2005年11月29日
不参加表明選手を責めないで
WBC代表候補
27日にワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の代表候補の選出会議が行われました。日本の監督を務めるソフトバンク・王監督は「相手の返事待ちの状態なので現段階では具体的な名前は出ない」と語りながら「投手13人、野手17人、そのうち捕手3人」とだけ明かしました。
ご存知の方もおられると思いますが、このWBCとはプロの国別対抗戦で、4地区に分かれて予選を行い(日本はアジア地域)、最終的に世界最強を決める大会です。
この趣旨そのものは、賛成ですが、運営方法や3月という開催時期には大いに問題があります。かつて6月にこのコラムでこのことに触れ「不平等条約」と厳しい指摘をさせてもらいましたが(詳しくはバックナンバーを御覧になっていただいたら幸いです)、今も私の考え方は変わっていません。日本の選手会もシーズン開幕前の開催に抵抗を示していましたが、収益の分配金の改正や他の韓国、中国、台湾が参加の意向を表明したことなどで、一応、参加することになりました。
ただ、すべての選手が参意を示しているわけではありません。例えば中日の岩瀬投手。「体のことを考えたらリスクが大きい」と辞退を希望しています。この考えは尊重してあげるべきだと思います。
同投手は今年もセーブ王(46)に輝きましたが、登板は60試合。過去6年間で、65、58、61、52、58、60試合もマウンドに上っています。素晴らしいタフネスぶりですが、それを支えているのはシーズン中の節制、オフのオーバーホールでしょう。
こんな話を日刊スポーツ評論家の山田久志氏から聞いたことがあります。あれは中日の監督をしていた02年のことです。シーズンが終わった直後、山田氏は「岩瀬をいろんなイベントに出さないようにして欲しい」と球団に申し入れ、OKをもらったということです。
さすが284勝を挙げた元阪急の大エース、シーズンオフの過ごし方がいかに重要か熟知していたということでしょう。こういう気遣いにも岩瀬投手は恐らく感謝したでしょうし、その後も活躍しているのは、本人は最大限の手入れをやってきたからでしょう。
野球選手の寿命はまちまちですが、1年でも長く現役を続けたい気持ちは共通しています。わが身を守るために、不参加を表明するのは、決して責められるべきではないと思います。他にもマリナーズ入りが決まった城島も不参加の意向を示していますし、ヤンキースの松井、中日の福留も態度を保留しています。それぞれプロとしてのあり方を追求して決断するのですから、協調性がないなどという次元で見るべきではないと考えます。
今後は12月上旬あたりに30人の選手を確定させたいと日本代表のスタッフはしていますが、西武・松坂、ソフトバンク・和田、杉内の積極派も含めて、どんな陣容になるのか、注目したいです。
(次回は12月8日に更新予定)
November 29, 2005 10:48 AM | コメント (47) | トラックバック (11)
2005年11月21日
スポーツの原点はやはり「感謝」
Qちゃんの復活
「ありがとう」「ありがとう」を連発する高橋尚子をテレビ画面で見ていて、思わず胸が熱くなりました。歓喜のゴールイン直後、フィールド内にいるチームQのスタッフはじめ大会関係者らの祝福、拍手の嵐に対して、高橋は感謝の言葉を送り続けていました。
21日の東京国際女子マラソン、2年ぶりのレースに再挑戦する33歳に日本中のスポーツファンの注目が集まりました。まして直前に右ふくろはぎなど3か所の軽い肉離れを公表していたこともあって注目度はさらに増して、当然、私もテレビの前に腰を下ろし、見入っていました。
スタートは順調、右ふくらはぎ後ろのテーピングも痛々しさを感じさせず、走りのフォームもリズムがいいと感じられました。そして36キロ手前から猛然とスパート……。まあ、レース内容についてはほとんどの方がご存知だと思いますので詳述は省きますが、さすがに真っ先にテープを切った時にはバテが表情にでていました。
優勝を確信した時点で、いろんな思いが五体に駆け抜けていたと想像しますが疲労も何のその、真っ先に出てきた言葉が「ありがとう」。その後、お立ち台に立っても2年間の多くの支援者、この日のスタンド、沿道で声援を送り続けたファンへのお礼を強調していた姿勢にQちゃんの素晴らしさを感じました。優勝したからこそ、感謝の言葉が出てきた……と言えばそれまでですが、むしろ感謝の念が強かったからこそ、エネルギーが爆発したと受け取っています。
このレースの前日、甲子園球場では阪神タイガースの「ファン感謝デー」が行われました。4万3千人のトラ党が集まる大盛況。いろんなイベントが行われましたが、チビっ子たちがグラウンドで選手たちと一緒にゲームに興じるシーンを目にしました。
いつ頃からこういう交歓をするようになったか、不勉強で申し訳ないですが、かつてトラ番だった昭和の時代にはなかったことです。ファンとの距離を近くすることは歓迎すべきことで、選手たちも日ごろの応援に感謝しているから、笑顔で触れ合いをしたんでしょう。
もう一つ、初めての試みとして現役、OBを含めた紅白戦も行われました。江夏、田淵、江本、掛布、真弓氏らのOBが縦ジマのユニフォームを着て、かつての勇姿の片鱗? を見せました。選手のコールのたびに巻き起こる大拍手、声援、こういう先達がいて、現在のタイガースがある--。伝統の重み、先輩への感謝を現役の人は改めて感じてくれた、と確信しています。
闘争心、心身の鍛練、あくなき向上心……一流になるためには、いろんな要素を兼ね備えていなければなりませんが「感謝」の二文字もまた、重要な要素であると、2日間でつくづく再認識させられました。
そんなスポーツの原点に思いを馳せると、現在、球界に起きている諸事には、腹立たしくなります。カネ儲け優先の企業買収、邪悪な思惑での球団支配。こういうことに関わっている方にはQちゃんの「感謝」など意に介さない人種なんでしょう。
November 21, 2005 05:08 PM | コメント (0) | トラックバック (4)
2005年11月14日
現状では何のメリットもなし
タイガースの上場
先週、またも村上ファンド(通称)が、電鉄本社に対して阪神タイガースの株式上場を要求してきましたた。電鉄株の大量保有が発覚して間もなく、同ファンドはこの件を提案したが、電鉄側は「ノー」の返答をして一度は沈静化したかに見えました。ところが再度の要求、さらに14日にも「論理的に説明していただきたい」と記者団に語りました。これは私にとっては予想外でした。
マスコミで多くの経済評論家や学者の指摘してきたように、この要求は取りあえずのジャブで、本丸は電鉄が所有する不動産部門の資産価値であり、すでに六甲山の事業運営のリストラも要求しています。
なぜ、同ファンドがタイガースの上場にこだわるのか、企業価値がさらに高まるとしていますが、これについては後述するとして私の推論を記したいと思います。まず第一に考えられるのはタイガースの経営権を握り、支配権を持つことを目的にしていることです。もう一つは上場することによって、放出株を多く持って創業者利益を得ることです。
一つ目は、多分あり得ないでしょう。昨年度(04年)のタイガースの売り上げは約150億円。純利益は3億円足らずで、投資家からお金を預かって運用するファンドからすれば“旨み”が薄い企業です。球界の風雲児になろうとしても、今回の楽天・三木谷オーナーが苦労? しているように、なかなか侭ならないものです。
2つ目は可能性が大いにあります。私は専門外ですが、上場している株券は額面の価格より株価が高いのが一般的です。電鉄の株式を40%も保有している同ファンドなら、公開する際も大量に放出株を手にすることは当然で、その利益を次の運用資金にすることができる訳です。
こんな推測をしてみましたが、いずれにせよ電鉄側が拒否しているように、球団の上場はする必然性がないし、デメリットはあってもメリットはあるとは思えません。まず企業価値を上げるという論理ですが、全国に1000万人以上のファンがいると推定され、今季の甲子園でのゲームはすべて大入り満員になったことで、価値は十分に証明されています。
同ファンドがどういう上場の仕方をするか不明ですが、好ましからない個人、団体が大量保有した場合の危険はつきまといます。また、配当という義務を背負いながら利益が挙がらなかったらどうするのでしょうか。さらに株主優先となると純粋に猛虎を愛するファンは不利益を被ります。職員も増やさなければならず、人件費もかかります。
大体、ファンに賛否を問え……なんて要求は陳腐です。かつてダイエーが上場する時、お客さんにアンケートを求めたでしょうか。流行っている食料品店、服飾店などが上場するのに顧客に相談するでしょうか。同レベルの論理で、あれだけ聡明な、財界でも認められている村上氏にしては、次元が低すぎる要求だと思います。
ご存知のように米大リーグで上場しているチームはありません。デメリットを熟知しているからだと想像しています。TV放映権料の平等配分などの財政基盤も絡んでいるとも思いますすが、習熟度で劣っている日本球界では、時期尚早でしょう。
経済情勢の大幅な変革、球界の大きな動きが出たら一考に値しますが、それもかなり遠い先だと思っています。
November 14, 2005 02:29 PM | コメント (4) | トラックバック (0)
2005年11月05日
大山鳴動、ネズミ一匹…
オーナー会議
思わず「拙遅」という造語が頭に浮かびました。4日に行われたオーナー会議のことです。
もう皆さんもご存知だとは思いますが、主な議題は(1)球団株の上場(2)他球団の株式所有の2点でしたが、どちらも議決を得るまでには至りませんでした。まあ、私の予想した通りの結果だと思っています。
(1)については阪神の筆頭株主に躍りでた村上ファンドが電鉄に要求したことの審議でしたが、当事者の電鉄側が拒否の姿勢を示し、反対意見も多かったのですが、野球協約に盛り込むまでには行き着きませんでした。この問題については、また機会を見つけて私見を掲載させてもらいます。
さて(2)の問題。楽天がTBSの株式を20%近く取得したことが、協約の第183条に抵触するかどうかが争点になったわけです。この条項は簡単に言えば、2つの球団を実質的に保有することを禁じているわけですが、後段の「ただし、…」で始まる文章の中に例外規定と受け取れるくだりがあるのです。
三木谷オーナーは「楽天と楽天球団は別法人」と強調し、議長を務めるオリックス宮内オーナーもこれに同調、横浜の若林オーナーは「協約を殺す気か」と憤激しても、延長戦になだれ込むことになってしまいました。
まあ、TBSと楽天の業務提携が不明な段階では、仕方のない決着だと思います。次回の会議が12月か年明けになるかわかりませんが、単なる討論会に終わったことは確かです。
ただ、決議事項は1つ生まれました。1951年に発効した野球協約には時代にそぐわない内容もあるとして改定委員会を設置し、1年間をメドにたたき台を作っていくことです。何で今になって…というのが私の感想です。昨年の選手会のストを契機に球界再編に着手しようとしましたが、あの時点で協約の改定を提起するオーナーがいなかったのか、憤りすら覚えます。
冒頭の「拙遅」の造語は「孫子の兵法」から浮かんだものです。「巧遅は拙速に如かず」とあるくだりで、やや転じて物事は素早く決行すべきというふうに使われています。まさしく各球団の首脳、両リーグ関係者、さらにコミッショナーよ、もっとしっかりせんかい! と言いたくなります。
今回の会議でフジテレビがヤクルトの株を、子会社のニッポン放送が横浜の株を保有していることが問題になりました。根来コミッショナーは「解消したらどうか」と文章で通達することになったのですが、もっと毅然とした姿勢を示せないものか。せっかく有識者会議から、コミッショナーの権限強化の提言が出されているのに…。
最後に、野球ファンへのサービスというか義務としてオーナー会議の内容を「ファンへの声明」として出すべきではないかと考えています。ファンの方はマスコミを通してしか、会議の内容を知ることができません。すべてとは言わないが、概要を公にすることもコミッショナーの責務じゃないでしょうか。皆さん、どう思われますか?
November 5, 2005 04:59 PM | コメント (1) | トラックバック (2)
