、本塁打を含む5打数3安打の猛打賞を記録。さらに守備では2回、ケビン・ミラーによる本塁打性の当たりをフェンス際でジャンピング・キャッチし、新加入の“ビッグ・ユニット”ことランディ・ジョンソンのピンチを救った。

 続く5日の第2試合でも、2試合連続の本塁打を含む4打数3安打を記録したのだ。

 松井のこの大活躍を、ニューヨーク地元メディアは当然のごとく連日大きく報道している。残念ながら裏1面などトップの扱いは、初戦がジョンソンの初勝利、第2戦はサヨナラ本塁打を放ったデレク・ジーターがさらっていったが、スポーツ面のトップなどは松井の記事や写真にかなりの紙面が割かれた。

 例えば、4日のニューヨークポストは大見出しで「マツイ、モンスター・ナイトを楽しむ」と打ち、本文で「まずグローブでレッドソックスを叩きのめし、バットで止めを刺して、昨夜ゴジラはヤンキースのための新たなモンスター級開幕戦を飾った」といった具合。デイリー・ニューズも「ヒデキ・マツイ、契約最終年にゴジラ級モンスター・シーズンを開始」と表現していた。

 デイリー・ニューズは6日付でも「ヒデキ・マニア増加」という見出しの記事を掲載ししている。「ヒデキ・マツイがゲームを支配すればするほど、人々はより注目する。コミッショナーですら昨日は彼を褒め称えた」という書き出しで、第2戦を観戦したバド・セリグMLBコミッショナーが、観戦するたびに成長する松井を褒め称えたことを取り上げたのだ。

 まさに絶賛の嵐といった感じだ。

 そんななかで一番おもしろく感じたのが、3日の記者会見でジョンソンが話したエピソードに関する記述だった。ジョンソンのコメントは「通訳に日本語でawesome(スゴイ、すさまじい)をなんて言うのか尋ねたんだ。そしたら彼は“Psycho(サイコ、精神病者)”と言った。サイコと呼ばれて、彼がからかわれてると思わなければいいんだけど」というもの。

 日本語の“最高”という発言が、英語ではそんな風に聞こえることにかけたジョークで、アメリカ人はかなりおもしろく感じるらしい。ニューヨークポストなど同じ紙面で2度も紹介するほどだった。いかにもアメリカンなジョークだな、と思いつつもそんなジョークを記者会見で言われるほど、松井はジョンソンに親しみを持たれており、チームにも溶け込んでいるのだな、と感じずにはいられなかった。

 長いシーズンは始まったばかりだが、こんなスタートは本当に気分がいいものである。

【ジャーナリスト 渡辺 史敏】

April 7, 2005 07:00 AM | トラックバック (0)