記者コラム「見た 聞いた 思った」

千葉修宏

2006年07月08日

自分の意志を堂々と

 7月4日は米国の独立記念日でした。ここニューヨークでも各地で式典や記念の花火大会などが開催され、盛り上がりました。僕は別に米市民ではありませんが、雰囲気を味わおうということで、近所でやっていた式典に参列し、夜は近くのハーバーで花火を見てきました。

 ジャズの生演奏や、間近で見る美しい花火など、家族全員が大満足の1日でした。ですが、それとは別に、僕は日米問わず、どうもこういう愛国心を喚起するようなイベントが苦手なんですよね。ひねくれ者なので「みんなで1つに」みたいなのが、もともと嫌いだというのもあるんですけど。

 大リーグ取材でも、最も違和感を感じるのが、あの「9・11」以降、行われるようになってきた「ゴッド・ブレス・アメリカ」の大合唱。多くの球団では日曜日の試合のみ、7回表終了時に行うのですが、ヤンキースは違います。毎試合、必ず行うので、困ってしまいます。

 まず「われわれの自由と生き方(our freedom and our way of life)を守るために命をささげた人たちのために歌いましょう」みたいなアナウンスが入り、歌が流れます。命をささげた人たちというのは、主にイラクで亡くなられた人たちを指しているのでしょう。

 僕は、自由や生活を守るのは本当に素晴らしいことだと思います。イラクで亡くなられた米国人の冥福を祈る気持ちだって強いです。ただ一方で、自分たちの生活を奪われた、イラクの民間人もいるということを考えると、ちょっと複雑な気持ちになります。「God bless America(米国に神のご加護を)」という曲名からして、「おいおい米国にだけかよ」と突っ込みたくなります。どうも自国のことばかり考えすぎのような気がするんですよね。

 僕が愛国心を喚起するようなイベントが苦手なもう1つの理由は、反対意見を持った人間を許さないような雰囲気があるからです。反対者がいないと、どんな考え方でも極端な方向に走りがちになります。「our freedom(われわれの自由)」を求める時に、「their freedom(彼らの自由)」のことを思い出させてくれるような反対意見を持った人たちがいることは、大事なことだと思うのですが。

 もちろんヤンキースタジアムで毎晩、老若男女が「ゴッド・ブレス・アメリカ」の大合唱を行っているからと言って、米国国民が全員、それを望んでいるということではありません。僕がアメリカについて「国際問題とかで、ある意味selfish(わがまま)だよね」と言うと、「その通りだよ」と同意してくれた米国人もいました。

 実は僕がコラムを担当するのは今回で最後となります。でもこれからも記者として、自分の正しいと思ったことは正々堂々と書いていきたいです。もちろん人の意見を聞く耳は持ちつつも、同調してくれる人が1人もいなくても、自分の意見を胸を張って言えるような記者になりたい。そんなことを強く思った独立記念日の夜でした。

July 8, 2006 10:32 AM

2006年06月27日

泥臭い男の登場願う

 ヤンキースで一番頼りになる選手は、なんと言ってもジーターだと思います。とにかく勝負強い。得点圏打率は23日までで3割7分9厘をマーク。同じ状況で三振は11個しかしていません。打撃内容も、詰まりながら右前に落としたり、ファウルで粘って投手に球数を投げさせたり、ただではアウトにならないというしぶとさがあります。

 マライア・キャリーと浮名を流したり、有名人との交友関係の多さやCM出演などから、とかく派手なイメージが強調されがちなジーター。その半面、スタンドに飛び込んで顔面を強打してもファウルフライを捕るような“勝ちたい”という気持ちが前面に出た、とことん泥臭いプレーもできる。だから頼れるキャプテンと呼ばれるのでしょう。

 もう1人のヤ軍の看板打者、ロドリゲスの場合。得点圏打率はそれなりの3割1分3厘。ですが、同じ状況で三振はジーターの倍以上となる25個を記録しています。完全なヤマ張り打者なので、3球同じスイングをして、3回空振りしてベンチに帰ってきたり、2ストライクから平気で真ん中を見逃したりします。本当に勝とうと知恵を絞っているのかな? と疑問に思ったりもします。

 昨年も最終的には打率3割2分1厘、48本塁打、130打点という素晴らしい成績でMVPを獲得しました。でも彼はニューヨークでは、「どうしようもなくチャンスに弱い打者」というレッテルを張られてしまっています。勝敗の決まった試合終盤、走者のいない場面で本塁打を打ち、ファンから失笑される打者を、僕は初めて見ました。

 話は変わってサッカーW杯。ここ米国でも連日、テレビで生中継をやっています。もちろん日本代表の試合も見ることができました。残念でした。結果もさることながら、ジーターのように、見るからに勝ちに執着しているという雰囲気を醸し出している選手が、あまりいなかったように感じられてしまって。

 日本人って、文化の問題なのかもしれませんが、すごく「型」を大事にすると思うんです。でもあまりに型に固執しすぎると、自分のスイングを3回して、3回空振りして帰ってくるロドリゲスのようになりかねない。最高レベルの舞台では、自分の攻撃をさせてもらえないことの方が多いですから。

 例えばブラジルのように運動量も豊富で、技術も高いチームが相手の場合。中盤でボールをキープして、中田選手や中村選手からのスルーパスにFWが反応し、相手DFの裏へ走り込んでシュート、なんていうきれいな得点パターンは、ほとんどあり得ないですよね(玉田選手の得点は、そういう意味では奇跡的です)。

 パスがつながらないとき、相手DFと強引に1対1で勝負してファウルをもらおうとしていたFWはいなかったように思えたし、得点にならなくてもミドルシュートを多用して、そのこぼれ球を次のプレーへつなげようとしていたMFも少なかったように見えました。次の日本代表には、華麗なプレーだけではなく、僕のような素人が見ても勝利への執念がはっきりと感じられるような、泥臭いプレーのできる選手の登場を願います。

June 27, 2006 09:56 AM

2006年06月17日

稼頭央に再び輝きを

 前回のコラムで「強いメッツを見に来て」と書いた途端に、松井稼頭央選手(30)がロッキーズへトレードになってしまいました。それで落ち込んではいないかと心配になって、コロラドまで行って来ました。

 でも心配は無用でした。とりあえず現在、稼頭央選手は3Aコロラドスプリングスに合流して調整中なのですが、その直前にチームの配慮もあって、クアーズ・フィールドでロッキーズ本体の練習に参加しました。その時の表情を見たら、もう完全に吹っ切れた、いい顔をしてましたから。

 ロッキーズは8月18~20日、ニューヨークでメッツと戦います。彼はそれを楽しみにしていました。「もうヒール(悪役)ですからね。ブーイングでも何でも来い! って感じですよ」と笑ってました。

 大リーグを取材していると分かるのですが、やっぱりニューヨークという町は、良くも悪くも特別なんですよね。メディアの数から違いますし、報道内容も、ちょっと打てなかっただけで、相当ヒステリックにたたかれます。そういう新聞記事などを読んでいるファンも、悪く言えば洗脳されてますから、すぐにブーイングですよ。

 また、稼頭央選手は日本人ですから、地元メディアにしてみれば、批判しやすいんでしょうね。球場で本人に会っても、完ぺきな英語で反論されることもないし。移籍直前の報道なんか、「そこまで書くことないだろ」って感じのボロクソなものが多くて、「誰かが意図的に書かせているのでは」とまで思うようなものでしたから。

 笑えたんですが、ちょうど稼頭央選手がロッキーズの練習に参加していた10~11日、ドジャースと試合が行われました。相手側にもまたメッツから移籍した徐在応(ソ・ジェウン)投手がいました。試合前、彼が「カズはどうしてここにいるんだよ」って話しかけてきました。こちらが「君の方が(メッツの内情を)良く知ってるだろ」と言うと、向こうはニヤリ。新聞に書くには不適切な表現を交え「あのドミニカ生まれのGMのせいだろ」と、ミナヤGMおよび主力を中米系選手で固めたチーム事情を皮肉っていました。

 もちろん打撃のスランプも稼頭央選手がメッツから放出された要因です。でも周囲の環境は、彼にとって活躍しやすいものだったとは言えません。その点、ロッキーズでは、もっと伸び伸びと、自分本来の野球のスタイルを追求できるのではと期待しています。

 西武時代の稼頭央選手は、走攻守に秀でていて、本当に輝いていました。余談ですが、彼は球場外でもかなりイケてるんですよ。私服姿のことなんですけど、ブランド品だけ買っておけばいいという感じの典型的プロ野球選手とは違って、ジーパンやシルバー+ダイヤモンドのアクセサリーなど、ストリート系のファッションが、本当に様になっている。彼のやんちゃな感じによく合ってるんです。

 コロラドではそんな紛れもないスターの輝きを取り戻して欲しい。3Aの試合で必死になって汗を流している姿を見ていると、そんなことを願わずにいられませんでした。

June 17, 2006 09:37 AM

2006年06月07日

強いメッツ見に来て

 記者席で隣に座っていた某テレビ局関係者に言われたんです。「最近よく女性ファンを見掛けるんだよ。特に白人の」。確かにスタンドをのぞいてみると多いんですよ。お気に入り選手のレプリカ・ユニホームを着込んだ若い女性が。去年まではファンの大半がヒスパニック系のマッチョな男性で、ドスの利いた低い声で球団名を連呼していたような印象があったのですが。チームが強いと、普段は球場を訪れないようなファンまで、足を運ぶようになるんですかねぇ。

 えっ、僕が今いる場所ですか? 僕は今年、主にヤンキース(松井秀喜選手)を担当するためにニューヨークに赴任になったのですが、ここはヤンキースタジアムじゃありません。ニューヨークのもう1つのチーム、メッツの本拠地シェイ・スタジアムに来ています。

 そのテレビ局関係者いわく「もともとメッツはチームカラー(青とオレンジ)がかわいいし、女性には人気があったんだ。でもここまで客層が変わってくるとは驚きだよね」。メッツは現在、ブレーブス、フィリーズのライバル2チームに差をつけて、ナ・リーグ東地区首位を快走中。前回、世界一になった86年から、ちょうど20周年ということもあり、球場には連日、多くのファンが詰めかけるようになっています。

 それにしても今年のメッツの試合は本当に面白いです。1番からレイエス、ロデューカ、ベルトラン、デルガド、ライト、フロイドと並ぶ打線は、現在、大リーグ一と言っても過言ではないでしょう。投手陣もペドロ・マルティネスを筆頭に、ベテラン左腕グラビンも絶好調。抑えには100マイル(約161キロ)左腕のワグナーが加わり、このラインアップで勝てなければ、今後何十年も優勝できないのでは、とまで言われています。
 ここで女性ファンのために見どころを少々!? ニューヨークの若きプリンスの座をヤンキース・ジーターから奪いそうな勢いなのが三塁ライト。勝負強い打撃が売りの、トム・クルーズ似のイケメンで、必見の選手です。もう1人、遊撃レイエスは童顔にショート・ドレッドのヘアスタイルがお似合いで、先日は熱心なファンから「あなたがいないと生きていけないの~」と熱烈すぎるラブコールを受けていました。先輩フロイドから「ああいうファンを大切にしておけば、後で良いことがあるかもしれないぞ」とベンチの隅でサインボールを書かされ、スタンドに投げ込んでいた姿も見逃しませんでしたけど(笑い)。

 ヤンキース松井選手がケガをしたことで、日本からニューヨークへの大リーグ観戦ツアーに、キャンセルが相次いでいると聞きます。でも、ちょっと待ってください。ニューヨークにはもう1人、日本人大リーガーがいるじゃないですか。今は打撃不調でスタメンを外されていますが、こういう時こそ、大声援でリトル松井を後押ししたいところ。大リーグファンの日本人の皆さん。今こそ、ニューヨークへ来て、メッツを、そして松井稼頭央選手を応援してみたらいかがでしょうか? 期待を裏切らない好ゲームが見られますよ!

June 7, 2006 09:25 AM

2006年05月28日

ブログは批判覚悟で

 もうずいぶん前からですが、ブログが世間ではやっていますよね。簡単に言うと「継続して更新され続けるウェブページ」ということになるのですが、有名どころではタレント真鍋かをりさんやヤクルト古田監督がやっている、日記ふうのアレです。

 また、本にもなったタレント中川翔子さんの「しょこたんぶろぐ」は、1日に何十回と更新されることもあり、もはや日記というより“分記”“秒記”!? という感じの大人気ブログになっています。彼女の写真がふんだんに登場するので、実際の写真集などが売れなくなってしまうのではと、勝手に心配をしているのですが…。

 この「見た聞いた思った」というコラムも、日刊スポーツのウェブサイトで、ブログ形式で見ることができます。そこには、だれでもコラムに対する意見が送信できるように、メールのあて先が記されています。一般的にも、ブログには、コメントが寄せられるような仕組みになっていることが多いですよね。

 だれでも意見を寄せることができるので、自分が書いた文章に対する読者からのリアクションを、ダイレクトに知ることができます。ただし、好意的な意見ばかりではありません。真摯(しんし)に受け止めなければいけない辛らつな意見や、単なるひぼう中傷も多いです。

 でも、その性質が分からずに、自分のやっているブログに批判的なコメントが寄せられることで、ショックを受けてしまった人も、僕の周りには数多くいます。僕もかつて、少しの間だけ個人的にブログをやっていたことがあります。その時に長男を授かったうれしさを書いたのですが、子宝に恵まれない方から批判的なご意見をいただき、反省したことがあります。

 でも批判をされた時に「気分が悪いから」といって、そのコラムとコメントをすべて削除してしまったりするのは、ちょっと違うのではないかと思います。そういう人は最初からブログをしなければいいし、世界中の人々の目にさらされているというインターネットの性質をきちっと理解していないと言わざるをえません。

 ブログはよく、ウェブ上の日記といわれますが、特定の人にしか見られない日記と、ブログは厳密には性質が違います。そういう意味では多くの人の目にさらされているという意識のないブロガーが多すぎるのではないでしょうか。

 防犯のことを考えれば子供の写真をブログに掲載するのは(個人的には)考えものだと思うし。特定の人にだけ見て欲しければ、パスワード認証制にしたり、本当に紙の日記にすればいいのだと思います。そうすれば批判的なコメントや中傷は来ませんから。

 これほどブロガーの数が増えるのは、人々の自己顕示欲を表しているのでしょう。でも猫もしゃくしもブログをやる時代になって、きちんとインターネットやブログについて分かっていないと、イヤな思いをしたりする可能性もあるということを理解している人がどれだけいるでしょうか。

May 28, 2006 12:23 PM

2006年05月18日

松井ゆっくり“休んで”

 5月11日にヤンキースタジアムで行われたヤンキース対レッドソックス戦。初回の守備で、松井秀喜外野手(31)がスライディングキャッチを試みて、左手橈骨(とうこつ)を骨折しました。全治には早くて3カ月。シーズンを棒に振る可能性もあります。

 ニューヨーク市内の病院へ向かう救急車に乗る時の松井選手の表情は、怒りに震えていました。まだ病院でエックス線検査をする前でしたが、強くかみしめた唇は、まっ白になっていました。長期休養を余儀なくされるほどのケガだということを悟っていたのでしょう。

 松井選手の悔しさは計り知れません。そしてそれを考えると、僕も心にぽっかり穴があいた感じになっていきました。時間がたつにつれ、仕事をする気持ちにテンションを持っていくのが難しくなり、喪失感のようなものが心の中に膨らんでいきました。まぁ記者失格ですけどね。

 僕は小学生のころ、何度か骨折をしたことがあります。アイススケートをしながら鬼ごっこをしていて転んだ時には、松井選手のように左手首を折りました。だから彼がケガをした瞬間、当時の痛みが頭の中によみがえってきました。

 もちろん、その時の僕は松井選手のように最新、最高の医療で治療をしてもらったわけではありません。ですから一概に比較はできません。でも確実に左手は細くなり、握力も低下します。以前とは微妙に違った角度に曲がってしまった手首を見るにつけ、折れてしまったものを、全く同じように治すことの難しさを感じずにはいられません。

 だからこそ個人的には、松井選手には完ぺきな状態に戻るまで、復帰を急いでほしくありません。阪神の金本選手は、同じようなケガをして半年はかかったといいます。松井選手本人は1日でも早くグラウンドに戻れることを望んでいるはずです。それはそうでしょう。彼は子供のころから今まで、ほとんど毎日(プロに入ってからは、多少のオフはあるでしょうが)、野球をやってきたのですから。トーリ監督も言っていたように、夏場に野球のない生活なんて想像できないのではないでしょうか。

 でも、このケガは「この辺で少し休みなさい」という何かのお告げかもしれません。以前、「ロングバケーション」というドラマがあったことを覚えていますか。松井選手の気持ちを考えると、こんなことを言うのも失礼かと思いますが、あのドラマの主人公のように、人生のうち、少しくらい気持ちを張らずに生きていくのも、悪くはないと思います。
 偉そうなことを言いますが、今回のことは野球に集中しないで周囲に耳を傾ける良いチャンスかもしれません。本を読み、音楽を聴き、さまざまなことからインスピレーションを得られるはずです。それは野球にだって大いに役立つのではないでしょうか。この休みをいろいろな意味で有効に使えれば、松井選手はひと回りもふた回りも大きくなって、帰ってきてくれると思います。

May 18, 2006 10:04 AM

2006年05月08日

異国で気付く愛国心

 今、この原稿をフロリダ州タンパからテキサス州ダラスへの飛行機内で書いています。さっき、空港で買ったスタバのコーヒーの空きカップを捨ててくれと客室乗務員に頼んだら、「ちょっと待ってて」とどこかへ行ってしまいました。待ってるのに戻ってきてくれないよ~。小汚い格好でファーストクラス(そこしか空いていなかったから)に乗る、場違いな東洋人の若造はナメられるのか。それとも彼の記憶力が相当悪いのか…(失礼!)。

 3日の晩に泊まった某ホテルでは、ケーブルをつないでいるのにインターネットにうまく接続できません。別の場所の同じホテルで同様の状況になり、部屋を替えてもらって接続できたケースが何度もあったので、今回もフロントに部屋替えを要請。しかし「もう空きの部屋がない。インターネット会社に直接電話して相談してくれ」とのつれない返事。

 それはいいとして、その後にフロントの奥の部屋から「あいつの言ってる意味が分からないよ」という笑い声が聞こえてきてカチン。4日の晩の予約を即キャンセル。すでに次の取材のために押さえてあった別の場所の同じホテルもすべてキャンセルし、ライバルホテルに予約し直しました。ああ、すっきりした!

 そんなこんなで、海外にいると逆に日本人のサービスのきめ細かさなんかに気付いたりもします。そうすると、日本にいる時は感じなかった愛国心なんかも芽生えてきたりするんですね。ちょっとだけど…。

 そんな“なんちゃって愛国者”の留飲を下げるのが、メード・イン・ジャパンの活躍です。日本人大リーガーが打てば満足。WBCで日本代表が優勝して満足。記者席で米国人記者にパナソニック製パソコンの小ささと丈夫さを褒められただけで、自分が作ったわけでもないのに、偉そうな気分になります。

 大好きな音楽でも、普段ほとんど聴かない邦楽なんかを聴いてみたり。最近、ハッとさせられたのは、DS455というヒップホップグループの「To Myself」という曲。リズムに合わせてライム(韻)を踏むのがラップの醍醐味(だいごみ)なんですけど、この人たちの歌詞が秀逸なんです。

 <歌詞>うわべだけなら楽で派手 浮かれて浮わつきゃダメ、そこで負け 甘い誘惑はいつも金 大切なことはそんなもんじゃねえ てめえの道てめえで決める オレには見える必ずたどり着ける 自分ごまかすなウソはつくな 近道はねえ 後ろ振り向くな~(歌詞カードを持っていないので、間違ってたらゴメンなさい)

 みたいなちょっとクサいけど結構共感できるライムにグサリ。と同時に、ヒップホップ文化は米国産だけど、日本語でもちゃんと気持ちの良い韻が踏めるんだと感心しました。こわもてのルックスだけど曲はすごくキャッチーなので1度、聴いてみてください。

 一方、野球では僕が担当しているヤンキースの松井選手が4日のデビルレイズ戦で今季4号を含む3安打の大暴れ。米国人ファンから「ヒデキ~」と声援を受けている松井選手を見るのも、なんちゃって愛国者にはこれ以上ない幸せかも。そんな光景をこれからも期待します。

May 8, 2006 07:18 AM

2006年04月28日

2歳児の夢 さとざき

 私事で恐縮ですが、今年7月で3歳になる息子が、野球にハマっています。僕が学生時代に野球部で汗を流していたからといって、強制したということは全くありません。なのに、朝早くからキャッチボールをせがまれ、おもちゃのティースタンドでの打撃練習にも延々付き合わされます。

 それだけならまだ分かるのですが、なぜか彼はキャッチャーというポジションが特に好きなのです。僕の実家から捕手用マスクを強奪し、ローラースケート用のひざ当てをレガーズ代わりに使用(2歳児用のレガースはないので)。果ては、おばあちゃんに座布団を利用した手製のプロテクターまで作ってもらって、毎日、超ゴキゲンです。

 今では多くの時間を(野球をしているかどうかにかかわらず)、上から下まで完全キャッチャー仕様の姿で過ごしています。マスクをかぶって、テレビでメジャーリーグ中継を観戦する姿は、なかなか笑えますよ。

 そんな息子に「将来、どの選手みたいになりたいの?」と質問してみました。すると「あのね、さとざきになりたいの」という答えが返ってきました。「えっ!? 里崎って、あの里崎?」。イチローとか、松井とか、野茂とか、ジーターとか、A・ロッドとか、ボンズとかじゃないんですから。驚いて、思わず聞き返してしまいましたよ。

 もちろん里崎捕手の名誉のために言っておくと、僕はかつてロッテ担当だったこともあり、彼の実力は十分過ぎるほど知っているつもりです。特に右方向への長打力には目を見張るものがあり、肩も強いです。WBC日本代表の正捕手として里崎が注目される以前から、実力的には「大リーグに挑戦する」と言ってもおかしくない選手だと思っていました。

 でも、誰もが知っているというわけではない彼の名前を、まさか2歳児の口から聞くとは…。WBC優勝の影響の大きさを実感しました。そして、これまで自分が取材してきたということもあり、何だかうれしくも感じました。

 里崎捕手はその実力とともに、愛すべきキャラクターでも関係者の間では有名です。WBC中は「打撃では、いかなる場面でもプレッシャーを感じることはないです。打てばこういうこと(報道陣が集まってくる)になるし(笑い)」などと、彼らしいビッグマウスも披露してくれました。初めて取材した記者たちの間でも、同捕手の気さくで明るい性格に「いい選手だな」という多くの声が聞かれたそうです。全国的にも今後、人気は右肩上がりでしょう。

 そんな里崎捕手へ。これからキミの責任は重大だぞ。WBCで全国区になったことで、ウチの息子みたいな少年たちは日本全国で増殖中に違いない。彼らの期待を裏切らないように、日本一、いや世界一のキャッチャーになってくれよ、ヨロシク!!

April 28, 2006 11:08 AM

2006年04月18日

野球「理論」も交流を

 アメリカにいると、野球の理論が日々進化していることを強く感じます。僕が子供のころ、ボールはきれいな縦回転で投げるように教わりました。それがここ10年くらいで、新球ともいえるカッター(鋭く小さくスライダー回転で曲がる直球)やツーシーム(鋭く小さくシュート回転で曲がる直球)が定番化。“ボールが動く”投手が良い投手で、きれいな球筋の投手は逆に打たれやすいということが当たり前のように言われるようになりました。

 打撃についても、理論のトレンドはあります。これまでバッティングで大切なのは、バットをリードする側の腕だと言われてきました。右打者なら左腕、左打者なら右腕です。少年野球の時なんか(僕は左打者だったのですが)、右手でバットをコントロールして左手は添えるだけ、なんて教わりました。しかし“動く直球”の登場で、この理論では投手のボールに対応しきれなくなってきました。

 カッターやツーシームのように手元で微妙に曲がる球を打つには、できるだけボールを引きつけ、球筋を見極めなければなりません。ヤンキース松井選手は大リーグ初年度、あまりの二ゴロの多さに、地元メディアから「ゴロキング」というありがたくないニックネームをもらいました。これも直球だと思って打ったら微妙にシュート回転したため、バットの先端で引っ掛けてしまったのが原因でした。

 ただ手元まで球を引きつけると、球を見極められる半面、詰まる可能性も高まります。その時、リードする腕とは反対の“押し込む腕”の力が弱いと球威に負けます。僕が子供のころに教わったように“押し込む腕”が添えるだけだと、動くボールはヒットにできないのです。だからこそ松井選手は打撃練習でも左腕の動きを大切にフォームをチェックし、米移籍後は特に左腕の筋力強化を行ったのです。

 野球をあまり知らない読者の皆さん、長々と講釈を垂れてすみません。僕が言いたいのは、これらの最新の理論は(もうすでに最新ではなくなりつつありますが)、現場にいるプロの選手やコーチ、トレーナーでないと分からないということなのです。それはどの競技であっても、競技そのものではなくコンディショニングやトレーニングの理論であっても、同じだと思います。

 もちろん優れたアマチュアの指導者もたくさんいるとは思います。ただ彼らもプロのプレーや理論からヒントを得ています。僕も取材現場でプロ選手やトレーナーの人たちと話をしていて「そんな考え方があったのか」と、はっとさせられることはしょっちゅうです。

 僕らの取材仲間に、元プロ野球選手のご子息がいます。米国の記者と食事をしている時、彼がプロ・アマ協定のために父親から野球を教えてもらえなかったという話をすると、アメリカ人記者たちは「信じられない」とあきれていました。現在、日本のプロ・アマ関係は緩和される方向にあります。早くプロの理論がほとんど時差なしに子供たちへ行き届くような環境になれば、と思います。

April 18, 2006 11:20 AM

2006年04月08日

ロッカー取材解禁を

 大リーグと日本プロ野球を取材する上で決定的に違うのは、選手が着替えるロッカー室に入れるかどうかです。日本の某球団を取材していた時には、長い駐車場までの階段を、選手にくっついて何往復もしたり、それはそれは体力がいりました。大リーグではロッカー室の中で腰を落ち着けて取材できます。そこでは選手の意外な素顔を垣間見ることもできます。

 ロッテを取材していた時、バレンタイン監督だったこともあり、ロッカー室取材を許可してもらえるように球団に働き掛けました。結局それは無理でしたが、試合後に監督室の中で取材することを許されました。これだって日本のプロ野球界では結構画期的だったと思います。負けて顔を真っ赤にして、まさに湯気が上っているようなボビーを観察するのも、なかなか面白みがあります(失礼!)。

 オークランドのマカフィー・コロシアムで行われた4月3日の開幕戦。ヤンキースのロッカー室で楽しいことがありました。誰かが先発ローテの一角チャコン投手のいすに、男性の大事な部分をかたどった茶色いおもちゃを置いたのです。

 それを見たチャコン投手は「お前が置いたんだろ」と、それをスターツ投手のロッカーに放り投げました。スターツ投手は「オレじゃねぇよ」と、それをライト投手のロッカーにストライク投球。15-2でアスレチックスに快勝した開幕戦の舞台裏では、実はチ○コが宙を舞っていたのです。

 その数日前、オープン戦を行ったアリゾナのチェース・フィールドでのこと。試合後、ウィリアムズ選手が日本報道陣のそばを通り過ぎた時、すごくいいにおいがしました。僕らは「おい、バーニーすげぇいいにおいの香水使ってるよ」なんていうおバカ会話で盛り上がってました。

 当のウィリアムズ選手本人は日本語は分からなかったようですが、自分のことを話されているというのは察知したようで、なんとなく照れ笑いを浮かべていました。そのうち僕らの1人が会話の内容を教えました。すると、オレはそっちの趣味はねーんだよとばかりに「おいおい、勘弁してくれよ」とウィリアムズ選手も頭を抱えて大爆笑。あらためてその気さくな人柄に触れることができました。

 また、ウィリアムズ選手がロッカー室で奏でるギターの音色もすごいんですよ本当に。この前はジャズ・フュージョン系の曲を弾いてましたけど、もうウェス・モンゴメリーとか、ジョージ・ベンソンですよ、あれは。

 ロッカー室は女性記者も取材に訪れますが、基本的に男子更衣室なので、選手はあまり女性の目を気にしません。今年メッツと契約し、春季キャンプの途中で引退してしまったブーン選手はマリナーズ時代、全裸&まじめな顔(ここがポイント)で記者に囲まれて話をしていました。結構笑えましたよ。

 意味不明の漢字の入れ墨を入れた選手や、服を着ているかのように見える全身タトゥー選手。乳首ピアスと下半身の一部が鎖でつながっている!? 選手など、日本ではあり得ないプレーヤーも発見できるロッカー室。日本でも解禁したら、面白いと思うけどなぁ。

April 8, 2006 11:43 AM

2006年03月29日

安全、配慮はどこ?

 「Gawker Stalker(ゴーカー・ストーカー)」っていう言葉、知っていますか? 今、こちら米国でちょっとした議論の的になっている、「Gawker.com」というインターネット・サイトの中のコーナーの名前です。

 簡単に言うと、映画スターやスポーツ選手ら、セレブたちがどこにいるのかをネット上の地図に表示するというものです。「誰がどこにいる」という目撃情報は、町中にいる一般人から寄せられます。それをサイトの運営者が順次更新していくので、このサイトを見ると、スターたちが今どこにいるのかが一目で分かってしまうというものです(何をしているとか、様子を描写したコメント付きです)。

 この「Gawker Stalker」が人々のストーカー行為を助長するのではないかと、米国では今、さまざまな意見が飛び交っています。セレブたちの居場所が分かれば、そこまで見に行きたくなる人はいるでしょう。そんな人たちの中に、悪意のある輩が潜んでいないとは言い切れません。

 でも、よく考えると日本でも似たようなことはあります。テレビ番組でスターの目撃情報を募集したり、レストランや洋服などのショップの中には、セレブ御用達を売りにしている店もあります。“時間”こそ特定できなくても、すでにスターが現れる“場所”は特定されてしまっているのです。これでは彼らが完全に安全だとは言い切れないでしょう。

 もちろん野球選手をはじめ、スターがファンと触れ合うという機会は大切だと思います。そのために選手は球場でサインをしたり、芸能人は握手会などを催したりするのです。例えば町中や、移動する際の空港、電車の駅などで有名人をつかまえてサインをねだるというのは、特に安全面から考えると適切ではないでしょう。

 以前、ある野球選手が食事中にファンに囲まれ、サインを頼まれるのを目撃したことがあります。その選手は「僕は別にいいですよ」と言いながら、イヤな顔ひとつせずにサインをせっせと書いていました。ですが、気づくと店の外までファンの行列ができていました。いくらセレブが公人とはいえ、彼らのプライバシーを尊重する配慮も必要なのではないでしょうか。

 これまで米国では、そのあたりのモラルはしっかりしていると思っていました。ただ前述の「Gawker Stalker」なんかが出だすと、それも崩壊していくのかなと、一抹の不安を覚えます。

 まぁ偉そうなことを書いてきましたが、考えてください。仮に自分の居場所がネット上で特定されていたら、どんな気分がするでしょうか。「28日午前11時、千葉修宏が銀座のスタバで鼻をほじくりながらお茶」なんて書かれていたら、おちおち仕事をサボることもできません。

 そういう思いを、普段から有名人たちはしているのではないでしょうか。そんなことを考えながら、好きな有名人のことは分別のある方法で応援していこうと思うのでした。

March 29, 2006 11:36 AM

2006年03月19日

冬季リーグ開催も手

 この原稿は、パソコンで「ワールドベースボールクラシック(WBC)」の日本-韓国戦を見ながら書きました。僕はフロリダ州タンパにいるのですが、日韓戦というカードは、(アジア系以外の)アメリカ人にはあまり人気がないらしく、テレビ放送も当然のごとく録画。それならばということで、大リーグ公式ホームページのライブ放送を視聴してみました。世の中、便利になったもんですね。

 まぁともかく、このWBCという大会については、開催する時期の問題や、投手の球数制限などのため、その価値を疑問視する声もありました。僕も、もともとW杯のない野球という競技に、国別対抗戦というコンセプトはそぐわないのではないかと思っていました。ところが、いざ始まってみれば、これが面白いのなんの。ドミニカ共和国-ベネズエラの試合なんて、ほとんど大リーグのオールスター戦のようなメンバーですから。テレビで見ていても興奮しますよ。

 惜しくも日本はライバル韓国に2度も負けてしまいましたが、アジアの代表として韓国とともにレベルの高さを見せてくれたと思います。ですが、もっと驚いたのは中米勢。前述の2チームにキューバ、プエルトリコなどを含めた彼らの“熱さ”は尋常じゃありません。死球の報復合戦とか、普通にしてますし。国際問題に発展しなければいいなと、真剣に思ってしまいました。

 そんな彼らの姿を見ながら、なぜ3月のこの時期から、100%に近いコンディション(体調はもちろん、精神的にも)で試合に臨めるのかを考えてみました。その時、やはりウインターリーグの存在を見逃すことはできません。

 ウインターリーグとは、毎年11~2月にかけて、メキシコ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラなどで開催されるリーグ戦のこと。自国のプロ選手だけでなく、多くの大リーガーも、調整のために試合に出場したりします。一方で若手が実戦の経験を積むのにも、絶好の舞台となっています。西武カブレラ選手はベネズエラ代表チームの4番として「カリビアン・シリーズ(カリブ4カ国の代表チームが優勝を争う大会)」でも勝利しました。

 中米チームの中には、このオフも冬季リーグで試合を行っていた選手が結構いるのです。WBCにすんなり入っていけた要因は、そんなところにもあるわけです。

 日本の選手たちも、かつてハワイで行われていたウインターリーグに参加していたことがあります。ただ最近はそういった機会に恵まれていません。でも、ちょっと待ってください。アジアでも冬季リーグを開催できそうな国があるじゃないですか。

 そう日本ですよ。こんなにドーム球場がたくさんあるんですから。冬の間、マスターズリーグだけに使わせておくというのはもったいない。韓国、台湾、中国の選手たちも呼んでリーグ戦をすれば、日本プロ野球の若手たちにとっても大きな財産になるはずです。また現役大リーガーたちが帰ってきて少しでもプレーすれば、集客も期待できるはず。日本でウインターリーグって、良いアイデアだと思うんですけどね。

March 19, 2006 08:27 AM

2006年03月09日

熱戦に一役30年発言

 野球の国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」が盛り上がりを見せています(よね?)。こちら米国では、スポーツ専門放送局ESPNが、なんとアジアラウンドからWBC全試合を中継。日本戦もしっかりと放送されていました。

 そんな中、大会前から面白い(と言って良いと思うのですが)ことがありました。発端は日本代表イチロー選手がアジアラウンドを前にして発した「向こう30年間、日本には勝てないなと(相手に)思わせるような勝ち方をしたいですね」との言葉。イチロー選手は「特定の国を狙ったものではない」と説明しているようですが、これに韓国メディアが反応しました。

 韓国の主要新聞は「野球は個人スポーツではない。イチローが全打席でホームランを打ったからといって、いつも勝てるものではない。うちのチームをなめているようだが、必ず勝ってみせる」「プロ入団後、5回代表チームに選ばれた。しかし、00年シドニー五輪や02年釜山アジア競技大会など、すべての大会で日本に負けたことは1度もなかった」「日本の野球が一枚上だって? とんでもない。同じレベルだ。いつでも勝てるチームだ」などの代表選手のコメントを紹介。舌戦に拍車を掛けてきました。

 そして日本戦に勝利すると「朴賛浩(パク・チャンホ)、『妄言』イチローに完勝」(朝鮮日報)などのタイトルで勝利を報道しました。まだ2次リーグ以降の試合が残っていますが、現時点では韓国代表選手の言葉が正しかったということが証明されたわけです。

 僕は、日韓の過去の歴史を頭に入れた上で、これらの発言の応酬が良いか、悪いかということには、実はあまり興味がありません。それよりも、ヒートアップした代表選手たちが意地をぶつけ合って素晴らしい試合をし、結果的に世界的に見てもレベルの高い野球を披露してくれたことに意味があると思うのです。

 僕は昨年行われた「アジアシリーズ」を取材しました。そこで感じたのは優勝した日本代表・ロッテと、他の韓国、台湾、中国代表チームとの力の差でした。この差を埋めない限り、大会の盛り上がりや、今後の成功はあり得ないと思いました。WBCについても同様です。各国の力の差がない方が試合はスリリングになり、当然、盛り上がります。その意味で、闘争心をあおるような言葉の応酬は、歓迎しても良いのではないでしょうか。

 もちろん国同士が戦争をしたり、両国の国民がいがみ合ったりしてはいけません。でもスポーツ選手が自らの力を証明するために、時に子供のように相手をけなしたり、自らの優位を唱えるのは、そんなに悪いことには思えません。むしろ、人間的で魅力的に見えたりもします。本人としては本意ではないのかもしれませんが、大会前のイチロー選手の「30年発言」が、WBCアジアラウンドの盛り上がりにつながったことは言うまでもありません。

March 9, 2006 10:44 AM

2006年02月27日

異国というストレス

 1人の人間として、そして子供を持つ親として、耐え難い事件が先日、起きました。滋賀・長浜市で幼稚園児2人が刺殺され、同級生の母親が逮捕された事件です。

 中国・黒竜江省出身の容疑者は、99年に来日。長女が幼稚園で仲間外れにされていると考え、犯行に及んだとされています。また容疑者自身が周囲のお母さんから相手にされていないと一方的に思い込み、孤立感を深めたことも事件の背景にあるそうです。

 かけがえのない小さな2つの命を簡単に奪い去ってしまう短絡性もさることながら、自分の長女が助手席に乗っていたとされる車の中で人を殺すという異常性は、とても人の親とは思えません。ですが、この事件は海外で生活することの多い僕のような人間にとって、ある意味、人ごとでないのもまた事実です。

 この容疑者は警察の調べに対し、「日本になじめない」という供述をしているそうです。文化の違いからくるストレスが少しずつ蓄積していったことも、犯人の異常性を引き起こす要因になったのではないでしょうか。とはいえ、なじめないから帰国する…という考えは、なかなか現実的ではありません。結婚をし、子供を持ち、日本に生活基盤を築いた以上、なじめないから「はい、さよなら」とはいかないからです。

 僕は今、大リーグ・ヤンキースの取材のために米フロリダ州に滞在しています。米国にも日本人をはじめ、外国人はたくさんいます。僕は小さいころからスポーツや音楽などアメリカ文化にあこがれて育ってきた「アメリカかぶれ」なのでそれほどではありませんが、異国で暮らす多くの人は、多少なりともストレスを感じた経験があるのではないでしょうか。

 昨年、米西海岸のある名門球団に取材を申し込んだ時のことです。Eメールで申請したのですが、球場の受付に行くと「ウチはEメールでの申請は受け付けていない。ファクスだけだ」の1点ばり。取材パスを出してくれませんでした。対応した男性に「特例でパスが出ないか、広報部に聞いてください」と言うと、「自分で電話しろ」と番号の書かれた紙切れを投げてよこされました。

 さらに球場のロビーで東京の上司に事情を説明する電話をかけていると「うるさいから出て行け」と、追い出される始末。幸い、見かねた別の球団職員の方が、「オレが何とかしてやる」と、僕の名刺を持って球団上層部に直談判してくれて、取材パスが出ました。このような必死のやりとりを母国語ではない英語でやっていると、ストレスからどっと疲れが出ます。

 今後も日本にやってくる外国人はどんどん増えるでしょう。もちろん今回の滋賀の事件の原因を周囲の環境にすり替えるようなことがあってはいけません。どんな理由であれ、人の命を奪って良いということにはならないからです。ですが悲劇を2度と繰り返さないためにも、僕ら日本人は、外国人が不安やストレスを感じずに暮らしていけるように、常に精神的ケアを考えていく必要があります。それが事件の再発防止につながるのではないでしょうか。

February 27, 2006 11:39 AM

2006年02月17日

取材できる幸せ還元

 今年も、個人的にすごくドキドキ、ワクワクする季節がやってきました。読者の皆さんがこの原稿を読んでいるころ、僕は大リーグの春季キャンプを取材するために、米フロリダ州に飛んでいるはずです。今年はトリノ五輪やサッカーW杯、そして野球の国別対抗戦「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」があるために、大リーグのキャンプはちょっと話題に乏しい感じですが、何のなんの。見どころは満載です。

 先日、都内のアメリカ大使館で、米国商務省の観光促進イベントが開かれました。そこにはヤンキース松井、ブルワーズ大家、インディアンス多田野とともに、今年からメッツでプレーする入来祐作投手(元巨人、日本ハム)の姿がありました。

 巨人を担当していた数年前、立川駅前をうちの妻と歩いていた時のことです。向こうから入来投手が歩いてくるではありませんか。すると彼は「よっ、チバちゃん! どこのお店のお姉ちゃん連れてんだよ」と、ご機嫌で声を掛けてきました。僕が「うちのヨメなんですけど…」と言うと、「ゴメン、ゴメン。知らんかった」と、僕と妻に平謝り。そんな楽しい!? 思い出があるからか、入来投手にはぜひとも大リーグでも活躍して欲しいと思っています。

 同投手が米国大使館で話してくれた「誰と対戦したいとかいうより、まず大リーグのマウンドで自分がどれだけ投げられるのか、っていうのがあるよね」という言葉には、自らへの期待感があふれていました。そして、新たなシーズンを前にして、気持ちが高ぶっているのは選手だけではないのです。

 僕が日刊スポーツに入社したのは、あこがれ続けたメジャーリーグにかかわりたいという一心からでした。甲子園を目指していた高校球児の時から、心の中は大リーグにくぎ付けでしたから。それほどテレビ中継のなかった時代に、カンセコ、マグワイアの“バッシュ・ブラザーズ”や、盗塁王リッキー・ヘンダーソンら、そうそうたるメンバーをそろえていたアスレチックスのファンになりました。初めて行ったアメリカ旅行で観戦したアスレチックス対ブルージェイズ戦の“空気感”は今でも忘れません。

 以後、「大リーグかぶれ」となった僕は、当時、日本ではほとんど履かれていなかったN社のスパイクを探して奔走。渋谷の「バックドロップ」という洋服屋さんで、なぜかスパイクを見つけると即購入。僕が通っていた大学の野球部史上、初めてN社のスパイクを履いた選手となりました(笑い)。当時は周囲の選手から「何それ?」とか言われましたけど。

 また、野茂投手がドジャース2年目の96年春には、卒業旅行と称してベロビーチを直撃。某スポーツ紙に「日本人ファン一番乗り」として取材されたりもしました。それほど思い入れのある大リーグを、実際に取材できるようになるなんて。その自分の幸せさをちゃんとかみしめながら、読者の皆さんにもメジャーの楽しさ、素晴らしさを伝えていけたらと思います。

February 17, 2006 10:48 AM

2006年02月07日

世界統一は難しい?

 昨年11月、ロッテの納会を取材するために、韓国の済州島に行きました。その時のことです。僕は毎朝、“マイバリカン”で頭髪を1ミリほどの丸刈りにしてから出勤します。その日の朝もいつものように鏡に向かいました。

 韓国は日本と電圧、コンセントの形状が違います。冷静に考えれば、ホテルで変圧器を借りれば良かったのですが、同室に泊まった同僚が変換プラグを持っており、それをコンセントに差し込み、そこに僕のバリカンをつなぎました。スイッチを入れた瞬間、「ボンッ」という爆発音が室内に響き、僕のバリカンはピクリとも動かなくなってしまいました。

 電圧を変えずに、変換プラグでコンセントの形状だけ日本製品を差し込めるようにしたので、バリカンが高電圧に耐えられずにショートしてしまったのです。これまで何度も海外取材を経験させてもらっているというのに、なんたる初歩的なミス。でも海外ってやっぱり不便だよなぁ、とあらためて思わされた瞬間でした。

 まぁ電圧の問題は、今すぐに世界中で統一しろと言っても、ちょっと無理かもしれません。でも先日、某米国系銀行に行った時、信じられない話を聞きました。僕はその銀行の日本国内の支店に口座を持っています。これまで米国出張の際には、いつもその銀行のカードを使い、お金をおろしていました。今年は昨年より大リーグ取材が長くなるので、そのカードで米国内でも入金や振り込みなど、さまざまなサービスが受けられるのかを聞きに行きました。

 すると相談に応じてくれた女性の行員が言いました。「お金をおろすことはできますけど、アメリカでは入金等はできないんですよ。そういったことをしたい場合には向こうで新たに口座を開くしかないんです」とのことでした。はぁ!? 何のための米国系銀行なんだ。全然、互換性がないじゃん。ちょっとぼうぜんとしてその場を去りました。

 名前は世界的企業なのに、海を渡ってしまうとリレーションが悪い会社って結構ありますよね。某運動具メーカーと契約しているある選手がいました。その選手は海外でプレーするようになったのですが、ウエア類は母国での担当者が、道具類は移籍先の国の担当者が渡していたなんてこともありました。

 世界で通用するクレジットカードの厚さも、各国で違いがあるって知っていましたか? 日本で発行したクレジットカードを、米国のスワイプ式(読み取り機の溝にカードをスライドさせる方法)ATMで使用すると、うまくカードが読みとられないんですよ。日本のカードは薄いからなんですけど。急にお金が必要になった時、スワイプ式のATMしかないと、本当に困ります。

 仮にも世界的企業を名乗っている会社だったり、どこでも使えることが売りのクレジットカードなどは、全世界で基準を統一してもらわないと不便でしょうがないです。今年も大リーグ取材に行く直前に、そんなことを考えました。

February 7, 2006 11:34 AM

2006年01月28日

李の巨人移籍成否は?

 今回のコラムは、今年から巨人でプレーすることになった“アジアの大砲”李承燁(イ・スンヨプ)選手(29)について書きたいと思います。僕は彼が韓国サムスンから日本に来た04年にロッテを担当しました。入団発表前にもかかわらず、ソウルで夫婦そろってインタビューを受けてもらったこともあります。彼には本当に日本で成功してほしいと思って、ここまで見てきました。

 この2年間、李選手はかなりの進歩を見せました。04年は日本の投手の攻めに苦しみ、わずか14本塁打。韓国で“アジア記録”となるシーズン56本をマークした強打者の面影はありませんでした。もともと体が投手方向に突っ込んでしまうタイプで、高めの速球と、フォークなどの落ちる球種を組み合わされると、お手上げといった感じでした。

 ですが昨年は、見事30本塁打を放ち、完ぺきではないものの日本野球への適応を感じさせました。相手の攻め方を理解してきたことと、ボールを長く引き付けて見極める技術が向上した成果でしょう。だから今年はロッテの主砲として、さらなる活躍を見せてくれると思っていました。

 その李選手が先日、突如(と言っていいと思います)巨人への入団を決めました。昨年暮れから代理人、水戸重之弁護士とロッテとの間で再契約の方向で話が進められていましたが、決裂。1月13日には水戸弁護士の要請で李選手が自由契約となり、約1週間後の19日には巨人と契約を結びました。

 僕は別にアンチ巨人ではないし、李選手にはセ・リーグで活躍して欲しいと思っています。ただ今回の巨人入りに関しては、理解できない部分も多いです。ロッテの年俸提示(出来高含め2億5000万)に不満を持ちながら、それより低額の巨人の提示(契約金含め年俸2億1000万)を簡単にのむなど、言っていることと、行動が伴わない感じが否めません。

 李選手は、07年の大リーグ入りを目指しているそうです。しかし、再びセ・リーグの投手を一から学び直さなければならない巨人入りは、メジャーへの最後のアピールに向いているとは思いません。李選手はDHとしての出場ではなく、守れるところも見せなければ米移籍は難しいと考えているようですが、彼の持ち味は長打力。セ・リーグにはDHがない分、出場試合数自体が減る可能性だって十分あります。そうなれば、結果的に打撃でのアピールだってできないことも考えられます。

 韓国球界の関係者が「巨人は日本のヤンキースだから。ファンも自国のスターが巨人でプレーするのはうれしいし、本人もそう思ってるんじゃないですか」と言っていました。確かにあこがれの球団でプレーしたいという気持ちは分かります。今回の巨人入りだってルールにのっとったもので、いちゃもんをつけられるいわれはないでしょう。ですが巨人へのあこがれの代償として、最終目標である大リーグが遠のく可能性があるとしたら…。答えは今季終了後に出ます。

January 28, 2006 11:38 AM

2006年01月18日

分煙だめなら禁煙に

 JR九州が、07年3月ごろに、列車の喫煙席を廃止することを明らかにしました。喫煙席を廃止するのはJR各社では、JR北海道に続き2番目のことだそうです。これは僕のようなノンスモーキング派には、本当に朗報です。禁煙の徹底している米国ならまだしも、取材で日本各地を飛び回らなければならない記者にとって、いかに移動を快適にするかというのは、永遠のテーマ(大げさ!?)だからです。

 飛行機は全面禁煙なので問題ないのですが、ひどい高所恐怖症の僕にとって、出張はなるべく電車や車で済ませたいところ。これまで電車で移動する場合、喫煙車両しか席が空いていない時などは、禁煙車両に立つ方を選んでいました。今後、列車の全面禁煙化の流れが、すべての鉄道会社に波及すれば、もっともっと旅が楽しくなるんですけどね。

 という原稿を今、新宿のとあるファストフード店で書いています。都庁近くにある店なのですが、無線LAN(無線を使ったローカルエリアネットワーク=一施設内程度の規模で用いられるコンピュータ・ネットワーク。高速でインターネットにアクセスできる)が使える上に、電源用のコンセントも利用できます。取材後、町中で記事を書かないといけない記者にとっては、本当に重宝する店です。

 ただ1つだけ難点が…。店内がえらいたばこ臭いんですよ。禁煙席と喫煙席に区切られてはいるものの、座席を別にしている程度。煙は容赦なく禁煙席に流れ込んできます。店を出るころには、僕の上着にしっかりとたばこ臭が染みつき、家でヨメに近づけば、鼻をつままれる始末…。ファミレス等でもよく思うのですが、申し訳程度の分煙ではなくて、店内を完全に二分するカベとかって作ることはできないんですかね。

 僕らは民主主義の中で暮らしているので、喫煙者の権利も認めなければならないと思います。ただ他人に煙を吸わせることは、それだけで人を傷つけているのと同じです(たばこの煙に多数の発がん性物質が含まれているのをはじめ、その害をすべて書いていると、このコラムの原稿量を軽く超えてしまいます)。だからカベ等で完全に煙をシャットアウトできるような店以外は、基本的にはどんな店であっても禁煙にするというのが、本当の分煙なのではないでしょうか。

 以前、知人に「たばこはやめた方が良いよ」と言ったところ「分かった。なるべく軽いたばこにするよ」という返事が返ってきました。軽いたばこにして、本人の寿命がほんの少し延びればいいという問題ではないと思います。一番の問題は他人に無理やり煙を吸わせていること。もちろんマナーを守り、人に煙が行かないように注意を払って喫煙している人もたくさんいると思います。そういった人たちと共存するには、やはり施設面での整備が必要不可欠なのではないでしょうか。

January 18, 2006 11:00 AM

2006年01月08日

プロの技術を間近で

 今オフからプロ野球選手が母校で練習することが解禁になりました。昨年12月には西武松坂投手が横浜高で練習し、今年はなんとマリナーズ・イチロー選手が母校・愛工大名電高で始動。横浜三浦投手も奈良・高田商で自主トレを始めました。かつてのプロと高校野球界との関係からすれば、大きな前進といえるかもしれません。

 これは昨年2月に学生野球憲章が改正されたことで可能になりました。期間はシーズンオフ(12月1日~1月31日)で、母校に限って現役プロ選手と高校生との合同練習が可能となりました。以前は接触も一切禁じられていましたが、キャッチボールをすることも許可されました。ただし技術指導は認められていないということです。

 ただ、普通に考えて「なぜ合同練習がオーケーなのに、技術指導はダメなのか」とか、「なぜ母校にしか行ってはいけないのか」など、疑問点が多いのも事実。母校で練習するのに申請が必要というのも奇妙な話です。実際、プロ選手たちからも「合同練習」と「技術指導」の微妙な線引きに戸惑う姿などが見受けられたようです。現時点ではプロ、アマの垣根を越えた大きな1歩ですが、これを足掛かりに、もっと抜本的な関係改善に取り組んでいかなければいけないのは明白でしょう。

 プロ、アマの深い溝ができてしまったのは61年のこと。中日が社会人側との協約を破り、日本生命の柳川福三外野手とシーズン中に契約。この「柳川事件」で、社会人協会はプロ退団者を一切受け入れないことを決定しました。これがプロ、アマ間に大きなしこりを残すことになってしまいました。

 でも現在、プロ選手と高校や大学の野球部員が接触すると、例えばどういう問題が起きるというのでしょうか。仮にプロ選手が、高校生を自らのチームへ入団させるために勧誘したり、無用に食事などに誘ったりしたとします。その場合、その個人を罰するルールを作るべきで、そういう可能性があるから指導することを認めないというのは、間違いではないでしょうか。またPL学園高や横浜高などプロを多く輩出している学校に“コーチ”が偏ってしまうというのであれば、「母校に限って」という部分をなくせばいい。サッカーではユースチームの選手がトップチームの練習に参加するのは当たり前。若い世代がトッププロに学ぶことが、技術向上につながっているのは明らかです。

 僕は今、ヤンキース松井選手の故郷、石川県に取材に来ています。松井選手が毎年地元で行っている「新年の集い」では、集まった子供たちと質疑応答やゲームなどで松井選手が触れ合います。その時、子供たちのとびきりの笑顔を何度も見かけました。

 やっぱり野球選手を間近で見るということは、子供たちにとっては本当にうれしいことなのです(もちろん大人にとってもそうですが)。そしてそんな選手たちから、野球の技術を指導してもらえたら…。第2の松井、第2のイチローが続々登場することだって夢ではないかもしれません。

January 8, 2006 11:38 AM

2005年12月28日

プレー以外も魅せて

 松井秀喜外野手(31)が所属するニューヨーク・ヤンキースに、ライバルのボストン・レッドソックスからジョニー・デーモン外野手(32)が加入しました。ボストンから1時間ほどの町に住む知人は「金で魂を売ったのか」と落胆。某野球関係者は、4年5200万ドル(約60億円)という松井と同額の契約を勝ち取った代理人ボラス氏の手腕にあきれていました。でも今回書くのは、お金の話ではありません。

 デーモンといえば“原始人”とも呼ばれる2年間伸ばしっぱなしの長髪と、ひげがトレードマーク。一方のヤ軍は、スタインブレナー・オーナーの意向もあって規律を重んずるチーム。長髪、ひげは禁止となっています。「そんな球団に入って大丈夫なのか」といらぬ心配をしていたら、見ましたか? 数日前の新聞。ニューヨークの美容室で、あっさり散髪しちゃってるじゃないですか。

 確かに、ひげもすっきりそり落とし、いい男度はアップしています。でも、それでいいのか、ジョニー! 今年も何試合かレ軍戦を取材し、昔の姿を間近で見ているだけに、あのさわやかデーモンを見た時には…。ラミレス、オルティスらそうそうたるメンバーを擁する野武士軍団の切り込み隊長として活躍していた姿と、ニューヨークの美容室でニカッと笑っている姿のギャップがありすぎて。あれじゃ完全にギャグですよ~(苦笑)。

 スポーツ選手の身だしなみって、よく問題になるじゃないですか。ちょっと奇抜な格好をしたりすると「子供がまねするから、やめろ」って。最近でいうと、オリックス入団が決まった清原選手。巨人時代につけていたピアスは、年配の球界関係者なんかは、まゆをひそめてましたから。

 でも、プロ野球選手はエンターテイナーだと思うんです。純粋に技術だけを追求するなら、アマチュアでいれば良いこと。よく「プレーを見て欲しい」という選手がいますが、技術で魅せるのは必要最低限、当たり前。プラスアルファがあるからこそ、プロなんじゃないでしょうか。そういう意味では、楽天のマスコット「Mr.カラスコ」の契約交渉が不調に終わった話題とか最高に面白かったし。ボサボサ頭(失礼!)のデーモンが、野球選手は紳士たれというヤ軍でプレーするところも見たかったなぁ。

 だからといって誤解しないで欲しいのは、僕はピアスとか長髪を特に奨励しているわけじゃありません。プロだったら、賛否両論あってもファンの話題に上る方が大事だと思うのです。今年引退した元ロッテの初芝清選手が言っていました。「昔は酒飲んだ翌日に試合するなんて当たり前だったよ。でも、またその夜も飲みに行っちゃうんだよね。今はそういう豪快な選手もいなくなっちゃったけど。寂しいよねぇ」。ホント、その通りですよね。

 無理にそうする必要はないけれど、個性的な選手を型にはめる必要はない。デーモンの長髪がニューヨークの美容室の床に寂しげ!? に落ちている写真を見ながら、そんなことを思いました。まぁ散髪もファンの話題に上ったからいいのかもしれないけれど。

December 28, 2005 10:35 AM

2005年12月18日

自らの意志で表明を

 ヤンキース松井秀喜選手(31)が悩んでいます。“野球のW杯”と言われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)についてです。米国ではクレメンス(アストロズからFA)やボンズ(ジャイアンツ)ら大物大リーガーたちが参加を表明。日本代表にもメジャーで5年連続200安打を放ったイチロー選手や、1年目で世界一に輝いたホワイトソックス井口選手らが加わります。その一方で、松井選手は依然として、参加・不参加の答えを保留しています。

 このWBCには、いろいろと問題があるのも事実です。3月という、各国が100%のコンディションでぶつかり合うのは難しいと言わざるを得ない開催時期。長年アマ最強軍団と言われてきたキューバは、経済制裁の問題のため米政府から参加を拒否されました。投手の球数など、プレーに制限がつく予定だというのも妙な話です。そんな中、松井選手がなかなか“進退”を表明しないのも理解できます。

 ただ、仮に彼が代表入りを辞退したとしても、それほどの批判を浴びることでしょうか。先日、松井選手の地元、石川・能美市にオープンした「松井秀喜ベースボールミュージアム」を取材に行きました。そこには、少年時代から現在に至るまでの、松井選手の“夢の軌跡”が詰まっていました。

 僕は思い出しました。巨人の一員として02年に日本一となり、そのオフに大リーグ行きを表明した際のことを。彼は「アメリカでプレーしたいという気持ちを消し去ることができません」と長嶋茂雄前監督(当時)に告白したそうです。あの時は、誰のためでもなく、自らの夢をかなえるために海を渡ったはず。ファンもそれを後押ししました。今回、彼が「ヤンキースで世界一になりたい」という気持ちから調整を優先させ、WBCを辞退したとしても、僕は批判する気にはなれません。

 恩師である母校・星稜高の山下総監督は先日、松井選手と再会したパーティーで、「どんなときも周囲に気を使うことができていて、さすがだと思った」と話していました。そんな人柄だからこそ記者の間でも人気があるのでしょう。でも生意気を言うようですが、野球に関しては、米国へ渡った時から“良い人”でいる必要はなくなったのではないでしょうか。

 現時点で松井選手がWBCに参加するのか、しないのか、それは分かりません。ただ、さまざまな周囲の思惑を考慮するばかりに、松井選手の判断が自らの意思と違ったものになるとしたら、不幸なことです。変な言い方かもしれませんが、もっと気軽に参加・不参加を表明すればいいのに、と思ってしまいます。彼には計り知れないプレッシャーがかかっているのは分かりますが…。

 その上で、WBCへ参加する日本代表には本当に頑張って欲しいです。優勝すれば、日本野球機構(NPB)の発言権も増すはずですから、次回開催時期の変更を求めたり、次回大会の日本の不参加をちらつかせて、クラブ同士の「真のワールドシリーズ」開催をMLB側に迫るなんてこともできるはずです。そういう意味でも日本代表には必勝態勢で臨んで欲しいです。

December 18, 2005 10:09 AM

2005年12月08日

フロントで大成期待

 数日前から右肩が上がりません(苦笑)。実はヤンキース松井選手を囲んでの草野球大会に出場し、ヤ軍広岡広報から「ピッチャーできる?」とうれしいことを聞かれ、「できますよー」と二つ返事でOK。完投までしてしまったからなのです。

 野球部に所属していた大学時代。補欠だったこともあり、毎日、打撃投手を買って出ていました。当時は若かったからなのか肩を痛めることもなく、レギュラーたちに気持ち良く打たれ続けました。それが約10年後、こんなことになろうとは…。松井選手らとプレーした数日後、マスコミ中心に結成された別の草野球チームの一員として試合に出場。その時は二塁から一塁へ送球するのもやっとなんですから。ほんとトホホですよ。

 それを考えるとプロ野球選手って本当にすごい。僕からすればほとんど神様のような存在です。だって大リーグでは年間162試合とか戦うんですよ。僕は一応まだ32歳ですけど、たった2、3試合で肩、腰、太ももと体中が悲鳴を上げてますから。

 アジアシリーズで来日した中国チームのラフィーバー監督(元大リーグ・ドジャース、日本プロ野球ロッテなど)が言ってました。「プロでやるっていうのは、毎日プレーすることなんだ。調子の良い時も悪い時もあるけど、また翌日、球場に戻ってきてプレーする。それがプロだ」と話していました。草野球で体を痛めながら、ものすごく説得力がある話だなと、しみじみ感じました。

 今年、僕の大学時代の同級生がユニホームを脱ぎました。西武の高木大成選手です。僕は西武は担当したことがなく、仕事で接する機会はあまりありませんでした。ですが、たまに取材に行ったり、新聞の記事などを読んでも、最後の数年はケガで苦しんでいたことが分かりました。

 今でも覚えています。大成は「こいつは本当にすごい」と思った初めての選手でした。あれは大学1年の練習初日。彼のフリー打撃は、グラウンドにいるどの先輩よりすごかった。というより次元が違いました(その時、上級生だった方々、スイマセン…)。今でも、たくさんの球団関係者の方から「あいつの体調が万全なら。センスはものすごいのになぁ」という話を聞きます。

 僕は大成と同じ神奈川県の高校出身ですが、彼は桐蔭学園時代から本当のスターの輝きを持っていました。大学、西武でも常に中心選手として歩み、96年のプロ1年目から5年連続で80試合以上に出場。その後、ケガのため徐々に出場試合は減っていきました。本当なら毎日プレーしているはずの主力が、そもそも試合に出られない。プロとして、その悔しさは相当なものだったでしょう。

 でも、まだまだ勝負はこれから。これは建前論じゃないですよ。彼は今後、球団職員としてライオンズに残るとのこと。外部から多くの人材を招聘(しょうへい)した今年のロッテを見ても分かりますが、チームの浮沈は選手の出来とともに“フロントの出来”に左右されます。弱いチームは球団自体に活気がないですから。近い将来、日本一の球団の一員として活躍する大成を、再び取材できることを楽しみにしています。

December 8, 2005 11:48 AM

2005年11月28日

マナーは守らナイト

 先日、ロッテ球団を取材するために都営新宿線に乗り、市ケ谷方面に向かっていました。午前10時くらいだったのですが、制服姿の女子高生と思われる2人組(かなり化粧が濃く、ブランド品のバッグを複数所持!していたため“なんちゃって”かもしれません)が、地下鉄の優先席に堂々と座っていました。

 車内は満員だったのですが、足をおっぴろげて(下品ですいません)、下を向いて寝ています。目の前には、お年寄りも数人立っていました。しかし知ってか知らずか、2人が目を覚ます様子はありません。僕は市ケ谷駅で電車を乗り換えてしまったので、その後のことは分かりません。ですが、注意できなかった自分の小心ぶりと、2人への憤りで、悲しい気持ちになりました。

 でも最近、電車の優先席に平気で座っている若者って、増えた気がしませんか?こう書くと自分がすごく老けたような気がしますが、本当に最近、よく目にするんです。僕の妻は妊娠中なのに、席を譲ってもらうことができなかったこともあります。

 今年は約6カ月ほど米国で取材しましたが、そういうことって、向こうではあまり見かけませんでした。お年寄りや、体の不自由な人には、みんなちゃんと席を譲っていました。でも、だからといってアメリカ人がみんな素晴らしい人格者かというと、そうではありません。一緒に取材していると分かりますが、米国にだって日本と同じでイヤなやつはたくさんいます(すいません、アメリカ人の皆さん)。

 でも、少なくとも公共の場では他人に親切にするという考え方の根本とは何なのでしょうか。僕はそれは人間としてのプライドだと思います。先日、チャリティー目的のパーティーでロッテのバレンタイン監督から話を聞く機会がありました。彼は「私の父親は裕福ではなかったけれど、よく他人に何かを分け与えてあげる人だった。そんな姿から私は多くを学んだ」と話していました。“自分が貧しくても他人に良くしてあげたい”っていう考えの中にあるのは「人として格好良くありたい。善良な市民としてのプライドを持ち続けたい」という気持ちだけですよね。金銭などの見返りなんかがないわけですから。

 そんなことを考えていた時、偶然インターネットで「騎士道」について書いてあるサイトを見つけました。そこには騎士道の説明として「騎士として、武勲を立てることや、忠節を尽くすことは当然であるが、弱者を保護すること、信仰を守ること、貴婦人への献身などが徳目とされた」と書いてありました。中世ヨーロッパで生まれた騎士道精神が、欧州からの多くの移民たちが作り上げてきた米国社会の根底に流れていると考えるのは、そんなに不自然なことではないと思います。

 電車の優先席以外にも、道端に座り込んだり、列に平気で割り込んだり、喫煙場所以外でたばこを吸ったり…。最近、街には格好悪いことがあふれています。もっと人としてのプライドを持とうよ、と思う今日このごろです。

November 28, 2005 11:32 AM

2005年11月18日

取材陣も協力し合う

 ロッテが6冠(交流戦、パ・リーグペナント、日本シリーズ、イースタン・リーグ、ファーム日本選手権、アジアシリーズ)を獲得して、今季のプロ野球は終わりました。それにしても昨年オフに球界再編の波が訪れた時、新たなアイデアとして生まれたアジアシリーズが、わずか1年ほどの準備期間で、こんな盛況のうちに幕を閉じるとは。正直、プロ野球界もやればできるじゃん、とか生意気なことを思ったものです。

 ロッテ対サムスン(韓国)の決勝戦は、東京ドームがほぼ満員になりました。実力的にはまだ少し差があると感じました。ですが、この敗戦を糧に韓国代表をはじめ、日本以外の各国は来年以降、より必死な戦いを挑んでくるでしょう。それがそれぞれのレベルアップにつながれば、大会の意義はあるというものです。
 また、野球文化の交流という意味でも、今シリーズの果たした役割は大きいでしょう。サムスンの選手たちは普段、ロッテ渡辺俊のようなアンダースローの投手と対戦することは少ないでしょう。来年からロッテの大応援団のスタイルが韓国や台湾で流行するかもしれません。それぞれの国の良い部分を吸収して、より文化として発展していければ、と思った今大会でした。

 そんな中、僕が一番うれしかったのは、昨年、一緒にロッテを取材していた韓国人記者たちと再会できたことです。04年は李承燁(イ・スンヨプ)選手がサムスンから移籍してきた初年度。多くの韓国人記者が、千葉マリン球場に詰めかけました。当時、ロッテ担当だった僕は、彼らとともに李選手の一挙手一投足を追いかけました。韓国の新聞にインタビューされたり、普段、経験できないこともたくさん経験した1年でした。

 僕は04年シーズン前、米国に滞在したことのある先輩記者から「米国ではアメリカ人記者が本当に良くしてくれた。だからお前たちも韓国人記者に親切にしてやれ」と言われていました。だから韓国メディアの方々と何回も食事をともにしたり、不便なことがあれば解決するように、努力をしてきたつもりです。そして、今大会で再会した彼らから、04年当時のことについて礼を言われるたびに「あぁ良かったな」という気持ちになりました(丁寧にプレゼントを持参してくれた方もいました。ありがとう)。

 来年3月には“野球のW杯”ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催されます。世界規模の大会というのは、各国の選手が競い合うというだけでなく、関係者が力を合わせて大会を成功させなければなりません。それは報道陣も同じ。みんなが敬意を払って、スムーズに取材できるように協力していきたい。世界大会の素晴らしさを多くの人に伝えていきたい。今大会を通じて、そんなふうに思いました。

 最後に、余計なお世話かもしれませんが、アジアシリーズで感じた点をいくつか。<1>取材スペースが少なすぎる(もっと大会を盛り上げるために試合前からしっかり取材したいから)<2>来年は日本一チームの本拠地でやって欲しい(さらに盛り上がる)<3>決勝戦前に行われたブラスバンドの演奏はいらない(野球そのものの魅力だけで十分)という感じです。どうでしょうか。

November 18, 2005 02:13 PM

2005年11月08日

ロッテよ大リーグを本気にさせろ

 来年3月に“野球のW杯”ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催されます。出場する可能性の高いペドロ・マルティネス(ドミニカ共和国出身=大リーグ・メッツ)やロジャー・クレメンス(米国出身=同アストロズ)といった世界最高の投手たちと、日本代表がどのような戦いを繰り広げるか。個人的には大いに注目したいところです。

 ただWBCは、ファンにとって興味があるものかもしれませんが、選手の立場からすると複雑な思いを抱く大会ではないでしょうか。W杯の歴史があるサッカーと違い、プロ野球選手は国を代表して戦った経験があまりありません。その上、例年ならシーズンへ向けた最終調整を行っている時期。果たして名誉だけのために、3月に100%の力を発揮できるように仕上げてくるのかどうか。正直、ケガを心配している選手は多いでしょう。

 それよりロッテ・バレンタイン監督が提唱している、球団対抗の世界一決定戦”を実現させた方が、ファンにも、選手にとってもありがたいのでは。そういう意味で、絶対に成功させて欲しいのが、10日開幕の「アジアシリーズ」。日本、韓国、台湾、中国の優勝チームが集まり(中国だけ混成チーム)、王者を決定するものです。

 この大会が盛り上がらなければ、その先の「アジア王者対米国王者」という図式も見えてきません。アジアのレベルの高さを示して、大リーグ側に「これらのチームと対戦すれば興行的にも成功する」と思わせたいところ。それには今大会を、今までオフに行われてきた日米野球のような“お祭り”にしてはいけません。日本を代表するロッテには、他チームを蹴散らすぐらいの意気込みで、真剣に戦って欲しいです。

 ところで各国の野球のレベルはどれぐらいなのでしょうか。昨年、シーズン56本塁打の“アジア記録”を持つ李承■選手が、サムスンからロッテに移籍してきました。しかし1年目の結果は打率2割4分、14本塁打、50打点。ロッテの同僚で、今年のベストナインにも輝いたフランコ選手は当時、なぜ李選手が満足のいく成績を残せないのかを説明してくれていました。

 同選手は「米国、日本、韓国では、投手の平均球速が5キロくらいずつ違う感じがする。その5キロが大きいんだ。日本ではそこにフォークなどの縦の変化が加わる。李にとっては初めて体験する球、攻められ方ばかりで、対応するのに時間がかかるのは仕方がない。でも彼に才能があるのは間違いないよ」と話してくれました。

 ある国際スカウトに聞いたところ、今オフ、韓国球界には、日本や米国でプレーできそうな選手が2、3人。台湾も同じような状況だそうです。それを考えるとリーグのレベルは日本が一枚上でしょう。チームとしても、ロッテの統計担当プポ氏は「今、分析中だけどウチの方がサムスンより強いよ」と言います(台湾の興農、中国チームの実力ははっきりとは分かりませんが)。

 それでもロッテには手を抜くことなく圧勝して欲しい。そうすることで来年、さらに他チームが目の色を変えて戦いを挑んでくるでしょう。それが大会の盛り上がりを生み、アジアのレベルアップとなり、最終的にはクラブ世界一決定戦へとつながるのです。

※■=火へんに華

November 8, 2005 11:44 AM

2005年10月29日

選手の能力信じる

 僕は野球の監督も、一般社会における会社などの組織の長も、基本的になすべきことは同じだと思っています。

 今季、日本のプロ野球でボビー・バレンタイン監督(55)のロッテが、31年ぶりの日本一となりました。大リーグではオジー・ギーエン監督(41)のホワイトソックスが、なんと88年ぶりとなるワールドシリーズ優勝を勝ち取りました。この2人をひとくくりにすると、両者から怒られるかもしれませんが(笑い)、2人の采配には共通する部分があります。そしてそれは実社会でも通用する選手(社員)操縦法ではないでしょうか。

 僕が思うに、彼らはあまり選手を「指導する」という意識がないのではないでしょうか。それよりも、選手の能力を信じ、彼らが力を発揮できる環境を整えることが最も重要だと考えているようです。

 ある日、ホワイトソックス井口選手が打席に向かう際、片言の日本語で「アホ、バカ!」という声が聞こえたそうです。振り向くとギーエン監督がニヤリ。もちろん冗談で、緊張を解きほぐそうとしたのでしょう。別の日には、擦れ違いざまに「キムタク!」と言われ、「何で知ってるの?」と笑ってしまったそうです。こんな監督だからこそ、すぐにチームに溶け込み、実力を発揮できたのではないでしょうか。

 またデータ重視のバレンタイン監督も、実は選手が意気に感じる「浪花節」的采配も目立ちます。左投手にあえて李選手をぶつけたり、シーズン中の黒木投手の復活ストーリーなんかは、監督の頭の中に最初から描かれていたのでしょう。打てない時も4番サブローを使い続けたり、プライドをくすぐり力を出させる方法を知っています。

 逆に、今季もまた最下位を突っ走った某メジャー球団の監督は、担当記者に聞くと、まさに「オールドスクール(古いタイプ)」の監督だそうです。(実績だけはあるので)自分の経験則だけで話し、自らの威厳を保つことを一番に考えるタイプ。いつも気難しい顔をしてメディアにも高圧的で、ほとんどの中心選手に、そっぽを向かれていました。僕が以前取材したある日本人の監督さんは、報道陣の前で延々と選手批判。そういう監督(上司)のために「やってやろう」という気にはなりませんよね。

 バレンタイン、ギーエン両監督のやり方がすべて正しいとは言いません。ただ、野球でも仕事でも実務を行うのは選手であり、会社の部下なわけですから、その力を100%組織のために発揮させることを優先するのは当たり前です。

 でも軍隊流の上下関係がはびこってきた日本の社会では、力を生かすよりも、下の人間の欠点を矯正しようとしがちです。しかも的確に矯正するならまだしも、意味のない罰を与えたりすることもあります。

 例えば、試合に負けた時、グラウンドを100周させても、また同じ失敗をします。選手の能力を生かすなら、試合に負けた時、仕事でミスした時、冷静に反省して失敗を分析させた方が、次の機会で有効です。バレンタイン、ギーエン両監督はミスに対してもそういう対応をします。2人の成功は、指導者の進むべき方向性を示したという意味で、本当に素晴らしいことだと思います。

October 29, 2005 10:46 AM

2005年10月19日

村上Fより大切な事

 良かったです。パリーグ・プレーオフが最後に盛り上がって。いや正確には、手に汗握る熱戦が続いていたにもかかわらず、僕らメディアの報道が、途中までそれ相応ではなかったと言うべきですね。

 先日、大リーグ取材から帰国しました。田口壮外野手(36)の所属するカージナルスが、地区シリーズで大塚晶則投手(33)のいるパドレスに3連勝した試合まで取材。そして日本に戻ってきました。

 いまさらですが、インターネットって本当に便利ですよね。今では世界中どこでも、様々な情報を収集できます。昔は海外出張のたびに、データ等を詰め込んだ分厚いノートを何冊も持っていったこともありましたが、現在はパソコン一つで済みますから。

 そんな中、米国出張中も常に気に掛けていたのが、プロ野球ロッテの動向です。僕は昨年、ロッテを担当していたので、彼らがプレーオフに進出した時はうれしかったし、わずか2年でチームをここまで導いたバレンタイン監督や、瀬戸山代表、関係者の方々の手腕には脱帽の思いでした。

 僕は当然、ロッテの連日の活躍がスポーツ新聞のトップに踊っているんだろうとワクワクしながら帰国しました。しかし現実は違いました。成田エクスプレスのホームにある売店で日刊スポーツを手に取ると、そこには「村上ファンド小泉流要求 虎上場 ファン投票」の文字が…。

 「はぁっ?」。もちろん村上ファンドが阪神タイガースの親会社である阪神電鉄株を大量所有していることは知っていました。でもタイガースが上場するかどうかって、そんなに大事なことですかね? そんなことを考えていたら、今度は楽天がTBSの筆頭株主になったというニュースです。

 報道する僕らが悪いんですけど、そもそもこれらは連日、新聞の1面をさくほどのことでしょうか。村上ファンドの件も、別にタイガースがなくなるわけではないし。楽天がTBSの筆頭株主になっても、1株主が2球団を保有する問題は、オーナー会議等で結論を導き出せばいいだけ。こんな問題があると、また“あの人”に意見を求めて、それが大々的な記事になる悪循環。あ~我ながら、日本のメディアって進歩してないよなぁ。

 昨年の球界再編時のように、これらの動きが球団合併につながるなら問題です。でも個人的に言わせてもらうと、またファンを無視して合併うんぬんを画策しているオーナーがいるとしたら、本当のアホですよ。逆に、単なる身売りなら、いいじゃないですか。資金力のあるオーナーがチームを買うのは、どこの世界でも当たり前です。

 そんなことより、これらを大々的に取り上げることで、熱戦を繰り広げているパ・リーグ・プレーオフに水を差すなんて、本当に失礼だと思いませんか?(ファンの皆さん、スイマセン)。日本のスポーツを盛り上げていくことは、僕らメディアの使命の一つ。それを肝に銘じて、今後もやっていきたいです。そういう意味では、地上波で「ソフトバンク対ロッテ」を放送してくれたテレビ東京さん、さすがです!

October 19, 2005 10:53 AM

2005年10月09日

魅力的な逆輸入もの

 僕もいくつか持っているカシオの腕時計「Gショック」は、アーティストのスティングが着けていたことで、日本でも人気が爆発しました。現在は国内でも知名度を得ている歌手の倖田来未は、かつて米ビルボード誌のダンスチャートで1位になったこともあるそうです。

 レストラン「NOBU」は今や東京、ニューヨークをはじめ全世界に店舗を構えていますが、もともとはシェフの松久信幸氏がロサンゼルスに店を開いたのが始まりだとか。米アニメ専門テレビ局で放送され、全米で大ブレーク中のPUFFYのアニメ番組「ハイ! ハイ! パフィー・アミユミ」も日本で放送されています。

 これらのものに共通するキーワードが「逆輸入」。もともとは日本のもの(人)なのですが、海外で認められてから、国内でも成功を収めたという点が似ています。

 そんな「逆輸入もの」の中で最近、特にニュースになっているのがトヨタの海外向け高級車ブランド「レクサス」じゃないでしょうか。国内販売を始めた「レクサス」2車種の受注台数が、発売約1カ月間で、約4600台となったそうです。これは目標(1200台)の4倍に近く、極めて好調な滑り出しと言えるでしょう。

 そういえば去年ロッテを取材していたころ、統計担当のポール・プポ氏にこんなことを言われた記憶があります。僕はかつて米国車に乗っていたことがあるのですが(あえてどの車とは言いません)、彼にその話をすると笑って全否定されました。

 「あんな車はゴミみたいなもんだよ。最高なのはレクサスだね。インフィニティ(日産の海外向けブランド)や、アキュラ(ホンダの海外向けブランド)も素晴らしい。君はなんで日本の車に乗らないんだよ」。実際に僕も米国で取材中にインフィニティ(日産)のFXという車に乗ったことがあります。安定性、乗り心地など確かに良く、日本車にはない感じのデザインも気に入りました。ですからプポ氏の言うことも納得できました。

 もちろん外国製品にも素晴らしいものはたくさんあります。でも自国の製品が外国人に評価されるというのは気持ちの良いものです。その気持ち良さが、「海外でも評価されているんだから品質は安心できる。しかもイメージ的に格好良い」という逆輸入ものの「ブランド力」につながっているんじゃないでしょうか。BMWなどの外国車が大好きで「国産はちょっとなぁ」と言っていた僕の友人も、「レクサスならほしい」と話しているぐらいですから。

 もうずいぶん前からそうですが、ビジネスで成功するキーワードの1つとなっている「逆輸入」。昔、英語がしゃべれて、服装もあか抜けた帰国子女の女の子のことを「いいなぁ」と思いながら見ていた感覚に近いのかな、とふと思いました(ちょっと違いますかね)。まぁ僕も今年は1年間米国を中心に取材をしてきたわけですが、魅力的な「逆輸入もの」に慣れているのかどうか。疑わしいところではあります…。

October 9, 2005 12:02 PM

2005年09月29日

時代に合わぬNHK

 学生時代、就職活動をしている時、すごく不思議だったのです。僕は新聞記者になりたかったのですが、一応マスコミ全般を志望してました。だからテレビ局やラジオ局の資料などを取り寄せたり、実際に会社の人に会ったりしました。周囲の人たちとも「あそこの会社へ入りたいね」というような話をしてました。でもそんな時、友人の多くがNHKを第1志望にしていたんです。

 なぜ不思議だったかというと、僕が子供のころ、NHKの番組を見た記憶がなかったから。友人とするのは「8時だヨ!全員集合」とか「オレたちひょうきん族」の話だったし、よく見ていたランキングものの歌番組なども、みんな民放でした。だからNHK志望のヤツを「お前、今までNHKの番組なんか見たことなかっただろ」と、からかってみたりもしたわけです。まぁ公共放送としての安定性なんでしょうか。「ブランド力ってすごいな」と思いました。

 現在、そんなブランドの力にも陰りが見えているようです。受信料不払件数も増え、NHK橋本元一会長(61)が簡易裁判所を通じた「支払い督促」など法的措置を導入することを打ち出しました。不払いは、元プロデューサーの番組制作費詐取など一連の不祥事を理由とする130万件のほか、面接困難な訪問集金の未納が130万件、経済的理由や長期不在など139万件。合計約399万件が法的措置の対象となる可能性があるそうです。

 法的根拠があるならば「支払い督促」も仕方がないかな、とは思います。ただNHKの成り立ちそのものが、今の時代性に合わなくなってきているのもまた、否めないのではないでしょうか。

 僕は現在、取材で米国へ来ていますが、だいたい見るチャンネルは4つです。まず仕事柄、ESPN(スポーツ専門放送局)。そして大好きな音楽を視聴するために、MTVなどの音楽系放送局。CNNでニュースを見て、趣味の映画のためにHBOというチャンネルをよく選択します。

 それら4つは自分の意思で選択したチャンネルだから、もしそれに対して「金を払え」と言われても理解できます(ホテルのテレビなので、実際には支払いませんが)。人々の好みが多様化した現代、このように専門放送局が多くある米国では、見た分だけお金を支払うという「ペイ・パー・ビュー方式」が定着するのもうなずけます。

 NHKは、見る・見ないにかかわらず、受信料を支払わなければなりません。いっそのこと「ペイ・パー・ビュー」にしてくれれば、みんなが納得するでしょうけど。そうなると「人々の役に立つ公共放送」という根本が崩れることになりますので、それは無理な話というものでしょう。

 ただ誤解を恐れずに言えば、時代に合わないシステムを国民に納得させようとしているわけだから、それなりに努力が必要だと思います。橋本会長が渋谷の街頭で頭を下げるとか、局員全員で街角に出てビラを配ったりしてもらえば、必死さも伝わって好感も持てるのではないでしょうか。「NHK新生プラン」とか発表するより、そういう努力の方が大事だと思うんですけどねぇ。

September 29, 2005 12:38 PM

2005年09月19日

田口から学ぶ「礼儀」

 皆さんの周りに、あいさつをしても全然返事をしてくれない先輩とか上司っていませんか? 僕の会社に、あいさつをしても会釈すら返してくれない人がいるんですよ。僕が後輩だから、しなくてもいいと思ってるのかもしれません。あるいは僕の存在感がなさ過ぎて、同じ会社の人間と思っていないのかも(笑い)。でも、たとえ相手が年下だとしても、人と人との関係って、それじゃいけないと思うんです。

 こんなことを考えるのも現在、その“あいさつゼロ人間”とは正反対にいる人を取材しているからです。昨年、惜しくも逃したワールドシリーズ制覇へ向け、大活躍中のセントルイス・カージナルス田口壮外野手(36)。僕みたいな若造の記者にも、こちらが恐縮してしまうくらい丁寧にあいさつ、話をしてくれる、人間として見習いたい人物です。

 そもそも日刊スポーツでは、日本人選手が所属するすべての大リーグ球団に常時、記者を派遣しているわけではありません。少ない人数でメジャー全体をカバーしなければならないので、僕がカージナルスを本格的に見るようになったのは、地区優勝が目前に迫ってきた今月に入ってから。初めて本拠地ブッシュスタジアムに行った時も、何か申し訳ない気持ちがありました。

 でもそんな“いちげんさん”記者にも田口選手は誠意を持って接してくれます。先日、日本の野球関係者から託された田口選手へのメッセージを伝えに行きました。すると聞き終わった後、ロッカー室に響き渡るような声で「ありがとうございます」と言われました。僕は心の中で「ほとんど初対面に近い記者にそんな。こっちこそ『ありがとうございます』ですよ」と、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 13日のパイレーツ戦前。今シーズンを振り返ってもらうために、田口選手にインタビューを申し込みました。すると忙しい時間帯にもかかわらず「(午後)4時30分にベンチにいます」と笑顔でOKしてくれました。ひと通り話した後、僕は本題をそれました。「田口選手はなんで、そんなに丁寧に優しく記者に接することができるのですか?」と野球とは全く関係ない質問をぶつけると、こういう答えが返ってきました。

 田口「そんなことないですよ。仮に下調べをしてこない記者がいたら『お前ええかげんにせいよ』となるわけです。全然、考えのまとまってない人がポッと来ても『お前、何言うとんねん』となります。周りの人は僕のことを人格者のように言ってますけど、そんなことはないんです。ただ僕のところに来ていただいている方々は、ちゃんと調べて、できる限りのことをしてきていただいているんで。それで丁寧に質問していただけるから、僕も丁寧に答えるだけなんです」。