飯島智則
2005年06月30日
バナナはおやつか?
このコラムは掲載日の3日前までに、1度デスクへ大筋を提出する決まりになっている。その後も締め切りギリギリまで書き直しをするし、テーマ変更も認められているが、ひとつの決まり事として存在する。これを書いているのは掲載前日の28日なので、私は規則を守っていないことになる。ただし遅れてもペナルティーはない。
規模が小さくとも、人が集まれば規則、決まり事ができる。学校ならば校則、会社ならば社則。クラブ活動でも、サークルでもルールはある。もっと言えば家庭でも、友人同士でも決め事はある。例えば、部員は毎月会費を納める。遅刻をしたら部室の掃除をするとか。もっともペナルティーを設けるか否かは、その組織の判断によって異なるだろう。
プロ野球界は「倫理行動宣言」を出した。昨年起きたスカウト活動における不正防止を目的とするものである。前文には「再出発にあたり、私たち野球人は、フェアプレーとスポーツマンシップに立ち返ることから始めたい。それがプロ野球に対する国民の信頼を確保し、ユニホームの栄光を汚さぬ唯一の道であるからだ」などと記されている。その上で利益供与は一切しないと誓っている。
利益供与は一切しない…言うのは簡単だが、難しい面もある。例えば話をするとき、お茶を出してもいけないのか。コーヒーは? 飲み物ならいいのか。お茶菓子を出してはいけないのか。では液体はよくて固形物がダメなのか。ゼリーはどっち? 小学生のころ、遠足のおやつは300円までと定められていたが、バナナはおやつに入るかどうか、学級会で論争になった。あれとよく似ている。
実行委員会の議長を務めるパ・リーグ小池会長は「そういう議論は次元が低いし、切りがないでしょう」と言う。だから利益供与については明文化していない。各球団、スカウトの常識の範囲に任せる。つまりコーヒーがいいか悪いかは、自分の常識で判断する。違反の範囲やペナルティーは「コミッショナー裁定」とされている。
この不正防止案について「甘い」という意見もあるだろう。だが、私はこれでいいと思う。そもそも野球協約は日本プロ野球組織(NPB)というサークルの内規に過ぎない。法律というより、サークルの決め事に近い。例えば遅刻者が続出して困るので「遅刻したら罰として部室の掃除」というルールを作った、という種のものと思う。そういうサークル内で警察のような監視機関や調査機関があること自体、無理があるし、適さないだろう。
倫理行動宣言について、根来コミッショナーは「性悪説ではなく性善説に基づいている。つまり守られることが前提です」と説明した。不正防止は、それでいいと思う。ただ、だからこそドラフトは違反の起こりにくい制度にすべき…自由枠を撤廃すべきだろう。
さて、私は今回でコラムのメンバーから退く。もともと1年ごとに交代すると決まっており、決して締め切りを守らずにきた処罰ではない。しかし、担当の南沢デスクからの信用は、かなり失っただろう。ペナルティーでもあった方が、気が楽だった。
June 30, 2005 12:01 PM
2005年06月20日
野球規則【注】に注意
ロッテのバレンタイン監督が、ルール上の問題で審判に抗議したとき、両手に野球規則を持っていた。一方は日本のもので、もう一方は米国製だった。非常に意味が深いシーンに見えた。
よく「野球とベースボールは違う」などと言われるが、これは見た者の感想であって、ルールは同じ…はずである。日本の公認野球規則(非売品)は、大リーグでも使う米国のオフィシャルルールを訳したもの。本来、バレンタイン監督が戸惑うはずはない。ところが、なかなか難しい問題を秘めている。野球規則の冒頭の一文を比較してみよう。
1・01 Baseball is a game between two teams of nine players each, under direction of a manager, played on an enclosed field in accordance with these rules, under jurisdiction of one or more umpires.
1・01 野球は、囲いのある競技場で、監督が指揮する九人のプレヤーから成る二つのチームの間で、一人ないし数人の審判員のもとに、本規則に従って行われる競技である。
一見、そのまま日本語訳されているようだが「jurisdiction」がない。意味は「司法権、裁判権、支配、管轄」といったところ。日本語の「審判員のもとに」は、もっと意味を強くしていいと思う。「審判員が下す判定のもとに」。つまり、ビデオ判定など前提にしていない競技だと分かる。例えば技術的にレーダーなど機械によるストライク判定が可能であっても、使うべきではない。審判の技術向上は別問題として残るが、誤審を含め、人間の目によるジャッジが大前提にある。そこが日本語版では伝わってこない。
また、日本の野球規則を読んでいくと【原注】【注】という2種類の注意書きを目にする。【原注】は英語版にも入っているもので、【注】は日本版にしか入っていないものを指す。なぜ、日本独自の【注】が必要なのか。
野球規則の中には「文中【注】とあるのは、編者が必要と認めた説明または適用上の解釈をいう」と書いてある。よく分からないので丸山規則委員に聞くと「少年野球でも使うわけですから、できるだけ分かりやすく説明しています」と言う。
ただし「説明だけでなく米国とは違う独自の解釈になっている部分もある」と付け加えた。例えば日本は7・08(g)【注二】で「打席外での打撃行為が行われた場合、三塁走者をアウトとし打者は打撃を続けられる」という趣旨が書かれている。スクイズの時に外されたボールに飛びついたケースといえる。しかし米国で6・06(a)を適用して打者の反則行為とし「打者アウト、走者は帰塁」にするという。この相違点は規則委員会でも検討されたことがあるが、継続審議となっている。このように【注】の存在により、同じプレーでも日米間の判定に差が出る。
来季から2段モーションの禁止を決めた際、実行委員会では「国際化に対応するため」と理由を説明した。「国際ルール」や「国際球」という言葉を聞く機会が多くなったが、どちらも何を指しているのか明確ではない。「国際ルール」が米国のオフィシャルルールを指すならば、2段モーションだけをクローズアップするのはおかしい。問題点は、もっと根本にある。
June 20, 2005 11:49 AM
2005年06月10日
真剣勝負か不参加か
取材相手とスケジュール調整をしていたら「3日と8日は外して」と言われた。理由を聞く必要はない。サッカーW杯の最終予選に日本が登場する日にあたる。仕方がない。深夜1時半にキックオフの3日は、早々に取材を切り上げて帰途に就いた。電車の中で「今日負けたらヤバイよなあ」と大声で話す学生の集団がいた。彼らが負けを心配しているのは巨人ではあるまい。
注目しているのはサッカーファンばかりではないだろう。一種のお祭りであり、国中で一体感が生まれる。私もJリーグを見る機会は少ないが、日本戦は必ず見る。しかも雑用は済ませてしまい、何もしなくていい状態で集中して見る。深夜のバーレーン戦では、うかつにもウトウトした時に小笠原のゴールが決まった。間の悪い自分に腹が立って腹が立って…。
このような国中に及ぼす一体感は野球にはない。かつて巨人長嶋監督はリーグ優勝が決まる試合を「国民的行事」と称したが、今や「国民的…」は完全にサッカーに奪われていると言っていい。
だから野球も国際化を、という声がある。11月のアジアシリーズ、来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。しかし、国際試合なら何でもサッカーのように盛り上がるわけではない。「さあ、国際試合ですよ」と興奮を強要されても、むしろ気持ちは冷めていく。そう、最大のキーワードは真剣勝負。
アジアシリーズについては監督会議や選手会総会で「真剣勝負で臨む」と確認している。アジア地区の野球振興という意味もある。大いにリーダーシップを取っていくべきだろう。期待を寄せ、真剣…の部分は厳しい目で見たい。
問題はWBC。今のところ日本は米国主導の開催方法や利益分配を不服として出場を決めかね、条件改善に向けて米国側と交渉を重ねている。ある程度ビジネス問題がクリアできれば出るだろう。では、そのとき日本代表はどんなチーム構成になるのか。首脳陣の判断によるベストチームか。それともアテネ五輪のように各球団2人という枠をつくるのか。
このまま出場することになると、来春までに現場から大会への不平や、球団間の不公平感を訴える声が続出するだろう。「この時期に主力を奪われてはキャンプができない」「リリーフ投手を出す球団は不利」など。現状で表には出ていないが、すでに、こうした声は渦巻いている。こんな声を聞きながら、見ている側が盛り上がるはずがない。米国側との交渉だけでなく、日本としてのスタンスを強固なほど明確にする必要がある。出るならば、公式戦に影響が出ても勝つべく全球団が全精力を注ぐ。不平不満は許さない。
野球は試合数が多い。大リーグは162試合、日本はセ・リーグが146試合、パは136試合とプレーオフ。サッカーJ1の34試合(主催17試合)と比べても分かるように、これは他の競技では考えられない数であり、絶対的な特長といえる。約半年のシーズン中、毎日のように試合がある。当然ながら、観客はリピーターが必要で、サッカーよりも地域に根付かなければ成り立たない。中途半端な国際試合であれば、本拠地での公式戦に重きを置くべきだ。真剣勝負か、不参加か。選択肢は二つしかない。
June 10, 2005 12:13 PM
2005年05月31日
野球の魅力探す喜び
◆西武中村剛也(なかむら・たけや)21歳。大阪桐蔭から01年ドラフト2巡目で入団。4年目。選手名鑑は身長173センチ、体重95キロとなっているが、実際は102キロという。座右の銘が「おかわり」というだけあり、食べるのが大好き。丸いお腹も気にせず「これで動けるし、減量するつもりはありません。年々増えています」。ダイエットブームの昨今に逆行しながらも、本塁打を量産して台頭中。太めの体に似合わず? 50メートル走は6秒台で、動きも柔らかくセンスあふれる。一見の価値あり。
◆ロッテ渡辺俊介(わたなべ・しゅんすけ)28歳。国学院栃木から国学大、新日鉄君津を経て00年ドラフト4位で入団。5年目。投げる時、手にしたボールが地面に着いてしまうほど体を倒して投げるサブマリン投手。120キロ台の速球も、相手打者には脅威に映る。ただ、注目すべきは、最近では珍しくなった美しいフォームだけではない。3月27日の楽天戦でロッテは26ー0で大勝した。猛攻ばかりが目立ったが、彼は最少の27人で1安打完封をしてみせた。その後、5月8日横浜戦でも18ー0という大差の試合で完封した。大味になりがちな試合展開でも「いくらでも援護はありがたい」と言って、淡々と自分の仕事を全うするプロである。
◆巨人矢野謙次(やの・けんじ)24歳。国学院久我山から国学大を経て02年ドラフト6巡目で入団。3年目。チャンスを得ることすら困難な球団にあって、高橋由の故障による抜てきで名前を売った。5月5日に昇格即、今季1号を放ったとき、私はテレビで見ていた。ベースを周りながらガッツポーズを繰り返す表情も、真剣そのもの、必死さがあふれていた。やったな。思わず口に出してしまうほど感情移入して、胸が温かくなった。最近(ドラフトで逆指名制度を導入して以降といってもいい)の巨人で、こんな体験は珍しい。高橋由の復帰で2軍落ちしたが、再挑戦を楽しみにしている。
◆西武石井義人(いしい・よしひと)26歳。浦和学院から96年ドラフト4位で横浜入団。故障と闘う生活が続くが、西武トレード後に華開く。現在、パ・リーグ打率トップ。
◆オリックス後藤光尊(ごとう・みつたか)26歳。秋田から法大に進むも中退。川鉄千葉を経て01年ドラフト10巡目で入団。今季はサヨナラ弾、満塁弾、逆転弾、代打逆転弾と勝負強い打撃が目立つ。その分、痛い失策もするけど…。武骨な顔付きもよく、個人的には注目度NO・1。
ドラフト制度などの構造改革をはじめ、球界の問題点を取材する機会が多い。本欄でも様々な問題や改善点を指摘してきた。もちろん球界発展のため必要な作業と自負している。しかし、ややもすると欠点ばかりを探そうとする自分に気付く。今回も野球協約上の矛盾点を指摘する原稿を書こうと準備していたのだが、西武中村が本塁打を放った後の笑顔を見ていたら気が変わった。
スター不在といわれるけど、捨てたものではない。マリナーズ・イチローやヤンキース松井は、見る側が何もせずとも感動を与えてくれる。今の球界で、それを期待するのは無理かもしれない。しかし、見る側が積極的に求めていく喜びや楽しさもある。
May 31, 2005 12:46 PM
2005年05月21日
変則投球禁止徐々に
横浜三浦、楽天岩隈、中日落合、阪神安藤…。彼らは来季からフォームの変更を余儀なくされる。実行委員会では来季から投球の際に足を2度上げる、いわゆる「2段モーション」を禁止すると承認した。
ルールが変わったわけではない。野球規則の8・01(a)の「打者への投球に関連する動作を起こしたならば、中途で止めたり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない」は以前から同じ。今回は、あくまで「ルール通りに」と確認したわけだ。
先駆者の三浦がこの珍しいフォームに改造する際、コーチが審判のところに行って認められるかどうか確認。一連の動作として認めるという見解を得て始めた。三浦は2段モーションでエースとなった。
三浦は言う。「詳しい話を聞いていないので何とも言えません。でも報道で知る限り疑問は残る。ルールが変わったのならば分かるけど、同じルールのままで以前は認められたことがダメになるものか」。
丸山博規則委員は「突き詰めて言えば、過去に認めたことが間違いだったと思う」と言う。三浦が2段モーションを始めたとき、ルール研究会などでは「あれは認められない」との意見が大勢を占めていたという。しかし結局は「2度上げたり1度で投げたり、その都度変えてはいけない」という注釈付きで認めた。
三浦は2段モーションを始めてから12年目を迎えた。なぜ今、解釈が変わるのか。実行委員会では「国内外から疑問の声が上がっていた。国際化に対応するため来季から規則通りとする」と説明した。今秋のアジアシリーズ、来春予定のワールド・ベースボール・クラシックと国際大会が続く。
アマ側からの要望も強かった。プロで許可されているため、アマでもマネする投手が増えた。好ましい傾向ではないという認識。3月に巨人清武代表らが日本高等学校野球連盟(高野連)と会談した際に強く要望され、これが契機となり実行委員会の議題に上った。私は国際化より、こちらの影響が強かったとみている。
2段モーションが規則違反か否かは別問題として、公に長期間、認めてきた事実を無視はできない。来年から禁止となれば、三浦は10年以上かけて培ってきたフォームを、わずか半年のオフで大幅に直さなければならない。三浦に限らず、多くの投手の選手生命にかかわる恐れがある。
84年に耳付きヘルメットの着用義務が明文化された際、対象は74年以降の入団者に限定され、なおかつ前83年に耳付きを着用していなかった選手は「この限りではない」という条文が加えられた。つまり耳付きだとプレーしにくいという選手に考慮して選択の余地を残した。古い話だが、1920年に大リーグでスピットボール(だ液をボールにつけて変化させる)が禁止になった際も、それまで投げていた投手に限り認められた。ともに、何年か後に特例者はいなくなる。いわば緩やかな変革である。
一部の人だけ認められる形は、いびつだろう。しかし、過去の経緯が引き起こした結果だと認識する必要がある。無理やり形を整えるばかりが正しい方法ではない。
May 21, 2005 12:52 PM
2005年05月11日
交流戦機に連盟統合
プロ野球の交流戦は予想以上に新鮮だった。開幕カードは横浜-ロッテを観戦した。横浜スタジアムの左翼席に、ロッテファンが着る黒と白のコントラストが映える。所変われば雰囲気も違うものだと感じた。
6日の試合ではロッテが1点リードの9回表。横浜が左腕ホルツをマウンドに送ると、ロッテは左の李に代え右の大塚を代打に送った。ロッテの動き。横浜野村投手コーチは「李が代打を出される立場かどうか。なかなか判断がつかなかった」と言う。同一リーグならば、ある程度は相手ベンチの動きが読める。交流戦ではスコアラーが集めた豊富な資料が、まだ生きたデータになっていない。そんな戸惑いも実に面白い。
同じ野球とはいえ、リーグ間には多くの差があったとあらためて思う。交流戦の実施に際し、リーグ間で異なるルールが統一された。例えば「危険球は即退場」「メガホンをベンチに持ち込んではいけない」など。昨年まで、ベンチ入り選手が示される出場登録名簿がセは縦書き、パは横書きだった。さあ、どちらにする? とも話し合われた。笑い話ではない。ちゃんと横書きに統一されている。
4月26日の実行委員会では、出場停止選手の登録抹消について統一された。パのアグリーメントでは出場停止中の選手は「登録からの抹消は認められない」と明記されている。セは規定がなく球団の判断に任されていた。だが、今回、セ、パともに抹消は球団の判断だが、代替選手の登録は認められないと統一された。つまり出場停止選手が出たチームは1軍が28人のところ、27人で戦わなければならない。
可能性はあるが、珍しいケースだろう…と思っていたら、交流戦開幕日の6日に中日ウッズが10試合の出場停止処分を受けた。いきなりの適用だった。
また通常、処分は所属リーグ連盟会長から受けるが、交流戦では主催球団が所属する連盟によって処分が出されると確認されていた。これも早速の適用があった。西武カブレラが7日の広島戦(広島)で審判に暴言をはいたため、セ豊蔵会長から厳重注意と制裁金10万円の処分を受けた。何事も事前の準備が大切ということだ。
交流戦を機として、多くの部分でリーグ間の統一がなされた。となれば連盟が分かれ、それぞれに会長が存在する意味は低くなる。
大リーグでも以前は連盟が分かれ、ア・リーグ、ナ・リーグにそれぞれ会長がいた。ところが00年にリーグは統合され、大リーグ機構(MLB)が一括して組織を仕切っている。実は、4月に渡米した巨人清武代表らワーキングチームがMLBとの会談の際に「リーグ連盟を統一したメリット、デメリットは」という質問をしている。MLBの答えは「デメリットは見当たらない」だったという。
誕生の歴史が異なるため、リーグとしての利益、発展を考える必要があったことは理解できる。だが、交流戦も実現した今、リーグよりも大きな「プロ野球」を単位として考えていくべき時になったと思う。ドラフトなど個々の制度を改革する前に、組織のあり方を検討すべきだろう。
May 11, 2005 12:28 PM
2005年05月01日
お金=強さではない
スポーツの世界で「数字」は、どこか無機質な印象をもたれる。プロ野球でも選手に打率や勝ち星について聞くと「数字は気にしていません」という答えが多い。記者の世界でもデータを駆使するより、いわゆる足で稼いだネタが重宝される。しかし、数字もおもしろい。見ているだけでいろいろなことを教えてくれる。
25日に労組プロ野球選手会(古田敦也会長=ヤクルト)が今季の年俸調査資料を発表した。球団別の総年俸や平均年俸だけでなく、年齢層別の年俸や、1億円以上の選手が何人いるかなど多種にわたっている。データは80年からあるが、当初は新聞に書かれた「推定年俸」を集めていた。88年からは個々の選手からの申請に基づいてデータを集計している。ちなみに外国人選手は、特殊な契約を結ぶケースが多いので入っていない。
例えば開幕時に1軍にいた291人の平均年俸は6770万円で、1軍にいなかった461人の平均は1832万円。どちらも初めて前年に比べて減少した。数字を少し吟味してみる。野球協約に定められたところでは1500万円未満の選手は、1軍にいると1日ごとに追加報酬を受け取れる。150日いれば満額1500万円になるよう計算されており、この金額は1軍選手の基準といっていい。とすれば、1軍外の平均1832万円は、やや高い金額となる。もちろん平均だから一概には断言できないが。
球団別にみるとパ・リーグの1軍選手は<1>ソフトバンク<2>西武<3>日本ハム<4>ロッテ<5>オリックス<6>楽天の順で高い。昨年の順位に似ている。セ・リーグは<1>巨人<2>横浜<3>中日<4>阪神<5>ヤクルト<6>広島。3年連続最下位の横浜の9713万の高額が光る。
1軍外が1500万円未満に抑えられているのは西武、オリックス、横浜、広島、ヤクルトの5球団。ちなみに巨人は3091万円と倍以上になる。気前がいいのか、戦力と育成のバランスが悪いのか。
また、楽天は1軍が3882万円と12球団で最低額だが、1軍外の1972万円はパで3位とやや高め。チーム内を見ると500万円未満が不在で、1億円以上は1人だけ。5000万円以上も7人しかおらず、選手による年俸格差が少ない。
年齢別も興味深い。全体的に巨人が高いかと思ったが甘かった。巨人が最高額となったのは16~23歳の1025万円だけ。30~35歳の部、36歳以上の部はともに横浜に次ぐ2位である。横浜は3年連続の最下位で、数字だけでは分析不可能なので無視させてもらう。それより気になるのは、巨人が24~29歳で2722万円と、6位まで下がること。ソフトバンクの5493万円が飛び抜けているとはいえ、巨人はこの年齢層が薄いと分かる。
つまり入団時に他球団より高額出すが、その選手が成長せずに…他球団からFAなどで補強する。おっと、これは想像であって、ここまで数字が教えてくれるわけではない。
集計している間、数字を基に取材に走りたくなったが、あえて今回は数字から分かる要素だけで書いてみた。
May 1, 2005 02:04 PM
2005年04月21日
慣例的な満場一致×
人生で最初に出席した会議は、小学校の学級会だろう。指導教師によって会の進め方は違うだろうが、私の経験では多数決による決定がほとんどだった。民主主義の基本的な方法。社会人になってからも、多数決、もしくはさまざまな意見を聞いた上で責任者が最終決断を下す。その2通りしか経験していない。
プロ野球界は、そのどちらでもない。球界の重要事項を決める実行委員会は、ほぼ例外なく「満場一致」で決まっている。一応、野球協約には多数決による決定方法が明記されている。第15条(議長と議決)に「議案の議決は出席委員数の3分の2以上の賛成を必要とする」(議案によっては4分の3以上)とある。しかし、基本的に挙手などによる採決は行われていない。
もちろん簡単に満場一致になるわけではない。議論の中で賛成、反対意見が出るので、挙手をせずとも大まかに賛成8球団、反対4球団などが分かる。そして最後には少数側が折れる形で「満場一致」となることが多い。ときには「うちが反対の立場を取ったという事実は議事録に残しておいてください」と付け加えて折れる球団もあるという。
極めて多数決に近い形の「満場一致」といえるが、あくまで採決はしない。なぜか。実行委員会で議長を務めるパ・リーグ小池唯夫会長(72)に聞いた。
小池会長「遺恨というか、しこりを残さないためなんですよ。12球団によって運営されるわけですから、全球団が納得して進めていった方がいい」。
しかし、今話し合っているドラフト改革などは、球団によって意見が180度違う。とても全会一致になるとは思えない。
小池会長「今はまだ色々な意見を戦わせる段階だから、そうなんでしょう。でも、時期が来ればまとまっていく。12球団で運営していく以上、しこりを残しても仕方がない。大人の対応をするでしょう」。
ドラフト改革では「共存共栄」か「競争」か、という理念の問題にも及んでいる。理念も妥協できるものなのか。
小池会長「『共存共栄』と『競争』はバランスですよ。どちらかでもいけない。そういう意味で、折衷案になるのではないでしょうか」。
この決定方法は、日本球界を象徴していると言ってもいい。球界は12球団で運営するものであり、すべての決定事項は12球団で決める。だから、皆が納得する形で進めていく。多数決よりも満場一致で。
昨年の再編騒動を機として、コミッショナーの権限を強くすべきという声が出ている。12球団を統括する役割として、もっとリーダーシップを発揮すべきという意見である。これは満場一致とは正反対の方法といってもいい。
「何を決めるか」と同時に「どうやって決めるか」も検証すべきだ。コミッショナーの権限を強化するならば、役割を明確に定めた上で、人選方法から検討する必要がある。現職者の権限だけ強化すれば解決するものでもない。
検討した上で、あくまで満場一致にこだわるならば、それもいい。何となく、これまで通り…は避けるべきだろう。
April 21, 2005 11:33 AM
2005年04月11日
試練の道選んだ「侍」
ナショナルズ大家友和投手(29)を見ると、いつもハンバーガーを思い出す。マイナー時代の話を聞いたことがある。
まだ米国に慣れぬころ、試合後にバスに乗った。周囲の選手はピザなどの食事を用意しており、バスの中で食べていた。大家は用意していなかった。遠征先に到着してから夕食にするつもりだった。しかし道のりは長い。遠征先に着くと深夜になっていた。ホテルのレストランは閉店していた。
空腹に耐えられず、ホテルの周囲を見渡すとマクドナルドがあった。駆け付けてみると、時間が遅いため安全上の問題からドライブスルーのみの営業。仕方がなく車の後に並んだ。前の車が進むと、大家は歩いて進んだ。周囲の好奇な目にさらされながらハンバーガーを買い、空腹を満たした。そうやってメジャーに上がってきた。彼のマイナー生活の、ほんの一部でしかない話。しかし、彼の投手としての、人間としての強さを支える一因になっているだろう。
カージナルス田口壮外野手(35)は何度もマイナー降格を経験した。開幕試合の5時間前にマイナー通告という悪夢もあった。チームに貢献する活躍をしても、なかなか恵まれた起用をされなかった。メジャー本拠地のセントルイスと3A本拠地のメンフィスの移動を繰り返した。
昨年はメジャーでチームのリーグ優勝に貢献する活躍を見せ、ワールドシリーズの第1戦にスタメン出場した。スタンドにいた恵美子夫人の言葉。「ここまで連れてきてもらって本当に感謝しています。主人が、よくここまで我慢してくれたと思う」。我慢。漢字でほんの2文字の言葉に、一体どれだけの思いが込められているのだろうか。
この試合、投手へボテボテの内野安打を放った田口は「自分らしい安打だったかな」と笑っていた。スマートではない安打を、この舞台にたどり着くまでの道のりに当てはめていたのだろう。その笑顔を見ていたら、何と格好のいい男だろうと思った。
メジャー挑戦の先駆者、デビルレイズ野茂英雄投手(36)は解雇やマイナーを経験しながら6球団を渡り歩き、なおもメジャーで戦っている。決してマリナーズ・イチロー、ヤンキース松井の活躍だけが、大リーグではない。
日本球界を旅立ったスター選手、中村紀洋内野手(31)は今、ドジャース傘下の3Aラスベガスにいる。マイナー行きが決まった日、中村は「代理人に任せて、オファーがあれば考えたい」と、移籍を示唆した。日本球界への復帰も否定しなかった。
だが、翌日になってマイナー行きを了承した。迷う一夜だっただろう。それでも「4月中にメジャー昇格?
そらそうでしょ。すぐにでもレギュラーを取ったろか」と、強気なセリフを口にした。7日の開幕戦では三塁強襲の2点適時打。第2戦でも初本塁打など3安打の活躍を見せた。「打たないと上に上がれませんから」。試練の道が、栄光につながると信じて戦っている。
中村のバットやグラブには「侍」という文字が書いてある。彼がメジャーに上がるとき、どんな「サムライ」に変ぼうしているだろうか。
April 11, 2005 12:48 PM
