浅岡真一 独断流

2006年03月30日

松井秀よ、胸張りシーズンへ!

WBC不参加問題

 私の予想をはるかに超えて、世界国別対抗戦(WBC)は日本国内で盛り上がりました。アメリカがメキシコに敗れ、奇跡的に決勝リーグに進出、韓国、キューバを撃破し“世界一”に輝きました。

 決勝戦のテレビ視聴率は驚異的なもので、関東地方の平均は43%(関西は40・3)、瞬間最高となると関東56、関西52・8、札幌では60%を超えました。日の丸を背負うことに、日本国民が、いかに関心が深いか、改めて思い知らされました。

 ラッキーも重なったとはいえ、日本の勝因はいくつかあるでしょうが、私は最大のものはチームが一丸となったことだと見ています。宮本(ヤクルト)や谷繁(中日)が打撃投手を買って出たり、ブルペンの用意も周到でした。

 その点では、みんながヒーローだと思っていますが、とりわけイチローが高い評価を受けました。プレーでの活躍、リーダーシップももちろん、彼のその時々の発言が、日本人の心に染みいったようです。二、三挙げてみると

 「この結果に満足しているとしたら、ボクは野球を辞めなければならない」(アジアリーグで韓国に敗れた直後)

 「ボクの野球人生で最も屈辱的な日ですね」(2次リーグで再び韓国に敗れ)

 「今日はシーズンのこととか考えていなかった。選手としてつぶれてはいけないけど、でもそんな気持ちでした」(決勝戦後)

 これまでクールなイメージだっただけに、多くの日本人は彼の思い入れに感動したのでしょうが、その思いは立派だと私も同感します。ただ、一方で松井秀喜の心中をおもんぱかる衝動も湧き上がってきたのです。

 イチローの評価が上がる一方で、松井秀がヒール(悪役)であるかのような声が一部で上がっています。現に米国の全国紙・USAトゥデーでも痛烈な批判を掲載しています。しかし、私はかつて「不参加選手を責めないで」と書いたように、彼を非国民的に見ることは絶対にするべきでないと思います。

 昨年の12月26日、辞退を表明し、翌27日にコメントを発表しました。長文なので一部を抜粋すると「ヤンキースの一員としての仕事と(中略)どうしてもどちらかの一方がおろそかになる不安がぬぐいさることができませんでした」と苦渋の決断を説明しています。

 ヤンキースでワールドチャンピオンになる--。大目標を掲げて渡米したスラッガー。シーズン前の調整に全力を尽くしたいという気持ちは容認してやるべきでしょう。

 もう一つ、これは想像ですがオーナーのスタインブレナー氏が参加に反対していたことも影響していると思います。A・ロッドやジーターは参加しているじゃないか、と反論されそうですが、彼ら二人とはチーム内の立場が違うと聞いています。あの二人はスーパースター、松井はレギュラーを必ず約束されているわけではありません。

 幸いというか、松井秀自身も大きな夢を追い求める思いが強いからこそ、辞退したことを心の糧にオープン戦では好調を誇り、トーリ監督から6番の座のお墨付きをもらっています。

 「日本戦は可能な限り(テレビ)で観戦していました。優勝という最高の結果だけでなくファンの皆さんに日本野球のレベルの高さを示した大会だったと思う」。祝福のコメントの中に深い意味を感じました。
 シーズンを通して活躍し、夢を実現させることを願っています。

March 30, 2006 09:48 PM | コメント (4) | トラックバック (2)

2006年03月24日

広島、横浜もそれなりに…

セの再診断

 広島、横浜ファンの方、ごめんなさい。まず、謝罪から入っていきます。3週間前のこのコラムで「某スコアラーの診断」のサブタイトルでセ各球団のキャンプ仕上がり具合を記しました。その際、広島、横浜については、総合力で劣ると書いて、ご批判、叱咤をいただきました。しかし、オープン戦の戦いぶりを見て、少し見方が変わってきました。

 まず広島ですが“ブラウン効果”がかなり、顕著に表れています。私の取材経験からしても、新監督、特に外国人の場合には、先入観なしで個々の選手を見るから、選手の方もチャンスがあるとより前向きに取り組むことができます。いわゆる競争意欲が増すわけです。

 もう一つ、オープン戦序盤から、勝ちにこだわるさい配を続けてきました。攻撃面ではバント、ヒットエンドランありで、スクイズも試みています。守っても終盤の永川-ベイルの継投は多用してしていました。いわゆる勝ち癖を作る、負け犬根性一掃を目指し、それが選手にも浸透していっている感があります。

 一方で大胆な戦術を用いることも明らかにしています。

 (1)黒田、大竹、ダグラス、大島を軸に球数制限で中4日で先発ローテーションを回す。

 (2)外野も含めてライン際を大きく開け、センターライン中心の守備態勢を敷いていく

 (3)前田を2番に、栗原、嶋、新井のクリーンアップを組む

 (1)は大リーグ方式ですが私はやや異論があります。黒田や大竹あたりは完投能力があるタイプは調子いい時、無理に代える必要がないのでは……。6連戦では佐々岡が入ってくるでしょうが、中継ぎ、抑えの負担を軽減させるためにも、両右腕は別扱いする方が得策ではないでしょうか。まあブラウン監督が新手を使うのにケチをつけることもないでしょうが…。

 (2)は一般的な打球傾向から三遊間、二遊間を締めるということですが、状況、打者によっては臨機応変にやっていくようです。(3)も栗原の成長が目立つので、いいと思います。

 次に横浜。担当記者に聞いたところ、牛島監督は戦力アップに手ごたえを感じているとか。先発陣は三浦を柱に門倉、土肥、ベバリン、吉見にルーキー高宮も22日の阪神戦をみていたら、一角に入ってこれそうです。中継ぎも量的に十分、クルーンも健在です。

 打線は下位がやや他チームと比べて少しひ弱さを感じますが、金城、多村、佐伯のクリーンアップは強力で2000本安打まであと39に迫っている石井琢もモチベーションが上がっているでしょう。それと多村。WBCでの活躍は大きな自信になったでしょうし、勝つ喜びを膚で感じて、よりリーダー意識が高まっていることでしょう。

 多くの評論家は阪神、中日、ヤクルトあたりを順位予想で上位にするでしょうが、ここにきて私は、6球団の実力接近を思い知らされています。ひょっとしたらダンゴ状態に……、開幕を目の前にして、そんな感じが強くなってきました。

March 24, 2006 12:39 PM | コメント (2) | トラックバック (5)

2006年03月16日

巨人はもはや盟主でなくなった

哀しい凋落

 ネット裏で見ていて、哀しさが込み上げてきました。怒りすら湧いてきました。これが、かつて王者というチームなのか、何ともやりきれない気持ちになりました。

 12日の阪神-巨人のオープン戦。朝から雨が降り、昼前にはあがりましたが、神戸の平均気温は10度程度の悪条件。しかし、日曜日ということもあって3万人近い観客が詰め掛けていました。

 8割ぐらいは阪神ファンで、やはり「伝統の一戦」への関心は高く、私も新生・原巨人の仕上がりはどの程度か、興味深くプレーボールを待ちました。結果は5-2で阪神が勝ちましたが、その内容はスコア以上の巨人の“圧敗”でした。

 とにかく守備、走塁はひどいものでした。初回、赤星を一塁に置いて藤本の二遊間の当たりは絶好の併殺打になる打球でしたが、二岡のスタートが遅れ、おまけにファンブル(記録は内野安打)。2回の今岡の三遊間の当たりも鳥谷なら、軽くさばいていたでしょう。

 巨人担当に聞いたところ二岡はキャンプ中に左太腿を痛め、かばいながらプレーしているとのことでしたが、本当に悪いなら完治するまでゲームに出ないで調整をすべき。ファンに失礼でしょう。途中交代した川中も正面のゴロを2度もファンブル。足が全く動いていませんでした。

 アグレッシブさがないのは、走塁でも見られました。5回に黒田、6回に矢野が右翼線にヒットを放ちましたが、二塁止まり。タイミング的に三塁打になる打球なのに、1つでも前の塁を奪おうという姿勢は全くうかがえませんでした。

 「このチームは、意欲、どん欲さがありませんね。個人が、ばらばらに野球をやっているんじゃないですか」。ある本紙の評論家に私が語りかけると、彼はうなずいていました。

 翌日の岐阜でのゲームでも、9回2死一塁で上坂の右中間のヒットに内外野が緩慢な中継プレーをして、赤星の長躯生還を許してしまいました。5年連続盗塁王への警戒心、準備が欠けていたから、ミスを犯してしまうのです。

 挙げ句の果ては、相手の平田コーチのゲーム直後のミーティングの材料にまでされてしまいました。反面教師にされた屈辱を、心底から思わなければ、同じようなプレーがこれからも続くでしょう。

 小久保、高橋由が故障で離脱しているということは若手にとって大きなチャンス。しかし、彼らにハツラツさは感じません。阪神の非レギュラー組が一軍キップを手にするため、ひたむきにプレーしているのとは余りにも対照的です。

 キャンプでの情報から、巨人は阪神のライバルになると考えていました。でもほとんど選手が、こんな姿勢で野球をやっていたら、とても“戦う集団”にはなれません。横浜、広島の方がはるかに一丸姿勢がうかがえます。

 これは私の持論ですが、巨人がかなり強くないとペナントレースは球趣が薄れます。あのONを擁してV9を果たした頃は、ちょっとやり過ぎじゃないの……とも思いました。しかし、昨年の5位から巻き返しを期す今季、一丸の意欲は現状、感じられません。もはや「球界の盟主」ではなくなったかもしれません。

March 16, 2006 09:22 PM | コメント (26) | トラックバック (3)

2006年03月10日

18歳の過ち、許容してやることも……

苫小牧の辞退

 昨夏の全国優勝校・駒大苫小牧がセンバツの出場を辞退した。夏春連覇のチーム力を持っていると言われていただけに、地元の方をはじめ、高校野球ファンの方にはショックだったと思います。ところで多くの方は、ご存知だろうとは思いますが、もう一度、この件を整理してみましょう。

 事の発端は1日、卒業式後の夜のこと。野球部父母会が学校で行われたあと、野球部員10人とバスケットボール部員4人が市内へ繰り出し、居酒屋で酒を飲み、タバコも吸っていた。この光景を見た市民が警察へ通報、14人は補導されたのです。

 学校側の対処は早いものでした。2日、当該卒業生に事実確認を行い、すぐに北海道高野連に電話で報告。翌3日には辞退の会見を行い、篠原校長が「センバツは強いから出られるのではない。心技体すべてそろって出られるもの。技量というより心。うちのチームにはその資格がないと判断した」と語りました。

 1、2年生は全員が泣き崩れたと本紙の紙面でも報道されましたが、彼らの気持ちは痛いほど分かります。あこがれの甲子園、しかも優勝候補に挙げられていたのですから……。

 私の推測ですが、この学校側の決断には、昨年の不祥事が絡んでいると思います。6、8月と2度にわたって野球部長がある部員に対して、暴力を振るったことが明るみに出ました。発覚したのは、全国制覇した直後、一時は優勝旗返還にまで発展しました。

 私は昨年、このコラムで「すべての“暴力”が悪なのか」と書きました。決して鉄拳制裁を礼賛するつもりではなく、1発、2発の気合入れはいいのではないか、という意図でした。真相は“ヤブの中”ですが会見で前部長が「10発ぐらいはやったかもしれない」と明かしていたのは言語道断です。

 結局、被害者側と和解したことで、優勝旗返還は免れ、センバツ選考の対象となる秋季大会への出場も認められ、同大会で勝ち抜き甲子園行きのキップを手にしました。だが、2年続きの不祥事ということで、学校側は自粛したのでしょう。

 ただ、今回の補導と部長の暴力とは次元が違うことは確かです。確かに気の緩みというか、無事卒業できて発散したい気持ちはあったでしょう。飲酒・喫煙は正当化されることはないですが、彼らを極悪人扱いすべきではないと思います。

 日本高野連の部員登録が04年に改正され、卒業式まで継続されることになりました。この規定でも卒業式後だから、もう退部したと解釈できるわけです。

 何よりも、彼らは他人に対して攻撃をかけたり、窃盗、万引きなどのハレンチ罪を犯した訳でもありません。いわゆる“若気の至り”。当人たちには猛省を促したいし、後輩への謝罪の念を持つべきですが、周囲の、世間の大人は過剰に責めるべきではないと考えます。

 青春時代に過ち、挫折は付き物です。その経験をいかにプラスに替えていくかが「成長」ではないでしょうか。若者には将来があります。決して村八分的な接し方はして欲しくないと願っています。

 (次回は3月17日に更新予定)

March 10, 2006 02:10 PM | コメント (34) | トラックバック (2)

2006年03月03日

他球団もそれなりの仕上がり

某スコアラーの診断
 隣の花は赤く見える……という表現は不適当かもしれません。贔屓(ひいき)が過ぎる……と言った方が的確かもしれません。ともかく、ほとんどの選手が素晴らしい仕上がりぶりを見せていました。
 23日から28日まで、阪神の安芸キャンプに行ってきました。終盤にさしかかってピッチも上がってきていました。オリックスとのオープン戦(2月25、26日)でも2連勝、特に江草、能見の両先発投手の好調さが目に焼き付きました。

 まあ、オリックスも清原、谷が2戦目しか出なかった(中村は代打で1打席のみ)という割り引き材料はありましたが、阪神も金本、矢野のベテランは欠場していたし、鳥谷もWBCの壮行試合の12球団代表に選ばれていて不在でした。

 今季のオリックスには大きな期待をしてますが、阪神の投手力を中心にした地力が、あの時点では上回っていた、と感じました。ほとんどの評論家が言うように、今年も阪神は強い、私もそう思っていますが、何しろ関西の2球団しか見ていない“井の中の蛙”。他球団はどんな状況だろうと気になっていたところで、ヒントを与えてくれる方にお会いしました。

 あえて、名前は伏せますが、もう30年近い付き合いのパ・リーグのスコアラーです。今年も交流戦が行われるとあって、6月中盤まではキャンプ、オープン戦、公式戦とずっと「セ・リーグ担当」を務めるそうです。交流戦直前には、また、この人から極秘情報? をもらおうと思っていますが、取りあえずキャンプの状態をほんの触り程度ですが、教えてもらいました。

 ◆巨人 チームの雰囲気が変わったというか、明るくなった。原監督が近藤昭仁・新ヘッドコーチを立てていて、それがいい形で回転している。練習内容も、バント、エンドランなど機動力を使う野球をやっていて一発だけに頼らない方向が見受けた。投手陣もパウエル(前オリックス)は二ケタは勝てるし、メンバーはそこそこそろっている。

 ◆中日 福留をセンターにアレックスをレフトにコンバートしてセンターラインはさらに強化された。右翼は井上、上田(前日本ハム)、英智らの競争になる。三塁は森野が主力になり立浪の出番が減るかもしれない。投手陣も川上をエースにツブが揃っているから優勝争いに加わってくる。

 ◆ヤクルト 打線はリグスの昨季後半の活躍が見込めるし、投手陣も石井久の再復帰などで、バランスが取れている。問題は古田監督が捕手として、どのぐらいゲームに出れるか。米野、小野らがいるが、やはり古田が頼り。これはふたを開けてみないと分からないだろう。

 横浜、広島ファンには申し訳ないが、ちょっと3チームと総合力に差があると思っていたので、ほとんど聞きませんでした。

 ところで、阪神はどう映っているのか。

 「そりゃあ、候補の一番手だよ。何といっても、あの投手力。12球団随一。ウチも対戦するまで、いろいろと研究して対策を練り、現場に参考になる資料を提供したいよ」。

 (次回は3月10日に更新予定)

March 3, 2006 04:50 PM | コメント (4) | トラックバック (2)