浅岡真一 独断流

2005年10月27日

平謝り、我が庭でも、らしさは出なかった

阪神の惨敗

 阪神ファン、ロッテファン、いやプロ野球を愛する方々、申し訳ございませんでした。前回、書いた期待も込めた「阪神の逆襲」は夢物語に終わってしまいました。本拠・甲子園に戻ってトラ戦士は変身するだろうと予想したのですが、一度ロッテに傾いた流れは止めることができませんでした。

 バレンタイン監督の胴上げを記者席で見てから5時間余、深夜にパソコン画面に今、向かっています。2日前の原稿に対するお詫びと言い訳? を記さねば……と思い、緊急の差し替えをさせてもらいます。

 「勢い」という言葉はスポーツの世界では常套句になっていますが、実力、地力がなかったら、それに乗ることはできません。ロッテは日本一になるにふさわしいチームでした。ただ私はシーズン中で見せた阪神の底力は勝るとも劣らないと思っていたのですが、改めて短期決戦の怖さを思い知らされました。

 信じられないシーンの続出でした。バント失敗、併殺打の多発。守備のミス、打線の低調、藤川の速球が痛打されるなど、私にとっての“想定外”がこれほど重なるとは……。

 中でも、金本の不振は、その極でした。第4戦目の2打席目にやっとヒットがでましたが、通算13打数1安打。金本の出塁、快打に触発される今岡にも波及してしまいました。

 振り返ってみれば、絶対的な主砲でも波があるものです。昨年の三冠王、今年の二冠王の松中がその例です。昨年のプレーオフが19打数2安打、今年は16の1、一度ドロ沼にはまり込んでしまうとなかなか脱出できない、それも野球の妙味なんでしょう。恐らく阪神ファンは金本を責める気などわかないでしょうし、彼が4番の存在感を示したから、リーグ優勝を手に出来たことは明白です。

 あれは8月下旬、彼が信頼する杉田トレーナーに聞いたところ「もう、そこまですんなよ、と思ったことが何度もあったよ」と語っていました。試合前後の練習、ゲーム中はすべて全力疾走。下半身の各個所が肉離れ寸前なのをマッサージし続けてきた同トレーナーは「車で言うたらハンドルを触ったら次は前輪、その後は後輪という状態やったんや」と明かしていました。それが尾を引いていたかもしれませんが、彼はその責任を糧にして来季はまた活躍してくれるでしょう。

 もう一つ、岡田監督の仕掛け遅れ、我慢強さは継投で裏目に出ました。初戦の井川の引っ張り過ぎ、2戦目の安藤の後の江草投入、3戦目は藤川の後に桟原への継投、4戦目、3点目(決勝点)を与えた能見起用。結局JKは1試合しか登板しなかったのです。

 結果的には宝の持ち腐れに。特に第2戦、2点ビハインドの6回のピンチはJ、3戦、藤川が崩れかけたらJと“明日なき戦い”をすべきだったと思います。普段着野球は彼の信念だとはいっても、短期決戦は違う戦術が必要です。

 もはや、来季へ目を向けるしかありません。選手は4連敗の屈辱を晴らすべく秋季練習から、技術・体力アップを目指すしかありません。そして、岡田監督にも短期決戦の戦い方を反省してもらいたいものです。さらに、コーチ陣の申し出も鷹揚に受け入れる度量も広げてもらいたい。

 最後にこう締めくくることで、シリーズ中のベンチ、ブルペン事情も察知してもらえると思っています。
 

October 27, 2005 12:11 PM | コメント (13) | トラックバック (16)

2005年10月25日

カンフル剤は我が庭・甲子園

阪神の逆襲

 思わぬ展開になってしまいました。接戦が予想された日本シリーズ、阪神は敵地・千葉マリンスタジアムで、ロッテに木っ端みじんに粉砕されてしまいました。2試合連続の2ケタ失点はシリーズ史上初、ロッテを上回ると見られていた打線は沈黙し、わずか1得点だけ。ゲーム後、ファンからは罵声(ばせい)が飛んだとのことですが、屈辱感を最も味わったのは首脳陣と選手であり、雪辱の思いは全員に溢れていることでしょう。

 そんなトラ戦士に活力を与えるのは、本拠・甲子園に戻ってくることだと思っています。

 どのチームもそうでしょうが、特に阪神の場合には甲子園とういう“わが庭”は素晴らしいエネルギーを与えてくれるグラウンドです。低迷している時代もそうでしたが、今季はすべてのゲームで大入り満員、その大方の阪神ファンの後押しを受けて今季は勝率は6割を超えました。

 なぜ、それほどアドレナリンが湧いてくるのか、ユニフォームを着たことがない私にはわかりませんが、ネット裏で取材して、選手が生き生き、伸び伸びしていることだけは痛感してきました。

 後から言っても仕方のないことですが、千葉の1、2戦、多少の懸念はありました。ゲームから遠ざかって2週間半、これほど間が開くとなかなか実戦勘が取り戻しにくいという点です。これは85年の日本一の核弾頭・真弓明信氏も指摘していました。「シーズン中でも4、5試合不調の状態が続くことがあるのだから、短期決戦ならなおのこと。そこが心配だね」と漏らしていたのです。

 確かに清水直には普段のスイングが出来ず、渡辺俊にはほとんどの打者がタイミングが合わず、完封を許してしまいました。2人が好調だったことは確かですが、本来の阪神打線の姿ではありませんでした。ソフトバンクとの死闘を制した実戦勘をそのまま持続できたロッテとは実に対照的でした。

 そんな“慣れ”を取り戻してくれるのにもわが庭は大きなキッカケになると信じたいものです。思えば2年前、星野阪神はダイエー(現ソフトバンク)に2連敗した後、甲子園で3連勝しました。あの時も優勝が決まってから1か月以上のブランクがあり、やっと3戦目で、目が覚めたのです(最終的には日本一は逃がしましたが……)。

 わが庭に加えて、もう二つ、変身の材料があります。3戦目・下柳、4戦目・杉山の先発陣です。下柳の絶妙の芸術投球はロッテ打線の勢いを止めてくれる期待感が十分。杉山は速球、変化球とも先発陣では球威チーム1。コントロールだけ気を付ければ、そう打たれることはないと思っています。

 二つ目は実生活でも“我が家”に帰ってくることです。チームは月曜日に帰阪し、それぞれ自宅へ戻りました。独身の選手でもそうでしょうが、家庭を持っている者にはやはりホテル生活とは違って格別の味でしょう。サラリーマンの方々も含めてそんな経験はあるでしょう。妻の、子供の顔を見て片時の安らぎを得ることは、何よりのリフレッシュになります。そして過去を振り返らず、自宅から「出陣」すれば、気分もずいぶん変わってくるでしょう。

 シーズン中でも、ポイントとなるゲームはすべて制してきた阪神。“我が庭”“我が家”での底力、意地を大いに楽しみにしています。 

October 25, 2005 10:13 AM | コメント (2) | トラックバック (4)

2005年10月18日

1番バッターの対決が特に楽しみ

さあ日本シリーズ

 阪神の通称「村上ファンド」による阪神電鉄株の買い占め、タイガースの株式上場要求に続いて、先週は楽天がTBSの大量株保有、これに村上ファンドも参入していることが明るみに出ました。野球界にとっての問題は横浜がTBSの子会社で、1つの企業のオーナーが2球団を持つことが野球協約に抵触するということです。近々、これらの問題については私見を記すつもりですが、新聞、テレビであれだけ大々的に報道されると、こんな時期に……という気になって書く意欲が湧いてきません。

 だから、今回は平凡といわれようとプロ野球の最後の大勝負、日本シリーズの展望をあえて話題にさせてもらいたいと思います。

 その前にロッテとソフトバンクとのリーグチャンピオンシップ、素晴らしい激闘でしたね。私はケーブルテレビも含めて全試合を見ましたが、本当に素晴らしい“激闘”でした。画面の前で手に汗握らせた方もいらっしゃると思いますが、実力拮抗するチームの戦いは恐らく、阪神ファンの方が見ても感動していたと確信しています。

 1球、1打、1つのエラーがゲームの流れをがらりと変えるという試合の連続で、これぞ野球の醍醐味!を満喫させてくれました。結局、2年連続シーズン首位のソフトバンクが涙をのんだのは気の毒でしたが、ロッテの実力もヒケを取りません(交流戦を見られた阪神ファンはご存知でしょうが)。

 さて決戦、私が最も注目しているのは、阪神・赤星、ロッテ・西岡の“一番対決”です。もっと言えば盗塁対決です。赤星はもう押しも押されもせぬ盗塁王、一方の大阪桐蔭出身の3年目の気鋭は、今季41盗塁で初タイトルを手にしました。成熟の29歳と発展途上の21歳ではまだかなりの差があるようですが、そうでもないようです。

 「去年に比べてスタートが速くなったし、ベース間際のスライディングも鋭くなった。赤星と比べてもそんなに遜色はないよ」。かつて強肩で鳴らした近鉄最後の監督・梨田昌孝氏は、西岡の成長を高く評価しています。

 単に二人の“走り合い”に興味があるのではなく、ゲームの勝敗のカギを大きく握っていることもあります。二人が得点源であるという意味です。打率は・316の赤星に5分弱劣っていますし、得点も39点差、ただ、西岡はチーム1、リーグ3位タイ。短期決戦なら若さの勢いで、爆発する可能性も十分。さらに付け加えて置けば、この新鋭は得点圏打率がリーグ1(・377)、チャンスにも強いのです。

 他にもロッテの6人の10勝投手と阪神打線の対決、長打力では阪神の方が勝っていますから、阪神の先発陣が踏ん張れば、大爆発の期待も持てます。逆に、ロッテ打線は粘っこいので、2死を取っても気を緩めないことです。

 最後に付け加えれば、リリーフ陣の出来・不出来。まあJFKなら大丈夫でしょう。ロッテは薮田-小林雅のパターンは不動でしょうが、バレンタイン監督なら小野、久保あたりの10勝投手をその前につぎ込んでくることもあるでしょう。

 それでは、最終的に日本一になるのは? 申し訳ありませんが、明言をさけさせてください。ただ、第7戦までもつれ込むことはないと思っています。

October 18, 2005 11:11 AM | コメント (0) | トラックバック (0)

2005年10月11日

今のトラ戦士なら動揺はない

阪神電鉄株の買い占め問題

 タイガースが歓喜のリーグ優勝を果たした直後、世間を揺るがす事態が起きました。通称「村上ファンド」による阪神電鉄の買い占めのことです。もう社会問題になっているので、皆さんはよくご存知だと思いますが、発覚してからも買い占めは進み、現在は約4割の株を保有している、とのことです。いわゆる“筆頭株主”。電鉄の経営方針、人事に関して、大きな発言力を持つことになってしまいました。

 今さら、言っても仕方ないことですが、買い占めが進み、株価が上昇していく段階で電鉄は「これはおかしい」と気がつかなかったのでしょうか。一説によると「村上ファンド」は今年の1月から、今回の買収を計画し、用意周到に事を運んできたと聞いています。まさかタイガースが好調だから、株価が上がってきたとのん気に構えていたとは思いたくないですが、そう受け取られても仕様がないほど対応が遅れました。

 株式は市場で売買されているのですから、保有の名義人が変更になれば、その当該会社は知り得るのは当然のことです。このチェックが全く機能していなかったということになります。それと、もう一つ、私の取材では、今回の買収が買い進んでいった中で一部の役員にしか実情を知らされていなかったということです。役員という存在は何のためにあるのか、これも批判されて仕方ないでしょう。

 全役員が英知を結集していれば、対抗策が取れたかどうかは分かりませんが、情報の共有は、普通の会社の役員会なら当たり前のことだと私は考えますので、不可思議でたまりません。

 まあ、私は株主でもないので口を挟む権利はないかも知れませんが「物言う株主」は二の矢を放ってきました。阪神タイガースの株式上場を提案してきたことです。電鉄、タイガース球団は拒否反応を示し、根来コミッショナーや巨人の渡辺恒雄会長も不快感を露にしました。

 同コミッショナーや渡辺会長は野球界の憲法である「野球協約」の改正も視野に入れていますが、私も、そこまで踏み込んでいいと考えています。現在の野球協約には、上場に関しての明確な規定がないのですが、この際、設けてもいいんじゃないでしょうか。野球界の閉鎖性については多くの問題がありますが、この件に関しては、その閉鎖性が効力を発揮することでしょう。

 なぜ上場に反対かと言えば、まず敗退行為(八百長)が発生する可能性があるし、チームの人事にも口を挟む人々が増え、混乱します。また、株主だけを優遇すれば、一般のファンに不利が生じます。

 大体、阪神ファンのほとんどは純粋にタイガースを応援しているのであり、株主になってどうのこうの……なんて思ってらっしゃらないでしょう。むしろ、この騒動で選手が動揺し、日本シリーズ影響しないか、と懸念されているのではないかと思います。

 結論から言えば、まず無いと思っています。岡田監督はじめ、今のトラ戦士は2年前の雪辱を果たすことしかないと感じています。さらに野球選手の本能として、ゲームが始まれば、勝つことしか考えないものです。今年の戦いぶりがそうであったように……。我々もプロ野球の最後の祭典を盛り上げて行きたいものです。

October 11, 2005 11:37 AM | コメント (7) | トラックバック (5)

2005年10月04日

それでも、稲尾の偉業は生き続ける

藤川の日本新記録

 阪神・藤川がダブルの歓喜を手にしました。9月29日の巨人戦でリーグ優勝を日本最多登板(79試合)で飾りました。ほとんどの阪神、いや日本のプロ野球ファンの多くはご存知のことですが、記者席にいた私にもすこぶる感動的シーンでした。

 1年間の試合数の半分以上に登板したのですから、山あり谷ありのシーズンでした。決して体調万全で乗り切った訳ではありません。連投が30試合以上を超えたのですから、疲れが蓄積したことは当たり前のことです。8月下旬には扁桃腺炎で2試合欠場したこともありました。しかし、彼は「疲れ? それは禁句でしょう」と言い続けてきました。

 さすが「土佐のいごっそう」といえる精神力の持ち主です。そう言えばいごっそうの先輩・中西ブルペンコーチはシーズン前に「藤川には70試合以上行かせるよ」と宣言していました。一方でシーズン半ば、をチラリと見せてくれて「全く投げない日も作っているでしょう」とケアに対する自信を示していました。

 周りにも支えられての金字塔。ただ、私は稲尾さんの偉業は記録が破られても日本プロ野球の歴史の中でさん然と輝くものだと思っています。オールドファンの方なら記憶に残っている方も多いでしょうが、若い野球ファン、いや私もあの方の現役時代を知らないので、ここで簡単に回顧したいと思います。

 稲尾さんは1956年、別府緑ヶ丘高校から西鉄ライオンズに入団、三原監督にその素質を見込まれ、1年目に21勝6敗、防御率1.06で新人王に輝きました。以後35、33、30、20、42、25勝と7年間で200勝をオーバーした、まさに鉄腕です。

 神様、仏様、稲尾様……のキャッチフレーズが出来たのは、私の記憶では58年の日本シリーズ、巨人に3連勝を許しながら、稲尾さんが4連投で4連勝と奇跡の日本一になった時だったはずです(稲尾さんはその前にも2試合登板して、通算は6試合でした)。

 まさに化け物。今の野球では考えられません。テレビで幼少の頃に見ただけなので、後にライバルの方々に取材してみるとストレートはキレ抜群、スライダー、シュートは曲がりが鋭く少なく、それがバットの芯を外させるのに絶妙だったそうです。

 神様……から3年後、78試合登板を達成したのですが、140試合制でその中身は先発30、救援48試合で42勝の日本記録を樹立しました。投球回数は404イニング。まさに鉄腕といえるでしょう。

 藤川の快挙は称賛するばかりですが、稲尾さんの場合は“両刀使い”。打撃技術の向上、分業制の確立と時代の変化がありますが、稲尾さんの偉業はプロ野球の歴史に永遠に残るものです。

 それと、稲尾さんの藤川へのコメントです。「チームが優勝するために登板してできた記録、胸を張ってもらいたい」と。61年、西鉄は3位。稲尾さんがどんな思いでマウンドに上っていたか、胸が熱くなる言葉でした。

October 4, 2005 11:16 AM | コメント (11) | トラックバック (4)