沢畠功二
2006年12月24日
2連戦ならではの妙
タイトルは思い出せないが(情けない…)、高校時代に現代文の授業で「清岡卓行」の作品が教材として登場した。知る人ぞ知る「猛打賞」(1試合3安打以上)の発案者。今年6月、享年83にして亡くなったが、プロ野球公式戦の日程の礎を築いたことは、意外と知られていない。日程編成に携わるベテラン球界関係者が教えてくれた。
某関係者 プロ野球ってのは、3連戦でうまく回るようにできている。確か1951年ぐらい…ちょうど2リーグ制になったころかな。当時セ・リーグに勤務していた清岡さんが3連戦を定着させたんだよ。大リーグの日程を研究したら、1カード3連戦を基本としていることに気付いたらしくてね。よくできたシステムだと思うよ。ファンだって1勝1敗だったら、勝ち越しを期待して見に来るだろうし、2連敗なら一矢報いるシーンを見たいじゃない。でも来年の交流戦は2連戦でしょう。調子良いチームと悪いチームの差が出ちゃうだろうね。
公式戦は3連戦、また2連戦を軸に組まれている。連敗の可能性がある2連戦に慎重となる首脳陣は多い。3連戦なら、2連敗しても、3戦目さえ落とさなければいい。だが2連戦は、そうはいかない。仮に首位との直接対決で連敗したら、一気に2ゲーム開いてしまうからだ。
どうして2連戦になったのか。巨人、阪神戦を増やしたいセ、手放したくないパによる利益の奪い合い。セは今季の半減の18試合、パは現状維持の36試合を主張したが折り合わず、落としどころは中間の24試合だった。ホーム2試合、ビジター2試合を12カード繰り返していく。そこに落とし穴が待っている。昨年は中日、今年は巨人と失速したが、来季はもっと顕著になるだろう。05、06年のセ、パ全カードの勝敗を記録部に調べてもらうと、以下のデータが浮き彫りとなった。
【3連戦での3勝0敗】
▼05年 62回(217カード)
▼06年 50回(206カード)
【3連戦での2勝1敗】
▼05年 143回
▼06年 145回
【2連戦での2勝0敗】
▼05年 44回(89カード)
▼06年 42回(95カード)
【2連戦での1勝1敗】
▼05年 40回
▼06年 47回
2連戦だと半分近くは連勝、連敗となってしまう。この数字をもとに、現場の選手、コーチ数人にどんな意識を持っているのかを聞いてみた。
Aコーチ 確かに2連戦の頭はとりたいね。もちろん力のある投手を分散できればベスト。3連戦なら火曜日、金曜日に主力投手を先発させたけど、この日程ではそうはいかないね。
B投手 2連戦でも3連戦でも初戦が大事なのは一緒。そんなに変わらないと思いますよ。
総じて選手より慎重なのは首脳陣だった。いかに初戦をモノにできるかで精神的に違ってくるはずだ。3年目にして縮小された交流戦。どこが笑い、どこが泣くのか。2連戦ならではの妙が、シーズンを左右する気がしてならない。
December 24, 2006 12:17 PM
2006年12月14日
甘すぎる外国人契約
最近、プロ野球の外国人市場で、異変が生じている。米大リーグではなく、国内他球団への移籍だ。昨オフの例を挙げれば、李がロッテから巨人、デイビーは広島からオリックス、パウエルはオリックスから巨人、セラフィニはロッテからオリックス、そしてフェルナンデスが西武から楽天に移った。11月30日までに所属球団と合意しなければ、他球団と交渉できるからだ(李はロッテと契約後に移籍する異例パターン)。
プロとして、より条件の良いチームを求める。当然だろう。最も鮮烈だったのがヤクルトのペタジーニだ。最低でも「2年総額20億円以上」(土井球団代表、当時)を提示した巨人を迷いなく選んでいる。
ヤクルトとの契約が切れる02年オフ、去就が注目されていた。帰国する際の成田空港。本心を探ろうと殺気立つ報道陣に、25歳年上のオルガ夫人がキレたことがある。「おカネ…」の単語が聞こえるやいなや「おカネ、ノー。たとえクッションとして座ることができるほどのお金があっても、私たちが欲しいのは(チームからの)愛なのよ」。庶民感覚でこんな例えは、冗談でも思い浮かばない。来日後の6年間で、少なくとも30億円は稼いだ夫妻。さぞかし優雅な生活を送っていることだろう。
本題に戻り、今年も有力助っ人の去就が決定していない。ヤクルトはノーヒット・ノーランを達成したガトームソンが、7倍増の要求をしてきたことで決裂。ソフトバンクのズレータ、日本ハムのセギノールらが合意しないまま、保留者名簿から外れた。ある渉外担当者は「これが日本慣れした代理人たちのやり方」と嘆いた。メジャーでは高額契約は期待できない。それなら日本で、もうけよう。外国人との契約に甘い市場を熟知した代理人たちの手口である。
なぜこうなったのか。豊富と思われがちな米市場だが、実際に3Aなどを視察したことがある球界関係者は「現実は違う。日本が獲得できるような選手は限られている」と言う。日本での実績を重視した方が計算できる。そういう国内球団の考えが、見透かされている。メジャーで高条件を引き出せなくても、日本の市場は魅力だ。今季なら西武カブレラの6億円、中日ウッズの5億円、巨人パウエルの2億円などは、まさに日本価格だ。
ほとんどの外国人選手は1~2年契約を結び、オフの11月30日をもってFA扱いになる。慌てて契約しなければ、より条件の良い球団を選べる。しかし自由に移籍できない日本人選手からすれば、不平等極まりない。メジャー契約が微妙な選手を高額で引き留めるから相場が高くなる。
古くは開国後の1858年(安政5)、日米修好通商条約が不平等条約として有名だ。優良助っ人の契約には甘すぎる傾向がある。12球団で構成する実行委員会のメンバーでもあるヤクルト倉島専務は言う。「契約するときに、例えば3年は国内移籍を禁止するなど統一したほうがいい。すでにそのような条件をつけている球団はいくつかあるんだから」。資金力豊富な球団以外は深刻だ。
December 14, 2006 10:12 AM
2006年12月04日
クリーンなドラフト
先日の大学・社会人ドラフトで、ある選手が指名されるまでを追った。
この選手は、当初から予想されたA球団から指名を受けた。終わってみれば順当だったが、実力ゆえに途中で争奪戦になりかけた。A球団の担当スカウトの目に留まったのは2年前で、足しげく通ってもらった。チーム監督の胸の内も固まっていた。しかし夏以降になり、実力を認めた数球団のスカウトのあいさつを受けた。「A球団は何巡目でいきそうなんですか?」などと探りを入れてきた。
監督の言い分は、単純明快だった。「早くから意思表示をしてくれた球団に行かせたい。結局、スカウトの(眼)力じゃないの。探りを入れてくるってのは、それまでに狙っていた選手が断られたという状況もあったんだろうけども」。残念ながら、断られたスカウトから陰口もささやかれ、かなり嫌な思いをしたと憤慨していた。
選手は希望球団名を口にしていない。しかし監督が先に声をかけてくれた球団を優先させたい意向を持っていたために、他球団は事実上の逆指名と受け取った。本当に欲しいのなら、堂々と指名すればいい。希望枠以外はウエーバー順が決まっており、ルール上で何の問題もないからだ。しかしプロ側としては、後々の付き合いを考えて、強行までして気まずい思いはしたくない。だから、横やりは入らなかった。
指名過程としては、ありふれた一例ではなかろうか。希望枠であろうとなかろうと、指名候補は複数球団から注目される。選手は公式戦が終了するまで、プロとの接触は禁じられている。送り出す側としては、いち早く才能に目を付け、誠意を持って足を運んでくれた球団を優先したい。人と人との交渉だけに、これは自然の流れだ。ただでさえ義理人情が重視される業界。どれだけ早くからスカウトが才能を見いだしてくれたか。選手を預かる監督にとって、大きな判断材料となる。
「妥協の産物」と皮肉られ、2年の暫定期間を終えたドラフト制度の改革は、今後本格的な議論に入る。自由競争を主張する球団、完全ウエーバーを理想とする他球団。クリーンなドラフトを目指す選手会は、希望枠の撤廃を主張し続けている。FA取得の短縮もリンクする。9月中に行われる高校生ドラフトは、進路選択が早まると高野連は歓迎している。それらは再びたたき台の材料となる。
反映されるかは別として、実際に指名される現場もクリーンな制度を求めている。この監督は、最後にこう付け加えた。「他球団から指名されていても行ったと思うよ。それがドラフト制度だからね。選手が希望球団を口にするから、おかしくなる。今回も何人かがもめたでしょう。いっそのこと希望枠をなくしてしまえばいい。それか希望枠の選手はもっと早めに決めてしまう。そうすれば他が動きやすいでしょう。それが分かりやすくていいんじゃないの」。政治もそうだが、分かりやすく、クリーンな制度は万人が求めるところ。理想を掲げるだけで、終わってはいけない。
December 4, 2006 09:27 AM
2006年11月24日
球界入札と官製談合
最近、ニュース番組で見覚えのある顔をやたらと目にする。安藤忠恕(ただひろ)宮崎県知事だ。県の土木部職員が談合により逮捕され、自身にも捜査のメスが迫っている。巨人の宮崎キャンプを必ず訪れ、宮崎牛などを差し入れする。さぞかし巨人関係者も驚いているだろう。
一般に談合とは、公共事業などにおいて、複数の入札参加者が前もって相談し、入札価格や落札者などを協定しておくことをいう。投票箱のような「入札箱」に札を入れることから「入札」と呼ばれる。それにより工事を受注することを「落札」という。正直、ふだんは地方行政にはあまり関心を持たないが、入札という響きが妙に気になった。
球界でも今、入札が旬である。いわゆるポスティングシステムだ。西武松坂はレッドソックスが約60億円、ヤクルト岩村はデビルレイズが約5億円で、それぞれ交渉権を獲得。落札先が決まっている官製談合とは違って、さまざまな情報に振り回された。入札直後から球団数、金額などの情報、憶測が飛び交ったからだ。
入札前には「松坂はヤンキース有力」、いや「任天堂マネーでマリナーズが逆転を狙っている(直前で撤退)」などと言われていた。締め切り後は「落札したのは30億円以上でレンジャーズ」と外電がいち早く報じてきた。岩村もパドレス、インディアンスが有力だったが、ふたを開けたら違った。これが入札における本来の姿。かつてイチローや石井一がこの制度を行使した際は、不思議と予想された球団に落ち着いた。だから妙に新鮮だった。
落札球団が予想外なら、60億円という額にも驚いた。あまりに突出した額のため、妨害かと邪推したくもなるが…。それはともかく連日、ワイドショーでも取り上げられたことから、ご婦人方などにも関心の的となった。「60億円のうち、いくらが松坂に入るの?」と聞いてきた知人もいた。もちろん本人の懐には1円も入らない。交渉権を得るために、西武に60億円を払う。「赤字が年間20億円もあるなら球団はホクホクじゃない?」との指摘もあった。それも一理ある。しかし西武はチーム、いや日本の宝を失った。観客数、グッズ収入、そして何より戦力ダウンは計り知れない。赤字補てんで喜んでいる場合ではない。
制度が存続する限り、スターの流出は止まらない。米球界に詳しい関係者に、来年、再来年以降のメジャー予備軍数人を聞いた。空洞化は避けられない。1円にもならないFAで出られるなら、「売る」ことを選ぶ球団は少なくない。そして選手は骨をうずめるつもりで海を渡る。そうなると日本は米国に一流選手を供給するだけの構図が浮き彫りとなる。それがシステムとして成立してしまったがゆえの現状だ。
話は戻って、関与を否定している安藤知事は、来春の巨人キャンプを訪問できるだろうか。平安時代の仮名文「かたりあふ」に当てられたのが「談合」だったと言われている。福島、和歌山、宮崎と県政トップを巻き込んだ一連の事件。それを真に受けたかどうかは、知らない。
November 24, 2006 12:07 PM
2006年11月14日
日米野球開催の意味
今回限りか、伝統継承か。先週まで開催されていた日米野球の存続が注目されている。労組プロ野球選手会は、今回限りでの打ち切りを強く要望。理由としては試合数増による選手への負担、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の開催により、真の世界一決定戦の場ができたことなどを挙げている。そんな空気が波及したのだろうか。全日本の辞退者は水面下での打診を含めると、25人にも上った。5戦全敗は当然の結果だった。
「花相撲」と皮肉られての開催。それでも出場した選手は何かを吸収しようと必死だった。4日、ヤクルト青木宣親外野手(25)は神宮球場の東京6大学選抜戦から、東京ドームでの全米選抜戦にはしごした。3日の試合後、「明日デーゲームなんですよね」としかめっ面をしながらも「夜は途中出場? いえいえ、試合に出たいですからね」と手を抜こうとはしなかった。昼は東大生、夜はロックミュージシャンとしても活躍するアローヨ(レッズ)と対戦した。
2年連続で年間190安打以上の快挙を達成しながらも、休もうとはしない。シーズン後半、足の痛みを隠して出場を続けた。その影響でオフはしばらく練習できなかったという。しかし何事もなかったように、フル出場した。
メジャーでの1年目を終えたばかりのマリナーズ城島健司捕手(30)にも、貴重な機会だった。「日本に帰ってきてからは英語を聞くのもイヤでしたよ。それでもこの時期に英語に触れられるのはラッキーですよ。シーズンから1カ月あいているけど、思い出しますしね」。コミュニケーションを求められるポジションでの苦労は想像を絶する。できれば英語抜きで生活したかっただろうが、使わなければ忘れてしまうのが語学。感覚を取り戻すには、絶好の1週間だった。
メジャーリーガーでは9年連続ゴールデングラブを獲得したA・ジョーンズ(ブレーブス)が、春から出場を直訴していた。1000万円を軽く超えるギャラ、家族同伴、観光旅行付き。大会MVPを獲得したハワード(フィリーズ)に至っては、今季の推定年俸(35万5000ドル=約4100万円)の約3分の1を、わずか5試合で稼いでしまった。さらに全勝分の賞金1億4000万円をチームで分配する。MLBサイドが続行を望むのも無理はない。
全日本の出場手当ては全米選抜の10分の1にも満たないという。これではモチベーションを上げるのは難しい。選考のすったもんだに始まり、最悪の結果に終わった。親善試合を含めた全6試合の観客数は20万6310人。本場のプレーに満足する一方で、ふがいない全日本をどう思っただろうか。
連日、試合前のベンチでは楽天担当記者たちにぼやきまくった野村監督。「互いに親善関係を深め、野球を世界に広め、野球人口を少しでも増やしたい。良いものを学ぶ場は大事。一流が一流を育てる」と開催を支持しながらも、こう続けたという。「ただ、こうも辞退者が多くては、もうやめた方がええんちゃうの」。次は2年後。どうなっているのだろうか。
November 14, 2006 10:31 AM
2006年11月04日
日本ハムの熱気これからも
日本シリーズ取材での札幌滞在中、日本ハム快進撃の雰囲気を肌で感じようと街をひたすら歩いた。朝はジョギングがてら北大や中島公園を、昼はススキノ、大通公園、駅付近を散歩した。目に付いたのは、札幌ドームへ向かう地下鉄内での女性の多さ。女子高生など若い世代はもちろんだが、ご婦人方をよく見かけた。ひいき選手のユニホーム、スタジアムジャンパーなどを着込み、メガホン持って応援に行くのである。
一般的に娯楽がないからとは言うが、女性の興味を引くのは難しい。理由は言うまでもない。新庄だ。市内在住のファンに聞くと、夫人の熱狂ぶりを説明してくれた。「うちの女房がシンジョー、シンジョーって、そりゃあ~もう~すごいよ。とにかく球場に行きたいって。雰囲気を味わいたいんでしょう。魅力? やっぱりカッコいいからみたいだよ。コマーシャル出たりしているもんね。女房の年? 私と同じ65歳ですよ。ハハハ」。恐れ入った。
とにかく異様な盛り上がりだった。地元放送局での昼、夜ニュースではトップ扱い。日本シリーズでの勝利数と同じだけ、1人前のドリンク無料という飲食店もあった。ホテルは軒並み満室。優勝を決めた第5戦、北海道地区での第5戦の平均視聴率は52・5%と驚異の数字をはじき出した。テレビ観戦する道民が増えるため、パチンコ店の客足は鈍ったという。歓楽街ススキノでは、「出血大サービス」の大幅割引で客引きに必死だったことも付け加えておく。
もちろんグラウンドにも、道民の熱気が凝縮されていた。テレビ中継を見ていた人なら、1度は画面の揺れを体験したのではないだろうか。稲葉が打席に入ると、ファンが一斉にピョンピョン跳びはねる。まさか冗談だろうと思ったが、ネット裏にある記者席が本当に揺れていた。それもそのはず「震度3」に相当するという。
まるでライブ会場のような一体感に感心していたのが、横浜のエース三浦大輔投手(32)だ。
三浦 野球のファン離れと言われてますけど、決してそんなことはないと思いますよ。こういう中で試合したいな、投げたいなとあらためて思いましたね。球団、フロント、選手、地元と一体となって、やればできるんだなというのをファイターズが証明していると思います。打席に入る打者によってスタンドの雰囲気が変わるのを感じましたよね。新庄さんなら新庄さんの雰囲気を球場がつくっていると思いますし、小笠原が入れば小笠原の雰囲気が出るし、(森本)稀哲が入れば稀哲の雰囲気を球場全体が作り出していると感じましたよね。
一流投手らしく「空気」を敏感に感じ取っていた。そしてハマの番長は心底、球場の一体感がうらやましそうだった。女性、子供をいかに取り込むかは、集客を含めたビジネスのカギを握っている。今季限りで引退する新庄が道内にまいた種。来年以降にも芽は出るだろうか。今が最盛期であってほしくない。
November 4, 2006 09:26 AM
2006年10月25日
入札が生む明暗
毎オフ恒例と言っては何だが、ポスティングシステム(入札制度)を巡るメジャー移籍の動きが本格化してきた。19日にはヤクルト岩村明憲内野手(27)が球団の了承をもらい、4年間の主張がようやく通った。この制度では、容認するか否かの権利は球団にある。そのためにもめることが多いのだが、今回は至ってスムーズに進んだ。まれな例である。
第3者の勝手な見方だが、何が何でもメジャーに行くだろうな、と感じたシーンがあった。7月25日、いわき(福島)での横浜戦。3点リードの5回無死一、二塁、送りバントを命じられると、明らかに戸惑っていた。試合後、「サインか」と報道陣に聞かれると、「知るかっ、そんなものっ」と怒りをぶちまけた。
采配批判とも受け取られかねない言動。あえて記事にはしなかった。巨人、阪神のような人気球団にいたなら間違いなく、翌日には「監督批判」という見出しが紙面をにぎわせたことだろう。この件が去就に影響した可能性はゼロだろうが、チームに残ることはないなと確信した。
決まったからには、今後を温かく見守ろう。ヤクルト本社ロビーで晴れ晴れと会見する姿を見ながらそう思う一方で、目の当たりにしてきた過去の泥沼を思い出してしまう。巨人担当時代には上原、入来、昨オフはヤクルト石井弘。制度として認められながらも、1度の話し合いでまとまり、球団が「はい、分かりました」などと容認したケースはこれまであっただろうか。
球団間にある温度差。かつて巨人清武球団代表は「今の制度が続けば、日本のプロ野球の崩壊につながって、FA制度の形がい化につながっている」と話したことがある。一方でヤクルト多菊球団社長のように「夢を応援してあげたい」と理解を示すフロントもいる。球団内ですら、西武のように森(デビルレイズ)はオーケーだが、松坂はダメというケースも生じる。
FA制度がある中で、少しでも早く移籍しようと、入団から数年で行使を希望する選手は後を絶たない。球団には移籍金収入というビジネス的側面があるが、選手からすれば最高入札提示球団以外とは交渉できないなど移籍の自由に関する問題もある。ならば廃止して、FA取得までの年数を短縮すればいいのか。これにはドラフト改革、さらには球団経営も絡んでくるため、一筋縄ではいかない。そして何よりも、もめた後に残るのは選手のイメージの問題。仮にそれが第3者が介入していても、だ。
9月下旬、左肩手術を決断した石井弘と神宮クラブハウスで会った。現場の意向を受け入れる形で残留を選んだが、ここまで野球人生が変わるとは思わなかったろう。「1日も早く治るように…」としか声を掛けられなかった。今ごろメジャースカウトへ最後のアピールをしているはずだった。キャンプ直前まで交渉が続き、体のケア、練習に集中できなかったのではないだろうか。結果、WBC期間中に左肩を痛めてしまった。復帰は早くても、来季後半とみられている。ポスティングによる明と暗。切なくなった。
October 25, 2006 02:48 PM
2006年10月15日
予告先発なければ…
パ・リーグのプレーオフ(PO)第1ステージ第3戦の試合前、阪神で投手コーチを務めたこともある巨人OBの西本聖氏(本紙評論家)が首をひねっていた。記者席での雑談中、先勝した西武が第2戦でルーキー松永を先発させた話題になったときだった。
西本氏「考えられないね。僕と江川さんは日本シリーズはもちろん、シーズンでも離れることはなかったよ。1戦目が向こうだったら2戦目が僕。僕が1戦目だったら、2戦目は向こう。今回は3つしかない短期決戦でしょう? 西口も調整が難しかったんじゃないかな。松坂で負けていたら多分2戦目だったろうし、連勝なら札幌の1戦目。ブルペンで投げる球数も違ってくるしね。それに3戦目と言われたら、口には出さないだろうけど、考えるところがあったと思うよ」。
80年代の巨人投手陣は江川卓氏と西本氏が支えてきた。スター街道を歩んできた江川氏とは対照的に、テストからはい上がってきた西本氏。野球を離れれば、互いの自宅を訪問するほどの2人だが、グラウンドでは違った。それがチームに好結果をもたらしたのは言うまでもない。
2人の間柄は別として、短期決戦における主力投手起用の難しさを痛感した。松坂が完封して、最高のスタートを切ったはずの西武が、連敗してシーズンを終えた。2戦目に今季3勝のルーキー左腕を抜てきした理由には、強心臓、ソフトバンクの左打者対策、現在の仕上がり、雌雄を決する3戦目よりは重圧がかからないはずだなどが考えられる。そして荒木投手コーチは「松坂、西口の順番では(タイプが似ており)これまで良くなかったから」とも付け加えた。ただ、結果が出てしまった今、正否を論ずることの意味はない。
むしろ予告先発がなかったら、違う展開だったろう。西武は松坂、松永、西口、ソフトバンクは斉藤和、和田、寺原の順番で先発させた。両チームとも日本ハムが迎え撃つ、11日からの第2ステージを意識せざるを得なかった。今年から1位通過チームには1勝のアドバンテージが与えられるからだ。初戦を落とすようなら、そこで王手をかけられてしまう。11日に勝ちを計算できる投手を残しておけるのが理想。もし予告先発がなければ、ソフトバンクは2戦目の西武先発をどう読んだだろうか。西口か、涌井か、松永か。3戦ともオーダーを変えてくるようなチームだけに、相当頭をひねったであろう。
81、83年の日本シリーズで、江川が先か西本が先か、子供心にもかなり気になった。1戦目直後に主催者から「西武松永、ソフトバンク和田」と発表されたが、ルールと分かっていながらも拍子抜けした。「本当なら奇襲なのに…」と。来年からはセ・パ合同のポストシーズンゲーム(PSG)が導入される。周知の通り、セは予告先発を採用していない。公式戦の試合数まで統一したのだから、アドバンテージ制度を含めて同じ方式でないと不自然になる。そこをどう話し合い、決着させるか。
競馬もそうだが、予想する楽しみは当日ギリギリまでとっておいた方がいい。
October 15, 2006 01:31 PM
2006年10月05日
ヤクルト地道な草の根活動
都心の一等地、広尾小のグラウンドは人工芝だった。広さはともかくチップがちりばめられ、プロ野球の球場とも遜色(そんしょく)はない。サッカーゴールはあったが、バックネットはない。9月28日午前、ヤクルトの古田敦也兼任監督以下ナイン6人が駆けつけた。質問コーナーには無数の手が挙がった。
児童A プロ野球選手にはどうしたらなれますか
古田監督 親にメシを食えと言われたので、毎日牛乳1リットルとパン1斤を食べてました。
児童B もしプロ野球選手になってなかったら、何になっていましたか
坂元 政治家です(ナインからは冷たい視線)。
志田 実家が魚を捕る仕事をしているので、それを継いだと思います。
選手の声を聞く児童の目は真剣だ。ふだん間近で見ることのないプロ野球選手。選手も試合の合間を縫って来たかいがあっただろう。野球に興味のない子も、少しは関心は持つようになったのではないか。そこに、この学校訪問の意味がある。しかし校庭が狭く、バットを使った野球はできないのが現状だ。腕をバット代わりにしたハンドベースやキックベースが限界だという。小6の33人中、地区の少年団に所属しているのは野球4人、サッカー8人。環境面でやむを得ない。
野球でも地域密着という言葉が使われるようになって久しい。北海道の日本ハム、仙台の楽天、福岡のソフトバンク、広島、横浜。ヤクルトも今年からチーム名に「東京」をつけ、より地元志向を色濃くしていこうとしている。神宮球場が新宿区、渋谷区、港区にまたがっているだけに、近隣との交流に積極的だ。
しかし私を含めて地方出身者が多い東京で、地域密着を根付かせるのは並大抵のことではない。何といっても巨人の存在が大きく、JリーグではJ1東京、J2東京Vがあり、スポーツ以外の娯楽がとにかく多い。日本ハムが札幌に移転する際、ヤクルト本社の関係者は「先を越されました。プロ野球を受け入れそうなのは、あとは仙台あたりだね」と嘆いていたのを思い出す。2チームがフランチャイズとしている特殊性もあり、東京には地域密着が定着しにくいことを分かっていたからだ。球界再編騒動を経て、仙台には楽天が進出した。
遅れること数年、ヤクルトは大都会で気の遠くなるような普及活動にいそしんでいる。球団関係者は「昨年までやっていなかったわけですから時間はかかるでしょう。草の根です。とにかくやっていかないと始まらない」と躍起だ。古田監督も「プロスポーツは地域に密着して、子供に夢を与え、目標になっていかなければいけないんです」と力説する。
絵に描いたもちに終わって欲しくない。監督やフロントが入れ替わっても、続けていかなければ意味はない。帰り際、古田監督から児童全員に神宮球場の入場券が配られた。ドッと沸いた。女の子も喜んだ。だが、球場に来てもらうための、1歩をようやく踏み出したに過ぎない。
October 5, 2006 10:20 AM
2006年09月25日
泥をかぶるのは現場
パ・リーグのシーズン1位争いはし烈だが、球界にはとっくに秋風が吹いている。横浜は2年契約が切れる牛島監督の今季限りでの退団を早々と発表し、後任も元監督の大矢氏で固まった。就任時はスポットライトを浴びるのに、辞めるときは、後任人事の騒ぎに存在をかき消されてしまう。かわいそうだが、それが監督業でもある。
巨人担当だった昨年を思い出す。堀内監督(当時)がフロントに辞意を伝えたのが、今ごろだった。もっとも阪神星野SDの招聘(しょうへい)騒動があったように、とっくに後任人事は進められていたのだが…。3年契約の2年目。チームが負けなければ、今ごろ指揮を執っていたかもしれない。最終戦の試合前、「敗軍の将、兵を語らず」と言い残した。出身地である甲府の英雄、武田信玄を尊敬する指揮官らしい言葉で、2年間に幕を引いた。
「今年ダメなら終わり」と公言し、自らプレッシャーをかけて臨んだ05年シーズン。「(評論家時代を含めて)巨人キャンプを見てきた41年の中で最高。これぞプロのキャンプだよ」と自信も持っていた。結果はあえて書くまい。
就任直後の03年12月、ホノルル市内の料理店。焼酎を飲みながらほろ酔い加減で話す姿は、すでに辞めることを覚悟しているかのようだった。「(01年オフに)長嶋さんから原になった時点で、オレの監督はないと思っていた。嫁にも『もう巨人の監督はないよ』と言っていたぐらいだしね。まあ、オレは次の監督がやりやすいように、泥をかぶればいいんだよ」。大型補強への疑問、世代交代の必要性などが、すでに浮き彫りになっていた。
だからこそ、現有勢力で戦おうとした。そして汚れ役も買って出た。衰えが目立つ桑田に「オレは引き際を間違えなかった」と引退勧告。満身創痍(そうい)で必死にプレーを続ける清原には「球団の方針で若手を使う」と2軍落ちを伝えた。試合後のベンチ裏でつかみ合いをするなど公然と首脳陣批判をし、即解雇でもおかしくなかったローズだが、打力ダウンを避けるために起用し続けた。「先行投資だから」と負けても、負けても内海を先発で使い続けた。理想とした「グラウンドいっぱいに使ったスピード野球」を披露するどころではなかった。
どんな常勝チームでも過渡期がくる。生え抜きが育たないから補強するのか、補強を繰り返すから若手が育たないのか。堀内政権の2年間は、そのあおりをもろに受けたように見えてならない。現役時代、エースナンバー「18」を背負い、V9に貢献。スポットライトを浴び続けただけに、監督の2年間は酷だったのではないか。
甲子園で阪神の胴上げを見せつけられた夜、「ものには順序ってもんがある。お前らがそうやって(辞任と)言うから変になる。お前らが辞めさせようという意図が見てとれる」と語気を荒らげた。同行している後輩からの報告を受け「そうじゃないのになあ。辞めさせようとしているのは」と言いかけ、グッと言葉をのみ込んだのが1年前だった。泥をかぶるのは、結局は現場なのだ。
September 25, 2006 09:07 AM
2006年09月15日
微増もFプロ前向き
8月31日、ヤクルト-横浜戦が行われていた神宮球場の記者席に、1枚のリリースが配られた。主催55試合目にして今季の入場者総数が100万人を突破したという内容だった。くしくも昨年と同じ55試合目。「こんなものだよ」。紙を見ながら、ある球団関係者がつぶやいた。何に対しての言葉だったのだろうか。参考までに同日時点のセ・リーグ入場者数は以下の通りで、巨人以外は軒並み増えている。
阪神 △1・3%
中日 △4・2%
横浜 △10・4%
ヤクルト △0・3%
巨人 ▼1・1%
広島 △7・1%
神宮球場で、やたらと目につく「○○デー」。球場を満員にしようと古田兼任監督の就任と同時に発足したF-プロジェクトが中心となって、あの手この手の集客作戦を展開してきた。「ゆかたでナイター」では浴衣姿の古田兼任監督が、赤じゅうたんの上で金髪女優と記念撮影をし、「スチューデントデー」では学生には安くチケットを提供した。「メガネデー」ではさまざまなメガネを着用したファンが集結し、日本ラグビー協会やJ1東京ともタイアップした。超人気ユニット「タッキー&翼」まで呼んでしまった。
楽しめていい。野球場なのにチャラチャラしている…賛否両論、いろんな意見があるだろう。それだけグラウンド内外に話題が多かった今季は、成果が期待できると踏んでいた関係者は多かったはず。ところが、集客増は0・3%と微妙な数字である。
全日程終了時に、プラスを確保できるか疑問だ。9、10月は客の入りが見込めない。入場者数は01年から減り続けている。1度落ち込んだ数字を元に戻すのは並大抵ではない。1試合平均では昨年比52人増の1万8293人。総数で2855人が増えただけとはあまりに寂しくないか。
球団はどう分析しているのだろうか。F-プロの企画に携わる関係者に悲観した様子はなかった。「数だけでなく質の部分も見て欲しい。昨年よりライトスタンドのヤクルトファンは増えている。確かに全体の数は微増ですが、ファンは増えていますよ」。ある幹部は「(ゴールデンウイークに東都大学をナイター開催にして)デーゲームを増やし、F-プロもいろいろ企画した。もし、何もしていなければ前年よりは減っていたはずだから」と前向きに受け止めていた。
確かにF-プロ効果で広告や看板収入は増えたようだが、出費もかさんだ。放送権の減収、積極的な補強もあり、上半期だけで赤字は昨年程度にまでに膨れ上がったという。それでも球団にとっては赤字覚悟の1年目で、カネをかけてもいいから、やるだけやってみようという意欲を重視している。もっとも選手からは、年俸に少しでも反映させてくれよという声も聞こえてきそうだが…。
目新しさがなくなる来年は、もっと厳しくなるだろう。「こんなものだよ」との冒頭のセリフ。本当はもっと伸びると思っていた。だからこその悔しさ、怒り、不満、やるせなさ。そんな思いが凝縮されている。
September 15, 2006 11:34 AM
2006年09月05日
それでも見たいG戦
休日でも、午後7時をすぎると、不思議とプロ野球中継にチャンネルを合わせてしまう。地上波で巨人戦がないと、BSデジタルの番組欄に目をやる。台湾の新生の姜(ジャン)投手が好投した8月22日の横浜-巨人戦(長野)は、TBS系のBS-iで観戦。デジタル放送で巨人戦を見るようになったのは、昨年ぐらいからだ。
地上波が減りつつある巨人戦。子供たちはどう感じているのだろうか。小3のおいっ子はバッティング練習が大好きなのだが「巨人戦? 見ないよ。学校で野球の話? しないよ」とあっけらかん。拍子抜けした。四六時中、アニメやバラエティーばかり見ている。両親の仕事は野球関係で、小1から少年団に入るなど大の野球好きという小4生も、バラエティー優先だという。もっともこの少年は、圧倒的に球場観戦派。むしろ根っからのファンなのだ。少し安心した。
8月に限れば、主催の15試合こそ日本テレビが中継したが、ビジター(神宮、広島、横浜、長野、甲子園)で3連戦すべてが地上波で生中継されたのは、阪神戦のみだった。それ以外は1試合のみ地上波で、残りはBSデジタルか深夜枠などだった。まるで優勝チームが決定した後のようだ。
理由は単純明快だ。「バラエティーの方が視聴率が取れるからですよ」と、民放局の関係者は当然といった顔で答えた。そしてこう付け加えた。「こんな状態なら来年、もっと地上波は減るんじゃないですか」。ビデオリサーチ社によると、8月の巨人戦ナイター月間視聴率(関東地区)は平均6・8%と、月別集計のある89年以降のワーストを更新した。テレビ局にとっては悲鳴を上げたくなる数字である。
ただ、ふに落ちないこともある。どんなにいい試合でも数字が上がらない。いや、反映されないといった方が適切かもしれない。多チャンネル化で全試合を中継する専門チャンネルへの加入者が増え、特にチーム関係者などは日本テレビ系のCS放送「G+(ジータス)」で視聴しているとも聞く。また1家族が複数のテレビを所有していることや視聴率測定器とは無縁のパソコンでの観戦なども関係しているかもしれない。
巨人戦が減った夏。「そうだった?」と、気にならなかったという声もある。真のファンはスタジアムに行くだろうし、何かしらの形で見ているだろう。ただ、さまざまなことが頭をよぎる。野球中継はどうなってしまうのだろう? 夕食時は娯楽番組だらけなのか? ON(王、長嶋)に熱狂し、KK(桑田、清原)に胸躍らせた世代にとって、つらい時代になってしまうのか。
そして変わるプロ野球のビジネスモデル。巨人戦なら1試合1億円弱といわれる放送権料による収入に依存している球団が多い中、値が下がり続ければ、経営は打撃を受けはしないか。もちろん、そんなこと百も承知で、各球団はあの手この手を考えているに違いない。そう信じよう。あれやこれや考えている今、やはり見たい番組が見当たらず、リモコンボタンを押してばかりいる。
September 5, 2006 10:46 AM
2006年08月26日
東京ダービーって?
野球ファンに「東京ダービー」って、ピンとくるだろうか。こないだろうなと思いながらも、つい考えてしまう。神宮球場でのヤクルト-巨人戦になると、やたら耳にするからだ。自分が競馬好きだからダービーという響きが、妙に気になるのも理由の1つだが…。
先週末、神宮は阪神ファンで埋め尽くされた。2万7100、3万1600、2万6600人と、3日連続の大入り。平日だったため単純に比較はできないが9、10日の巨人戦は2万人すら満たなかった。巨人戦後に訪れた球場近くの日本料理店で、おかみさんが心配そうに問いかけてきた。「今日は巨人戦だったの? 最近は阪神戦の方が店に来るお客さんが多いのよねえ」。深夜11時すぎだったこともあるが、店内はふだんよりも静かだった。
東京を本拠地とする球団同士の対決よりも、順位に関係なく応援する阪神ファン。東京のファンは優勝争いから脱落しようものなら、冷めてしまう。サッカーファンが言う。「東京ダービーって、FC東京と東京ヴェルディ戦でしょう。ヤクルト対巨人とは思わないよ」。浸透しないのも、無理はないか。
そもそもダービーマッチとは? 英国中部の都市で、2つの教会区が町を二分し、フットボールの試合を行っていたことが語源とされている。同じ街をホームタウンとするが、階級、宗教など何らかの違いが生じたサポーター同士が、自分たちのクラブを熱狂的に応援する。セリエAではACミランとインテルが有名だ。
やはり野球では根付かないのか。思い起こすのは90年代。野村ヤクルト、長嶋巨人は毎年のように優勝を争い、遺恨、因縁などと盛り上がった。FA、ドラフトなどで有力選手をかき集めた巨人に対し、ヤクルトは古田、池山ら生え抜きに加え、田畑、小早川、広田など他球団からのリストラ組を再生して、立ち向かった。必然的に盛り上がり、ファンも熱くなった。
残念ながら、今は盛り上がりに欠けている。DJがマイクで「今日は東京ダービーです」と叫んでも、ファンは?? スポーツニュースでアナウンサーが「今日は東京ダービーが行われました」と切り出しても、これまた視聴者は?? これが現実だろう。
ヤクルトの球団関係者の中にも「最近は横文字が多くて、分からないよ。だいたいダービーって野球に合うのか?」と苦笑いする者もいる。そしてこうも付け加えた。「やっぱり90年代みたいに両チームが優勝争いするようじゃないとダメ。あのころはとにかく球場はいっぱいだったよ」。異論はない。ここ3年、優勝争いは中日、阪神を軸に繰り広げられてきた。東京のチームは蚊帳の外。これではファン同士、盛り上がるはずがない。先日、SG決戦の前座として新曲を披露した「タッキー&翼」も、空席の目立つスタンドに驚いたのではなかろうか。
すべてとは言わないが、両チームとも強くなければ、盛り上がるはずがない。若松前監督は「巨人に勝たないと上にいけない」とじゅ文のように繰り返していた。それほど現場には強烈な意識があった。今でもないわけがない。もっとも強い巨人があってこそ、ではあるが。
August 26, 2006 09:16 AM
2006年08月16日
痛快「本わさび解説」
ちょうど1年前、担当していた巨人は真夏のストーブリーグに見舞われていた。堀内監督(当時)の後任として、ウルトラCが水面下で進んでいた。生え抜きにしか任せなかった球界の盟主は、初めて外部招へいに乗り出していた。最有力は、ライバル球団阪神の星野仙一シニア・ディレクター(SD)。実現は目前だった。阪神ファンの感情、巨人OBの反発。1カ月に及ぶすったもんだの末に、行き着いたのは第2次原政権。そして時は過ぎた。
つい先日、1年前の残り香をかいだような気になった。NHKで中継された5日の巨人-横浜戦のテレビ解説者が、1年前の「主役」だったからだ。その内容たるや「巨人への提言」だった。中継終了直前、アナウンサーから「かなり厳しい指摘もありましたが」との問いに、「厳しくない。正直な、みんなが知りたい意見ですわ」とサラリと言ってのけた。巨人の低迷ぶりを冷静に分析。「なるほどなあ」「よくぞ言ってくれた」と思った視聴者も多かったのではないか。主な内容は以下の通りである。
◆けが人続出について 阪神時代に自らが獲得に尽力した鉄人金本を例に出しながら、オフの心身に対するケアの重要性を力説。さらに選手層の薄さを指摘した。
◆補強など今後のチーム編成について 4番李の残留を最重要課題とした上で、ドラフトなどでゼロからチーム作りをする必要を訴えた。先発投手ばかりを補強する編成の問題点にも言及。再建するのに2、3年かというアナウンサーの問いに、もっとかかると断言した。
◆シーソーゲームの末、8-5で巨人が勝った試合内容について 先頭打者を四球で歩かせ、得点した直後の相手の攻撃では失点する両チームに、今の順位(5日現在は5、6位対決)通りの試合とバッサリ。
ざっとまとめれば以上のような内容になる。NHKにしては少々過激ではとも思ったが、NHK関係者は「基本的に規制はありませんから」と説明してくれた。主に巨人戦を中継する日本テレビではあり得ないであろう。同局関係者は「うちの姿勢は叱咤と激励。巨人OBで厳しく指摘する方もいらっしゃいますが、気を使うところがあるのも確かです」と話している。
巨人にここまでモノ言える解説者は、そうはいない。独自のネットワークによる情報収集力があるからこそ、ではないか。低迷していた阪神を常勝チームにする礎を築き上げただけに、チーム編成に関する持論は特に興味深い。もちろんプレーの批評、試合の流れを解説するのも大事だ。ただ、球団初の2年連続Bクラスがちらつき始めた今の時期、視聴者が最も知りたいのは低迷の原因、そして来季に向けての視点であろう。そこを的確に突いていた。
本わさびは鼻にツーンとくる辛さは、さほどない。すしでいうならネタにも合い、味を引き立たせる。計2時間の放送時間中、随所にわさびが効いていた。こういうテレビ解説は大歓迎。巨人ファンですら、胸がスカッとしたのではないか。
August 16, 2006 09:06 AM
2006年08月06日
ファンが望む「生の声」
先月26日、茨城・ひたちなか市民球場で行われた「ヤクルト対横浜」の試合後のことだった。一塁側ベンチの頭上から少年ファンが呼び掛けてきた。「すいませ~ん。今日はヒーローインタビューはやらないんですか? なしですか? エーッ、そうなんですか…」と残念そうな表情を浮かべ、一緒に来た友達と顔を見合わせていた。
そりゃあ、そうだよな。めったに見ることのできないプロ野球。もしも、お立ち台で選手が「ひたちなかの皆さん、また応援してください」なんて叫んでくれたら、ファンはそれだけでうれしいものではないだろうか。
その試合は、6-0で横浜三浦がヤクルトを完封し、若手のホープ吉村がプロ初となる満塁本塁打を放っていた。詰めかけた1万232人のファンは、年に1度しかないセ・リーグ公式戦を待ちに待っていたのであろうことは想像に難くない。夏休みに突入したこともあり、多くの子供の姿が見受けられた。
しかしヒーローインタビューは割愛されてしまった。帽子を脱いでスタンドに手を振る。そんな「番長」三浦のリーゼントが、絵日記の題材になったかもしれないであろうに。球場の隣町、原子力の東海村で生まれ育った私は小学生のころ、東京の後楽園球場までわざわざ出掛けていき、帰りの電車の時間を気にしながらも、ヒーローインタビューまでは帰らなかった。そこまでが野球観戦のサイクルであると、子供心にもそう思いこんでいたからだ。
主催したヤクルト球団関係者が苦しい胸の内を明かしてくれた。「選手の乗ったバスが一本道で渋滞に巻き込まれる恐れがありました。両チームともその日のうちに東京に戻らなくてはならなかったので…。我々にとっても苦渋の決断でした」。ひたちなか市民球場から都内へは、最低でも2時間はかかる。疲労している選手にはかなりの負担だ。しかも翌日にはヤクルトは大阪、横浜は広島に移動しなければいけない強行軍が待っていた。
球場には数千台を収容できる大駐車場が隣接しており、大渋滞だけは避けなくてはいけないという主催者サイドの配慮は当然であろう。むしろ地方試合の資金面を援助してくれるテレビ局が関東で唯一存在しないにもかかわらず、ひたちなか市とのタッグにより開催にこぎつけた球団営業部の尽力には頭が下がる。
各球団とも、年に10試合程度を地方主催試合として興業に充てている。ファン層を広げるためだ。選手も行脚の意味は分かっている。現に試合前、ヤクルトの古田兼任監督はスタンドに手を振ったりして、神宮球場と変わらぬ態度でファンに笑顔を振りまいた。それだけでもファンは喜んだろう。
地方のファンにとって、夏休みに地元でプロ野球を観戦できるなんてありがたい話だ。だからこそ、いつも通りに勝利の立役者の生の声は聞かせてあげたかった。せめて2、3分でもいい。左手にグラブ、右手にサイン色紙を持っていた野球少年の残念そうな顔が、今でも頭をよぎる。
August 6, 2006 09:04 AM
2006年07月27日
監督、話をしましょう
セ・パ交流戦が終わろうとしている先月中旬、「ヤクルト対楽天」の試合前に神宮球場三塁側ベンチをのぞいてみた。ベンチにどかっと座り、大勢の担当記者と話し込む野村監督。捕手の配球について「なってない」「なんで4番打者にあんな攻めをするんだ」など、語り出したら止まらない。
気が付けば、試合開始40分前まで行われるビジターチームの練習は終了していた。メモを見返すだけでも、ひと苦労のコメント量。ここで仕込まれた「ボヤキ」が「野村の考え」として日々、紙面に掲載され、ファンにも伝わっている。同時に楽天担当にとって、この上ない勉強の場になる。 指揮官がここまで話し好きなのは極端な例だが、野球論を語ることが嫌いな監督って、そうはいないのではないか。03年12月、名球会旅行のためハワイ滞在中の巨人堀内監督(当時)が、同行した担当記者にこう語りかけた。「オレは(試合前に必ず囲み取材に応じるヤンキースの)トーリ(監督)みたいになりたいな。シーズンが始まったら野球を教えてやるよ。前の日にあった試合のことを解説してやるから」。
一見、とっつきにくそうな堀内氏だって、野球論ならウエルカム。状況により、何が、どう変わったのか。プロならではの駆け引きは、担当記者そしてファンにとっても興味深いものであろう。結局、スタートダッシュに失敗したことが響き、「講義」は数えるほどしかなかったが…。
そんなこんなでヤクルト担当だった01、02年、若松前監督が連日ベンチで打撃理論、体調管理など熱弁を振るってくれたことを思い出した。「現役時代は6月にどれだけ走り込めるか。これが夏場の体のキレにつながるんだ」。「肉離れしたときは自転車店に行って、タイヤのチューブをもらってくるんだ。それをテーピング代わりにしたんだよ」。「(左打者の)バッティングは左手でバットコントロールするんだ。特にバットに面する人さし指でな」。(左打者なら右の)引き手でコントロールすると思っていたが、生涯打率が3割を超えた「小さな大打者」は違った。当然、前の試合のポイントなども解説してくれた。
現在、試合前に囲み取材に応じる指揮官は半数程度。もちろんその日のチーム状況、そして気分もある。試合後は興奮していて、冷静さを欠くときもあるだろう。だからこそ5分の立ち話程度でもいい。報道陣は指揮官との会話を求めている。相手チームの対策、作戦は支障があるだろうから、雑談程度で構わない。監督にはスポークスマン的な役割もある。
「大将」がモノ言えば、選手にも正確な質問ができる。そして何と言っても、プロの考え、技術論を聞き、伝えることで、どれだけ多くのファンが喜ぶことか。プロ野球の監督は日本に12人しかいない。国をつかさどる、大臣よりも少ないのだ。
なかなか梅雨が明けずにジメジメした今の時期。若松前監督の言葉を思い出しながら、外野の一角に目をやる。「よく走り込んでいるな」「すごい汗の量だなあ」と感心しながら、その選手の成績を見てみる。やはり、と思う。
July 27, 2006 12:33 PM
2006年07月17日
やり方露骨なG会談
約2カ月半ぶりに耳鼻咽喉(いんこう)科で診察を受けた。担当医が「大丈夫ですか?」と心配そうに問い掛けてきた。私の鼻やのどではない。巨人のことだ。「どうしちゃったんですか? 前回、いらしたのが4月(27日)で、そのときは『(4敗しかしていない)今年の巨人は強いね』って話をしていたのに…」。この医師は偶然にも弊紙の愛読者で、プロ野球のファンでもある。針を突き刺されたような痛さを伴う鼻腔(びくう)洗浄を受けながら、いつも野球談議をしている。「今日(13日)、原監督が読売本社に行くみたいですよ」。「そうみたいですね」。何で診察中にこんなきな臭い話をしなければいけないのだろう…と思いながらも、頭の中は昨年までの担当時代を思い出していた。
梅雨明け間近のこの時期、グラウンド以外のことに振り回されることが多かったからだ。なぜか札幌遠征が絡んでいる。一昨年は中日に3連敗し、首位陥落。2度と浮上できなかった。昨年も中日に2試合とも惨敗。渡辺球団会長、滝鼻オーナーが、チームの粛清を明言し、水面下で次期監督のリストアップが本格的に始まったのも、この時期だった。裏を返せば、早い時期に優勝争いから振り落とされたということ。そして今年も連敗。3年契約となる第2次原政権の1年目、まさか何事もないだろうなとたかをくくっていたが…。ただ、前兆はあった。6月27日の横浜戦後、滝鼻オーナーが横浜スタジアムを訪れ、原監督をハイヤーに乗せて、異例の車中会談を行っている。「皆さんに見つかってしまったからな」と同オーナーは照れ笑いを浮かべていたが、わざわざ横浜まで来ること自体、尋常でなかった。
失速の原因について「すべてはけが人だよ」と、渡辺会長は繰り返している。昨年は「誰がマレンを取ってきて、誰が使ったんだ」などと辛らつにフロント、現場批判をしていたことを考えれば、まだ穏やかなほうだろうか。ただ、あまりにも今回はやり方が露骨すぎはしないか。続投前提とはいえ、原監督は「激励ですよ」と報道陣に説明するしかないだろう。前半戦を6試合も残した時点でのトップ会談は、異例だ。読売新聞東京本社前は報道陣が詰めかけ、民放はもちろんNHKでさえもニュースで流すほどだった。
なぜ、こうも繰り返される「お家騒動」。かつてこの言葉が代名詞でもあった阪神は、今や毎年安定した戦いをしている。それは久万オーナーが外様にもかかわらず野村、星野監督に任せたチーム編成をしたからこそではないか。今がまさに過渡期の巨人はどうだろうか。将来の4番候補は? 阿部を脅かす捕手は? 二岡のライバルは? 才能ある若手、特に野手は育っているのか?
「慌てた補強はいけない。2年、3年の長期計画でやってくれと言った」。会談後、渡辺会長はそう断言したという。その言葉、しっかり覚えておこう。
July 17, 2006 01:37 PM
