2007年07月29日
ひと回り成長した広陵・野村
初の夏制覇へ。その挑戦権を得た広陵(広島)に、センバツで滅多打ちにあったエース・野村祐輔(3年)のひと回り成長した姿があった。
準々決勝で敗れた帝京(東京)戦、初回がすべてだった。本塁打2本を含む6安打6失点。最も得意とするスライダーが高めに浮き、ことごとく狙い打たれた。わかっていながら投げ続けたのは、自称負けず嫌いな野村の性格をあらわすように「一番自信があるから」だという。女房役の小林誠司(3年)も沈黙を挟んで同じように言い切っていた。
確かに切れ味は絶妙だ。持ち前の制球力もいかし、1試合平均2ケタの三振を奪う。特に右打者の外角に決まるスライダーは中井哲之監督(45)も認めている。だが、それが“スライダー頼み”の投球を生んでいた。帝京戦以降も不調は続き、自分を見つめ直した野村は別の球種に磨きをかける決意をした。
そして県大会直前、練習試合で再び帝京と対決することになった。
「あのとき(センバツ)とは違うぞ、と思ってスライダーではなくカーブで勝負してみました」。4-1で完投勝利。今まで以上の手ごたえをつかんだ。
夏本番でも成果は出た。今大会3試合目の先発となった準決勝、相手の如水館は球数を投げさせるためにフルカウントになるまでボールを見る「待球作戦」を仕掛けてきた。
「振ってくると思ったから意外でした。でも、球数が多くなっても関係ないです」。カーブで見事にタイミングを狂わせ、ランナーを出しても3併殺。すると、次第にボール球になるスライダーにまで手を出してきた。6回以降、野村の球数は急激に減った。
翌日の決勝戦は、攻守にミスが絡み、先攻というプレッシャーもあったなか延長11回を投げ抜いた。投球の幅が広がったと同時に今大会は森宗順平(2年)ら4投手が登板し、野村への負担も減らすことができていた。
「心強いです。登板機会が減る?いえいえ、チームが勝てれば関係ないです(笑)」。課題を教えてくれた甲子園。それを克服した新しい自分を見せられれば初の日本一も夢ではなくなるはずだ。
July 29, 2007 08:23 AM | コメント (7)
2007年07月23日
駒苫・対馬、どん底からの復活
5年連続の甲子園出場を決めた駒大苫小牧(北海道)。喜びを爆発させるナインのなかで、ひときわその味をかみ締めている選手がいた。
「…本気で言っているのか?」。香田誉士史監督(36)は耳を疑った。昨夏の甲子園メンバーにも入っていた対馬直樹(3年)からの突然の“退部宣言”だった。
すでに昨夏から苦しい毎日を過ごしていた。大会前にろっ骨を折り、甲子園期間中の練習は常に補助に回っていた。試合中の投球練習もただのダミー。仲間が笑顔で取材に応じているなか、自分の存在を消すかのように片隅にいた対馬はこんなことを話していた。
「チームが勝ち上がるのはうれしいです。でも、この場にいるのは辛いです。(北海道へ)帰りたい」。
自他ともに認めるマイナス思考な性格だ。それが態度にも出やすく、香田監督はそこを課題にあげている。そして、日本中を沸かせた早実(東京)との決勝戦の後、今まで我慢していたものが涙となって溢れた。
「疲れのたまっている田中(将大=楽天)さんや菊地(翔太=3年)を見ていて、自分は一体何をやってるんだろうって…。僕も監督に背中を押してもらってマウンドへ行きたかったのに…」。
9月になってもケガは完治しなかった。秋のメンバーも外れ、完全に練習を手伝う側に立った。自分の必要性を感じなくなりマネジャー転向も考えたが、追い込まれた対馬は退部という結論を出した。
しかし、香田監督は「あせらなくていい。ゆっくり治していこう」と投球再開のメドなどを具体的にあげていき、通院のために札幌市内からの通学も勧めた。新チーム結成当初より「このチームは対馬の復活次第」と考えていた監督が与えた復活計画という薬は、次第に対馬に気持ちの変化をもたらした。退部を撤回し、3月には本格的に投げ込むようになった。順調に回復を見せていたものの、春の大会は特待生問題の影響でベンチ入りは叶わず。
「だから、この夏が1年間の思いを全てぶつける大会になった」。
プレッシャーよりも喜びや感謝の気持ちのほうが大きかった。繰り返し口にする「投げられるだけでうれしい。野球をできていることが満足」という言葉がそれを物語っている。今大会3試合に先発し、決勝戦も7回途中まで要所を締める粘りの投球。どん底から見事な復活を遂げた。
July 23, 2007 09:25 AM | コメント (10)
2007年07月16日
夏の高校野球を占う/北海道
南北海道大会は「打倒・駒大苫小牧」を掲げ、各校が5連覇を阻止しようと目の色を変えている。好投手がしのぎを削り合う北北海道は早くも20日に代表が決まる予定だ。
<南北海道編>
駒大苫小牧は今年も上手い試合運びが健在だ。室蘭地区予選3試合で2失点という高いディフェンス力。また、今までのような150キロクラスの投手はいないものの、複数投手で勝ち上がるというチームカラーは変わっていない。今年も片山孝平(3年)、対馬直樹(3年)、菊地翔太(3年)と完投能力のある投手陣が並ぶ。甲子園経験者は1人だが、ベンチ入りメンバーが全員3年生とチーム力で勝負。
反対側のブロックからは同じ室蘭地区の北海道栄が頂上を狙っている。しぶとい打線が持ち味で、選球眼のいい打者が多い。エース・浜崎浩大(3年)が予選と同じように粘りの投球をしてほしい。
昨秋4強の北照は下級生主体とはいえ、攻守に引っ張る主将の市橋健也(3年)を中心に破壊力がある。こちらもタイプの異なる3投手の出来次第。不振に喘ぐ札幌地区からは144キロ右腕・寺田竜平(3年)を擁す札幌南も有力だが、怪我の具合が懸念される。
<北北海道編>
空知地区が編入されて迎える初めての夏。早速優勝候補の一角に挙げられているのが駒大岩見沢だ。白崎勇気(3年)、小林勇人(3年)の2枚看板の安定感が光る。昨秋あと一歩で逃した甲子園へむけヒグマが吠える。
だが、今年の北北海道はヒグマ打線も苦戦を強いられる好投手が多い。まずは高い出場率を誇る旭川地区から旭川南のエース・浅沼寿紀(3年)。「あっという間に終わってしまった…」と話す悔いの残った甲子園の土をもう1度踏もうと意気込んでいる。もう1人は旭川実の北山大将(3年)。北見に程近い約6000人の町・訓子府(くんねっぷ)で育った右腕は、最速146キロまでスピードを上げてきた。そして2年連続準優勝に泣いている遠軽(北海道)の186センチ右腕・西村優希(3年)も2種類のスライダーを武器に奪三振の山を築く。
いずれも疲れのたまる大会終盤でのスタミナが勝負を左右するだろう。
July 16, 2007 07:40 AM | コメント (4)
2007年07月12日
夏の高校野球を占う/関東・東北
今年の関東は全体的に戦力が拮抗し、白熱した戦いが予想される。そして、揺れに揺れた07年の高校野球を象徴するのが東北だ。特待生問題の影響を大きく受けたこの地からは「最近になって空白の1カ月(対外試合禁止期間)が痛かったと感じている」という悲鳴も聞こえてきた。
<関東編>
まずは山梨から。特待生問題に揺れた春を制した甲府商は2年生エース・米田易弘(2年)の投球が期待される。関東大会で強打の慶応(神奈川)を完封し、一躍注目を浴びるようになった。打力では東海大甲府が一歩リードも、日本航空、山梨学院大付、センバツ21世紀枠の都留も入る激戦ブロックに入った。
今年も全国最多194校が出場する戦国・神奈川は混戦だ。高浜卓也(3年)の横浜、田中広輔(3年)の東海大相模、伊場竜太(3年)の慶応と好打者が多いのが特徴。こういう展開で力を発揮する桐光学園が不気味な存在。
西東京は高い出場率を誇る日大三がリード。春の都大会で打ち勝っている東海大菅生が食らいついていきたい。一方の東東京は帝京が圧倒的。大田阿斗里(3年)、垣ケ原達也(3年)の左右2枚と中村晃(3年)を中心とした投打の力は全国でもトップクラスだ。また、今春に総合工科として公式戦初勝利をあげたチームに、城東を甲子園に導いた有馬信夫コーチが就任。春8強の文京など都立勢の大暴れも期待したい。
激戦・千葉は、投打に引っ張る丸佳浩(3年)が健在の千葉経大付が優勢か。追うのはもちろん成田。最速148キロ右腕・成田侑己(3年)は昨年の2回戦負けの雪辱に燃えている。7戦完投、1012球を投げて昨夏8強入りした市稲毛もエース・山下航(3年)が残り、今夏も沸かしてくれるか。決勝はロースコアが多く、好投手が夏を制す傾向がある。
埼玉は甲子園で本塁打を放っている赤坂和幸(3年)擁する浦和学院が本命。1年置き出場のジンクスを破れるか。ただ、同じブロックに聖望学園、鷺宮、東農大三と強豪が控えており油断はできない。
すでに1回戦が終わっている群馬は昨夏の決勝カード、桐生一、前橋工が中心。ともに複数投手が武器でチームカラーが似ている。前橋工は04年、06年と桐生一の前に1点差に泣いて準優勝。今年は準々決勝でぶつかる。
栃木のセンバツ出場校、佐野日大はヴィアナ・ウェリソン(3年)ら打線が持ち味。対照的に作新学院は韓国人エース・劉昌俊(3年)が引っ張るなど国際色豊かだ。昨夏代表の文星芸大付は県内屈指の左腕・佐藤祥万(3年)の出来が試合を左右する。
実力伯仲の茨城は、堅守に田中亮(3年)の投球が光る藤代と昨秋の王者・明秀日立が軸になりそう。特に藤代は秋、春と関東大会に出場するなど安定している。
<東北編>
東北地区は特待生問題の影響で春の大会に出場できずにその実力が不透明な学校が多い。福島はセンバツ出場の聖光学院、春の王者・学法石川、日大東北の私学3強が抜け出す。聖光学院はエース・鈴木健太(3年)不在の間に投手層に厚みができた。
宮城では仙台育英、東北の2強が勝ち上がれば準決勝で対決することになる。150キロ右腕・佐藤由規(3年)頼みの仙台育英に対し、東北はエース・西野雄馬(3年)を筆頭に投打のバランスがいい。昨夏の2日がかりの決勝戦のリベンジにも燃えているはずだ。
岩手は旧チームから新沼悠太(3年)、菅原淳(3年)の2枚看板が引っ張る進学校の一関一の前に盛岡大付、盛岡中央の私学勢が立ちはだかることになる。活動を再開した専大北上の戦いぶりも注目。
この展開は山形も同じ。秋、春を制した上山明新館は初戦で酒田南との対決が予想され、他にも日大山形、羽黒、鶴岡東も優勝を狙える位置につけている。例年以上にレベルの高い本大会になりそうだ。
全体的に“打高投低”の秋田は本命不在。そのなかで安定したいるのが秋田中央か。昨秋の東北大会でも仙台育英に善戦し、地力がある。名門・秋田商のブロック(八橋球場)には金足農、能代などの実力校が集まった。また、明桜も校名変更元年に花を添えたいところだろう。
青森山田と光星学院の2強が飛び抜けている青森。過去5年間で4度がこの決勝カードで、今夏も決勝まで当たらない組み合わせに。戦力的には近藤龍義(3年)、中西純平(3年)の甲子園経験者が残る青森山田が優位。昨秋優勝の八戸工大一はノーシードから9年ぶりの王座奪還を目指す。
July 12, 2007 07:13 AM | コメント (10)
2007年07月08日
夏の高校野球を占う/東海北信越
東海勢同士の決勝となったセンバツから3カ月。常葉学園菊川(静岡)も大垣日大(岐阜)も原動力となったバッテリーを中心に再び夏も甲子園を沸かしてくれるだろうか。
<東海編>
三重は春の東海大会で優勝した宇治山田商が本命。146キロ右腕・中井大介(3年)が攻守の要だ。創部6年目の皇学館も昨秋から安定した戦いぶりを見せており、甲子園を狙える力を確実なものにしてきている。
センバツ準優勝・大垣日大のいる岐阜。中京、中京に勝って東海大会4強入りした岐阜総合、夏は最多26回の出場を誇る県岐阜商も侮れない。
愛知は中京大中京が伊藤隼太(3年)を軸とした強力打線を武器に秋、春につづく優勝を狙っている。対抗は、いずれの大会も4強入りしている愛工大名電。過去2年の決勝戦で完封勝ちしているように今年も細江純平(3年)ら厚い投手層で勝負をかける。
史上最多120校が参加する静岡、注目はセンバツ覇者の常葉学園菊川で間違いない。春は特待生問題の影響で初戦敗退だったが田中健二朗(3年)、石岡諒哉(3年)ら攻守に高い力を持つ。追うのは複数投手を擁す兄弟校の常葉学園橘。大野健介(3年)が健在の静岡商は昨夏の決勝戦の相手・浜名のブロックに入った。
<北信越編>
最も遅い21日開幕の福井は敦賀気比が9年ぶりの優勝へ一歩リード。打力に機動力も兼ね備えた攻撃は県内一だ。福井工大福井は2年生投手陣の活躍がカギ。
石川は混戦だ。昨夏準優勝の星稜は高木京介(3年)、高橋康平(3年)の左右2人が残っているのが強み。北陸大谷の豊島明好(3年)、石川県工の山口嵩之(3年)ら全体的に好投手が多いのが特徴。対照的に優勝候補の一角・遊学館(石川)は打撃が持ち味だ。昨年は雨に泣いた同大会、調整方法も勝敗の行方を左右させてくる。
秋から春にかけて上位の顔ぶれが変わらない富山。夏も富山商、桜井、新湊の3校が中心になってくる。富山商を苦しめた左腕・竹嶋祐貴(3年)が大黒柱の滑川の戦いぶりも楽しみ。
例年決勝戦は好勝負が多い長野。今年は秋、春を制した長野日大が初の甲子園を狙っている。ライバルはセンバツ出場の創造学園大付だが、勝ち進めば準々決勝で対決することになる。また、甲子園から遠ざかっている南信地区の上位進出にも期待したい。
昨夏の決勝カード、日本文理と新潟明訓が今年も新潟をリードする。今年も決勝まで当たらない組み合わせになった。栗山賢(3年)、永井剛(3年)という下級生時代から経験を積んでいる本格派エースの対決に注目が集まる。ノーシードの日本文理にとって同ブロックの帝京長岡が怖い。
July 8, 2007 07:27 AM | コメント (2)
2007年07月02日
夏の高校野球を占う/中国・近畿
この10年で西日本勢の夏の甲子園大会優勝は3回だけ。大会を賑わす選手やチームが多いものの、深紅の優勝旗からは遠ざかっている。今年こそ低迷からの脱却を期待したい!
<中国編>
山口と広島はセンバツ出場校の宇部商(山口)と広陵(広島)が固い。春の県大会は8強止まりも毎年夏にはチームを仕上げてくる宇部商。高橋貴洋(3年)と原田直輝(3年)のバッテリーを中心としたディフェンス力は県内屈指。
広陵もエース・野村祐輔(3年)抜きで県大会を勝ち上がり、課題だった投手層に厚みが出た。他にも盈進(広島)・友滝健弘(3年)、尾道商(広島)・樋口賢(3年)と本格派投手たちの好投が期待される。
岡山は6季連続出場を狙う関西(岡山)を中心に岡山理大付、金光学園(岡山)やノーシードにも強豪が多く混戦。津田大樹(3年)、宮本武文(2年)の2枚看板がいる倉敷(岡山)は初戦から厳しい戦いを強いられそうだ。
島根は2季連続中国大会出場の浜田(島根)が安定している。左腕・入江慶亮(3年)の投球がカギになるが、そこに開星(島根)、江の川(島根)の私学2強が立ちはだかる。
鳥取は昨秋の時点で倉吉北(鳥取)が抜きん出ており、春こそ特待生問題で出場を辞退したものの地力がある。
<近畿編>
夏は6年間優勝がない近畿。地元・兵庫は報徳学園(兵庫)、市川(兵庫)のセンバツ出場校はもちろん、東洋大姫路(兵庫)や神港学園(兵庫)にも甲子園経験者が残っており実力伯仲といったところだ。
大阪は高校通算本塁打数タイ記録の86本に並んだ中田翔(3年)擁する大阪桐蔭が本命。3連覇に待ったをかけたいのが、昨夏府大会決勝で延長12回を戦った金光大阪のエース・植松優友(3年)だ。センバツ出場の北陽(大阪)は初戦で公立の雄・桜宮(大阪)とぶつかる。
春の王者・立命館(京都)と昨秋準優勝・京都成章がいきなり初戦で対決することになった京都。準優勝した2年前の大会以来の甲子園を狙う京都外大西は本田拓人(3年)が主将としてチームを牽引する。
複数投手でセンバツにつづく出場を目指す北大津(滋賀)が中心になる滋賀。今年の決勝戦は新装された皇子山球場で行う。 奈良は昨夏劇的なサヨナラ勝ちで4年連続出場を果たした天理(奈良)が今年も一歩リード。攻撃力のある智弁学園(奈良)が絡んでいく展開になりそうだ。
今年も「打倒・智弁和歌山」が合言葉の和歌山。対抗1番手は春の近畿大会準優勝の県和歌山商。投手では昨年の大会で智弁和歌山を8回途中まで2失点に抑えた伊都(和歌山)の左腕・福田翔亮(3年)が県下一。優勝すれば夏は初めての甲子園になる。
July 2, 2007 10:12 AM | コメント (8)
