2006年12月26日
父と語るクリスマス:藤中栄二
父親から何かを教わったことはありますか?
自分は迷いなく映写と答える。
成人するころまで、実家は映画館を経営していた。3階が映写室。子供心に入室することが楽しみだった。映画の内容以上に映写の方法に興味津々。自分の手でスクリーンに映し出した映画をお客さんが観賞する-。想像するだけでワクワク感があふれた。
14歳の時、初めて映写を教わった。当時、9年ぶりに映画「ゴジラ」が復活。84年に公開された16作目は75年の「メカゴジラの逆襲」以来の作品だった。物心ついた時から映画館に通い、「-逆襲」まで愛着を持って楽しんでいた。その強い願いを知った父が映写の指導をしてくれた。
覚えることだらけの難しい作業だった。映写機には約30カ所もフィルムを固定する部分があった。破損の防止のため、フィルムに「遊び」を持たせる部分も…。1つでもミスすれば機械は動かない。フィルムを巻き戻す専用機械さえも1つ間違えればフィルムが破損…。14歳の自分にとっては脂汗が噴き出る緊張の連続だった。
50分以上ある映画はフィルムが数本に分割される。2台の映写機で1本ずつ順番通りに取り付ける。スクリーンの左上に出る「●」のマークが映写機を切り替えるタイミング。ドンピシャで切り替えボタンを押せた時は最高の気分になれた。ゴジラは正月映画。今となっては時効だが、クリスマスに自分の「腕」を見込んだ父から臨時の映写技師を頼まれた。従業員を休ませるためだったが、年末年始に14歳の自分が映写室を任されたことは何ものにも替え難い贈り物だった。
父は昨年末に他界。晩年は映画館の思い出話ばかりだった。15年も前に閉館したはずだったが、父と自分の唯一の共通の話題でもあった。思えば記者となってから父の教えを受け、世界を目指した何人ものアスリートを取材してきた。父から精神論を学んだ柔道の谷亮子、柔道の手ほどきを受けた井上康生、レスリング指導を受ける浜口京子、ボクシング技術を習う亀田興毅…。世界を目指す厳しい練習に耐えられるのは、父から学び、父と同じ目線で語り合えるからだと思う。
父子で盛り上がることができる話題はありますか?
野球、サッカー、ほかのスポーツでもいい。携帯ゲーム、テレビゲーム、将棋、インターネット、釣り、飼育するペットのことでも問題ない。自分たちの世代が幼少時にくぎ付けになったウルトラマンは生誕40周年、仮面ライダーは生誕35周年、ゴレンジャーなどの戦隊シリーズは30作品目を迎えるほど次世代に受け継がれている。父子2代で「はまる」話題は探す意識があれば、いくらでも発見できそうだ。
今日25日はクリスマス。父と子で共通の話題を探してみてはどうだろう。お互いがコミュニケーションのパスを出し合うことができれば、それが最高のプレゼント交換になると思う。クリスマスが「Xmas」と書くように、12月25日は父子がクロス(X)する日でもいい。メリークリスマスは、恋人たちだけのものではない。
December 26, 2006 09:46 AM
