浅岡真一 独断流

2005年12月23日

天寿を全う、安らかに…

追悼・仰木彬さん

 携帯電話が鳴った。着信表示が余りにも長かったので、もしや…と思ったのですが、案の定でした。

 「浅やん、実はな…」聞き覚えのある声が耳に響きました。「ナシに手伝って欲しいんやけど、なかなか引き受けてくれんのや。あんたからも勧めてやってくれんか」。

 あれは忘れもしない2004年10月4日のことでした。オリックスの監督に決まった直後、仰木彬さんはイチローへの激励も含めてシアトルを訪れていました。異国の地でも次年度のスタッフ、戦い方が頭を駆け巡っていたのでしょう。長い間、師弟関係にあった梨田昌孝氏をヘッドコーチとして招きたいと国際電話をかけてきたのでした。

 4年ぶりの監督復帰。合併チームであることからも、両チームを熟知する近鉄最後の監督の助けを何としても欲しいということで、梨田氏と交友関係が長い私にサポート役を求めてきたのでした。

 その日は阪神について広島遠征。しかも、井川がノーヒットノーランを達成したゲーム。試合前に仰木さんから依頼され、思いが通じるべく、私は「要請記事」を書くのに必死でほとんど井川の偉業を見ずに記者席でパソコンに向かっていました。

 結局、梨田氏は固辞しました。あの時点で近鉄のコーチ、選手の所属が完全に決まっていなかったので「私だけが、先に進路を決めるべきでない」という筋論を梨田氏は貫いたので、仰木さんも納得せざるを得なかったのです。

 仰木さんについて、もう一つ秘話を紹介したいと思います。私は78年から近鉄を担当、コーチと記者とのお付き合いが始まりでしたが、後になって知ったことで、仰木さんには一つのエポックがありました。

 近鉄の強い要請で73年暮れ、西本幸雄氏が監督に就任しました。この際、ある球団首脳が「仰木と〇〇の2人はコーチとして残してもらいたい」と要望されたのです。阪急の監督時代から仰木さんの才能を高く評価していた西本氏は異論もなく受け入れ、ここから両氏の師弟関係が始まったのです。

 歴史に「もしも…」ということはないでしょうし、西本氏の大評価から残留は当然でしょうが、もし…があったら、その後の球界図は変わっていたかもしれません。

 その後、仰木さんは決して順風満帆ではありませんでした。西本氏が勇退したあと、関口清司、岡本伊佐美とバトンが渡り、やっと監督の座が回ってきたのは88年でした。しかし、18年間のコーチ経験をフルに生かしてそれからは近鉄で1度、オリックスで2度(96年には日本一)優勝に導き「名将」の称号を手にし、野球殿堂入りを果たしました。

 逝去後、いろんな報道がされましたが、私は病に犯された身で、死期がそう遠くないと意識していたと想像しています。それでも野球への情熱は衰えることなく惜しまれながらの壮絶な“戦死”。早過ぎる、若過ぎる--の声は当然ですが、私は「安らかに」と心の中で祈るしかありません。


December 23, 2005 09:27 AM

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nikkansports.com/mt/mt-tb.cgi/3035

このリストは、次のエントリーを参照しています: 天寿を全う、安らかに…:

» 仰木彬氏死去 from B-News(by S-I)
70歳の若さで。。 肺がんだそうです。 この間まで現場で活躍されていたのに。聞けば、シーズン中から症状が出ていたとか。それにもかかわらず監督という激務をこなし... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年12月23日 12:14

» 仰木さんの話題 from 仰木マジックと僕のプロ野球観戦記
15日の日記には皆様から多くのコメント、TBありがとうございます。仰木さんが・・・[新聞記事追加]仰木さん関連の話題を書く時には枕につけようと思います。****... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年12月23日 22:31

» 「知将二世」仰木彬さん逝く…… from 「Ryo's Baseball Cafe Americain」店主日記
神様というのは、つくづく非情だと天を恨みたくなるときがある。 近鉄バファローズ、オリックス・ブルーウェーブの監督として3度のリーグ優勝と日本シリーズ制覇1回を... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年12月24日 16:14

» 御冥福をお祈りします from (まめ)たぬきの雑記
 第1報をTVでみた (まめ)たぬき@息子のひとことを  仰木さんが 亡くなるなんて 信じたくないモンですから  「気のせいちゃうんか」でかたづけて ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年12月25日 18:07

» 仰木さん… from トラ&ウマ
友人からのメールに、ウソやろ?と思った 慌ててテレビつけたけど、ニュースやってへ [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年12月31日 20:14

» John Xert from John Xert
Hello all! Very nice site and very informativity! [続きを読む]

トラックバック時刻: 2007年04月11日 08:01


コメント

命を削って戦ってくれた仰木監督に対して、ありがとうという気持ちと同じくらい、ファンとしては申し訳ない気がします。
そんなこと言ったら、仰木監督から、バカいうなと言われる気がしますが。

投稿者 こじいち : 2006年01月05日 20:42

コメントしてください



保存しますか?